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後日談 その3 終章のあと、ミランダがノアと再開するまでのお話
その1
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黒に鈍く光る檻の中、巨大な鳥かごにも似たその中で、ミランダは息を吐いた。
彼女が立っていたのは、積み重なった死体で丘のようになった場所。
膨大な死体の他は、青々と茂った木々。空はとてもきれいな青空で、木々の葉を透かして差し込む光は、あたりを見事に彩った。
それは彼女が立つ場所も例外ではない。死体が流す血は、空からの光に反射しキラキラと輝き、不気味な美しさをたたえる。
森の緑と血の赤が、その場所を奇妙に演出していた。
その場に4人の人間が立っていた。
ミランダ、ゲオルニクス。そして白いロープ姿の恰幅の良い老人。最後に鮮やかな緑の長髪をし、やや幼さを残した女性。
彼女たちは勝利者だった。
それはス・スによって召喚された呪い子達が繰り広げた殺し合いで、呪い子達の多くは正気を失っていた。そのうえ死をも忘れていた。
全員が強力な呪い子だった。
狂気に飲まれた呪い子に対し、ミランダたち4人は同盟を組み、勝利した。
ミランダは青空をじっと見つめる。そして今度こそ本当に全てが終わったのだと悟った。
それから、いつのまにか呪い子の運命から解放された自分に気がついた。
足元にある死体の山など気にもとめず、ミランダは大きく息を吸った。
死体の山に立っていて、服も破れ、ひどい状況にもかかわらず彼女は笑みを浮かべた。
清々しい気分だった。
「さてと私たちは勝利したのだけれども」
それから他の3人へ問いかけとも取れる言葉を投げた。
「そうだなぁ。オラ達が必死になってる間にス・スも死んじまったようだ。まぁ、リーダ達がやったんだろなぁ。すげぇなぁ」
ゲオルニクスが涙声で応じる。
「はてさて、ここはどこだのかの」
続けて白髪の老人が言った。
「ちぇ、暴れ足りね。久しぶりに思いっきり遊べたのに」
最後に緑髪の女性が甲高い声で答えた。
「ここはアーハガルタの近くよ。西に行けばヨラン王国の港町クイットパース。東に行けば少し離れているけれどもギリアという街がある」
ミランダが白髪の老人に顔を向け答えた。
「ほうほう、ヨラン王国か。ええ加減、ずいぶんと南に来ちまったようだの。まったく暑くてかなわん」
白髪の老人が戯けて笑う。
「キャハハ。お前、あんなに火をボーボー吹いておきながら、暑いとか面白ぇーな」
緑髪の女性がケラケラ笑った。
「それはそれ。これはこれじゃ。そこらへんの木を切って逆召喚の魔道具でも作って、帰るとしようかのぉ」
「なんだ? もうけえんのか?」
「そりゃのぉ。鶏の丸焼きを作っとったんじゃ。とびきり豪勢なやつを。はよ帰らんと冷めちまう」
「鶏? 丸焼き?」
「あぁそうじゃ! 鶏の丸焼き。それから美味い酒。最後の日だから、豪勢に楽しもうと思っとったんじゃ」
「ほうほうへー」
緑髪の女が目をキラキラさせながら老人へと近づいていく。
その様子に気を良くした老人は、身振りを大きく料理の素晴らしさをかたる。
料理は得意だと、1000年を超える探求の末にたどり着いた味であると。それは究極の味だと。
「んで、それがお前がさっきまで居た場所。つまりカジャカ……だっけ? そこにあると?」
「そういうことじゃ」
老人が自慢げに答えた時だった。
緑髪の女性を中心に巨大な竜巻が起こった。
ケラケラと笑う女性を中心とした竜巻は、その場所を埋め尽くしていた死体を吹き飛ばし、周囲の景色を変えたかと思うと縮小した。そして唖然とするミランダの前で、竜巻は白髪の老人を飲み込みブゥンと音を立てる。その後、竜巻は黒い檻の1部を吹き飛ばし、青い空へと消えていった。
「とんでもねぇ。才能だな」
檻の壊れた部分を見上げ、ゲオルニクスが笑う。
「そうね」
ミランダはうなずき今起こった現象を分析する。
あれは魔法ではなかったと彼女は考えた。
ただただ純粋で強大な魔力を動かしただけ。圧縮した魔力の塊を、凄まじいスピードで動かすことで風を巻き起こし、自分と白髪の老人を投げ飛ばした。
