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第9話 寮を見学
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「はあー、はあー、はあー、」
プニョン♪
息を切らすスーとぴょんぴょんと嬉しそうに上下に跳ねるミル。2人の攻防は接戦とかではなく一方的だった。
ミルは最後の最後まで余裕な表情で避けていった。かたやスーは必死に腕を動かして捉えようとするが全てをかわされてしまった。
「本当に捕まえれるかなー。」
「焦らない程度に頑張れ。練習中じゃないときはとにかくシミュレーションしろ。どうやったらミルは動くのかとかある程度考えないといけないぞ。」
「むー、わかった。絶対捕まえるからね!」
プニョンプニョン!
ミルはそう言ったスーに対して『いつでも胸貸すよ!』と負けるわけがないという動きで跳ねていた。この様子だとどれぐらいかかるか。
「でもこれで本当に強くなれるの?」
「ん?信じられないか?」
「いやそりゃ疑ってるわけではないけど剣術学ぶのに剣を握ってないっていうかー、」
「なるほど、な。よっと!」
ヒュン!
「ひっ!?」
俺は油断しているスーに急激にギアを入れて高速で顔の先に手刀を入れる。スーはあまりに驚いたのか尻餅をついてしまった。
「とまあ、このようにいきなり俺との練習じゃあ練習にもならないからな。」
「くそー!」
くそーと悔しそうに言ってるが顔をそう言ってない。少しばかりにやけている。
「それで私の魔法の練習はどうすればいいでしょうか?」
「ああ、それなら……」
「おい、今から入寮希望者に寮についての説明をする。ついて来なさい。」
質問したエリーに返答しようとしたら先生が大声で教室にいる生徒たちに呼びかけをした。
「エリーたちは入寮希望者?」
「ええ、そうです。」
「あたしもそうだよ。」
「ちょうどいいや、寮の部屋で魔法の説明をするな。」
エリーは納得したのか素直に頷く。そして先生の後ろをついていき学園寮に向かう。
寮についての説明はこんな感じだ。
・魔法を使う際には部屋を壊さない程度にもしくは結界魔法を張った上で使用しなさい。
・0時までには必ず自分の部屋にいること。
・備品に関しての制限は特にない。
他にもいろいろあるが概ねこれが重要そうだ。そういえばその時に従魔希望を出したら「え、スライム?」という表情をされてしまった。ミルがいなかったら最後の問題解けてなかったんだぞ!
まあそんなことは置いとこう。部屋にはちゃんと荷物もあり、花壇も肥料も入ってた。食事は食堂で食べるか部屋で作るだそうだ。
「一旦ベッドにかけててくれ。少し部屋の整理をする。」
説明が終わり、エリーとスーを部屋に招いたが少々レイアウトを変えたいため教えるのを後にする。
プニョン♪
「お、ありがとうミル。」
「ねえエリー、スライムってあんなに便利だったっけ?というか人の言葉に反応しているところからすごいんだけど。」
「そうね、わからないけど可愛らしいじゃない。」
ミルは実家にいた頃からかなり雑用的なこともやってくれる。基本のんびりしていて日向ぼっこが大好きだが仕事に関してはキッチリやる。
花壇は日が差し込む場所に置いた。それと日差しが当たらない場所にも鉢を置いておく。日陰を好む薬草があった時用のものだ。
「こんなものかな?」
部屋を見渡すとかなり広々とした空間。俺がそもそもシンプルが好きなのもあるが必要最低限のものがあれば十分。
「いや、本の量えげつないでしょ。」
「これは流石にすごいのレベルを超えて来てますね。」
あ、本棚のことを忘れていた。実家にあったものを8割ぐらい持って来たけど、何百あるんだ?
「それじゃあ教える前に水魔法を一旦見せてくれないか?」
「わかりました。『ウォーター』」
エリーが胸元に手を突き出し唱えると手の先からボール状の水が出て来た。
「この時何をイメージしていた?」
「イメージ?特に何もしてません。」
「OKだ。それでいい。そっちの方がやりやすい。」
丸をまず思い浮かべてくれて助かった。丸からならほかの形にイメージしやすいからな。最初から変な形だと一旦矯正しないといけなかったし楽だな。
「ええとまずは四角形をイメージしてさっきと同じ量の水を作ってくれ。」
「わかりました。『ウォーター』」
エリーの前に四角形の水が出てきた。
「それじゃあ同じ量で今度は星型の水を作ってくれ。」
「わかりました。『ウォーター』……あれ?」
エリーはさっき同様に唱えて水を出すが、星とはいえずなんかウニョウニョしている水になった。
「魔法はイメージすることが1番大事なんだ。さっきの丸や四角は簡単に作りやすいけど複雑になるとそれは難しくなる。」
「な、なるほど。」
「まずは『ウォーター』で複雑な形を作る。これから始めてくれ。でき次第つぎの形を教える。」
「わかりました。やってみます。『ウォーター』」
またしてもウニョウニョした形だ。
「あれで大丈夫なの?」
「他にも効率的な方法とか無いの?」
「あるかないかでいえばある。でも今は効率よりも先に必要なことがある。」
「必要なこと?」
「まあそれは今は言わないでおく。それよりスーはミルを捕まえれるように考えろよ。」
必要なこと、それはエリー自身の魔力量だ。単純な話、紙に想像だけで星型を描くように訓練すればイメージ力は上がるがそれはイメージ力だけしか伸びない。
何回も失敗すればそれだけ魔法の回数は増えていき魔力量も増えていく。後はエリーの精神力の勝負になってくる。
プニョン♪
息を切らすスーとぴょんぴょんと嬉しそうに上下に跳ねるミル。2人の攻防は接戦とかではなく一方的だった。
ミルは最後の最後まで余裕な表情で避けていった。かたやスーは必死に腕を動かして捉えようとするが全てをかわされてしまった。
「本当に捕まえれるかなー。」
「焦らない程度に頑張れ。練習中じゃないときはとにかくシミュレーションしろ。どうやったらミルは動くのかとかある程度考えないといけないぞ。」
「むー、わかった。絶対捕まえるからね!」
プニョンプニョン!
