召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

文字の大きさ
764 / 830
後日談 プリンス☆リーダ

王様と小さな騎士達

しおりを挟む
 テストゥネル様が指さした先に、大人の背丈ほどの高さをした緑の壁が見えた。
 すぐに、それは刈り揃えられた生け垣だと気が付いた。

「迷路なんだって」

 杖をサッと振りながら言ったノアに促され、生け垣に向かって歩くことになった。

「王様と小さな騎士達って、ゲームなんだ」

 そしてクローヴィスが、歩きながら生け垣が作る迷路に何があるのかを教えてくれる。
 パッと見た目、緑の壁に見えるソレは巨大な迷路で、なおかつ一個の巨大な魔導具。それを利用したゲームだという。
 王様と小さな騎士達。
 プレーヤーは3人、チームとなって迷路をゴールに向かって進むゲーム。1人が王様役で、残り2人が騎士役。魔物を模した魔導生物や、罠といったイベントをしのぎつつ進めるゲームらしい。
 大がかりな準備が必要で、世界にこのゲームができる設備は25か所もないそうだ。そのうち一つが目の前にあるアレだという。

「騎士役は、木剣と盾を使って……王様は錫杖を持つんだ。騎士は無敵だけど、王様が3回攻撃を受けるとスタートまで戻るから、守らなきゃダメなんだ」
「クローヴィスは遊んだことあるの?」
「うん。だけど、ずっと王様役だったから……でも、今日は騎士役やってもいいって! お母さんが」
「だったら、リーダが王様だね。だって王子様だもん」

 嬉しそうに話を進めるクローヴィスに、ノアが加わり役割分担が決まる。
 オレは王様役らしい。
 生け垣に近づくと、2人の人が近づいてきた。
 一人は猿の使い魔をつれた黒騎士エティナーレ。もう一人は、杖をついた小柄な老人だ。地面に届きそうなほどの長く白い髭に、とんがり帽子。いかにも魔法使いといういでたちだ。


「エティナーレ、クゥアイツ、準備は?」
「いますぐにでも。術は施してありますわ」
「宮廷魔術師団には背面にて術の安定を命じてありますじゃ。それから、見物のための飛行船ですが……そちらはあとわずかで、鐘の船が回る前には着きますな。王よ」
「では、しばらくは3人の活躍は見れぬかえ」
「まぁ、物見塔があちらにあるが、行くまでに飛行船が着こう」

 残念そうに呟くテストゥネル様に、ヨラン王がやや離れた場所にある小さな塔を見つめながら答えた。
 クローヴィスとノアは、エティナーレの使い魔であるオラウータンから、木剣と盾を受け取り構えたりしている。質素な木剣を手にしたクローヴィスは、今すぐにでも始めたいといった様子だ。
 飛行船が着くまでゲームを始めないという選択肢がテストゥネル様に無いのは、そんなクローヴィスを見てのことだろう。

「では王子、こちらを」

 はしゃぐ2人を見ていると、クゥアイツという老人が杖を差し出してきた。宝石のはまった杖を模した木製の杖だ。

「これで攻撃するのか」

 少し振ってみる。軽い手触りが心もとない。真新しい木の香りが良い感じだ。もっとも実践ではないから、危険は無いのだろうけれど、木剣とかのほうが強そうだ。

「ギャッハッハ。王様と小さな騎士達において、王様役は騎士達に守られるだけの存在だ。攻撃に参加はしない」
「へぇ」
「あれは遊びという目的とは別に、人を守る事、守られる事を学ぶという目的がある。せっかくだ、守られる立場を味わえばいい」

 なるほど。
 確かにルールも護衛をゲームにしたような感じだしな。

「リーダ! 早く始めよう!」

 木剣をブンブンと振るノアに呼ばれる。2人は生け垣の切れ目、入り口だと思われる場所でスタンバっていた。

「了解、いまいくよ」
「ふむ。クローヴィスの活躍が最初から見たかったのだが……仕方ないかの」
「ここからじゃ、生け垣の向こうが見えないのがね」
「あっ、それなら大丈夫そうっス……いや大丈夫らしいです」

