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第六章 進化する豪邸
おもいつき
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カッポカッポと軽快な足音を立てて馬が進む。
今日は日帰りで温泉だ。
つかるわけでなく、お湯をくみに行く。
一緒に行くのはノアとロンロ。
ロンロは飛べるので、オレとノアがロバに乗る。歩かなくていいのは助かる。
「飛翔魔法をマスターすれば、ひとっ飛びなんだがなぁ……」
「あのね。あぶないの」
空を見上げてぼやくオレに、ノアが振り向いてオレを見上げつつ答える。
「ノアは心配性だなぁ」
「もぉう、あんなに毎日傷だらけになるんだものぉ。しょうがないわぁ」
確かに傷だらけにはなっているが、大分上達していると思う。
中級では飛距離が足りず温泉までたどり着けなかった。飛翔魔法は時間制限がある。カガミでさえ時間が足りず届かなかったのだ。温泉までひとっ飛びするには、上級を使いこなすしかない。こんな入り組んだ道を温泉に行くたびに進みたくはないのだ。頑張るしか無い。
「温泉のお湯は簡単にくめるとして、問題は場所だなぁ」
「ばしょ……でしたか」
「環境転移って魔法で入れ替える場所だよ。すごく熱い場所と入れ替えなきゃいけないんだ」
「暑い場所ねぇ、砂漠ぅ?」
「サムソンが言うには、このくらいの壺……にお湯をいれて、すぐに熱くなる位の場所って言ってたから砂漠じゃ駄目なんだろうな」
手の動きで、自分の上半身程度の大きな描き壺の大きさを伝える。
サムソンの案では、湧き出たお湯を壺にいれて、零れたお湯を温泉に入れるらしい。
だから一瞬でお湯が熱くなるような場所が理想ということになる。
「砂漠よりも暑い場所ぉ?」
「あのね、暖炉の中は、凄く熱いよ」
「暖炉はサラマンダーがいないと冷たいからなぁ」
「あ……そうだね。冷たいね」
ノアも一緒になって考えてくれる。暖炉か。サラマンダーが、出張してくれればいいのだが、あいつは屋敷の外へは出ないからな。
「火山かなぁ」
「カザン……でしたか」
「火山はねぇ、火を噴く山なのよぉ」
「火を吹くの? 強そうだね」
「そのくらい熱くないと駄目ってことだな。ロンロはどこに火山があるのか知っているのか?」
「モンクスメリ火山ってのが有名だけどぉ、どこにあるかまでは知らないわぁ」
名前だけか。それでも名前だけでも手がかりにはなるだろう。
もしかしたらオレ達が屋敷に帰る頃には、場所が見つかっているかもしれない。
「まぁ、皆に任せるかな」
「そうねぇ、もうすぐ温泉だものねぇ」
のんびりとしたロンロの声を聞いてふと見上げると、温泉のすぐ近くまで来たことに気がついた。小回りがきく上に、指示をしなくても木々を器用によけるロバだと、こんなに早いのかと驚く。
「オレの徒歩より早いな」
「ロバさんすごいね」
そんなことを言いながらジグザグに山を登り、温泉に辿り着く。
用意していたカラの樽に、温泉のお湯をくみ取れば作業終了。
念力の魔法で樽を動かし、ザバっと一気にくみ取る。
お湯がたっぷり詰まった樽は、小さめといっても相当な重さだ。魔法がなければ、とても一人では作業できない。魔法様々だ。
「これくらいでいいかな」
目の前にずらっと並んだ5つの樽をみて、達成感を抱く。
「実験用には十分じゃないのぉ」
「そういえば、この温泉のお湯って魔力をもってるんだよな」
「持ってるわぁ。温泉のお湯に限らず、世のあらゆるものは魔力を持っているのよぉ」
「なんでも?」
「その物の価値にふさわしい魔力がないと存在できないものぉ」
「物から魔力がなくなったら?」
「消えたり、朽ちたり、塵になったりねぇ……汚れ無き床がそうでしょぉ、アレ、床に落ちているゴミの魔力を吸い取ってぇ、消してしまうでしょぉ」
汚れ無き床……あの屋敷がもつ権能の一つだ。
