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第二十九章 理想郷と汚れた世界
らみあ
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「チッキー達は、私の後に」
ミズキが一歩ラミアに近づき、小声で指示をだした。
それに従って、チッキー達獣人3人は移動する。
「グルル……グルルルル」
にらみ合いが続く。
ラミアは動かなかった。奴は、うなり声をあげるだけだ。
上半身だけは人の姿をしているが、知能は低いらしい。
「すまん」
そこに、サムソンが合流する。
さて、どうするか。
「兄ちゃん!」
突如、チッキーが悲鳴をあげる。
振り向いたオレが見たのは、予想外の状況だった。
「えっ……あっ、あぁ」
ピッキーが、呻き声をあげて、ゆっくりと金色に変わっていった。
ジュウジュウと、まるで肉が焼ける音をたてて、金に変わっていく。
それはすぐに終わった。あっという間に、ピッキーが金の彫像に変化した。
「何が?」
「分からない……、気付いたときには、金に……」
「ミズキお姉ちゃん!」
「しまっ」
ブゥンと風切り音を立てて、ラミアの平手がミズキに振り下ろされた。
ピッキーに気がいっていたミズキの行動が遅れる。
落ち着いて考える隙すらない。
『パァン』
平手打ちの音が響く。
ミズキが吹き飛ばされるが、なんとか体勢を立て直し着地した。
側に落ちた剣を拾い上げ、彼女はすぐさまラミアに反撃する。
『パリィン』
何かが割れる音が鳴った。
ミズキの攻撃は通じない。それどころか、ミズキの魔剣が砕け散ってしまう。
そして、彼女の手に握られていたのは、魔剣ではなく、金塊だった。
剣の形をした金塊。
さっきから、何が起きている?
「何かみたか?」
「見てない……、なんか急に、金色に」
ピッキーが金塊に、そしてミズキの剣も……。
異常事態が起きている。
でも、なんだ、この状況。
「ワン! ワン!」
ハロルドが吠え声をあげる。
そうだ。ハロルドが何か知っているかも。
「ノアちゃん、呪いを解いて」
「ダメなの、今日はもう解いて……」
そういえば、最近はずっとそうだった。呪いと戦う訓練とかで、朝方に呪いを解いていたんだった。
「グギュルルルル」
ハロルドは、聞いたこともない声で、低く唸っていた。
「カガミ」
「え?」
ところが、考える余裕はやはりない。
ミズキがカガミの名前を呼ぶと同時。
『パァン』
むち打つ音がした。
蛇の尻尾が素早くうねり、カガミを背後から襲ったのだ。
しくじった。ラミアの上半身ばかりに気を向けていた。
「大丈夫か?」
「な、なんとか」
ラミアの攻撃をギリギリで避けたカガミが笑う。
だけれど、無傷とはいかなかったようだ。
彼女は、片手をだらりと下げていた。
「リーダ! 代わりの剣を頂戴」
すぐさま剣を影からとりだし、ミズキに投げる。
だが、それは無駄だった。彼女の手に渡ったのは、いつの間にか金塊に変わった剣だ。
先ほどから、なんだ、これ。
武器が……。
不味い。ラミアに決定打を与えるはずの武器が金に変わる。
魔法で対応するか。詠唱時間をどう捻出する……。
ラミアがこちらの隙を狙っているのは明らかだ。
時間はかけられない。
「アォーン」
次の手を考えているとき、ハロルドが大きく吠えた。
いままで聞いたことのない大きな声だ。
そして、ハロルドが巨大化した。
青く銀色に輝く巨大な狼になったハロルドが、ラミアの喉に食らいついた。
さっきから、予想外の事ばっかりだ。
でも、ハロルドの、これは良い予想外だ。
『ゴキン』
骨の砕ける音がして、ラミアが倒れた。
一瞬で終わった。
「すごい。ハロルド」
ノアが賞賛の声をあげる。
ところが、ハロルドは警戒を緩めない。
倒れたラミアの頭に乗って、上を見上げ唸るだけだ。
何かいる?
ハロルドが見つめる先に、絨毯が浮いていた。そして、その上に乗る人影も。
「誰だ?」
「あらら、バレてしまいましたか」
オレの声に、絨毯に乗った人物が立ち上がる。
それは、メイド服を着た女性だった。
でも、ただメイド服を着ているわけでは無い。全身にジャラジャラと宝石をつけた、派手すぎる格好だった。
パルパラン?
以前に出会ったパルパランを思い出す。奴の仲間か?
