召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十八章 未知への道は皆で

だましうち

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 ブラウニー共が、ミズキとカガミ以外の女性に監督して欲しいと、言い出した。
 ふざけた主張だ。
 良い酒と、新鮮な果物を渡している上に、追加の要求。
 だが、ブラウニー共の手は借りざるをえない。
 その対策に、オレに変装しろというミズキの考え。

「おい、それってオレ達に女装しろっていうことか?」

 ミズキのふざけた考えに即座に反論する。
 女装なんかしてたまるか。

「いやいや。女装っていうよりさ、幻術の魔法を使うんだよ。幻術で女の人になるってやつ」

 変装……魔法で?

「魔法か」

 サムソンか小さく呟く。

「そんなが、魔法あるんスか?」
「あるある、ちょっと待ってて」

 ミズキが書斎へと駆けていき、すぐに1冊の本を手に戻ってきた。
 パラパラと慣れた調子でページをめくり、オレ達のに突き出す。

「ほら、これこれ」
「変装の魔法」

 ミズキが差したところにはそう書かれていた。
 なかなか複雑な魔法陣だが、一日あれば描くことができそうだ。

「これを使えと?」
「そ。変装の魔法陣。これを使ってさ、リーダ達が女の子になって、ブラウニーたちを指導するってわけ」
「えぇ。先ほどの課題がクリアできているし、いいと思います。思いません?」
「嫌に決まってるだろ」

 バレたらどうするんだ。

「もう他に方法ないじゃん。ならリーダはいい方法思いついてるの?」

 そんなこと言われると反論に困る。ないのだ。

「いい方法などない……」
「でも、ブラウニー達、すぐ気付くんじゃないっスかね?」
「大丈夫だよ。きっと」

 ミズキのやつ。軽い調子でいいやがって。

「リーダが、変装! いけるいける」
「そうです。リーダなら大丈夫なのです」

 ふと見ると、窓の側にモペアが立っていた。
 ヌネフも、モペアの側で頷いている。

「大丈夫って?」
「ブラウニーだろ? あいつらバカっぽいじゃん、幻術だってバレやしないって」

 楽しそうにモペアが言う。
 バレない理由が、直感というところが気にかかるが、同じ精霊同士だ。なんとなくわかるのだろう。

「じゃあ試してみようよ。バレたら一緒に謝るからさ」

 そういう話になった。
 翌日、幻術を使って女性になったオレとプレインが、ブラウニー共の監督をすることになった。
 カガミとミズキ、2人の代わりに、2人でいいだろうというのがその理由だ。
 ジャンケンで誰が変装するのかで勝負をしたが、サムソンが軽く一抜けしてしまった。
 そんなわけでプレインとオレの2人が変装の魔法を使う。

「あっ、まじ、女の子に見える」

 魔法使った途端ミズキがオレを見ていった。
 大丈夫なのかなと思って、両手を見て、ぺちぺちと顔を叩いてみるが、いつもと同じだ。
 変わっているところが見当たらない。

「これ、本当に大丈夫なんだろうな?」
「大丈夫だと思います。窓を見てください」

 カガミに促されて指さされた窓を見る。
 窓にはオレの姿が反射して見えた。
 そこに写っているのは、先ほどのオレの姿とは違う。
 1人の女性が立っていた。
 不思議な感覚だ。
 手を動かしたり、首を振ったりすると、同じように映った姿も動く。
 だが、そこにいるのは女性だ。

「あーいるいる。こんな感じ、スーパーでレジ打ってそう」

 ミズキが、幻術によって女性になったオレを見て、ゲラゲラと笑いながらそんなコメントをした。

「すーぱーでしたか」

 ノアはキョトンとした顔をして、オレを見つめていた。

「あっ、ホントっスね。女の人に見えるっス」
「なんか服売ってそう」
「プッ」

 プレインはミズキにそう評されていた。
 吹き出すようにカガミが笑う。
 こいつら絶対、面白がっていると思う。
 だけど、手応えを感じる。
 とりあえず、騙せそうだ。
 ということで、早速、ブラウニー共を呼び出す。

「おぉ。今日はめんこいお姉さんじゃワイ」

 第一印象はバッチリだ。
 これならいけそうだ。

「では、今日はカガミ様とミズキ様の代わりに、私たちが皆さんと一緒にお仕事しますね」

 とりあえずそう言っておく。
 すると、ブラウニーの1人が首を傾げた。

「うーん。なんか違うワイ」

 そしてそう呟く。
 げっ。
 やばい。
 いきなりバレたんじゃないか、これ。
 背中に変な汗をかく。

「違い……ます、か?」
「そうじゃそうじゃ。女の人は挨拶の最後に、笑顔でクスリと笑うのが常じゃけん」
「もしや、お主……?」

 やばい。
 いきなり疑われている。

「そんなことありませんよ。オーッホッホッホッホ」

 とりあえず即座に取り繕う。

「変な笑い方する女子じゃ」
「初めて聞いたワイ」

 くそ。
 とったに脳裏によぎった女性の笑い声が、リスティネルだったから、真似したのに、ダメだしされた。

「えっと。では早速、地下室に行きませんか?」

 プレインがそう言ってブラウニー達を引き連れて、地下室へと進む。
 それからは、カガミとミズキの代わりとして、監督作業をする。
 地下室につくとすぐに、ブラウニー共は静かに作業を始めた。
 意外だ。
 いつもハイホーハイホーと踊り歌いながら仕事しているのだと思っていた。
 屋敷の掃除は、歌声が聞こえていた。
 だが、地下室では静かだ。
 地下室の仕事はブラウニー共にとっては辛いのかもしれない。
 いつもと違い黙々と作業するブラウニー達を見て、少し気の毒に思う。
 だが、だからといってブラウニー共を頼らないわけにいかない。

「がんばってくださいましね」

 ということで、労いの言葉を贈ってみた。

「ありがとうよ。そうだ。お嬢さん、歌をうたってくれないのか」

 歌?

「えっと、カガミねー……カガミ様は、歌をうたったりされてたのですか?」

 プレインがすかさず質問する。

「いんや。カガミ様はいるだけで潤いになるけん。そんなこと言わないワイ」
「そこの嬢ちゃんは、アホっぽいから、歌くらいサービスしてほしいワイ」

 なんだと。
 ちょっと優しくしたらつけあがりやがって。
 やっぱり、ロンロの言う通り、数匹ほど生贄に……。

「あ、ちょっとお花を摘みに」

 オレが内心怒りに震え始めたときに、唐突にプレインが声をあげる。
 お花?
 あぁ、トイレか。
 手をパタパタ振って、まかせろと合図を送る。

「うーん」

 ブラウニーの1人がオレをみて唸る。

「ど……どうかされましたか?」

 やっぱりバレてるんじゃないか、これ。

「いんや。どっかで見たことがあるような気がするワイ」
「よくある顔ですから」
「そうじゃ。あいつに似とるワイ」
「あいつ?」
「そうじゃ。リーダとかいうのに、似とるけん。アホっぽく見えるんじゃ」
「なるほど」
「そういうことか。すっきりしたワイ」

 こいつら。
 オレの周りをクルクル回って、口々にいうブラウニー共がムカつく。
 蹴り飛ばしたい。
 オレのイライラがマックスに到達しようとしていたときのことだ。

「リーダ。交代しましょう」

 部屋の奥から声が聞こえた。
 声のした方をみると、最近見た顔。
 この世界より、さらに先の世界。
 そこで出会った赤髪の女性が立っていた。
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