召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実

かんてん

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 とにもかくにも飛行島を何とか動かせないかと、トゥンヘルとサムソンが悪戦苦闘をする。
 飛行島には電線のように金属製の線が、複数の魔法陣や魔導具を繋ぐように埋められている。この金属製の線が、歪んでいたり、ちぎれている事が動かない原因のようだった。
 しかも、埋め込まれた金属製の線は、ただの金属というわけでなく、魔法陣や模様が刻まれた物だ。
 ハイエルフ達の知識や、フェズルードで手に入れた魔導具の本に資料があるので、直すことは可能だ。
 だが、ややこしく時間がかかるのがネックだ。
 オレも手伝うが、うまくはいかなかった。思った以上に被害が大きい。

「守りの主様が乱暴な運転をするから」

 トゥンヘルは、恨み言のような愚痴を言いながら作業をしていて、相変わらず憎めない人だ。
 当のリスティネルは、そんな非難などどこ吹く風といった調子で、飛行島の周りを見て回り、思ったよりも寒いなどと言っていた。

『ドスン……ドスン……』

 そんなことをしていると、足音が聞こえた。
 海亀の足音だ。

「あぁ、もう日が暮れる頃か」

 そこで初めて、もうすぐ日が暮れるということに気がついた。
 なんだかんだといって熱中していたようだ。

「もー。シューヌピアに留守番おしつけて」
「違いますよ。私が立候補したんです」
「冗談。冗談」

 皆と合流して、今日の戦利品を食べながら話をする。

「あんまり食べすぎると、ご飯食べられなくなるからね」

 などと言いながら、カガミが町で買ってきたお菓子の入った小箱を開ける。
 中には四角いゼリー状のものが入っていた。

「あのね。アガイア氷。これが海藻で作ったお菓子なんだって」

 ノアが、四角いゼリーを、ひとつをつまみ教えてくれる。
 パクリと口にいれて美味しそうに食べていて、ノアは本当に嬉しそうだ。
 同じように、オレもつまんでみると力を入れすぎたせいか、ボロリと崩れた。
 ちょいちょいと右手でつまみ上げ、左手での手のひらの上にのっけて口に入れる。
 甘いお菓子だ。
 周りに砂糖がまぶしてあるのか。

「寒天ぽいな」

 サムソンが感想を漏らす。

「そうそう、寒天なんだよね。これって」

 ミズキがサムソンの感想に頷く。
 そういえば、元の世界にあった寒天も海藻が原料だったな。
 案外同じものなのかもしれない。
 それからほどなくして夕食を食べる。

「それにしても、素敵ですね、ここ」
「うんうん、木の匂いがして、新築一戸建て、しかも池付き、庭付き」
「外見は小さめなのに、中は凄く広々としてるっスね」
「海亀の小屋みたいだよね」
「皆で頑張りましたから」
「ハイエルフどもときたら、急いでいるので10年後にはパッチリ完成ですなんて言っておったわ」

 リスティネルの言葉に、やっぱりハイエルフは時間の感覚が違うなと思う。
 あの人たち10年20年は、ちょっとした時間という感覚だからな。
 10年はすぐという感覚なのだろう。
 その感覚で、飛行島を直されてしまえば、完成が100年後と言われても驚かない。

「それで、守り神様と兄が、それはちょっと人の時間としては長すぎると主張して、里の皆で、急いで仕上げたんです」
「助かります」
「でも、やっぱりちょっと心配だからっていうことで、トゥンヘルさんが整備しながら同行することになったんです」

 なるほど。
 なんでトゥンヘルが来ているのかなと思ったらそういうことなのか。
 飛行島の仕組みを知っている人がいるのは助かる。

「もう1人、アロンフェル様という方もいらっしゃるんですよね」
「あやつは人見知りが激しいのでな」
「でも、アロンフェルさんは、トゥンヘルさんが頼めば来てくれますよ」
「そうなんですか?」
「えぇ、今回もトゥンヘルさんが心配で、ついてきたって感じですし」
「人見知り以外は、トゥンヘルの妻としては出来過ぎた奴だからな」

 トゥンヘルって既婚者なのか。

「私もアロンフェルさまが一緒だと心強いですし」
「確かに、アロンフェルは勘が鋭いし、シューヌピアよりも何倍も強いからの」

 ボディーガード的な役割の人なのか。
 リスティネルもいるし、すごく心強い。
 あれ?

「ところで、リスティネル様は、ここにいていいんですか? 世界樹は?」
「あぁ。今、世界樹にはテストゥネル様が来ておるからな。大丈夫だろう」

 テストゥネル様が世界樹に来ているのか。

「そういえば知り合いだったんですよね」
「なったく、ちょっとクローヴィスに、まじないをかけたことを根に持ってからに、見つかると怒られるのでな。しばらくここで身を潜めようかと。ホホホ」

 逃げてきたのかよ。
 まぁいいか。頼りになる人だし。
 いや待てよ、そういえば、この人の乱暴な運転で、この飛行島は壊されたんだよな。
 しかも、リスティネル、すでに寒天を3つ食ってやがる。
 ということは、誰か食えていないよな。
 確か、人数分しかないから。

「じゃあ、あと残り三つは、はい」

 リスティネルが3つめを食べた直後、ミズキがヒョイと小箱をとりあげて、お茶を注いでいたチッキーに渡す。

「ミズキ様。あたちは、さっき町で食べまちた」
「そんなこと言ったら、私も食べたじゃん。あとでトッキーとピッキーとさ、一緒に食べてね」

 ミズキは微笑み、チラリとこの部屋にある扉を見る。
 その先には、さきほどから一生懸命に給仕をしているトッキーとピッキーがいる。
 チッキーと3人で、シューヌピアとリスティネルをもてなすと言って給仕をかってでているのだ。
 確かに、がんばって給仕をしてくれるのだ。
 寒天は食べてもらうべきだな。

「あのさ。で、お菓子買ったとこなんだけどさ。海藻分けてもらったところでもあるんだけど、なんか大変そうでさ、助けようと思うんだけど」

 チッキーが笑って小箱を受け取ったのをみて、ミズキがオレ達に向き直り、とんでもないことを言い出した。
 大変そう? 助ける?
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