452 / 830
第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実
かんてん
しおりを挟む
とにもかくにも飛行島を何とか動かせないかと、トゥンヘルとサムソンが悪戦苦闘をする。
飛行島には電線のように金属製の線が、複数の魔法陣や魔導具を繋ぐように埋められている。この金属製の線が、歪んでいたり、ちぎれている事が動かない原因のようだった。
しかも、埋め込まれた金属製の線は、ただの金属というわけでなく、魔法陣や模様が刻まれた物だ。
ハイエルフ達の知識や、フェズルードで手に入れた魔導具の本に資料があるので、直すことは可能だ。
だが、ややこしく時間がかかるのがネックだ。
オレも手伝うが、うまくはいかなかった。思った以上に被害が大きい。
「守りの主様が乱暴な運転をするから」
トゥンヘルは、恨み言のような愚痴を言いながら作業をしていて、相変わらず憎めない人だ。
当のリスティネルは、そんな非難などどこ吹く風といった調子で、飛行島の周りを見て回り、思ったよりも寒いなどと言っていた。
『ドスン……ドスン……』
そんなことをしていると、足音が聞こえた。
海亀の足音だ。
「あぁ、もう日が暮れる頃か」
そこで初めて、もうすぐ日が暮れるということに気がついた。
なんだかんだといって熱中していたようだ。
「もー。シューヌピアに留守番おしつけて」
「違いますよ。私が立候補したんです」
「冗談。冗談」
皆と合流して、今日の戦利品を食べながら話をする。
「あんまり食べすぎると、ご飯食べられなくなるからね」
などと言いながら、カガミが町で買ってきたお菓子の入った小箱を開ける。
中には四角いゼリー状のものが入っていた。
「あのね。アガイア氷。これが海藻で作ったお菓子なんだって」
ノアが、四角いゼリーを、ひとつをつまみ教えてくれる。
パクリと口にいれて美味しそうに食べていて、ノアは本当に嬉しそうだ。
同じように、オレもつまんでみると力を入れすぎたせいか、ボロリと崩れた。
ちょいちょいと右手でつまみ上げ、左手での手のひらの上にのっけて口に入れる。
甘いお菓子だ。
周りに砂糖がまぶしてあるのか。
「寒天ぽいな」
サムソンが感想を漏らす。
「そうそう、寒天なんだよね。これって」
ミズキがサムソンの感想に頷く。
そういえば、元の世界にあった寒天も海藻が原料だったな。
案外同じものなのかもしれない。
それからほどなくして夕食を食べる。
「それにしても、素敵ですね、ここ」
「うんうん、木の匂いがして、新築一戸建て、しかも池付き、庭付き」
「外見は小さめなのに、中は凄く広々としてるっスね」
「海亀の小屋みたいだよね」
「皆で頑張りましたから」
「ハイエルフどもときたら、急いでいるので10年後にはパッチリ完成ですなんて言っておったわ」
リスティネルの言葉に、やっぱりハイエルフは時間の感覚が違うなと思う。
あの人たち10年20年は、ちょっとした時間という感覚だからな。
10年はすぐという感覚なのだろう。
その感覚で、飛行島を直されてしまえば、完成が100年後と言われても驚かない。
「それで、守り神様と兄が、それはちょっと人の時間としては長すぎると主張して、里の皆で、急いで仕上げたんです」
「助かります」
「でも、やっぱりちょっと心配だからっていうことで、トゥンヘルさんが整備しながら同行することになったんです」
なるほど。
なんでトゥンヘルが来ているのかなと思ったらそういうことなのか。
飛行島の仕組みを知っている人がいるのは助かる。
「もう1人、アロンフェル様という方もいらっしゃるんですよね」
「あやつは人見知りが激しいのでな」
「でも、アロンフェルさんは、トゥンヘルさんが頼めば来てくれますよ」
「そうなんですか?」
「えぇ、今回もトゥンヘルさんが心配で、ついてきたって感じですし」
「人見知り以外は、トゥンヘルの妻としては出来過ぎた奴だからな」
トゥンヘルって既婚者なのか。
「私もアロンフェルさまが一緒だと心強いですし」
「確かに、アロンフェルは勘が鋭いし、シューヌピアよりも何倍も強いからの」
ボディーガード的な役割の人なのか。
リスティネルもいるし、すごく心強い。
あれ?
