召還社畜と魔法の豪邸

紫 十的

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後日談 プリンス☆リーダ

閑話 偉大な弟

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 それは、リーダとノアが、王様と小さな騎士達というゲームを遊んでいる時の事。
 遊び場となっている庭からさほど離れていない王城の一室、壊れたシャンデリアがゆらゆらと揺れる小さな部屋に、灰の長髪をした男……ヨラン王はいた。
 部屋には、いくつかの本棚と小さなテーブル、それから2脚の椅子。椅子の一つは子供用。
 ヨラン王は部屋の窓際に立ち、ジッと庭で遊ぶリーダ達を見下ろしていた。
 金に装飾されたモノクルを右手で弄びながら、ジッとリーダ達を見ていた。

「アーサー……」

 静かに眺めるだけだったヨラン王が小さく呟く。
 部屋にある子供用の椅子をチラリと眺め、呟きは続く。

「アーサー、お前に弟ができたぞ。望んでいた弟だ。やや強引な手を使ったが」

 そこまで言って、ヨラン王は自嘲気味に笑う。

「お前に比べて、頭は……良くないか。顔も、そうだな、アーサーが勝つかな。剣技もお前の方が上かもしれん。才気溢れ、天才と呼ばれたお前の方が……」

 ヨラン王は呟きながら、リーダ達と彼の一子であったアーサーを重ね合わせていた。
 ずっと昔、王様と小さな騎士達を遊び、それが終わると部屋の中で作戦を練っていた、アーサーを重ね合わせていた。
 そして、もし、リーダ達とアーサーが一緒に遊んでいたらと考えていた。

「だがな」

 ヨラン王は少しして小さく笑う。

「お前の弟は、世の誰よりも勇敢で、誰よりも優しく、誰からも好かれ、そして誰にも成し遂げられなかった事をやり遂げた。英雄であり、勇者だ」

 誰へとも無く呟くヨラン王の右目からは涙が流れていた。

「冥府にて誇るがいい。偉大な……弟だと。偉大な弟の、兄だと」

 そこまで言って、ヨラン王は人の気配を感じ振り返った。
 しばらくして、部屋にノックの音が響く。

「入れ」

 部屋を訪れたのは杖をついた老婆……星読みスターリオだった。

「王よ、ここにおられましたか」
「あぁ……少しばかり考える事があってな」
「左様でしたか」
「スターリオ。この部屋は、清め……閉じよ」
「よろしいので?」
「もういいだろう。そして、アーサーに……黒の滴により死した者達に正式な埋葬を」

 ヨラン王は、寂しげな表情で頷いたスターリオに任せ部屋をあとにする。
 それからモノクルを右目にはめ「ギャハハ」と笑った。

「アーサー……モルススと決着をつけたのち、お前に会うつもりだったが、少しだけ見届けたい事ができた。すまぬが、あとしばらく待っていてくれ」

 先ほどまでいた部屋の扉を見て、ヨラン王は呟いた。
 そして振り返る事なく、不敵な笑みを浮かべ歩き出した。
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