98 / 830
第六章 進化する豪邸
てんのちから
しおりを挟む
「ハクション!」
しくじった。修行を始めるならもう少し早い時期がよかった。
寒くなってから水をかぶるのは、体にこたえる。
おかげさまで、寝た後もしばらくは影収納の魔法が起動したままになるようになった。
この調子で続けていきたい。
ここ数日、夜中は影収納の魔法、日中は飛翔魔法と、魔法の修行三昧だ。
飛翔魔法は、中級と上級を試した。
試してわかったのは、等級があがるにつれて安全装置的な魔法の効果が外されていること。
結局のところ初級の魔法陣が一番複雑だったのは、数々の安全装置的な効果が付随していたのが理由だった。
「今日も飛翔魔法を練習するの?」
「そうだよ」
「あのね。危ないよ」
ノアはオレが飛翔魔法を練習することに対して心配している。
それもこれも、オレが飛翔魔法の上級を練習しているためだ。
上級は、魔法の効果が切れたら一気に落下する。加えて、動きに慣性がついてしまい止まるにもテクニックがいる。さらにはスピードも出る。
しくじれば地面や壁に激突して危ないのだ。防御の魔法で身を守るという本にあった注意書きは正しかったというわけだ。
「ほっときなって、リーダはカガミに負けてひがんでんだからさ。それに、危なくなったらミズキお姉ちゃんが助けるから、おまかせておきなさーい、ノアノア」
「うん……ミズキお姉ちゃんが一緒なら大丈夫だね」
心配するノアをみて今日は止めようと思ったりしたが、やっぱり練習することにする。
ピュンピュンとかっこ良く飛ぶところを皆に見せつけてやるのだ。
プレインとカガミは上級を一度使ったきり怖いと言って止めてしまった。
サムソンは上級を使う気がないそうだ。
最終的に、ここ数日はオレとミズキだけが飛翔魔法の上級を練習している。
「ちょっと集まってくれ」
オレが傷だらけになりながら、ミズキは余裕な感じで、上級の練習をしていると、サムソンの声が聞こえた。
「どうしたんだ?」
「極光魔法陣だ」
広間で待っていたサムソンに何事かと声をかけると、意味のわからない返答があった。
キョッコウ?
「看破の魔法についての本に出てきた名前だと思います」
「そうだ。空に浮かんでいる魔法陣のことだ」
「夜空に浮かぶ星の正体ってヤツっスね」
思い出した。この世界の夜空に浮かんでいるのは魔法陣で、元の世界の星とは違うものだった。世界の法律なんかを魔法で実装するために使われている魔法陣なんだっけかな。
「そうだ。その極光魔法陣の一つに、温泉を温める方法に使えそうなのがあるんだ」
「暖炉石は駄目だったのか?」
オレの質問をうけて、サムソンはテーブルの上に拳二つ分ほどの石を置く。
石には魔法陣が描き込まれている。
「結論からいうと駄目だった。一応作ってテストもしてみた」
「作れたんスね」
「暖炉石なんだが、ため込んだ魔力が無くなると壊れてしまうんだ」
使い捨てか。毎日取り替えればなんとかなりそうにも思える。
「電池みたいに変えちゃだめっスか?」
「込める魔力が膨大になる。毎日取り替えるとしたら重労働になるぞ」
「現実的でないということでしょうか?」
カガミの質問に、サムソンが頷く。
「そこで、魔力を節約して、なおかつ温泉を温める方法を探してみた」
「それが極光魔法陣ってこと?」
「そうだ。この屋敷に、氷室があるだろ?」
確かに、屋敷には冷凍庫のように凍えるような寒さの部屋がある。
今は氷を作るのに利用するくらいだ。
「あるけど、関係あるのか?」
「あの氷室はあまり魔力を使っていないんだ。それで、理由を調べてみたんだが、極光魔法陣の一つに環境転移というのがあった」
「環境転移?」
「Aという場所の環境と、Bという場所の環境を入れ替える魔法だ。つまり氷室は、何処かにある極寒の環境をもってきているわけだ」
