召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

文字の大きさ
573 / 830
第二十七章 伝説の、真相

しんりのま

しおりを挟む
 部屋で、お茶を飲みつつカロメーを食べる。
 3人の大教授が席を外したけれど、何かあったのかな。
 それとも、尋問はあれで終わりにして、今後の事を協議でもするのかな。
 案外、オレのやる気に溢れる言葉を聞いて、感激してくれたのかもしれない。
 ところが、待てども待てども、3人は戻ってこない。
 しょうがないので、本を取り出して読みつつ待つことにした。
 そういえば、テストを特別に受けさせてくれないかな。
 反省室に居る間に、進級試験は終わったからなぁ。
 もっとも、今すぐ再試験といわれても、勉強不足だ。
 再試験しても無駄になる可能性が高い。10日後に……再試験。
 戻ってきたらダメ元で聞いてみよう。
 さらにしばらく待った後、ビントルトンとアットウトが戻ってきた。
 コウオルは居ない。帰ったらしい。
 良かった。あのキンキン声を聞いていると、こちらまで焦って苛つくのだ。
 それから、彼ら2人との会話。
 持ち出された提案は、予想外に意外で、不思議な提案だった。
 悪い話ではなかったので、了承し、さっさとスプリキト魔法大学を後にした。
 飛行島の家へと戻り、さっそく皆に報告する。

「卒業……ですか?」
「そうそう。条件付きなんだけどね」

 大教授達からの提案。
 それは、条件付きの卒業だった。
 聞いたときは一瞬判断に困った。

「いやいや。リーダ君ならば、黒本エニエルを一読するだけで、大きく前進すること間違いないと思うんじゃよ」
「そうです。こんな小さな学校に留まるにはもったいない」

 だけど、大教授2人のお墨付きを頂いて、これは一足飛びに卒業するしかないと思った。
 テスト勉強が面倒くさいしな。
 そういうわけで、了承した。

「外部に宣伝しない。地下室の一件は忘れ、決して他言しない。大学構内には2度と足を踏み入れない……か。悪くないと思うぞ」

 オレの説明を聞いたサムソンが、提案された3つの条件を思い出すように呟く。

「だろ? 不満は……無くはないけどね。それでも、悪くは無い。一も二も無く了承したよ」
「口約束か?」
「いや。他言できないように魔法で契約を結ぶことになった。ノアとノアの奴隷以外には言えないはずだよ。それから卒業後、オレが構内に入ろうとすると門番に捕まるんだとさ」
「あの、それで魔法で契約って……大丈夫なんでしょうか? 心配だと思います」
「結構すごかったよ。これぞ、魔法の契約って感じで……」

 契約の場面を思い出し、皆に説明する。
 巻物を読んだら、空中にリンゴが出現したこと。それを囓ると舌が痛くなったこと。
 アットウトが舌の痛みは1日くらいで治まると言い出して焦った事。
 でも、エリクサー飲んだらすぐに治ったこと。

「いやいやいや。私もうダメ。アウト」
「それは舌禍の契約ねぇ。とても強力な契約魔法よぅ」

 ロンロはオレが交わした契約魔法を知っているのか。
 ミズキが酷く嫌そうな反応するのを見ると不安になってくる。
 契約を交わしたときは、喋らないから大丈夫だろって思っていたが、怖くなってきたな。

「ロンロ。人に言っちゃったらどうなるの?教えて」
「リーダが喋ろうとしたら、舌が動かなくなるのぉ。それから、例外……ノア達が、リーダから聞いたことを話たら罰が発動するわぁ」
「罰?」
「リーダの全身に激痛が……」
「それって大丈夫なんですか?」
「人によっては発狂するって聞いたけどぉ」

 ロンロがさらりと酷い事を言いやがった。
 契約結ぶ時に、詳しく聞かなかったオレも悪いけど。

「解呪はできないんですか?」
「契約の魔法だから、証文を破壊すれば大丈夫よぉ」
「応じてはくれないだろうな」
「あと、そうそう。舌禍の契約だから、舌を切り落とす方法もあるわぁ」

 聞くだけで痛い。

「エリクサーありますよね。ところで、舌ってどのくらい切り落とせばいいんですか?」
「ちょっと待って、カガミお姉ちゃん。僕の舌を切り落とす前提の話は止めて」
「舌禍の契約は、舌に刻印がされるから、その部分全部を切り落とせば大丈夫よぉ。でも、それをすると、術者にはバレちゃうわぁ」

 オレの訴えはカガミに届かない。
 彼女は、ロンロと具体的な話を詰めていく。

「それじゃ、リーダ、舌を見せてもらえますか?」
「嫌に決まっているだろ」
「念のためです。切り落とすのは最後の手段です。最悪、激痛が起きた場合の対処を知っておきたいと思います。思いません?」

 なんか微妙だけど、カガミの言う事にも一理ある。
 しょうがないかと舌を出したところ、皆が首を傾げた。

「何にもないっスね」
「おかしいわぁ。舌の先から指二本分の幅に、猿の手を模した刻印がされるはずだけどぉ」
「あのね。エリクサー飲んだから治ったのかも」
「そういや、痛みが引いたって言っていたな。もしかして、契約は失敗したんじゃないのか?」

 確かにサムソンが言う通り、魔法の契約が失敗したのかもしれない。
 それなら気が楽だ。
 契約しなきゃ卒業させない……なんて言われていないしな。逃げ切りたい。

「試して見れば?」

 そこに、ミズキが何でも無いように提案する。

「激痛走ったらどうするんだよ」
「いや。リーダがさ、他の人に話してみるんだよ。酒場とかで。契約が働くなら、しゃべれないんでしょ?」

 なるほど。オレが約束を破れるかどうか試せばいいのか。

「そうだな。近いうちに試してみるよ」
「えっとね。皆は、喋っちゃダメだよ」
「そうだね。ノアノア」

 こうして、オレは半月足らずで、スプリキト魔法大学を卒業となった。
 過去の記録を大きく塗り替える、最速の卒業。裏取引有りのインチキだけど。

「でも、やっぱり、リーダはミランダに騙されたんだね」

 加えて、オレがミランダに騙されたことを説明したところ、ノアは一緒に怒ってくれた。

「そうなんだよ。あいつ、オレを置いて逃げやがった」
「もう。ミランダは悪い奴なんだから」
「そういえば、家賃の事を言いそびれたよ」
「次にやって来たら、ちゃんと言わなきゃね」
「そうだね。ノア」
「がんばろうね、リーダ!」

 これからお金は沢山必要になる。ミランダへの家賃請求もなんとかしなくてはならない。
 だが、まずはスプリキト魔法大学の卒業と、黒本エニエルだ。
 翌日、卒業の儀式を受ける。

「一応……説明しておきます。そのっ……スプリキト魔法大学では、年2回。卒業試験を受けることができます。卒業試験は、我ら教授達の前で発表を行うこと。発表の場ですが、1つは青の月初日に行われる定例会。そして……学生が志願することで開かれる臨時会。そのっ……いずれかです」

 卒業の儀式直前、唐突にアットウトが説明を始めた。
 そういや、カガミが卒業試験の事を言っていたな。
 スプリキト魔法大学は、論文を発表し、それが認められれば卒業だって。

「はい」

 とりあえず、卒業は確約されているので、適当に頷く。

「なので、リーダ君……今回、君は進級試験に合格し、その後すぐに卒業試験を志願したということにしました」

 なるほど、なんで急にこんな話をするのだろうと思っていたが、口裏合わせということか。
 試験に合格し1級になったその足で卒業試験を受ける……か。凄いな、設定上のオレ。

「かしこまりました」

 もちろん、口裏くらい簡単に合わせるつもりだ。
 そして卒業の儀式が始まった。
 儀式は、3人の大教授がボソボソと喋り、それから巻物を受け取るだけだった。
 巻物は卒業証書らしい。
 最後に、目的の場所に連れて行かれる。
 黒本エニエルのおいてある場所。
 真理の間と呼ばれる場所らしい。
 スプリキト魔法大学を象徴する3つの巨大な塔。そのうちもっとも高い塔の一番上のフロアに真理の間はあった。
 3人の大教授が、1つずつ鍵を持っているようだ。真っ平らな壁にポツンとある鍵穴へと順番に指していった。
 ピシリとひび割れる音がした。続いて、壁が中央で2つに裂けて開いた。まるで石壁がカーテンの様に蛇腹になる光景は、迫力があった。
 その先には円筒形の一室……真理の間だ。
 壁面には棚がある。そこには過去の卒業生が、スプリキト魔法大学の卒業試験に提出した論文が置いてあるらしい。
 そして、部屋の中央。小さな丸テーブルの上に、ポツンと黒い本が置いてあった。

「あれが、黒本エニエル……ですか?」
「そうです。これより、日没まで閲覧を許します」
「はい」
「なお、この部屋では魔法を使ってはなりません。よって監視させていただきます」

 え?
 それは予想外の一言だった。もうすでに昼過ぎだ。日没まで半日。
 オレは元々、ブラウニーを呼び出し、転記をお願いするつもりだった。難しければ、スライフに頼んでもいいかと考えていた。
 だが、監視付きということになると、不味い。
 魔法を無理に使うわけにもいかないし、スライフを呼ぶのもはばかられる。
 不味いな。さて……どうしよう。
 オレは内心の動揺しつつも、平静を装い、黒本エニエルの前に立った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

【完結】クビだと言われ、実家に帰らないといけないの?と思っていたけれどどうにかなりそうです。

まりぃべる
ファンタジー
「お前はクビだ!今すぐ出て行け!!」 そう、第二王子に言われました。 そんな…せっかく王宮の侍女の仕事にありつけたのに…! でも王宮の庭園で、出会った人に連れてこられた先で、どうにかなりそうです!? ☆★☆★ 全33話です。出来上がってますので、随時更新していきます。 読んでいただけると嬉しいです。

【完結】一番腹黒いのはだあれ?

やまぐちこはる
恋愛
■□■ 貧しいコイント子爵家のソンドールは、貴族学院には進学せず、騎士学校に通って若くして正騎士となった有望株である。 三歳でコイント家に養子に来たソンドールの生家はパートルム公爵家。 しかし、関わりを持たずに生きてきたため、自分が公爵家生まれだったことなどすっかり忘れていた。 ある日、実の父がソンドールに会いに来て、自分の出自を改めて知り、勝手なことを言う実父に憤りながらも、生家の騒動に巻き込まれていく。

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari@七柚カリン
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...