召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実

うんてんせき

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「久しいな」
「リスティネル様? どうしてここに?」

 なぜここにリスティネルがいるのかわからない。
 予想外の登場に、驚きしかない。

「何を言っておる。其方が望んだのであろう? タイマーネタをよこせと」
「届けてくださったのですか?」

 そういえば、自爆してしまったタイマーネタの代わりを、要求していたことを思い出した。
 あの大きさだ。
 白孔雀では運ぶことはできない。
 だが、必ず届けると連絡をもらっていたので安心していた。
 どうやって持ってくるのだろうと疑問に思っていたわけだが、まさかリスティネルが持ってくるとは思わなかった。

「あぁ、もってきておる。ついでに飛行島の試運転をしたかったというのもあるがな」
「飛行島の試運転ですか? もしかして、私たちの飛行島が?」

 飛行島の話になると、サムソンがぱっと顔を上げた。
 空飛ぶ島である飛行島。
 以前、世界樹にあるハイエルフの里で、巨大な飛行島と戦った時に半壊したオレ達の飛行島。
 ギリアにある屋敷の別邸とされる、あの空飛島が整備され、復活したのか。

「もちろんよ。持ってきておる」

 サムソンの問いにリスティネルは大きく頷くと、くるりとオレ達に背を向けて、海亀の小屋から外へ出ていった。
 着いてこいということだろうか。

「あの、オレ達、留守番が……」
「シューヌピア、其方が残っておれ」
「よろしいですか?」

 小屋の外には、見知った顔、シューヌピアが立っていた。
 彼女は、小屋から出てきたオレを見ると軽く会釈した。

「ええ、もちろんって……シューヌピアさんも来てたんですね。カスピタータさんもきているのですか?」
「いえ、兄は世界樹に留まっています。ここには、私と守り主様、それからトゥンヘルさんとアロンフェルさんできました」

 リスティネルは、シューヌピアに声をかけた後、さっさと先へと進んで街道とは逆方向、森へと入っていく。
 少しくらい待って欲しいが、その気はないようだ。
 トゥンヘルはハイエルフの大工だったはず、アロンフェルという人は知らないな。

「何をぼやぼやしておる。早くついてこい」

 はいはいと、リステルだとついていく。
 シューヌピアであれば、他のやつらも知っているし留守番を任せても問題ないだろう。

「結構歩くのですね」
「偽装したとはいえ、あまり人目につくところで下ろすのも面倒くさそうなのでな」

 そういって、ズンズンとリスティネルは森の中に入っていく。
 もうすぐ春が来るというのが、足下に緑色の雑草が増えていることから見て取れる。
 まだ寒いが、きっとすぐに暖かくなるのだろう。

「木々がへし折れているぞ」
「少しばかり着地に失敗したのでな」

 森の木々がへし倒されて、そこに大きな飛行島が見えた。

「あれ、オレ達の飛行島じゃない?」
「其方らの飛行島だ。もっとも、他の飛行島も何個かくっつけてあるし、上に乗ってた建物も作り直したので、様相はだいぶ変わっておる。だが基本は全部、其方らの飛行島だ」
「なるほど。あと、斜めになってるのは……」

 サムソンが言う通り、その大きな飛行島は斜めになっていた。
 微妙に斜めに着地していた。

「ふむ」

 リスティネルは少しだけ首を傾げると、手を静かにあげる。

『ズズ……ン』

 すると、小さな地響きをたてて、飛行島が水平になって着地した。

「トゥンヘルめ。まったく大雑把なものよ」

 溜め息交じりにリスティネルは、飛行島の端、階段状になっている部分をゆっくり登り、中へ入っていく。

「2人だけしかおらんかったわ」

 そう言って建物の影で、リスティネルは作業をしている人影に声をかけた。
 ハイエルフの大工トゥンヘルだ。

「いやー、これはこれは。リーダさんに、サムソンさん。久しぶりです」
「トゥンヘル。飛行島が斜めになったままであったぞ。あのままでは住み心地が悪かろう」
「いや、それは、守り神様が無茶な着地のさせ方をするので……、あと、そのせいか飛行島が動かないのです……」
「まったく上手くいかぬものよ」

 トゥンヘルの抗議めいた言葉に、何でも無いように応じ、目の前にある2階立ての家へと向かって進んでいく。

「アロンフェル! リーダさんと、サムソンさんだ!」

 途中、トゥンヘルが目の前にある家とは違うと方向を見て声を上げる。
 そこには小さな三階建ての塔が建っていた。
 目の前にある家の外に、三階建ての塔が一つ、小さな祠が二つ、そして厩舎であろうか木造の小屋に加えて大きな池がある。
 目の前にある小さめの家は装飾が施され、ハイエルフの里にあった建物を彷彿させる。
 彷彿とさせるどころじゃないか。
 木の香りが漂うハイエルフの家そのものだった。

「随分変わりましたね」
「以前あった建物はもうボロボロであった故、建て直した。だが、数多く仕込まれた基礎になる魔法陣などには手をつけておらん」
「よくわからないものは全部倉庫に押し込めてありますので、後ほど皆さんで確認してください」

 何やらやっていた作業をやめて、トゥンヘルも後をついてくる。

「ありがとうございます」
「後は、二階ある部屋に、サムソンさんが残してるのメモを参考に、飛行島を動かす仕組みを用意しました。ご案内しましょう……と、その前にアロンフェルが来ていないな」
「放っておけ、そのうち顔を見せるであろう」
「ですが……」
「皆が揃ってからでよいであろう。それにアロンフェルは呼んだだけで来るような者ではなかろ」
「それは……そうです」

 そう言いながらトゥンヘルが小走りにオレ達を追い抜き、家の中を案内してくれた。
 最初に案内されたのは、2階にある小さな部屋。
 椅子が中央に置いてあり、その前にテーブルがあるだけのシンプルな部屋だ。
 そしてテーブルの上には、まるでゲームセンターにあるゲーム機のようにスティックとボタンがあった。
 よく見るとテーブルの下にはペダルが二つある。

「なかなか面白いものであったよ」
「サムソンさんが残したメモを参考に作ってみました」
「そうそう、動かすのが結構面倒くさかったんでな」
「へぇ、面白そうな操縦席だ」
「よくあんな落書きみたいなもので、ここまでのものを」

 サムソンが嬉しそうに小走りでテーブルの前まで走り寄り感想を漏らす。

「これで正しかったでしょうか? いえ、こういう風なものであろうかと皆で話し合って作ったのですが……」
「えぇ、もちろんです。いや、正直いえば実際は触ってみないと……ですが、ただ私のイメージとぴったり合っています」

 サムソンはとても嬉しそうにテーブルに駆け寄りレバーを触る。
 足のペダルも、カチカチと踏んでみたりする。

「上手く動いて楽しかったよ。ただ、少しばかり着地が面倒くさいがな」

 そうか。ここまではリスティネルが運転していたんだっけか。

「うん。確かに面白そうだ」
「少し動かしてみるがよいよ」
「よろしいですか?」
「もちろんです……と言いたいのですが、先程のショックで、動かなくなってしまったのです」

 サムソンの問いかけに、トゥヘルさんは残念そうに頭を下げ、それからちらりとリスティネルを見た。
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