召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十二章 甘いお菓子と、甘い現実

あやしいとうぞく

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「売り子?」
「しょうがないでしょ。じゃんじゃん売れたら、お菓子追加しなきゃダメでしょ? 次から次へと、ラテイフさんも、イスミダルさんも手が離せなくなっちゃうじゃん。サラムロ君だけに任せるわけにいかないしさ」

 チラリとサラムロを見て、ミズキはニコリと笑う。

「足引っ張るなよ」

 それにサラムロが偉そうに応じた。
 ゆっくり頷く様子が面白い。
 確かにな。彼1人に任せるのはな。

「しょうがないか。売れるかどうか分からないしな」
「リーダ。お前、いきなり後ろ向きなこと言うなよ」
「相変わらずで、うける」

 仕事か。
 ちょっとだけダウナーな気持ちで準備を完了する。
 翌日は綺麗な空が待っていた。快晴だ。
 影の中に、必要なものは全て詰め込み、馬車で町に行く。

「馬車を呼ぶか」

 トーク鳥で、馬車を呼ぶ。
 いつものように、預かったトーク鳥を使い御者を呼ぶ。
 人数が少なければロバも使えるのだが、初日は全員で行くからロバは辛い。
 海亀が町の中に入れないから、町から馬車を呼ぶしかないっていうのが辛い。

「あれ? 荷物はないのかい。念の為、大型2台で来たんだけどねぇ」

 御者のお姉さんは、迎えに来た直後、驚いた調子で質問してきた。
 確かに迎えに来た馬車は、荷物が沢山積めそうな幌なしの馬車だ。

「えぇ。嵩張るものは、魔法で運びますので、こんなもんです」
「なるほどねぇ。収納の、それじゃあ急いだ方がいいね」

 魔法で運ぶという言葉を聞いて、御者のお姉さんは何かに納得したように頷き、急ぐと言ってくれた。
 時間制限などを考えたのだろう。
 普通の収納魔法は、時間制限があるからな。
 少しだけ早めに進む馬車に乗ってすぐ

「おい。リーダ。囲まれてる」

 突如、街道そばの森からモペアが駆けてきて、ヒョイと馬車に飛び乗り言った。

「おかしいねぇ」

 御者のお姉さんは、モペアがいきなり乗り込んだにも関わらず、焦る事無くニヤリと笑い呟く。
 それと、ほぼ同時に前を行く馬車が止まった。

「ハサーリファ様! 盗賊です」
「やだねぇ。領主の見回りは何やってるんだか」

 ちょっとしたやり取りのあと、前を行く馬車の御者が、剣と盾を持ち立ち上がった。
 御者のお姉さんも、そばに置いてあった剣を持って、辺りをゆっくりと見回す。
 2人とも強そうだ。
 特に、御者のお姉さんは持っている剣は宝石で飾られていて、刀身が淡く光っている。
 ミズキも槍を静かに構えて警戒を強め、プレインも同様に臨戦態勢に入った。

「でも、楽勝だよ。人数は10人以上はいたけどな」

 緊迫した様子の中、モペアは指を折りながらニシシと笑う。

「そうなのか」
「森の中を通る道にあたしがいるからな!」

 ニンマリとした笑顔のモペアがそう言った直後のことだ。

『ドスン』

 街道の側に立つ木から1人の男が落ちてきた。
 よく見ると、足に木の蔓が巻き付いている。

「モペアがやったのか?」
「そうだよ。木の枝をちょっとばかし揺らして、木の蔓を巻き付けた」
「すごいな」

 さすが森の精霊ドライアドだ。
 感心してるとさらにもう1人、森の奥から馬が走ってきて、こけた。馬に乗っていた盗賊が呻きゴロゴロと転げ回る姿があった。

「この程度だもん。あたし独りでも楽勝さ」
「モペアちゃんナイスっス」
「ちゃんはやめろ」

 だが、油断は大敵。

『ガァン』

 森の中から飛び出してきた男を、御者の男が盾で殴りつけた音が響く。
 それを皮切りに、次々と森から飛び出す盗賊との戦闘が始まった。
 矢も放たれる。

『パラララー』

 しかし、矢がオレ達に当たる事はない。
 小さなファンファーレと共に、突風が吹いて矢は、あらぬ方向へと飛んでいくのだ。

「この程度、当たらないですよ」

 いつの間にか、馬車に乗り込んでいたヌネフが、ヒラヒラと落ちてきた矢を掴んで、オレに見せつけた。

『ドスン、ドスン』

 さらに先ほどと同じように、次々と弓を持った盗賊が、足を縛られ木から落ちてくる。

「あっちにもいたのか」
「モペアは油断しすぎなのです」

 飛び道具は、射手も含めて、モペアとヌネフの2人に任せて大丈夫そうだ。

「ハサーリファ様!」
「分かってる! 申し訳ないがっ! 殺さないように、捕らえてくれないかな!」

 御者のお姉さんが、盗賊の一人と戦いながら、オレ達に向かって言った。
 何か思うところがあるようだ。

「了解!」

 それに、ミズキが応じる。
 というより、元々ミズキは殴りつけるように戦っている。
 やっぱり人を殺すのは、嫌だからな。
 怪我させず捕らえるというハンデがあってもオレ達が優勢だ。
 本当に、オレ達は強くなったな。
 刃物を持って襲いかかる盗賊相手に、魔法を使わず戦えている。

「えぃ!」

 特にノアが凄い。
 真っ赤な短剣を魔法でハンマーに変化させて、盗賊の武器を叩き落としている。
 ハロルドに鍛えられているとはいえ、本当に凄い。

「わかった。降参だ。見逃してくれ」

 戦いは優勢に進み、髭面の男が大声で降参と言った。

「降参?」
「いやいや、痛いのはこりごりなんでね」

 言い放った髭面の男はドスンと座り込む。
 それに習うように他のならず者も武器を投げ捨て座り込んだ。
 カガミが、痺れ雲の魔法で、3分の1をまとめて無力化したのを見て、勝てないと悟ったのか、あっさりとしたものだ。

「聞き分け良いねぇ」

 その様子を見て、御者のお姉さんが溜め息交じりに言う。
 確かに。
 聞き分けが良いな。誰も逃げないし。

「いやいや、だってよぉ、逃げようとしても追いかけてきそうじゃないか」
「そうだ。そうだ」

 この盗賊達……。
 自分のやったことを棚に上げて、どうしてオレ達を非難するような物言いなのだ。
 非難される側だろ。

「確かに追いかけるだろうねぇ」
「目的を知りたい」

 盗賊の言葉に、御者2人が苦笑しつつ頷く。

「だろ? だったら、ラジサーンの旦那にゃ悪いが命あっての物だねだからな。報酬より命だ」

 ラジサーンか。

「誰だ?」
「アーキムラーキムの店主さ」

 オレが怪訝な顔をしていたのを見て、御者のお姉さんが吐き捨てるように言う。
 それって、イスミダルの……。

「ヒヒーン」

 オレの思考を打ち切るように、馬のいななきが響いた。

「サラムロ、待ちなさい!」

 ラテイフの叫ぶような声が響く。
 ふと見ると、盗賊が乗っていた馬にサラムロが乗って、駆けて行くのが見えた。
 すぐにミズキを目が合う。

「私が」

 オレに向かって頷くとミズキが走って追いかけていった。
 身体強化と飛翔魔法で馬にも追いつけるという自信があるのだろう。
 嫌がらせをした犯人が分かって、押しかけるつもりなのか。
 彼の事はミズキに任せよう。
 それにしても、さきほどから気になることがある。
 なんでコイツら、あっさりと黒幕を自白してるんだ?
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