床が綺麗になるというジラランドルの説明に、深く考えず使ったことがある。
床に置いていた大事な物まで消えてしまって阿鼻叫喚の自体になったので、オレは2度と使う気にはなれない。
「温泉のお湯も、魔力吸われたら無くなるんじゃないのか?」
「そこまで吸い取らないつもりでしょぉ、そのための実験じゃないかしらぁ」
そうか。だからこそ、あまり魔力を使わない方法として採用したわけか。
ロンロと雑談しながらも、自分の影にお湯入りの樽を収納していく。
全部収納し終わったら、最後に周りの風景を堪能して帰宅の途につく。
「やっぱり、近いよなぁ」
帰り道、ロバに乗って山を下りる時に、視界に写る屋敷をみてなんとなく呟く。
「お家と?」
「そうだね、飛んでしまえばすぐって感じだ」
「あのね、危ないよ」
「練習すれば大丈夫さ。でも、オレだけが飛んでもしょうが無いか……皆で優雅に飛んでいくような方法ないかなぁ」
「ユウガでしたか……」
よくわからない言葉を聞いたときにノアが見せる反応だ。ノアの不思議そうな言葉に、なんとなく笑みがこぼれる。
「優雅というより、楽しく簡単って感じかな。皆で周りの景色とか見ながらのんびりとお空の散歩をするように……」
途中まで話していて、すごいことを思いついた。
元の世界で、乗ったことがある乗り物だ。
アレをこの世界でも作れば良い。
「どうしたの?」
話を途中でとめたオレを、振り向いたノアが心配そうに見る。
「ロープウエイだ!」
「ろーぷうぇいぃ?」
突然大声を上げたノアはキョトンとした顔をし、ロンロはよくわからないと言った調子でオレの言葉を反芻する。
「屋敷で、模型をつくって説明するよ。上手く出来れば、手軽に温泉にいける。しかも危なくない」
自分の閃きを、すぐにでも実行に移したくて、そこからの道は全速力で帰ることなった。
頭の中で具体的なアイデアをどんどんまとめていく。
とりあえず模型をつくって、同僚に、皆に、意見をきくのだ。
今日は日帰りで温泉だ。
つかるわけでなく、お湯をくみに行く。
一緒に行くのはノアとロンロ。
ロンロは飛べるので、オレとノアがロバに乗る。歩かなくていいのは助かる。
「飛翔魔法をマスターすれば、ひとっ飛びなんだがなぁ……」
「あのね。あぶないの」
空を見上げてぼやくオレに、ノアが振り向いてオレを見上げつつ答える。
「ノアは心配性だなぁ」
「もぉう、あんなに毎日傷だらけになるんだものぉ。しょうがないわぁ」
確かに傷だらけにはなっているが、大分上達していると思う。
中級では飛距離が足りず温泉までたどり着けなかった。飛翔魔法は時間制限がある。カガミでさえ時間が足りず届かなかったのだ。温泉までひとっ飛びするには、上級を使いこなすしかない。こんな入り組んだ道を温泉に行くたびに進みたくはないのだ。頑張るしか無い。
「温泉のお湯は簡単にくめるとして、問題は場所だなぁ」
「ばしょ……でしたか」
「環境転移って魔法で入れ替える場所だよ。すごく熱い場所と入れ替えなきゃいけないんだ」
「暑い場所ねぇ、砂漠ぅ?」
「サムソンが言うには、このくらいの壺……にお湯をいれて、すぐに熱くなる位の場所って言ってたから砂漠じゃ駄目なんだろうな」
手の動きで、自分の上半身程度の大きな描き壺の大きさを伝える。
サムソンの案では、湧き出たお湯を壺にいれて、零れたお湯を温泉に入れるらしい。
だから一瞬でお湯が熱くなるような場所が理想ということになる。
「砂漠よりも暑い場所ぉ?」
「あのね、暖炉の中は、凄く熱いよ」
「暖炉はサラマンダーがいないと冷たいからなぁ」
「あ……そうだね。冷たいね」
ノアも一緒になって考えてくれる。暖炉か。サラマンダーが、出張してくれればいいのだが、あいつは屋敷の外へは出ないからな。
「火山かなぁ」
「カザン……でしたか」
「火山はねぇ、火を噴く山なのよぉ」
「火を吹くの? 強そうだね」
「そのくらい熱くないと駄目ってことだな。ロンロはどこに火山があるのか知っているのか?」