環境……気温や大気の性質などを入れ替えるのか。
「凄い魔法だと思います。それなのに魔力を使わないのは変だと思います。思いません?」
「カガミ氏が言いたいこともわかる。だが看破の魔法だって、すごい効果だけど、魔力を使わないだろ? 極光魔法陣は魔力をあまり使用しないようだぞ」
魔力をつかわず凄い効果が得られる……オレ達が普段使う魔法とは少し違うな。なぜなのだろうか。
「まーいいじゃん。魔力つかわず温泉温めることができるんでしょ」
そうだな。とりあえず温泉が温められればいいか。
「で、ボク達は何を手伝えばいいんスか?」
「まず入れ替える場所を見つけて欲しい。この世界にある灼熱の場所だ」
「ピンポイントで?」
だいたいの場所がわかっても、特定できなきゃいけない気がする。
この辺りだって、森の中と原っぱでは温度が違う。
「いや、地名がわかれば屋敷の力で詳細を調べることができる」
「そんな機能があるんですね。よくサムソンは調べられたと思います」
「ジラランドルに聞いた。氷室のこともな。ミズキ氏に召喚してもらったんだ」
あの唯一まともなブラウニーか。元管理人だけあって知識が豊富だ。
「あのね、私も手伝えることある?」
「そうだな……ノアちゃんには、リーダと一緒に温泉のお湯を沢山くんできて欲しい」
「なんでまた?」
「少ない魔力で動くといっても、魔力は必要なんだ。それで温泉のお湯に含まれている魔力を使いたい。実験用にも現地のお湯が必要なんだ」
「了解」
「リーダ。一緒にがんばろうね」
ノアが無邪気にオレの手をとりブンブンと振りながら声をあげた。
笑顔で頷いて了承する。
そんなわけで次にやることが決まった。
温泉を温めるための魔導具作りだ。
しくじった。修行を始めるならもう少し早い時期がよかった。
寒くなってから水をかぶるのは、体にこたえる。
おかげさまで、寝た後もしばらくは影収納の魔法が起動したままになるようになった。
この調子で続けていきたい。
ここ数日、夜中は影収納の魔法、日中は飛翔魔法と、魔法の修行三昧だ。
飛翔魔法は、中級と上級を試した。
試してわかったのは、等級があがるにつれて安全装置的な魔法の効果が外されていること。
結局のところ初級の魔法陣が一番複雑だったのは、数々の安全装置的な効果が付随していたのが理由だった。
「今日も飛翔魔法を練習するの?」
「そうだよ」
「あのね。危ないよ」
ノアはオレが飛翔魔法を練習することに対して心配している。
それもこれも、オレが飛翔魔法の上級を練習しているためだ。
上級は、魔法の効果が切れたら一気に落下する。加えて、動きに慣性がついてしまい止まるにもテクニックがいる。さらにはスピードも出る。
しくじれば地面や壁に激突して危ないのだ。防御の魔法で身を守るという本にあった注意書きは正しかったというわけだ。
「ほっときなって、リーダはカガミに負けてひがんでんだからさ。それに、危なくなったらミズキお姉ちゃんが助けるから、おまかせておきなさーい、ノアノア」
「うん……ミズキお姉ちゃんが一緒なら大丈夫だね」
心配するノアをみて今日は止めようと思ったりしたが、やっぱり練習することにする。
ピュンピュンとかっこ良く飛ぶところを皆に見せつけてやるのだ。
プレインとカガミは上級を一度使ったきり怖いと言って止めてしまった。
サムソンは上級を使う気がないそうだ。
最終的に、ここ数日はオレとミズキだけが飛翔魔法の上級を練習している。
「ちょっと集まってくれ」
オレが傷だらけになりながら、ミズキは余裕な感じで、上級の練習をしていると、サムソンの声が聞こえた。
「どうしたんだ?」
「極光魔法陣だ」
広間で待っていたサムソンに何事かと声をかけると、意味のわからない返答があった。
キョッコウ?