ミルはそう言ったスーに対して『いつでも胸貸すよ!』と負けるわけがないという動きで跳ねていた。この様子だとどれぐらいかかるか。
「でもこれで本当に強くなれるの?」
「ん?信じられないか?」
「いやそりゃ疑ってるわけではないけど剣術学ぶのに剣を握ってないっていうかー、」
「なるほど、な。よっと!」
ヒュン!
「ひっ!?」
俺は油断しているスーに急激にギアを入れて高速で顔の先に手刀を入れる。スーはあまりに驚いたのか尻餅をついてしまった。
「とまあ、このようにいきなり俺との練習じゃあ練習にもならないからな。」
「くそー!」
くそーと悔しそうに言ってるが顔をそう言ってない。少しばかりにやけている。
「それで私の魔法の練習はどうすればいいでしょうか?」
「ああ、それなら……」
「おい、今から入寮希望者に寮についての説明をする。ついて来なさい。」
質問したエリーに返答しようとしたら先生が大声で教室にいる生徒たちに呼びかけをした。
「エリーたちは入寮希望者?」
「ええ、そうです。」
「あたしもそうだよ。」
「ちょうどいいや、寮の部屋で魔法の説明をするな。」
エリーは納得したのか素直に頷く。そして先生の後ろをついていき学園寮に向かう。
寮についての説明はこんな感じだ。
・魔法を使う際には部屋を壊さない程度にもしくは結界魔法を張った上で使用しなさい。
・0時までには必ず自分の部屋にいること。
・備品に関しての制限は特にない。
他にもいろいろあるが概ねこれが重要そうだ。そういえばその時に従魔希望を出したら「え、スライム?」という表情をされてしまった。ミルがいなかったら最後の問題解けてなかったんだぞ!
まあそんなことは置いとこう。部屋にはちゃんと荷物もあり、花壇も肥料も入ってた。食事は食堂で食べるか部屋で作るだそうだ。
「一旦ベッドにかけててくれ。少し部屋の整理をする。」
説明が終わり、エリーとスーを部屋に招いたが少々レイアウトを変えたいため教えるのを後にする。
プニョン♪
「お、ありがとうミル。」
「ねえエリー、スライムってあんなに便利だったっけ?というか人の言葉に反応しているところからすごいんだけど。」
「そうね、わからないけど可愛らしいじゃない。」
ミルは実家にいた頃からかなり雑用的なこともやってくれる。基本のんびりしていて日向ぼっこが大好きだが仕事に関してはキッチリやる。
花壇は日が差し込む場所に置いた。それと日差しが当たらない場所にも鉢を置いておく。日陰を好む薬草があった時用のものだ。
「こんなものかな?」
部屋を見渡すとかなり広々とした空間。俺がそもそもシンプルが好きなのもあるが必要最低限のものがあれば十分。
「いや、本の量えげつないでしょ。」
「これは流石にすごいのレベルを超えて来てますね。」
あ、本棚のことを忘れていた。実家にあったものを8割ぐらい持って来たけど、何百あるんだ?
「それじゃあ教える前に水魔法を一旦見せてくれないか?」
「わかりました。『ウォーター』」
エリーが胸元に手を突き出し唱えると手の先からボール状の水が出て来た。
「この時何をイメージしていた?」
「イメージ?特に何もしてません。」
「OKだ。それでいい。そっちの方がやりやすい。」
丸をまず思い浮かべてくれて助かった。丸からならほかの形にイメージしやすいからな。最初から変な形だと一旦矯正しないといけなかったし楽だな。
「ええとまずは四角形をイメージしてさっきと同じ量の水を作ってくれ。」
「わかりました。『ウォーター』」
エリーの前に四角形の水が出てきた。
「それじゃあ同じ量で今度は星型の水を作ってくれ。」
「わかりました。『ウォーター』……あれ?」
エリーはさっき同様に唱えて水を出すが、星とはいえずなんかウニョウニョしている水になった。
「魔法はイメージすることが1番大事なんだ。さっきの丸や四角は簡単に作りやすいけど複雑になるとそれは難しくなる。」
「な、なるほど。」
「まずは『ウォーター』で複雑な形を作る。これから始めてくれ。でき次第つぎの形を教える。」
「わかりました。やってみます。『ウォーター』」
またしてもウニョウニョした形だ。
「あれで大丈夫なの?」
「他にも効率的な方法とか無いの?」
「あるかないかでいえばある。でも今は効率よりも先に必要なことがある。」
「必要なこと?」
「まあそれは今は言わないでおく。それよりスーはミルを捕まえれるように考えろよ。」
必要なこと、それはエリー自身の魔力量だ。単純な話、紙に想像だけで星型を描くように訓練すればイメージ力は上がるがそれはイメージ力だけしか伸びない。
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