召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十四章 怒れる奴隷、東の大帝国を揺るがす

ていとへ

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 準備はできた。
 二階の運転席へ、皆で向かう。
 プレインの報告にあった帝都というものを見るためだ。
 遠くに見える帝都は、帝国という大国の首都として、ふさわしい外観をしていた。
 空から見るとカエデの葉に似た形をした堀。
 その中央あたりに上空からは花にも見える台地が広がり、さらに中心に巨大な建物が何棟も建っていた。
 長方形の建物は、まるで元の世界の高層ビルのようだ。

「まるで五稜郭っスね」
「わかるわかる。堀の形がそれっぽいよね」

 プレインとミズキは、帝都を取り囲む堀をそう表現する。
 さらに目を引くのは、その上空を飛ぶ巨大で赤い鳥。
 燃え盛る鳥。火の鳥だ。
 巨大な帝都にふさわしく、超巨大な体をした火の鳥が、ゆっくりゆっくりと帝都の上空を回っている。

「アレは……帝都の聖獣なんだろうな」

 サムソンが飛行島を運転しながら、感想をもらす。
 チラチラと赤い火の粉をまき散らし優雅に飛ぶ火の鳥は、帝都中央にそびえる巨大な建物の側面を照らす。
 さらに近づくと帝都の上空には何100匹もの飛竜が飛んでいるのが見えた。
 隊列を組んで飛んでいること、そして飛竜には人が乗っていることから、あれは帝都を空から守っている部隊だと判断できる。

「あんまりさ、空を飛んだまま近づくと、誤解されちゃうかもしれないね」
「そうですね。少し離れたところに降りた方がいいと思います。思いません?」
 
 少し外れた所で降りて、海亀に乗って、ゆっくりと近づくことにした。
 外に出ると、リスティネルとトゥンヘル。そしてシューヌピアが、飛行島の端に立ち帝都を見ていた。

「警戒厳重ですね」
「招待状があるので、入るのはなんとかなりそうです」
「まぁ、幸運を祈っておるよ。ふむ、帝都の……確かに立派な会場なことだ」

 目を細めたリスティネルが呟く。

「ここから舞踏会の会場が見えるのですか?」
「遠視の力じゃよ」

 この場所から舞踏会場の様子がわかるのか。さすがは金竜だな。

「おいらたちも、お祈りします」
「飛行島の守りはお任せを」

 緊急事態に備え、飛行島にはサムソンと獣人3人。そしてハイエルフ達が残る。
 飛行島は目立つということで、一旦は離れた場所に着陸させる。
 そこからは、海亀の背に乗って進む。
 海亀の足は、飛行島より遅い。
 到着は日没になるだろうが、それはしょうがない。
 安全第一だ。
 海亀の背に乗って帝都へと近づいていく。

「城壁が見えてきたっス」

 よく舗装された道を進むと、巨大な門が印象的な城壁が見えてきた。
 門からは巨大な橋がかかっていて、それはオレ達を待ち構えているようだ。

「黒い筒を見せれば良かったんだよな」
「そうですね。あとリーダ。これからは言葉遣いに気をつけてほしいと思います」

 そうだった、そうだった。
 今のオレは、カガミの外見をしていたのだ。

「大丈夫ですわよ」
「まぁ……くれぐれも、お願いしますね」
「ここから先は、私がセリフ考えるわぁ」

 カガミは冷ややかな目でオレにそんなことを言い、ロンロはオレの目の前に飛び出し、拳を握った。
 回りの反応みると、オレの言葉使いは不味いのか。
 気をつけなきゃな。
 でもなぁ。
 カガミってどんな喋り方していたっけ。いざとなったら、よく思い出せない。
 あんまり喋らないようにしておこう。

「ノアサリーナ様の事は知っておりますが、規則ですので」

 海亀が到着すると、すぐに兵士の中でも身なりの良い人が出迎えてくれた。
 オレは、招待状の入った黒い筒を見せる。
 兵士は、恭しく、その黒い筒を受け取り、持っていたガーゴイルの彫像の口に、黒い筒を突っ込む。

『ガゴン』

 ガーゴイルは大きく口を開け、その黒い筒を飲み込むと、ふわりと浮き上がり帝都の中央へと飛んでいく。
 紋章とか見て連絡先を確認するとばかり思っていたが、あれはあれで魔法の品だったのかな。

「一旦、オレ達は戻るぞ」
「あぁ」

 海亀からノアとオレは降りて、同僚達を乗せた海亀は一旦帝都から離れる。
 当初は、舞踏会の会場近くまで海亀で乗り込むつもりだった。
 ナセルディオに魔法陣をくっつけて、速やかに脱出して、とんずらという予定だった。
 だが、思った以上に警戒は厳重だったのだ。

「では、あちらの貴賓室にて、しばしお待ちを、迎えが参りますので」

 そう言い出した兵士に聞いたところ、想定外の状況が判明した。
 帝都は、外周区と中央区と2層から成っているそうだ。
 そして、舞踏会は帝都の中央区、さらにその中心辺りで行われるだろうということ。
 中央区の境界部分から、中心までは、相当の距離があること。
 そして、中央区に入れるのは、ノアとその付き添い一人だけということだ。
 つまり、舞踏会の会場から中央区の外までは、迎えが期待できない。
 加えて、夜は門を閉めるという。
 中央区を出て、帝都で同僚と合流しても、帝都から外には出られない。

「最悪、飛行島で突っ切る」

 そこで、最悪の場合は空から迎えに来て貰うことになった。
 どうにもならなくなった場合、迎えに来て貰う。
 その判断は、リスティネルにお願いすることにする。
 飛行島にいて、舞踏会の様子が見えるのであれば、オレ達がピンチになった場合も分かるだろうという判断だ。
 落ち着いて考えてみると、オレ達は舞踏会の招待状というネタに、上手く釣られてしまったのかもしれない。いろいろと検討不足だったことを後悔する。

「結構キツいっスね」
「しょうがないさ」

 だが、今さら引き返せない。上手くいかないことなんて、慣れている。
 同僚達を乗せた海亀を見送り、用意された豪華な貴賓室で迎えを待つ。
 赤い絨毯が敷かれ、年代物の渋いテーブル。フカフカのソファー。
 高い天井に、大量の絵がかけてある壁。適当に入った門なのに、これほど立派な部屋があることに驚く。
 豪華で立派な部屋の中、無言で居た堪れない時間が過ぎた後、1人の男がオレ達を迎えに来た。
 男は、ノアの前まで歩み寄り、片膝をついてお辞儀して名乗りだす。

「はじめましてノアサリーナ様。ご案内をさせていただくハマンドフでございます」

 真っ黒い髪をオールバックにした、執事風の男だ。
 この世界の人としては珍しくメガネをかけている。
 歳は40歳ぐらいだろうか、目付きが鋭く、細身だがひ弱という感じはしない。
 パリッとした隙のない服装と、立ち居振る舞いから、いかにも仕事ができますよと言った感じを受ける。
 少しヘイネルさんに似ているが、この人の方が体つきががっちりしていて強そうだ。
 そういや、ギリアの人達は元気かな。

「では、馬車を用意させておりますので、こちらへ」

 彼は丁寧だが、ひどく事務的な態度だ。
 微笑みを絶やさないが目が笑っていないので、少しだけ怖い。
 待っていた馬車はとても地味なものだった。
 大きな窓のあしらわれた真っ黒い馬車。
 金縁の屋根が、霊柩車を彷彿とさせる馬車だった。
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