召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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第三十三章 未来に向けて

しょうりのぽーず

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 たどり着いた先はドーム状の部屋だった。
 階段を上った先、部屋に入ると目の前に両端を金属製の棒で支えられた薄い壁……ついたてがあった。
 ついたての向こう側から光が差しているようだ。

 部屋はやや傾いているようで、少しだけ歩きにくい。
 ついたてを避けるように、ぐるりと迂回して進むと、その先はガラス貼りの壁だった。
 この場所は、3分の1程度だけ土に埋まっていて、残りは地表に露出していることが、ガラスごしに見える風景から推測できる。
 光は外から入っているようだ。
 高い高い日差しを浴びて、ドーム状の部屋を照らしていた。
 ガラス貼りになった壁の根元には、テーブルがくっついていた。
 テーブルはやや手前に傾いていて、その表面には人形の絵となにやら説明がいくつか書いてあった。
 他にも、さきほどの部屋にもあった緑色に光る柱がある。

「へぇぇ、外が見えるんだ」
「眩しいね」
「このボードをみろ。ゴーレムの全体像が描かれた紙が貼り付けてある」
「ここは頭みたいです」
「すごい! 武器もあるんだ」

 遅れてやってきたミズキ達が次々と感想を口にする。

「今いる場所は司令室だ」

 テーブルの説明を眺めていると、ヒンヒトルテの声が聞こえた。

「司令室?」
「あぁ。例えば、ここのハンドルを回すと……」

 ヒンヒトルテに聞き返すと、彼はテーブルの端に歩いていき、備え付けてあったハンドルを回した。
 ぐるぐると回すと、天井からラッパのような物が降りてきた。
 ラッパというより、鉄パイプの先端が広がったようなものだ。

「ここから声を吹き込むと、ゴーレム全体にその声が響き渡る。その声に応じて皆が、それぞれの役割を果たしゴーレムを動かそうという算段だ」
「役割を生かしか。とどのつまり、あのエアロバイクを、指示に基づいてこいで行くと。だが、ヒンヒトルテ氏。ここに貼り付けてある内容からは、別のアプローチを考えていたように読めるんだが……」
「そうだな。それは将来的な計画を示しているようだ」

 ついたてには何枚かの紙が貼り付けてあった。その一枚を指差してサムソンが口にした疑問にヒンヒトルテが答える。
 サムソンに近づいて見上げてみると、確かにゴーレムの全体像に、何やら書き込みがしてある。

「石の肉を作り、巨人の手足を動かす……か」
「それから、リーダ、お前の見ている紙の横に張り付いているものを見ると、足の部分は、計画に着手したことが書いてあるぞ」
「へぇ」

 思わず感心した声がでた。
 サムソンは読むのが早い。ついたてに貼り付いてある紙は字が小さくて読みづらい。
 それにしてもこのゴーレム、書いてあるイラストを見るとやっぱりなんかロボットっぽいな。
 ロボット、特に超合金ロボットのフォルムに似ている。
 今居る場所は頭部らしい。

「見て見て、ノアノア。あの向こう側に、川が見える」
「もしかしたら、前にお船に乗った時に降ったかもしれないでち」
「川下りのだ!」

 オレがついたてに貼り付けた紙を眺めていると、後から楽しそうな声が聞こえてきた。
 振り向くと、ガラス貼りの壁に皆が並んで、食い入るように外を見ていた。

「リーダ。あのね、川が見えるよ」

 ガラス貼りの壁に近づいていくと、ノアがオレを見上げて一方を指差した。
 光に照らされて、キラキラと光るそれは、確かに川のように見えた。
 あれが、昔に川下りをした時の皮だったら、今いるここは、あの時に見た遺跡の一部だということになる。
 なかなか感慨深い。
 それにしても、このドーム状の部屋が頭か。しかも、イラストから考えるに、この部屋全体をみても、頭部の一部にすぎない。
 広く大きなドーム状の部屋を見て、このゴーレムの大きさを実感する。
 そしてテーブルをちらりと見ると、ゴーレムがどのようなフォルムになっているのかが分かる。
 ついたてで見たイラストより、テーブルに彫り込むように描かれた全体像の方が見やすい。

「なぁ、サムソン」
「なんだ? リーダ」
「このゴーレムとやっぱりあれに似てないか」
「あれ?」
「ほら戦隊もののさ」
「合体ロボのことか?」
「そうそう。それでこんな感じで……」