 残念がるテストゥネル様にプレインが応えた。

「てやんでぇ」

 続いて、彼の足元にいたツルハシを持ったモグラが鳴く。
 片手にツルハシを持ち、小脇に瓶を抱えて口元に白い……マヨネーズを付けたモグラ。ノームだ。あの瓶にはマヨネーズが詰まっているようだ。どうせプレインの影響だろう。

「てやんでぇ!」

 そんなノームは再び鳴くと、ツルハシをコツンと地面に打ち付けた。

『ズズズ……』

 小さく足元の地面が音をたて、すぐさまオレ達の立っていた地面が隆起する。
 階段状になって隆起した地面から見下ろすと、壁に見えた生け垣の向こう側に広がる迷路が見えた。巨大な迷路だ。そういえば外国のお城に迷路があるというのをテレビで見たことがある。ここにも、こんなのがあるのか。しかも、元の世界とは違ってギミック付き。
 これは俄然やる気になってくる。

「ほれ、早よ行け」

 眼前に広がる迷路に見入っていると、後ろからテストゥネル様の声が聞こえた。

 「はいはい」

 隆起した地面から飛び降り、ノア達の元へ駆けていく。

「遅いよ」

 入り口に立ち、向こう側をチラチラと見ながらクローヴィスが言った。
 そわそわしているクローヴィスが面白い。

「ごめんごめん」
「もぅ。仲良くしないとダメだよ。クローヴィス」
「ごめん。ノア」
「頑張ろうね、リーダ」

 そしてはやるクローヴィスを先頭にして、オレ達は迷路へと入っていく。

「御武運を」

 背後から、エティナーレの声が聞こえた。
 子供の体だからだろうか、生け垣の向こうは不気味に見える。

「まずはボクが斥候するよ」

 クローヴィスがギュッと剣を握って言った。
 これもやはり、子供の体だからだろうか、クローヴィスが頼もしく見えた。

「うん。頑張ろうね」

 そしてノアが元気に頷く。ノアも頼もしい。
 通路は狭く、なんとか2人の人間が並ぶことができる幅だ。剣を振り回すことを考えると、並ぶのも厳しい。
 でも、入り口で感じた不気味さはなかった。逆に、草木の香りがほのかに漂いリラックスできた。まるで森の中にいる感じだ。
 見上げると生け垣が作る壁の向こうに青空が広がっていた。空にはフワリと飛ぶ鳥、そして鐘を吊り下げた飛行船。のんびりとした空の景色がとてもいい。

「敵だ! 気を付けて」

 空を見ながら先行する2人の後をついて行くと、クローヴィスが声をあげた。
 敵か。遊びとはいえ、よそ見はダメだな。ゲームに集中しよう。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

【完結】身代わり皇妃は処刑を逃れたい

マロン株式
恋愛
「おまえは前提条件が悪すぎる。皇妃になる前に、離縁してくれ。」 新婚初夜に皇太子に告げられた言葉。 1度目の人生で聖女を害した罪により皇妃となった妹が処刑された。 2度目の人生は妹の代わりに私が皇妃候補として王宮へ行く事になった。 そんな中での離縁の申し出に喜ぶテリアだったがー… 別サイトにて、コミックアラカルト漫画原作大賞最終候補28作品ノミネート

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄? めんどくさいのでちょうどよかった ――聖女もやめて、温泉でごくらくしてます

ふわふわ
恋愛
婚約破棄を告げられた聖女リヴォルタ・レーレ。 理由は、「彼女より優秀な“真の聖女”が見つかったから」。 ……正直、めんどくさい。 政略、責任、義務、期待。 それらすべてから解放された彼女は、 聖女を辞めて、ただ温泉地でのんびり暮らすことを選ぶ。 毎日、湯に浸かって、ご飯を食べて、散歩して。 何もしない、何も背負わない、静かな日常。 ところが―― 彼女が去った王都では、なぜか事故や災害が相次ぎ、 一方で、彼女の滞在する温泉地とその周辺だけが 異様なほど平和になっていく。 祈らない。 詠唱しない。 癒やさない。 それでも世界が守られてしまうのは、なぜなのか。 「何もしない」ことを選んだ元聖女と、 彼女に“何もさせない”ことを選び始めた世界。 これは、 誰かを働かせなくても平和が成り立ってしまった、 いちばん静かで、いちばん皮肉な“ざまぁ”の物語。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

処理中です...