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第五章 空は近く、望は遠く
ぶれすと!
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翌日、オレが目を覚ますと、ノアはいなかった。
早起きしたようだ。遠くのほうで、ノアの楽しげな声が聞こえる。
少し体が痛い。椅子で寝るのは久しぶりだったせいか、社畜としてのスキルがなまっているようだ。
今後のことを考えて、たまには椅子で寝るようにしたほうがいいかもしれない。
「おはよう!」
昨日の事が嘘だったかのように、元気になったノアが挨拶してくれる。
「おはよう」
オレもいつものように挨拶を返した。
平穏が戻ってきたことを感じる。ずっと、平和だといいな。
「ハロルドを探すためのブレストするって、ノアちゃんから聞きました。いい考えだと思います」
朝食食べて片付けが終わる頃、カガミが板と炭を手に聞いてきた。
「ブレストってなんでちか?」
「ブレーンストーミングの略で、アイデアを皆で出し合うんだ。それを書き出していって、使えそうなものを試してみるという会議のやり方だな」
「ハロルドをどうやって見つけるか、皆で思いついたことを言うの。簡単なことでも、いいと思います」
「それでカガミお姉ちゃんが、お勉強セットもってきたんだね」
チッキーの疑問に、サムソンとカガミが答える。
カガミは話しながら支度も進めていた。支度といっても、板をテーブル中央において、皆の席にコップを置くだけだ。
「ボク、やったことないっス」
「リーダは、よくやってたの?」
「ないよ。オレ達はいつもブレストによる被害を受ける側だっただろ」
そう。元請けや上流の皆さんがブレストで出した思いつきを、強引に実装する立場だった。
我々にとってはブレストなんて敵に近い存在だ。
でも、今は違う。
アイデアも実践も、両方を自分達で行うのだ。
「難しくないのよ。ハロルドをどうやって探すかを考えて、皆に伝えるだけ。じゃ、始めましょう」
カガミが、パンパンと手を叩き、始まりを宣言する。
「あたちもお話していいでちか?」
「もちろん。チッキーもじゃんじゃん言うといいよ。私も少しだけ飲みながら頑張るからさ」
おずおずと質問するチッキーに対して、ミズキが軽い調子で応じている。加えて、飲酒しながら参加するという、社会人にあるまじき発言を付け加えていた。
「あの、ハロルドはお肉が好きでちた。お庭に肉を置いていたらくるかも」
「お肉ぅ? うーん、鶏がつつくんじゃぁないかしらぁ」
チッキーが勇気を出していった言葉に、ロンロがケチをつける。
「ブッブー! ロンロ減点! 発言にケチを付けてはいけないのです」
「そうなのぉ?」
「そうだな。ブレストは他人の発言を非難しないもんだ。ロンロ氏も、それ念頭に、アイデアがあったらいってくれ」
とはいうものの、なかなかアイデアって湧かないものだな。
ブレストやろうと言い出したオレが何も言わないのは恥ずかしいし、素敵なアイデアを出したいものだ。
「俺は、魔法を使って対処したい。捜し物の魔法を、お城の人が使ってたんだろ?」
「そうだな。ヘイネルさんは捜し物の魔法を応用したと言っていた」
魔法か。今いる世界は、魔法が存在するのだから、ちゃちゃっと魔法で解決できるかもしれない。
「子犬の捜索なら、定番は張り紙だと思うんです。思いません?」
「迷い犬探してますっていう電柱とかに貼るアレっスね」
あった。あった。
壁とか電柱に貼ってある紙。あれって効果あるのかな。
「知り合いに、声を掛けておく方法もあるっスね」
知り合いか……知っている人といえば、バルカン、ヘイネルさん、あとはレーハフさんか。
「すぐに連絡とれるのは、トーク鳥で連絡できるレーハフさんだけだぞ」
「それでは、おいら達が親方に話します。ご飯食べたら親方のところに戻るから、その時に相談してみます」
「ギルドにぃ、頼むのはどうかしらぁ」
ギルドへの依頼か、その手もあるな。
召喚で呼んだわけだから、ギリアの町にいないかもしれない。しかし、ギルドへの依頼で、よその町にも依頼ができるのであれば、一気に捜索範囲を広げることができる。
良い方法かもしれない。
ん? 召喚?
