召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第三十三章 未来に向けて

ちょうきょだいゴーレムをみにいこう

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『ドンドンドン。ドン』

 扉を叩く音で、目が覚める。

「朝ですよ。起きてくださいまし」

 まったく。朝早いよ。
 ここ最近の日常となった起床を促す声。
 ハイエルフの双子がやってきて、10日以上が経った。
 最初こそは遠慮がちだった二人も、ほんの数日で馴染んで、楽しそうに過ごしている。
 特に屋敷にあったメイド服が気に入ったようで、自分たちで適当に直して使っている。
 そんな二人は、日中は飛行島にかかりきりだ。

「ノイタイエルっていうのは、思った以上に奥が深いようだぞ」

 二人から作業の説明を聞いたサムソンは感心したように言っていた。
 飛行島の動力源である緑色の円柱型魔導具ノイタイエルは、磨き方によって性能が大きく変わるそうだ。そしてハイエルフたちは長年の経験でどうすればいいのかということについてある程度突き止めていた。
 というわけで飛行島については、二人のハイエルフへ全面的に任せている。

 代わりにオレ達は究極を超える究極に力を入れる。
 パソコンの魔法の性能が上がっているのでサクサク作る事ができて気分がいい。

 魔法の究極。飛行島の強化。そしてあちこちから届く資料。
 いつもの日常が続く。
 それはハイエルフの双子を加えて過ごす日常が1月になろうかという時だった。

「ただいまっス」

 プレインが商業ギルドから荷物を持って戻ってきた。
 遺跡の村からの新しい資料だ。

「手紙も入ってるスよ」

 プレインから手紙をもらう。
 熊の獣人ヒンヒトルテからの手紙だ。

「超巨大ゴーレムについての報告……か」

 手紙の内容は、わくわくするようなフレーズで始まっていた。
 遺跡の村であるテンホイルで、超巨大ゴーレムを発掘しているというのだ。
 合わせて送られた資料を見ると、更にオレのワクワクは強くなった。
 なんとなくシルエットが、子供の頃に見た戦隊ものに出てくるロボットそっくりなゴーレム。
 祖父に買ってもらったことがある超合金ロボットを彷彿とさせるものだったのだ。

「夢が広がるな」

 サッと手紙を読み、サムソンに渡す。サムソンはカガミに、カガミはミズキにと、皆が手紙を読んだ。

「山よりも巨大なゴーレムとあります。見てみたいと思います。思いません?」

 皆がその巨大なゴーレムに興味を持った。

「ねぇねぇ。せっかくだからさ、ちょっと見に行かない? 遺跡の村だったらさそんなに遠くないでしょ。飛行島だったら多分2、3日で行って帰ってって、できそうじゃん」

 確かにミズキの言うとおりだ。
 そんなに遠くない。飛行島でパッと行って、見物して帰ってくるのはありだと思う。
 ところが……。

「申し訳ありません。今は、ちょっと……飛行島を動かせないのです」
「動かしてしまうと、ここ一月の調整が無駄になってしまいます」

 盛り上がるオレ達に対し、ハイエルフの双子が申し訳なさそうに言った。

「そっか残念」
「ところで調整ってのはどれぐらいかかるんですか?」
「たぶん、あともう一月あれば」
「じゃあ来月かな」
「せっかくだ。海亀で行くっていうのどうだ?」

 超巨大ゴーレムを見に行くことは、来月にしようと言いかけたオレに、サムソンが海亀での外出を提案する。
 なんだかんだ言って、サムソンもゴーレムを少しでも早く見てみたいのだろう。

「究極を超える究極はどうするっスか?」
「んーあぁ、コーディングならできるぞ。魔力保存の魔道具なら持ち運べるし、大丈夫だろ」

 ブレインの質問にサムソンが何でもないかのように答えた。
 そういえばもともと、屋敷の外で作業することも考えていた。

「じゃあさ、茶釜に引っ張ってもらって、久しぶりに海亀の旅だね」
「海亀で?」
「そうそう。昔みたいにさ」
「うん! 行きたい」

 ミズキの言葉にノアは笑顔で賛同し、それが決め手となって遺跡の村テンホイルまで海亀で旅することが決まった。
 行って帰っても、1ヶ月もかからないプチ旅行だ。
 そうと決まれば早速支度を始める。

「私たちは、ノイタイエルの調整があります。お留守番しますので、どうぞ旅を楽しんできてくださいませ」

 双子はそう言って留守番をかって出てくれた。
 というわけでメンバーは、ノアとオレ達、そしてピッキー達獣人3人。せっかくだからロバも含める」
 つまりは南方を旅していた時と同じメンツだ。
 あの時と違うのは、装備が充実していること。
 海亀の背に乗せる小屋は、あの時とは比べ物にならないほど立派なものになった。
 素材にも凝ったし、今回はピッキー達と彼らの師匠であるレーハフ。それからギリアの町に最近住み着いたドワーフ達にも協力をしてもらって作った小屋なのだ。
 小屋の中は外からでは分からないぐらいに広い。海亀が進みながらでも料理はできるし、風呂にも入れる優れもの。しかも、どんなに荒々しく海亀が動いても、小屋の中は全く揺れない。
 内装にも凝っている。
 複雑な模様が編み込まれた立派な絨毯に、大きく綺麗な木製のテーブル。
 天井から音楽を流すこともできる。
 ピッキー達に任せきりにしていたが、任せて大正解だった。
 ここまで立派なものになるとは想像もしていなかったので、ギリアの町で、小屋を受け取った時には驚きのあまり声が出なかった。

「これって、お風呂に入りながら夜景が楽しめるんですね。素敵だと思います。思いません?」
「台所も使いやすいっスよ」

 同僚達も大満足だった。
 思い立ってから2日後。

「出発進行!」

 久しぶりに聞くピッキーが言う出発の言葉。
 海亀は、それを受けてのっそりと動き出す。

「いってらっしゃいませ」

 こうして、双子に見送られ、遺跡の村テンホイルまで旅することになった。
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