「モンクスメリ火山ってのが有名だけどぉ、どこにあるかまでは知らないわぁ」
名前だけか。それでも名前だけでも手がかりにはなるだろう。
もしかしたらオレ達が屋敷に帰る頃には、場所が見つかっているかもしれない。
「まぁ、皆に任せるかな」
「そうねぇ、もうすぐ温泉だものねぇ」
のんびりとしたロンロの声を聞いてふと見上げると、温泉のすぐ近くまで来たことに気がついた。小回りがきく上に、指示をしなくても木々を器用によけるロバだと、こんなに早いのかと驚く。
「オレの徒歩より早いな」
「ロバさんすごいね」
そんなことを言いながらジグザグに山を登り、温泉に辿り着く。
用意していたカラの樽に、温泉のお湯をくみ取れば作業終了。
念力の魔法で樽を動かし、ザバっと一気にくみ取る。
お湯がたっぷり詰まった樽は、小さめといっても相当な重さだ。魔法がなければ、とても一人では作業できない。魔法様々だ。
「これくらいでいいかな」
目の前にずらっと並んだ5つの樽をみて、達成感を抱く。
「実験用には十分じゃないのぉ」
「そういえば、この温泉のお湯って魔力をもってるんだよな」
「持ってるわぁ。温泉のお湯に限らず、世のあらゆるものは魔力を持っているのよぉ」
「なんでも?」
「その物の価値にふさわしい魔力がないと存在できないものぉ」
「物から魔力がなくなったら?」
「消えたり、朽ちたり、塵になったりねぇ……汚れ無き床がそうでしょぉ、アレ、床に落ちているゴミの魔力を吸い取ってぇ、消してしまうでしょぉ」
汚れ無き床……あの屋敷がもつ権能の一つだ。
床が綺麗になるというジラランドルの説明に、深く考えず使ったことがある。
床に置いていた大事な物まで消えてしまって阿鼻叫喚の自体になったので、オレは2度と使う気にはなれない。
「温泉のお湯も、魔力吸われたら無くなるんじゃないのか?」
「そこまで吸い取らないつもりでしょぉ、そのための実験じゃないかしらぁ」
そうか。だからこそ、あまり魔力を使わない方法として採用したわけか。
ロンロと雑談しながらも、自分の影にお湯入りの樽を収納していく。
全部収納し終わったら、最後に周りの風景を堪能して帰宅の途につく。
「やっぱり、近いよなぁ」
帰り道、ロバに乗って山を下りる時に、視界に写る屋敷をみてなんとなく呟く。
「お家と?」
「そうだね、飛んでしまえばすぐって感じだ」
「あのね、危ないよ」
「練習すれば大丈夫さ。でも、オレだけが飛んでもしょうが無いか……皆で優雅に飛んでいくような方法ないかなぁ」
「ユウガでしたか……」
よくわからない言葉を聞いたときにノアが見せる反応だ。ノアの不思議そうな言葉に、なんとなく笑みがこぼれる。
「優雅というより、楽しく簡単って感じかな。皆で周りの景色とか見ながらのんびりとお空の散歩をするように……」
途中まで話していて、すごいことを思いついた。
元の世界で、乗ったことがある乗り物だ。
アレをこの世界でも作れば良い。
「どうしたの?」
話を途中でとめたオレを、振り向いたノアが心配そうに見る。
「ロープウエイだ!」
「ろーぷうぇいぃ?」
突然大声を上げたノアはキョトンとした顔をし、ロンロはよくわからないと言った調子でオレの言葉を反芻する。
「屋敷で、模型をつくって説明するよ。上手く出来れば、手軽に温泉にいける。しかも危なくない」
自分の閃きを、すぐにでも実行に移したくて、そこからの道は全速力で帰ることなった。
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とりあえず模型をつくって、同僚に、皆に、意見をきくのだ。
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本当に、ありがとうございます。
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