「探すって意味とは離れるが、もう一回、召喚魔法で呼び出す方法もあるな」
考えてみれば、召喚魔法で呼び出せたのだから、同じ事ができるかもしれない。
「特定の何かを呼び出すには触媒が必要みたいだが、出来ないことはないな」
「この犬見つけたら、連絡くださいって首輪にでも付けておけば連絡あるかもしれないっスね」
サムソンとプレインが同調してくれる。自分のアイデアが認められたようで嬉しい。
「あのね。ハロルドって、みたことない犬だったの。だから、同じ犬を探して、ハロルドが何処にいるか教えて貰うの」
「そうね。確かに、ハロルドって雑種とは思えないです。思いません?」
確かに、立派な外見だった。
「どこかの地域に生息している有名な犬種かもしれないと思うんです。思いません?」
なるほど犬種と生息地か。そういった知識をどうやって調べるかだな。
思いつくのは黄昏の者スライフに聞くってのだが、あいつ知ってるかな。
「結構、アイデアでたっスね」
プレインが、カガミが皆のアイデアを書き留めた板をみて呟く。
入り口に肉を置く。
捜し物の魔法。
張り紙。
知り合いに聞く。
ギルドへの依頼。
召喚魔法で呼び出して、連絡先を持たせる。
生息地を調べる。
1、2……7。
「全部で7つだな。出来そうなものから順次進めよう」
「そうだな。俺は魔法で解決しようと思う。目録をあたってくる」
「おいらたち、親方にお願いします」
「私、ピッキー達を送ってくるね」
「お肉用意するでち」
「ハロルドは焼いたお肉が好きなの」
「オレはギルドに依頼をしてくる」
「ボクも、いつもお世話になってる人にハロルドのこと聞いてみるっス」
皆が思い思いに、それぞれが出来ることを申告して、進めることになった。
プレインは、マヨネーズ作りの指導などで、ギリアの町にそれなりに知人がいるそうだ。
ミズキも、飲み仲間に連絡を取るとのこと。
オレも、ギルドへの依頼に、町へと繰り出すことにした。
運が良ければバルカンに会うこともできるだろう。善は急げだ。
早起きしたようだ。遠くのほうで、ノアの楽しげな声が聞こえる。
少し体が痛い。椅子で寝るのは久しぶりだったせいか、社畜としてのスキルがなまっているようだ。
今後のことを考えて、たまには椅子で寝るようにしたほうがいいかもしれない。
「おはよう!」
昨日の事が嘘だったかのように、元気になったノアが挨拶してくれる。
「おはよう」
オレもいつものように挨拶を返した。
平穏が戻ってきたことを感じる。ずっと、平和だといいな。
「ハロルドを探すためのブレストするって、ノアちゃんから聞きました。いい考えだと思います」
朝食食べて片付けが終わる頃、カガミが板と炭を手に聞いてきた。
「ブレストってなんでちか?」
「ブレーンストーミングの略で、アイデアを皆で出し合うんだ。それを書き出していって、使えそうなものを試してみるという会議のやり方だな」
「ハロルドをどうやって見つけるか、皆で思いついたことを言うの。簡単なことでも、いいと思います」
「それでカガミお姉ちゃんが、お勉強セットもってきたんだね」
チッキーの疑問に、サムソンとカガミが答える。
カガミは話しながら支度も進めていた。支度といっても、板をテーブル中央において、皆の席にコップを置くだけだ。
「ボク、やったことないっス」
「リーダは、よくやってたの?」
「ないよ。オレ達はいつもブレストによる被害を受ける側だっただろ」
そう。元請けや上流の皆さんがブレストで出した思いつきを、強引に実装する立場だった。
我々にとってはブレストなんて敵に近い存在だ。
でも、今は違う。
アイデアも実践も、両方を自分達で行うのだ。
「難しくないのよ。ハロルドをどうやって探すかを考えて、皆に伝えるだけ。じゃ、始めましょう」
カガミが、パンパンと手を叩き、始まりを宣言する。
「あたちもお話していいでちか?」
「もちろん。チッキーもじゃんじゃん言うといいよ。私も少しだけ飲みながら頑張るからさ」