「ところで、リスティネル様は、ここにいていいんですか? 世界樹は?」
「あぁ。今、世界樹にはテストゥネル様が来ておるからな。大丈夫だろう」
テストゥネル様が世界樹に来ているのか。
「そういえば知り合いだったんですよね」
「なったく、ちょっとクローヴィスに、まじないをかけたことを根に持ってからに、見つかると怒られるのでな。しばらくここで身を潜めようかと。ホホホ」
逃げてきたのかよ。
まぁいいか。頼りになる人だし。
いや待てよ、そういえば、この人の乱暴な運転で、この飛行島は壊されたんだよな。
しかも、リスティネル、すでに寒天を3つ食ってやがる。
ということは、誰か食えていないよな。
確か、人数分しかないから。
「じゃあ、あと残り三つは、はい」
リスティネルが3つめを食べた直後、ミズキがヒョイと小箱をとりあげて、お茶を注いでいたチッキーに渡す。
「ミズキ様。あたちは、さっき町で食べまちた」
「そんなこと言ったら、私も食べたじゃん。あとでトッキーとピッキーとさ、一緒に食べてね」
ミズキは微笑み、チラリとこの部屋にある扉を見る。
その先には、さきほどから一生懸命に給仕をしているトッキーとピッキーがいる。
チッキーと3人で、シューヌピアとリスティネルをもてなすと言って給仕をかってでているのだ。
確かに、がんばって給仕をしてくれるのだ。
寒天は食べてもらうべきだな。
「あのさ。で、お菓子買ったとこなんだけどさ。海藻分けてもらったところでもあるんだけど、なんか大変そうでさ、助けようと思うんだけど」
チッキーが笑って小箱を受け取ったのをみて、ミズキがオレ達に向き直り、とんでもないことを言い出した。
大変そう? 助ける?
飛行島には電線のように金属製の線が、複数の魔法陣や魔導具を繋ぐように埋められている。この金属製の線が、歪んでいたり、ちぎれている事が動かない原因のようだった。
しかも、埋め込まれた金属製の線は、ただの金属というわけでなく、魔法陣や模様が刻まれた物だ。
ハイエルフ達の知識や、フェズルードで手に入れた魔導具の本に資料があるので、直すことは可能だ。
だが、ややこしく時間がかかるのがネックだ。
オレも手伝うが、うまくはいかなかった。思った以上に被害が大きい。
「守りの主様が乱暴な運転をするから」
トゥンヘルは、恨み言のような愚痴を言いながら作業をしていて、相変わらず憎めない人だ。
当のリスティネルは、そんな非難などどこ吹く風といった調子で、飛行島の周りを見て回り、思ったよりも寒いなどと言っていた。
『ドスン……ドスン……』
そんなことをしていると、足音が聞こえた。
海亀の足音だ。
「あぁ、もう日が暮れる頃か」
そこで初めて、もうすぐ日が暮れるということに気がついた。
なんだかんだといって熱中していたようだ。
「もー。シューヌピアに留守番おしつけて」
「違いますよ。私が立候補したんです」
「冗談。冗談」
皆と合流して、今日の戦利品を食べながら話をする。
「あんまり食べすぎると、ご飯食べられなくなるからね」
などと言いながら、カガミが町で買ってきたお菓子の入った小箱を開ける。
中には四角いゼリー状のものが入っていた。
「あのね。アガイア氷。これが海藻で作ったお菓子なんだって」
ノアが、四角いゼリーを、ひとつをつまみ教えてくれる。
パクリと口にいれて美味しそうに食べていて、ノアは本当に嬉しそうだ。
同じように、オレもつまんでみると力を入れすぎたせいか、ボロリと崩れた。
ちょいちょいと右手でつまみ上げ、左手での手のひらの上にのっけて口に入れる。
甘いお菓子だ。
周りに砂糖がまぶしてあるのか。
「寒天ぽいな」
サムソンが感想を漏らす。
「そうそう、寒天なんだよね。これって」
ミズキがサムソンの感想に頷く。
そういえば、元の世界にあった寒天も海藻が原料だったな。
案外同じものなのかもしれない。
それからほどなくして夕食を食べる。
「それにしても、素敵ですね、ここ」
「うんうん、木の匂いがして、新築一戸建て、しかも池付き、庭付き」
「外見は小さめなのに、中は凄く広々としてるっスね」
「海亀の小屋みたいだよね」
「皆で頑張りましたから」
「ハイエルフどもときたら、急いでいるので10年後にはパッチリ完成ですなんて言っておったわ」
リスティネルの言葉に、やっぱりハイエルフは時間の感覚が違うなと思う。
あの人たち10年20年は、ちょっとした時間という感覚だからな。
10年はすぐという感覚なのだろう。
その感覚で、飛行島を直されてしまえば、完成が100年後と言われても驚かない。