「看破の魔法についての本に出てきた名前だと思います」
「そうだ。空に浮かんでいる魔法陣のことだ」
「夜空に浮かぶ星の正体ってヤツっスね」
思い出した。この世界の夜空に浮かんでいるのは魔法陣で、元の世界の星とは違うものだった。世界の法律なんかを魔法で実装するために使われている魔法陣なんだっけかな。
「そうだ。その極光魔法陣の一つに、温泉を温める方法に使えそうなのがあるんだ」
「暖炉石は駄目だったのか?」
オレの質問をうけて、サムソンはテーブルの上に拳二つ分ほどの石を置く。
石には魔法陣が描き込まれている。
「結論からいうと駄目だった。一応作ってテストもしてみた」
「作れたんスね」
「暖炉石なんだが、ため込んだ魔力が無くなると壊れてしまうんだ」
使い捨てか。毎日取り替えればなんとかなりそうにも思える。
「電池みたいに変えちゃだめっスか?」
「込める魔力が膨大になる。毎日取り替えるとしたら重労働になるぞ」
「現実的でないということでしょうか?」
カガミの質問に、サムソンが頷く。
「そこで、魔力を節約して、なおかつ温泉を温める方法を探してみた」
「それが極光魔法陣ってこと?」
「そうだ。この屋敷に、氷室があるだろ?」
確かに、屋敷には冷凍庫のように凍えるような寒さの部屋がある。
今は氷を作るのに利用するくらいだ。
「あるけど、関係あるのか?」
「あの氷室はあまり魔力を使っていないんだ。それで、理由を調べてみたんだが、極光魔法陣の一つに環境転移というのがあった」
「環境転移?」
「Aという場所の環境と、Bという場所の環境を入れ替える魔法だ。つまり氷室は、何処かにある極寒の環境をもってきているわけだ」
環境……気温や大気の性質などを入れ替えるのか。
「凄い魔法だと思います。それなのに魔力を使わないのは変だと思います。思いません?」
「カガミ氏が言いたいこともわかる。だが看破の魔法だって、すごい効果だけど、魔力を使わないだろ? 極光魔法陣は魔力をあまり使用しないようだぞ」
魔力をつかわず凄い効果が得られる……オレ達が普段使う魔法とは少し違うな。なぜなのだろうか。
「まーいいじゃん。魔力つかわず温泉温めることができるんでしょ」
そうだな。とりあえず温泉が温められればいいか。
「で、ボク達は何を手伝えばいいんスか?」
「まず入れ替える場所を見つけて欲しい。この世界にある灼熱の場所だ」
「ピンポイントで?」
だいたいの場所がわかっても、特定できなきゃいけない気がする。
この辺りだって、森の中と原っぱでは温度が違う。
「いや、地名がわかれば屋敷の力で詳細を調べることができる」
「そんな機能があるんですね。よくサムソンは調べられたと思います」
「ジラランドルに聞いた。氷室のこともな。ミズキ氏に召喚してもらったんだ」
あの唯一まともなブラウニーか。元管理人だけあって知識が豊富だ。
「あのね、私も手伝えることある?」
「そうだな……ノアちゃんには、リーダと一緒に温泉のお湯を沢山くんできて欲しい」
「なんでまた?」
「少ない魔力で動くといっても、魔力は必要なんだ。それで温泉のお湯に含まれている魔力を使いたい。実験用にも現地のお湯が必要なんだ」
「了解」
「リーダ。一緒にがんばろうね」
ノアが無邪気にオレの手をとりブンブンと振りながら声をあげた。
笑顔で頷いて了承する。
そんなわけで次にやることが決まった。
温泉を温めるための魔導具作りだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい
マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」
新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。
1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。
2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。
そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー…
別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる