召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十三章 肉が離れて実が来る

いざこざはおわって

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 モペアが自信満々に前にすすむ。
 枝から枝へと軽やかに飛び渡る。オレは、ここに住めといわれても、住める自信がない。あの枝から落ちたら真っ逆さまに地面だ。
 落ちたら死ぬ村なんて住みたくない。

「長老は?」

 モペアは1人のハイエルフの前に進み、質問する。

「なぜ、ドライアドが人に味方する?」
「いや、質問にこたえろよ。長老は?」
「トゥンヘル!」

 別のハイエルフがモペアに矢を射る。モペアはそれを手で受け止め、そのまま手のひらをくるりと回す。矢はポロポロと崩れ、矢を射ったハイエルフは木の蔓で吊される。

「もう、同じ事ばっかり」

 モペアがあきれたように言って、さらに目の前のハイエルフへと歩み寄ろうとする。
 ところが、足を滑らせ落ちてしまった。

「モペアちゃん!」
「だから、ちゃんは止めろ!」

 落下したモペアを心配するカガミの叫びに、モペアが返答する。
 さきほどの木の蔓で吊されたハイエルフと似たような形で、片足が木の蔓に絡まれて逆さの状態で上がってきた。

「うわっ」
「木の蔓が……」

 よく見ると辺りのハイエルフの大半が、木の蔓につかまって大騒ぎだ。
 大混乱の最中、モペアはケラケラと楽しそうに笑っている。
 あいつ……事態を収拾するつもりはあるのか。

「騒がしいのぉ」

 そんな中、ひときわ大きく、若い女性の声があたりに響いた。
 声がした方をみると、木の板に乗った2人の人影があった。
 2人はこちらに歩いて近づいてくる。複数の木の板が、意思をもったように、2人の進む先に組み上がるように動く。歩き終わった部分の木が、前方に繰り上がるように動く様子に、アクションゲームに出てくる動く床を連想する。
 うち1人は、大きな木の杖をもった老人。ローブ姿で白髪頭。いかにも長老といった感じだ。そしてもう1人は、異質な女性。金髪縦ロールのマンガに出てきそうなお嬢様だ。明らかに他のハイエルフとは違う。というか、絶対にハイエルフでは無いと思うし、こんな髪型している人は町でも見たことが無い。

「長老」

 数人のエルフが声を揃えて、長老に声をかける。
 軽く右手を挙げた後、長老と呼ばれた老人は周りのハイエルフ達を見回し語りかける。

「今日は、もう遅い。お前達は忘れたかもしれぬが、子供は寝る時間じゃ。話し合いは明日でもよかろう」

 穏やかで、諭すような声だ。大声という印象はないが、よく聞こえる。

「まぁ、そういうことであるな」

 続いて、縦ロールの女が、チラリと家を見る。
 するとツインテールの2人を捕らえていた木の蔓がほどける。

「ありがとうございます。守り主様」
「まったく、外の世界を見てきた其方らが率先して動くとは……何のための旅ぞ?」
「申し訳ありません」
「まぁよい。去れ」

 ツインテールの言葉から、縦ロールの女が守り主様ということがわかった。以前、ハロルドが言っていた世界樹の守り手とは、この人の事だろう。

「して、ドライアドの客人よ。何を望む?」

 縦ロールとツインテールのやり取りを一瞥し、長老がモペアへと問いかける。
 モペアは、オレの背後へと走りより、オレの背中を両手で押した。

「こいつ。全部リーダに任せた」

 そう言ってピョンと木々の中に飛び込みモペアは消えた。

「さて、リーダ……殿。何を望まれる?」
「ここに来るつもりはなかったので、とりあえず大平原に行ければ良いと思っています」
「左様か。望まなかったか……では、いかな理由によってこの地に来ることになったか、調べる必要があるやもしれぬな」
「それは、こういう理由であろう」

 縦ロールが、側にあった木の蔓を拾い上げ、適当な長さに切った後、端と端を両手の親指と人差し指で掴む。そのまま、ピンと張ったあと、片方の手を離した。離した一方は、もう一方へと勢いがつき向かう。

「なるほど」
「この蔓が、金の鎖。つなぎ止めるつもりが急に動かなくなったので、引っ張る力のみがのこったということよの」
「綱引きで、勝っちゃったみたいに?」
「そういうことだ」
「我々が最初から最後まで原因ということか。さて、一旦、ワシの家で休んでいかれよ。もう夜も夜更け、幼子には厳しい頃じゃ」

 長老がノアを見て、それから獣人達3人を見る。つられて見ると、3人は寝ていた。

「あれ、いつの間に……」
「私達が来てすぐよの。緊張の糸がきれたのだろう。では、行こうかの。聖獣アルパルトの背にのるがよかろ」

 聖獣アルパルト?
 疑問に思っていたのも束の間、数匹の巨大な狸がどこからともなく集まってきた。
 皆、背中に巨大なフライパンのようなものを背負っている。巨大フライパンの中には、絨毯が引かれているので、これに乗れということだろう。

「このように」

 1人のハイエルフが近づいてきて、チッキー達を巨大フライパンの上にのせて、自分も乗った。
 それにならって、皆が思い思いのフライパンに乗る。
 目的地は長老の家、世界樹に建つ家か。興味深い。
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