おずおずと質問するチッキーに対して、ミズキが軽い調子で応じている。加えて、飲酒しながら参加するという、社会人にあるまじき発言を付け加えていた。
「あの、ハロルドはお肉が好きでちた。お庭に肉を置いていたらくるかも」
「お肉ぅ? うーん、鶏がつつくんじゃぁないかしらぁ」
チッキーが勇気を出していった言葉に、ロンロがケチをつける。
「ブッブー! ロンロ減点! 発言にケチを付けてはいけないのです」
「そうなのぉ?」
「そうだな。ブレストは他人の発言を非難しないもんだ。ロンロ氏も、それ念頭に、アイデアがあったらいってくれ」
とはいうものの、なかなかアイデアって湧かないものだな。
ブレストやろうと言い出したオレが何も言わないのは恥ずかしいし、素敵なアイデアを出したいものだ。
「俺は、魔法を使って対処したい。捜し物の魔法を、お城の人が使ってたんだろ?」
「そうだな。ヘイネルさんは捜し物の魔法を応用したと言っていた」
魔法か。今いる世界は、魔法が存在するのだから、ちゃちゃっと魔法で解決できるかもしれない。
「子犬の捜索なら、定番は張り紙だと思うんです。思いません?」
「迷い犬探してますっていう電柱とかに貼るアレっスね」
あった。あった。
壁とか電柱に貼ってある紙。あれって効果あるのかな。
「知り合いに、声を掛けておく方法もあるっスね」
知り合いか……知っている人といえば、バルカン、ヘイネルさん、あとはレーハフさんか。
「すぐに連絡とれるのは、トーク鳥で連絡できるレーハフさんだけだぞ」
「それでは、おいら達が親方に話します。ご飯食べたら親方のところに戻るから、その時に相談してみます」
「ギルドにぃ、頼むのはどうかしらぁ」
ギルドへの依頼か、その手もあるな。
召喚で呼んだわけだから、ギリアの町にいないかもしれない。しかし、ギルドへの依頼で、よその町にも依頼ができるのであれば、一気に捜索範囲を広げることができる。
良い方法かもしれない。
ん? 召喚?
「探すって意味とは離れるが、もう一回、召喚魔法で呼び出す方法もあるな」
考えてみれば、召喚魔法で呼び出せたのだから、同じ事ができるかもしれない。
「特定の何かを呼び出すには触媒が必要みたいだが、出来ないことはないな」
「この犬見つけたら、連絡くださいって首輪にでも付けておけば連絡あるかもしれないっスね」
サムソンとプレインが同調してくれる。自分のアイデアが認められたようで嬉しい。
「あのね。ハロルドって、みたことない犬だったの。だから、同じ犬を探して、ハロルドが何処にいるか教えて貰うの」
「そうね。確かに、ハロルドって雑種とは思えないです。思いません?」
確かに、立派な外見だった。
「どこかの地域に生息している有名な犬種かもしれないと思うんです。思いません?」
なるほど犬種と生息地か。そういった知識をどうやって調べるかだな。
思いつくのは黄昏の者スライフに聞くってのだが、あいつ知ってるかな。
「結構、アイデアでたっスね」
プレインが、カガミが皆のアイデアを書き留めた板をみて呟く。
入り口に肉を置く。
捜し物の魔法。
張り紙。
知り合いに聞く。
ギルドへの依頼。
召喚魔法で呼び出して、連絡先を持たせる。
生息地を調べる。
1、2……7。
「全部で7つだな。出来そうなものから順次進めよう」
「そうだな。俺は魔法で解決しようと思う。目録をあたってくる」
「おいらたち、親方にお願いします」
「私、ピッキー達を送ってくるね」
「お肉用意するでち」
「ハロルドは焼いたお肉が好きなの」
「オレはギルドに依頼をしてくる」
「ボクも、いつもお世話になってる人にハロルドのこと聞いてみるっス」
皆が思い思いに、それぞれが出来ることを申告して、進めることになった。
プレインは、マヨネーズ作りの指導などで、ギリアの町にそれなりに知人がいるそうだ。
ミズキも、飲み仲間に連絡を取るとのこと。
オレも、ギルドへの依頼に、町へと繰り出すことにした。
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