そうであれば、目的はオレ達だ。
「イ・アの部下か?」
「高貴なお方を! 高貴なお方を! その名を口から吐くな!」
当たったようだ。
激高した奴は、身を乗り出してオレを睨む。
それから、両手を大きく挙げると、にたりと笑い口を開く。
「まぁ、まぁ……良いでしょう。あにゃた……いえいえ、あなた達のこれからを思うと、怒るのも無駄な事。ここは我らにとっての理想郷。黄金郷」
「黄金郷?」
「そう。黄金。そして、あなた達にとっては、思想犯矯正処刑施設。つまりはぁ、ゴミのような考えを持った者を、正し、後悔させ、そして処刑する施設なのでございます。故に、この場にて苦しむのはお前達、明るく愉快にのたうちまわってくださいませ」
奴は言いながらクルリと回る。その足下には酒瓶があったようだ。絨毯から転がり落ちた酒瓶が、地面に落ちて割れた。蒸し暑い空間に、お酒の匂いが漂った。
「次はお前が相手ってことか?」
「いぃえ。違うのでございます。野蛮ではありませんですの。安寧こそ一番。その証拠に、これを差し上げましょう」
何かが上から落ちてきた。奴が投げ落としたのは、小瓶だ。
「あれは?」
「傷を癒やす霊薬。そこが臭い男に与えてごらんくださいませ。感謝し、使うとよろしいのでございます。そう、感謝し、この識見監理省が第一席、ウ・ビを崇めるがよいでしょう」
そう言って、奴は……ウ・ビは、両手の人差し指でサムソンを指した。
「怪我しているのか」
「あぁ、さっき木片が刺さったようだ」
「エリクサーいる?」
「持ってる」
小声でサムソンに確認を取ると、大事なさそうだ。
エリクサーがあるのは本当に便利だ。
「そぉうそぉう。あちらに、美味しいお酒に、甘い甘い果物も用意いたしました」
安心し、視線をウ・ビに戻す。
目の合った奴は、上機嫌でクルクル回り言う。
何がしたいんだ。あいつ……。
「オェエ……」
サムソンが嘔吐した。
『カラン』
澄んだ金属音が鳴る。
涙目でサムソンが吐き出したのは、金の塊。
それは、サムソンの吐き出した金が、地面でぶつかる音だった。
ミズキが一歩ラミアに近づき、小声で指示をだした。
それに従って、チッキー達獣人3人は移動する。
「グルル……グルルルル」
にらみ合いが続く。
ラミアは動かなかった。奴は、うなり声をあげるだけだ。
上半身だけは人の姿をしているが、知能は低いらしい。
「すまん」
そこに、サムソンが合流する。
さて、どうするか。
「兄ちゃん!」
突如、チッキーが悲鳴をあげる。
振り向いたオレが見たのは、予想外の状況だった。
「えっ……あっ、あぁ」
ピッキーが、呻き声をあげて、ゆっくりと金色に変わっていった。
ジュウジュウと、まるで肉が焼ける音をたてて、金に変わっていく。
それはすぐに終わった。あっという間に、ピッキーが金の彫像に変化した。
「何が?」
「分からない……、気付いたときには、金に……」
「ミズキお姉ちゃん!」
「しまっ」
ブゥンと風切り音を立てて、ラミアの平手がミズキに振り下ろされた。
ピッキーに気がいっていたミズキの行動が遅れる。
落ち着いて考える隙すらない。
『パァン』
平手打ちの音が響く。
ミズキが吹き飛ばされるが、なんとか体勢を立て直し着地した。
側に落ちた剣を拾い上げ、彼女はすぐさまラミアに反撃する。
『パリィン』
何かが割れる音が鳴った。
ミズキの攻撃は通じない。それどころか、ミズキの魔剣が砕け散ってしまう。
そして、彼女の手に握られていたのは、魔剣ではなく、金塊だった。
剣の形をした金塊。
さっきから、何が起きている?
