召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第十九章 帝国への旅

だっかん

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 当初の予定通りの場所へとたどり着く。
 そこは土が盛られただけの何もない広間だった。
 少し見上げて目をこらすと、チッキーが捕らわれている屋敷が見える。
 もっとも見えるのは、屋敷の窓からもれる光だけだ。
 これが昼間であれば、建物の輪郭も十分みることができるだろう。

「それじゃお願いっス。こっそりとやるっスよ」
「てやんでぇ」

 プレインの言葉に、ノームは手に持ったツルハシを大きく振り回す。
 それから「てやんでぇ」と何度かつぶやくように鳴きツルハシを振るった。

『ドォン』

 微かな爆発音がして、足下に大きな穴が開いた。
 大人2人が並んでも余裕な大きさの穴だ。
 ご丁寧に階段まで付けてくれている。
 コツコツと階段を下りると自動的に明かりがついた。
 ウィルオーウィスプがやってくれているのだろう。
 まるで土で作られた地下道を歩いているような感覚だ。
 そのままトコトコと、湿っぽい土の洞窟を歩いて行く。
 救出に向かうメンバーはオレとノア、そしてカガミにミズキだ。
 プレインとサムソンには、トッキーとピッキーの2人と一緒に海亀に残ってもらった。
 ノアはハロルドの呪いを解くため。
 そして、カガミは遮音の壁を作って貰うため。
 ミズキは、なんだかんだ言って強いしな。
 このメンバーなら、大抵の事態でもなんとかなるだろう。
 オレ達の先頭を歩くのはノーム。
 ちっこいツルハシをもったモグラ。
 そんな外見をしたノームが二本足で跳ねるように進む後をついていく。
 ノームがツルハシをふいっと振り回す度に、トンネルが掘り進められていく。
 そして特に何事もなく、しばらく歩くと、突如ノームはオレ達の方に振り返り「てやんでぇ」「てやんでぇ」と言いながら、ツルハシを大きくぶんまわした。

「到着したのかな」
「チッキーは、どこにいるの?」

 ノアの問いかけに、ノームは一回転すると、ツルハシを小さく地面に打ち付けた。
 すると行き止まりの土がポロポロと崩れ、灰色の石が姿を現した。

「この向こうがチッキーのいる部屋か」
「てやんでぇ」

 オレの言葉に、ノームは小さく鳴くと首を縦に振った。

「じゃあ、とりあえず適当に魔法の壁で覆います」
「この壁を無視して、魔法の壁で覆えるの?」
「大丈夫ですよ」

 カガミに任せておけば大丈夫そうだ。
 それからカガミは、ロンロに少しだけ質問して、部屋のサイズを推測した後、壁を作る魔法を唱える。

「とりあえずこれで大丈夫だと思います」
「それで、この壁はどうするの?」
「ぶっ壊すよ」

 ミズキの質問に軽く答え、影から壁を壊す道具を取り出す。
 ずいぶん昔にガラクタ市で買った物だ。

「それは?」
「破城槌っていうらしいよ」
「はじょうつい……でしたか」
「なんでも、大型の魔物に打ち付けたり、堅く締められた扉を破壊する時に使うんだってさ」
「へぇ」
「これは小さいけれど、大きな物だと家一軒くらいの大きさがあるらしいよ」

 聞きかじった知識を披露しながらセッティングする。
 車輪のついた板の中央にアーチ状の木枠があり、そこに丸太が吊り下げてある。
 丸太の先は金属で補強されていて、こいつを今回は石壁にぶち当てる。
 本来なら1人では用意出来ないくらい重いものだが、念力の魔法で簡単に動かすことが出来る。魔法様々だ。

『ドガァン!』

 振り子のように大きく振り上げられた丸太の端が、石壁を大きく打ち付け、轟音と共に壁が吹き飛んだ。

「うわぁ」

 ミズキが引き気味の喚声をあげた。
 思ったより大きな音がでて、オレもびっくりする。

「これ……音、大丈夫だよね? 響かないよね?」
「多分……。思ったより大きな音なので、少し心配になりました」

 多分大丈夫だろうと、オレが一歩部屋には行った直後のことだ。

『ガキン』

 鈍い金属音がした。
 見ると壁の影から、オレを目がけて剣が振り下ろされたところを、ミズキが剣で防いでいた。

「ちぃ」

 オレを攻撃してきた男と目が合う。
 顔に大きな傷跡のある男だ。
 いわゆる悪人面。
 そして、その悪人面は、オレを目が合った直後、苦痛に顔が歪がみ、倒れた。
 見るとミズキが奴のお腹をぶん殴っていた。

「びっくりしたよね」

 ミズキがなんでもないように笑う。
 オレは笑えない。
 逆にノアは「ミズキお姉ちゃん、すごい!」と大絶賛だ。

「あの、ミズキさん」
「ん?」
「なんでそんなに強いの?」
「慣れだよ。慣れ」

 慣れ……。

「やっぱりアレですか? 漢字四文字で夜露四苦とかやってたんスか?」
「えー。ちがうよ。まったくリーダは何言ってるんだか。こっちに来てからさ、いろいろ修行したの」

 そっか。
 まぁ、いろいろ怪しいところがあるけれど……。
 鍵開けとか……。
 そういうことにしておこう。
 誰もいないかと思っていたが、見張りが1人いたのか。

「では、こやつは拙者が連れて行くでござる」

 オレ達の後からヌッと出てきたハロルドがヒョイと悪人面を抱え上げた。

「いつの間に?」
「さっき、姫様に呪いを解除していただいたでござるよ。もっとも拙者の出番はなかったでござるがな。さて、見張りはこやつ一人だけのようでござる」
「そっか」

 今度は安心して中に入る。
 いくつもの金属製の檻が置いてある部屋。
 薄暗く、何かが腐った匂いが立ちこめる部屋だ。
 ウィルオーウィスプの力によって、部屋が照らされると、檻は6つあった。
 どの檻にも数人の人が閉じ込められている。
 期待して檻の縁へと近づく者。
 逆に距離をとろうとする者。
 様々だ。

「あっ、チッキーみっけ」
「ミズキ様!」

 そんな部屋にある檻の1つがカチカチとゆれ、音がした方をみるとチッキーがいた。
 さらわれたときと変わらない様子で、こちらをみて嬉しそうに笑っていた。
 よかった。無事だ。
 元気そうな様子をみて、安心した。
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