 オレは両腕を胸元でクロスし、それから万歳するように両手を上げる。そして最後に正拳突きのように左手を下げ右手を前に突き出した。

「何をしてるんですか」
「カガミも知っているだろ? ほら戦隊ものの」
「船体? 船……ですか?」
「あー、なる。わかったわかった。あれでしょ、ロボットに乗った時に、なんかやる変な動き」

 カガミは全く理解の出来ないといった様子だが、ミズキは分かってくれたようだ。
 ちらりとサムソンを見ると、彼はオレを見ていなかった。
 プレインは外の様子を夢中になって見ていた。
 まぁ、いいや。ミズキが分かってくれたようだからよしとしよう。

「そうそう。勝利のポーズってやつかな」
「ショウリノポーズ……でしたか」
「ちがうんじゃない? あれ、やってるときって、まだ勝ってないし」

 ミズキは妙なところにこだわるが、反面ノアが興味深そうに頷き、オレの真似をする。

「カボゥ」

 ノアの肩にぶら下がっていたカーバンクルが続いて立ち上がり、前足を振るう。

「またノアちゃんに変な影響を与えて」

 その様子を見てカガミがため息をついた。それからオレに非難の眼差しを向ける。

「なんだよその言い方。ロマンだよロマン。超巨大ロボットに乗って戦う雰囲気が味わえるってのに、やれることをやらないのは損だろ」
「超巨大ロボットですか?」
「えっと、例えばマイコン戦隊コボルマンとか」
「そんなのあったっけ?」
「おい。リーダ。それ、年代的に、ミズキ氏には通じないぞ」

 サムソンのツッコミに「そうかも」と思わず答える。

「なんとなく、リーダの言いたい事はわかりました。でも、魔法で作られた山より大きな巨人を、超巨大ロボットとかで表現されると、雰囲気がぶち壊しだと思います」
「そうそう。そうだよね。ファンタジーとは違う感じ」

 オレのロマンは理解されない。
 超巨大ロボットに乗っているというのに、冷たい。

「うわっ」

 オレがちょっぴり落胆していると、プレインが小さく驚きの声をあげた。
 前方のガラス面、その端っこに、猿が両手をついてこちらをみていた。大きな猿だ。瞳がギョロギョロと動き、こちらを眺めている。

「魔物?」
「いや、猿だ。野生のドゥースカ猿だ。この辺りでたまに見る」

 目を見開いたミズキに、ヒンヒトルテが答えた。
 野生……そういえば、同じような猿をたまに町でみるな。

「まぁ、いいや」

 ちょっとした思いつきで、猿を目標に見立てて腕を振るう。
 シャドーボクシングさながらに、シャッとパンチをしてみる。

「どうしたの?」

 そんなオレを見上げてノアが首をかしげた。

「コボノレパンチっていってね、巨大ロボがパンチして敵をやっつけるんだよ」
「倒しちゃうの?」
「そうそう。子供の頃に、そういうお話を見たことがあって、思い出しちゃった」
「リーダが子供の?」
「今のノアよりも、もっと小さい頃だよ」
「そっか」

 オレの言葉を聞いて、ノアは笑い、それから先程のオレと同じように腕を振るった。
 そして、ダメ押しとばかりに、両手を胸元でクロスさせ、万歳した後、正拳突きをする。
 すごいな、先ほどのオレがやったばかりのポーズを覚えたようだ。

「じゃ、オレも」
「おいらもやります!」
「おらもやってみるだ」

 ノアにならって、オレも同じ仕草をする。
 ピッキーがそれに続き、トッキーとゲオルニクスも真似をした。

「もぅ」

 カガミが笑顔でため息をつく。
 こうして皆で並んでポーズを決めると、本当に戦隊モノごっこ風になるな。

「だいたい見たし、そろそろ戻るか?」

 それからしばらくして、サムソンが帰ることを提案し、皆で帰ることにした。
 ドーム状の部屋から出るまえに、少し振り返り外の風景をみたとき、ノアが窓に向かって腕を振るっていた。
 オレが見ていた事に気がついたノアが照れたように笑う。

「良かったね」

 それからノアが言った。

「そうだね」

 ノアの言葉に、オレは微笑みうなずいた。
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