「何かみたか?」
「見てない……、なんか急に、金色に」
ピッキーが金塊に、そしてミズキの剣も……。
異常事態が起きている。
でも、なんだ、この状況。
「ワン! ワン!」
ハロルドが吠え声をあげる。
そうだ。ハロルドが何か知っているかも。
「ノアちゃん、呪いを解いて」
「ダメなの、今日はもう解いて……」
そういえば、最近はずっとそうだった。呪いと戦う訓練とかで、朝方に呪いを解いていたんだった。
「グギュルルルル」
ハロルドは、聞いたこともない声で、低く唸っていた。
「カガミ」
「え?」
ところが、考える余裕はやはりない。
ミズキがカガミの名前を呼ぶと同時。
『パァン』
むち打つ音がした。
蛇の尻尾が素早くうねり、カガミを背後から襲ったのだ。
しくじった。ラミアの上半身ばかりに気を向けていた。
「大丈夫か?」
「な、なんとか」
ラミアの攻撃をギリギリで避けたカガミが笑う。
だけれど、無傷とはいかなかったようだ。
彼女は、片手をだらりと下げていた。
「リーダ! 代わりの剣を頂戴」
すぐさま剣を影からとりだし、ミズキに投げる。
だが、それは無駄だった。彼女の手に渡ったのは、いつの間にか金塊に変わった剣だ。
先ほどから、なんだ、これ。
武器が……。
不味い。ラミアに決定打を与えるはずの武器が金に変わる。
魔法で対応するか。詠唱時間をどう捻出する……。
ラミアがこちらの隙を狙っているのは明らかだ。
時間はかけられない。
「アォーン」
次の手を考えているとき、ハロルドが大きく吠えた。
いままで聞いたことのない大きな声だ。
そして、ハロルドが巨大化した。
青く銀色に輝く巨大な狼になったハロルドが、ラミアの喉に食らいついた。
さっきから、予想外の事ばっかりだ。
でも、ハロルドの、これは良い予想外だ。
『ゴキン』
骨の砕ける音がして、ラミアが倒れた。
一瞬で終わった。
「すごい。ハロルド」
ノアが賞賛の声をあげる。
ところが、ハロルドは警戒を緩めない。
倒れたラミアの頭に乗って、上を見上げ唸るだけだ。
何かいる?
ハロルドが見つめる先に、絨毯が浮いていた。そして、その上に乗る人影も。
「誰だ?」
「あらら、バレてしまいましたか」
オレの声に、絨毯に乗った人物が立ち上がる。
それは、メイド服を着た女性だった。
でも、ただメイド服を着ているわけでは無い。全身にジャラジャラと宝石をつけた、派手すぎる格好だった。
パルパラン?
以前に出会ったパルパランを思い出す。奴の仲間か?
そうであれば、目的はオレ達だ。
「イ・アの部下か?」
「高貴なお方を! 高貴なお方を! その名を口から吐くな!」
当たったようだ。
激高した奴は、身を乗り出してオレを睨む。
それから、両手を大きく挙げると、にたりと笑い口を開く。
「まぁ、まぁ……良いでしょう。あにゃた……いえいえ、あなた達のこれからを思うと、怒るのも無駄な事。ここは我らにとっての理想郷。黄金郷」
「黄金郷?」
「そう。黄金。そして、あなた達にとっては、思想犯矯正処刑施設。つまりはぁ、ゴミのような考えを持った者を、正し、後悔させ、そして処刑する施設なのでございます。故に、この場にて苦しむのはお前達、明るく愉快にのたうちまわってくださいませ」
奴は言いながらクルリと回る。その足下には酒瓶があったようだ。絨毯から転がり落ちた酒瓶が、地面に落ちて割れた。蒸し暑い空間に、お酒の匂いが漂った。
「次はお前が相手ってことか?」
「いぃえ。違うのでございます。野蛮ではありませんですの。安寧こそ一番。その証拠に、これを差し上げましょう」
何かが上から落ちてきた。奴が投げ落としたのは、小瓶だ。
「あれは?」
「傷を癒やす霊薬。そこが臭い男に与えてごらんくださいませ。感謝し、使うとよろしいのでございます。そう、感謝し、この識見監理省が第一席、ウ・ビを崇めるがよいでしょう」
そう言って、奴は……ウ・ビは、両手の人差し指でサムソンを指した。
「怪我しているのか」
「あぁ、さっき木片が刺さったようだ」
「エリクサーいる?」
「持ってる」
小声でサムソンに確認を取ると、大事なさそうだ。
エリクサーがあるのは本当に便利だ。
「そぉうそぉう。あちらに、美味しいお酒に、甘い甘い果物も用意いたしました」
安心し、視線をウ・ビに戻す。
目の合った奴は、上機嫌でクルクル回り言う。
何がしたいんだ。あいつ……。
「オェエ……」
サムソンが嘔吐した。
『カラン』
澄んだ金属音が鳴る。
涙目でサムソンが吐き出したのは、金の塊。
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