召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第六章 進化する豪邸

どうじしんこう

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 帰宅し、さっさとサムソンに温泉の湯が入った樽を渡す。
 それから、倉庫で紐を手にとり、自室にこもり、適当な模型を作る。
 模型といっても、木片に輪っかを繋げ、その輪っかに紐を通しただけの簡単な代物だ。

「リーダがね、ロープウエイだって」

 ノアが、広間の皆に話をしている声が聞こえる。

「ロープウエイを作るんスか?」
「もし、こんな感じでロープウエイ作ることができれば……」

 模型を手に取り説明を続ける。

「右手が温泉側で、左手が屋敷だとして、こうやって往復できれば。温泉に楽に通えると思わないか?」

 右手を上に上げると、右手側から左手側に木片が移動する。左手を挙げるとその逆だ。

「なるほど、ロープウエイはいいっスね」
「温泉を温めるのはどうするんですか?」
「あっちはサムソンに任せるよ。人手が必要ならサムソンの作業が優先。同時進行ってヤツだ」
「それに、ロープウエイって、口では簡単にいいますが作るのは大変だと思うんです。思いません?」
「そりゃ、そのものを作るのは大変だけど。魔法を使えばなんとかなるんじゃ無いかと思うんだ」
「魔法……ですか?」
「ゴーレムを作ったときに、ウッドバードの技術を流用したろ。あの空に木片を浮かべるやつ」

 巨大な質量をもつ石造りのゴーレムを動かすために、空飛ぶ木片であるウッドバードを流用した。
 あのゴーレムは頭が浮いていて、体を上に引っ張りあげる形でバランスを取る仕組みになっている。
 今回はロープウエイのゴンドラを空に飛ばす。そうすれば、重さを支える仕組みや、安全性や強度の問題はクリア出来ると思う。

「ロープウエイのゴンドラ自体を空に浮かべるということですか? でも、ウッドバードはスピードでませんよ。ロバや馬を使った方が早く往復できると思うんです。思いません?」

 確かにカガミが言うとおりだ、ウッドバードは遅い。
 ただ単純にウッドバードを飛ばすだけならば、ロバの方が早く往復できるだろう。

「だからこそ、ロープウエイなんだ。ゴンドラは浮くだけ、移動は他の方法で引っ張ってもらうことで解決出来ると思うんだ」
「なるほど……、リーダの言いたいことがわかりました。ウッドバードの応用なら、ゴーレムを作ったときの資料が流用出来ると思います」

 カガミが前向きになってくれた。ゴーレムを作ったときの資料が残っているのか。
 彼女はゴーレムの大型化を担当していたはずだ。
 ロープウエイのゴンドラを作るにあたって相性が良いと思う。

「明後日、ピッキートッキーが帰ってくるからさ、ゴンドラは二人にお願いしようよ」
「お兄ちゃん達なら絶対大丈夫でち」

 一旦方向性が決まると、いろいろなことが次々と決まる。
 大工の修行をしている二人の知識は貴重だ。オレ達が作るより、よっぽど立派な仕事をしてくれるに違いない。

「何もりあがってるんだ?」

 ロープウエイ構想が盛り上がって騒がしくなっていたようだ。
 部屋にこもっていたサムソンが部屋から出てきた。
 プレインとノアが、サムソンに駆け寄りロープウエイについて説明する。

「というわけで、同時進行しようかと」
「まぁ、俺の方を優先ってことなら問題ないが、火山の場所がなぁ」

 環境転移で入れ替える場所について、お湯をあたためるという観点から、サムソンも火山を考えているようだ。
 そして、火山の場所はつかめていない……と。

「ロンロから、モンクスメリ火山というのを聞いたけど、場所がわからないんだよな」
「そうか……」
「名前だけわかれば、屋敷の機能で場所がわかるんスよね」

 そういえば、サムソンは地名だけでもわかれば屋敷の権能で調べられるって言っていたな。プレインが言うまですっかり忘れていた。

「それが、駄目だったんだ」
「もう調べたのか」
「バルカン氏に、ヌヴエトロア火山というのがあることを聞いたんだが、屋敷の地図には無かった。どうも、屋敷の権能で確認できる地名は、今の地名とは違うみたいだ」

 屋敷が古いから、そこに保管されている地図データも古いってことかもしれない。
 昔の呼び名がわかれば大丈夫か。
 テストゥネル様の助言に、遙か昔に存在した国を調べろってのがあったな。昔の呼び名を調べるついでに、歴史についても知識を得られるかもしれない。
 あとはどう調べるかだ。

「他の方法はないんスか?」

 プレインの質問に、サムソンが図を書きながら説明する。
 屋敷の地図は、見るだけで屋敷に貯めた魔力を消費するらしい。
 消費量は、遠く離れるほど、一度にみる範囲が広がるほどに激しくなる。
 地名がわからないと、すきな場所へワープするようにして、表示させることはできないそうだ。
 屋敷から表示地域をずらしていって見る。もしくは、地名で起点を一気に動かしてそこからずらしていく。
 だが、サムソンが知っている地名には反応が無かったらしい。
 このため、遠くの場所を調べるには、屋敷を中心に小さい範囲を表示させておいて、その表示領域をずらしていくのが一倍魔力効率がいいことになる。

「……というわけだ。遠くの場所を調べるには、昔の地名を調べるか、この屋敷からの正確な道のりなり方角を知る必要があるというわけだ」
「だったらさ、バルカンに火山までの道を聞けばいいじゃん」
「そうですね。それがいいと思うんです。それでも駄目なら、一旦は暖炉石で時間を稼いで火山の場所はじっくり時間をかければいいと思います。思いません?」

 カガミが皆のアイデアをとりまとめ、加えて時間が無い場合の代替策まで提案してくれた。
 彼女の意見に異論はない。

「じゃあさ、皆でロープウエイとか、暖炉石とか、火山の準備しようよ」
「いいっスね」

 ミズキとプレインがやる気がある態度を示し、カガミがそれを見て溜め息をついた。

「プレインはともかく、ミズキ……あなた、礼儀作法の練習したくないだけでしょ」

 そういことか。
 ともかく、サムソン一人に任せていた案件を皆で進めることになった。
 加えてロープウエイという新しい計画も動かすことになる。
 快適温泉ライフまであと少しという実感がもてる一日だった。
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