召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第六章 進化する豪邸

てんのちから

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「ハクション!」

 しくじった。修行を始めるならもう少し早い時期がよかった。
 寒くなってから水をかぶるのは、体にこたえる。
 おかげさまで、寝た後もしばらくは影収納の魔法が起動したままになるようになった。
 この調子で続けていきたい。
 ここ数日、夜中は影収納の魔法、日中は飛翔魔法と、魔法の修行三昧だ。
 飛翔魔法は、中級と上級を試した。
 試してわかったのは、等級があがるにつれて安全装置的な魔法の効果が外されていること。
 結局のところ初級の魔法陣が一番複雑だったのは、数々の安全装置的な効果が付随していたのが理由だった。

「今日も飛翔魔法を練習するの?」
「そうだよ」
「あのね。危ないよ」

 ノアはオレが飛翔魔法を練習することに対して心配している。
 それもこれも、オレが飛翔魔法の上級を練習しているためだ。
 上級は、魔法の効果が切れたら一気に落下する。加えて、動きに慣性がついてしまい止まるにもテクニックがいる。さらにはスピードも出る。
 しくじれば地面や壁に激突して危ないのだ。防御の魔法で身を守るという本にあった注意書きは正しかったというわけだ。

「ほっときなって、リーダはカガミに負けてひがんでんだからさ。それに、危なくなったらミズキお姉ちゃんが助けるから、おまかせておきなさーい、ノアノア」
「うん……ミズキお姉ちゃんが一緒なら大丈夫だね」

 心配するノアをみて今日は止めようと思ったりしたが、やっぱり練習することにする。
 ピュンピュンとかっこ良く飛ぶところを皆に見せつけてやるのだ。
 プレインとカガミは上級を一度使ったきり怖いと言って止めてしまった。
 サムソンは上級を使う気がないそうだ。
 最終的に、ここ数日はオレとミズキだけが飛翔魔法の上級を練習している。

「ちょっと集まってくれ」

 オレが傷だらけになりながら、ミズキは余裕な感じで、上級の練習をしていると、サムソンの声が聞こえた。

「どうしたんだ?」
「極光魔法陣だ」

 広間で待っていたサムソンに何事かと声をかけると、意味のわからない返答があった。
 キョッコウ?

「看破の魔法についての本に出てきた名前だと思います」
「そうだ。空に浮かんでいる魔法陣のことだ」
「夜空に浮かぶ星の正体ってヤツっスね」

 思い出した。この世界の夜空に浮かんでいるのは魔法陣で、元の世界の星とは違うものだった。世界の法律なんかを魔法で実装するために使われている魔法陣なんだっけかな。

「そうだ。その極光魔法陣の一つに、温泉を温める方法に使えそうなのがあるんだ」
「暖炉石は駄目だったのか?」

 オレの質問をうけて、サムソンはテーブルの上に拳二つ分ほどの石を置く。
 石には魔法陣が描き込まれている。

「結論からいうと駄目だった。一応作ってテストもしてみた」
「作れたんスね」
「暖炉石なんだが、ため込んだ魔力が無くなると壊れてしまうんだ」

 使い捨てか。毎日取り替えればなんとかなりそうにも思える。

「電池みたいに変えちゃだめっスか?」
「込める魔力が膨大になる。毎日取り替えるとしたら重労働になるぞ」
「現実的でないということでしょうか?」

 カガミの質問に、サムソンが頷く。

「そこで、魔力を節約して、なおかつ温泉を温める方法を探してみた」
「それが極光魔法陣ってこと?」
「そうだ。この屋敷に、氷室があるだろ?」

 確かに、屋敷には冷凍庫のように凍えるような寒さの部屋がある。
 今は氷を作るのに利用するくらいだ。

「あるけど、関係あるのか?」
「あの氷室はあまり魔力を使っていないんだ。それで、理由を調べてみたんだが、極光魔法陣の一つに環境転移というのがあった」
「環境転移?」
「Aという場所の環境と、Bという場所の環境を入れ替える魔法だ。つまり氷室は、何処かにある極寒の環境をもってきているわけだ」

 環境……気温や大気の性質などを入れ替えるのか。

「凄い魔法だと思います。それなのに魔力を使わないのは変だと思います。思いません?」
「カガミ氏が言いたいこともわかる。だが看破の魔法だって、すごい効果だけど、魔力を使わないだろ? 極光魔法陣は魔力をあまり使用しないようだぞ」

 魔力をつかわず凄い効果が得られる……オレ達が普段使う魔法とは少し違うな。なぜなのだろうか。

「まーいいじゃん。魔力つかわず温泉温めることができるんでしょ」

 そうだな。とりあえず温泉が温められればいいか。

「で、ボク達は何を手伝えばいいんスか?」
「まず入れ替える場所を見つけて欲しい。この世界にある灼熱の場所だ」
「ピンポイントで?」

 だいたいの場所がわかっても、特定できなきゃいけない気がする。
 この辺りだって、森の中と原っぱでは温度が違う。

「いや、地名がわかれば屋敷の力で詳細を調べることができる」
「そんな機能があるんですね。よくサムソンは調べられたと思います」
「ジラランドルに聞いた。氷室のこともな。ミズキ氏に召喚してもらったんだ」
 あの唯一まともなブラウニーか。元管理人だけあって知識が豊富だ。

「あのね、私も手伝えることある?」
「そうだな……ノアちゃんには、リーダと一緒に温泉のお湯を沢山くんできて欲しい」
「なんでまた?」
「少ない魔力で動くといっても、魔力は必要なんだ。それで温泉のお湯に含まれている魔力を使いたい。実験用にも現地のお湯が必要なんだ」
「了解」
「リーダ。一緒にがんばろうね」

 ノアが無邪気にオレの手をとりブンブンと振りながら声をあげた。
 笑顔で頷いて了承する。
 そんなわけで次にやることが決まった。
 温泉を温めるための魔導具作りだ。
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