「それで、守り神様と兄が、それはちょっと人の時間としては長すぎると主張して、里の皆で、急いで仕上げたんです」
「助かります」
「でも、やっぱりちょっと心配だからっていうことで、トゥンヘルさんが整備しながら同行することになったんです」
なるほど。
なんでトゥンヘルが来ているのかなと思ったらそういうことなのか。
飛行島の仕組みを知っている人がいるのは助かる。
「もう1人、アロンフェル様という方もいらっしゃるんですよね」
「あやつは人見知りが激しいのでな」
「でも、アロンフェルさんは、トゥンヘルさんが頼めば来てくれますよ」
「そうなんですか?」
「えぇ、今回もトゥンヘルさんが心配で、ついてきたって感じですし」
「人見知り以外は、トゥンヘルの妻としては出来過ぎた奴だからな」
トゥンヘルって既婚者なのか。
「私もアロンフェルさまが一緒だと心強いですし」
「確かに、アロンフェルは勘が鋭いし、シューヌピアよりも何倍も強いからの」
ボディーガード的な役割の人なのか。
リスティネルもいるし、すごく心強い。
あれ?
「ところで、リスティネル様は、ここにいていいんですか? 世界樹は?」
「あぁ。今、世界樹にはテストゥネル様が来ておるからな。大丈夫だろう」
テストゥネル様が世界樹に来ているのか。
「そういえば知り合いだったんですよね」
「なったく、ちょっとクローヴィスに、まじないをかけたことを根に持ってからに、見つかると怒られるのでな。しばらくここで身を潜めようかと。ホホホ」
逃げてきたのかよ。
まぁいいか。頼りになる人だし。
いや待てよ、そういえば、この人の乱暴な運転で、この飛行島は壊されたんだよな。
しかも、リスティネル、すでに寒天を3つ食ってやがる。
ということは、誰か食えていないよな。
確か、人数分しかないから。
「じゃあ、あと残り三つは、はい」
リスティネルが3つめを食べた直後、ミズキがヒョイと小箱をとりあげて、お茶を注いでいたチッキーに渡す。
「ミズキ様。あたちは、さっき町で食べまちた」
「そんなこと言ったら、私も食べたじゃん。あとでトッキーとピッキーとさ、一緒に食べてね」
ミズキは微笑み、チラリとこの部屋にある扉を見る。
その先には、さきほどから一生懸命に給仕をしているトッキーとピッキーがいる。
チッキーと3人で、シューヌピアとリスティネルをもてなすと言って給仕をかってでているのだ。
確かに、がんばって給仕をしてくれるのだ。
寒天は食べてもらうべきだな。
「あのさ。で、お菓子買ったとこなんだけどさ。海藻分けてもらったところでもあるんだけど、なんか大変そうでさ、助けようと思うんだけど」
チッキーが笑って小箱を受け取ったのをみて、ミズキがオレ達に向き直り、とんでもないことを言い出した。
大変そう? 助ける?
0
あなたにおすすめの小説
【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい
マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」
新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。
1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。
2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。
そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー…
別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。
まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」
そう、第二王子に言われました。
そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…!
でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!?
☆★☆★
全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。
読んでいただけると嬉しいです。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる