召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第二十八章 素敵な美談の裏側で

トッキーのりきさく

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「大発表があります」

 夕食が終わって辺りが薄暗くなってきた頃のことだ。
 ピッキーがそう宣言した。
 なんでも、かねてより作っていたサムソン考案の魔導具が完成したらしい。
 早速とばかりに、トッキーとピッキーがパタパタと動いて準備する。
 瞬く間に、片付けられた広間のテーブルへ木の棒が何本も並んだ。

「これが魔導具っスか?」

 プレインの言葉にサムソンが大きく頷いた。
 そして、トッキーとピッキーがテーブルの上から木の棒を一本ほど手に取った。

「今から使います」

 ピッキーが木の棒の両端を持って、少しだけ曲げると片方の手を放す。

「光ったでち」

 するとピッキーが手に持った棒は、青く鮮やかな光を放った。

「成功しました」
「そうだな。やはり暗いところの方がいいだろう」

 サムソンはそう言うと、木の棒を手に取りトコトコと外へと出て行った。
 トッキーとピッキーも小走りでサムソンの後をついて行き、オレ達も後へと続いた。
 ついて行ったオレ達と対面するように向きを変えたサムソンが、木の棒左右に振り出した。
 鮮やかに輝く木の棒は暗闇の中で、残像を残し輝く。

「それでどうなるの?」
「うん? どうなるとは?」
「これから先」
「これで終わりだぞ」
「終わりなんだ」

 光る棒か。続けてトッキーとピッキーも同じように棒を振り始める。
 何故か、その光景に見覚えがあった。

「あ、わかったっス。サイリュームっスね」

 プレインが楽しげな声を上げる。

「サイリュームって?」
「ほら、アイドルのライブとかで、こうやって振る……」

 プレインが手を上に上げて、左右に振ったジェスチャーでようやく思い出す。
 テレビでしか見たことがないが、確かにアイドルのライブで大量の人間が光る棒を手に左右に振ったりしていた。
 あれか。
 そんなプレインの言葉に、正解とばかりにサムソンが大きく頷く。

「そうだサイリュームだ。棒を折って、光を出すところを見ればすぐに気付くと思ったんだがな」
「そうなんだ」

 サイリュームって、折ったら光るのか。スイッチ入れたら光るのかと思っていた。
 でもそんなにすごい発明には思えない。

「しかも、こうやったら絵が出ます」

 ピッキーが素早く棒……サイリュームの魔導具を振り始めた。
 するとピッキーの持っていた棒が作る光の残像が、模様を作った。チューリップの模様だ。

「わぁ」

 鮮やかな光の模様にノアが声を上げる。

「模様も簡単にデザインできるし、これは作るのに手間がかからないんだ。だから低コストで大量に作ることができるぞ」

 サムソンが自信満々に説明していく中、トッキーが「どうぞ」とサイリュームの魔道具をオレに手渡してきた。
 見るとピッキーも、サイリュームの魔道具を手渡して回っていた。

「両手に持って折るだけ……あぁ、折れるように作ってあるのか」

 試してみると特に魔力を流すとかそういう事はせずに、両端を持って折るだけで光り輝く。
 オレのは青か。
 ノアは緑……見るとそれぞれの持っている色が違う。同じなのは、いずれも鮮やかな光だということだ。
 ただの光る棒。
 だけど滑らかに削られた円筒形の棒は、持った感じ心地いい。
 単純に光る棒ってだけなのに、振っているとなんだか楽しくなってくる。
 そうだ。

「ヴィィィン……」

 そう口ずさみながらプレインへ、スローな動きで攻撃する。
 プレインはオレと同じように、ゆっくりとした動きでオレの攻撃を受け止めた。
 そう映画で見た光る剣。ビームサーベルだ。

「ノアノアめ」

 ミズキがそう言って、ゆっくりとノアの頭にコツンと光る棒を打ち付ける。
 それに対してノアの反撃。
 後は自由なものだ。
 スローな動きでチャンバラごっこをしたり。左右に振ったりして遊ぶ。
 夜中に光る棒を振り回すというのが、これほど楽しいと思わなかった。

「こんなこともできます」

 遊んでいるとピッキーが両手に持って手をあげた。
 それから軽快な動きで振り回す。

「すごいでち」

 チッキーがその軽快な動きを見て、手を叩き感嘆の声を上げる。

「おいらも」

 トッキーがそれに続き、二人で息の合った踊りを見せた。

「二人ともやるじゃん」
「たくさん練習しました。サムソン様に教えていただきました」
「お手伝いします」

 二人はミズキの言葉に得意げに返事をした。

「サムソンに教えてもらった? あいつ踊れるのか」

 人間意外な特技があるんだな。
 ノアがパチパチと手を叩く。

「あの……すみませんが、サムソン、ピッキー君達に何の手伝いをさせるんですか?」
「何って……カガミ氏、あれだぞ。選挙活動だけど」

 ピッキーの踊りを満足そうに眺めていたサムソンが、こともなげに答えた。
 選挙活動?
 なんで光る棒が選挙活動に関係あるんだろう。
 そう考えているとサムソンがさらに言葉を続ける。

「本番前に、前座として二人に踊ってもらおうかと思っている」

 ん? 前座?

「前座って、サムソン」
「実際に歌を聴いてもらう前にできる人集めておきたいんだ。それでピッキー達にお願いしようかと……な」

 サムソンは何でもないことのように言う。
 でも、オレは理解不能だ。
 みると、他の奴らも理解できないといった調子で首を傾げていた。

「えっとサムソン、選挙活動の話をしてるんですよね?」
「そうだぞ。グッズも揃えた、スケジュール的なものをバッチリだ」

 グッズ、前座……。
 あ!
 閃いてしまった。気付いてしまった。

「でも、ユクリンって選挙なんかしていたっけ?」

 ということでサムソンに念のための確認をする。
 ユクリンというのは、サムソンが元の世界で応援していたアイドルだ。

「んー。ユクリンの場合は、ご当地アイドルコンテストって名前だったな」
「コンテストって……」
「いや、カガミ氏。その辺はグループによって呼び名が違うんだ。一番有名なのがOVT45だな。45人のアイドルがセンターを巡って選挙するやつ。ほらリーダにも総選挙の投票に必要なCD買うの手伝ってもらったろ?」

 そっちか!
 おかしいと思ったんだ。サムソンが政治的な話をするのを聞いたことがなかったんだ。
 そんな奴が何度も選挙運動なんてするわけがない。
 こいつ……アイドルの応援と生徒会選挙を、ごっちゃにしてやがる。

「あのちょっとサムソン、向こうでちょっとゆっくり聞かせてもらっていいですか」

 その答えにギョッとしたカガミが大きな声を上げた。

「一体、どうしたんだろうカガミ氏」

 言葉を言うやいなや、スタスタと、カガミが家に戻っていく。
 その後を、よく分からないといったふうにサムソンがついていく。

「リーダ……」
「リーダ様」

 尋常じゃないカガミの様子に、ノアとチッキーがこちらをじっと見上げていた。

「大丈夫だよ」

 ニコリと笑って、ノアの頭にポンと手を置く。
 それからカガミとサムソン……二人の後をついていく。
 大丈夫だ。少なくとも俺たちは巻き込まれることはないだろう。
 多分。
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