ミランダは考察を続ける。
呪い子が如何に強大な力を持っていても、魔力操作は別の話だ。ただ単純に魔力を移動させただけでは、あれほどの現象は起きえない。
少しだけミランダは自分の手のひらに魔力を集中し動かしてみる。
どんなに頑張って動かしても、そよ風も起きない。
「きっとあれは誰に習ったものでも無い。教えようもない。自分で考え身に付けたものだ」
ミランダはつぶやく。
その発想と実現させる実力。それはとんでもないものだ。
ゲオルニクスはそれに気づき才能だと感嘆したのだろう。
コントロールされた竜巻であれば、2人は心配いらない。もともと心配する間柄でもない。知り合って半日も経っていない。
それにしても世界は広い。自分の想像もつかない形で魔力を行使する存在がいる。
「もっとも知ったことじゃないか」
ミランダは投げやりに呟いて考察を止めた。
「で、ゲオルニクス、お前はこれからどうするの?」
それから彼女は気持ちを切り替えて、残った一人へと問いかける。
「オラはまた旅を続けるだよ。ラザローを壊して世界を綺麗にしたいだなァ」
「ラザロー?」
「世界中にあるだよ。人の顔が掘られた柱の形をした魔道具だよ。モルススのクズ共が作ったくだらない魔道具だァ」
「あぁ、あれか」
各地の遺跡にある物だと、ミランダはすぐに納得する。世界中にある不気味な存在。
南方では見つけ次第、土に埋めてしまう。
放置しておけば獣人が病に倒れることが知られているためだ。
「んで、おめぇはどうするんだ? 行くところがあるなら送ってやってもいいだよ」
ゲオルニクスは足元に目をやりトントンとかかとで地面を叩いた。
それから言葉を続ける。
「ノームにお願いして、スカポディーロを呼ぶ出でだでよ」
彼の言葉に反応したように、地面が小さく音を立る。そしてノームが顔を出した。
「それには及ばないわ。私は私のようにやりたいようにやるから」
「まぁ、それもいいだな。せっかく全てが終わっただ。好きにするといいだァ」
それから時をおかず巨大なモグラの形をしたゴーレム……スカポディーロがやってきて、ゲオルニクスは乗り込んだ。
あとにはミランダが一人残った。
すっかり静かになった森の中で、彼女は自重気味に言う。
「さてと……いい加減、戻るとしようか。私が簒奪した国べアルドへ」
彼女が立っていたのは、積み重なった死体で丘のようになった場所。
膨大な死体の他は、青々と茂った木々。空はとてもきれいな青空で、木々の葉を透かして差し込む光は、あたりを見事に彩った。
それは彼女が立つ場所も例外ではない。死体が流す血は、空からの光に反射しキラキラと輝き、不気味な美しさをたたえる。
森の緑と血の赤が、その場所を奇妙に演出していた。
その場に4人の人間が立っていた。
ミランダ、ゲオルニクス。そして白いロープ姿の恰幅の良い老人。最後に鮮やかな緑の長髪をし、やや幼さを残した女性。
彼女たちは勝利者だった。
それはス・スによって召喚された呪い子達が繰り広げた殺し合いで、呪い子達の多くは正気を失っていた。そのうえ死をも忘れていた。
全員が強力な呪い子だった。
狂気に飲まれた呪い子に対し、ミランダたち4人は同盟を組み、勝利した。
ミランダは青空をじっと見つめる。そして今度こそ本当に全てが終わったのだと悟った。
それから、いつのまにか呪い子の運命から解放された自分に気がついた。
足元にある死体の山など気にもとめず、ミランダは大きく息を吸った。
死体の山に立っていて、服も破れ、ひどい状況にもかかわらず彼女は笑みを浮かべた。
清々しい気分だった。
「さてと私たちは勝利したのだけれども」
それから他の3人へ問いかけとも取れる言葉を投げた。
「そうだなぁ。オラ達が必死になってる間にス・スも死んじまったようだ。まぁ、リーダ達がやったんだろなぁ。すげぇなぁ」
ゲオルニクスが涙声で応じる。
「はてさて、ここはどこだのかの」
続けて白髪の老人が言った。
「ちぇ、暴れ足りね。久しぶりに思いっきり遊べたのに」
最後に緑髪の女性が甲高い声で答えた。
「ここはアーハガルタの近くよ。西に行けばヨラン王国の港町クイットパース。東に行けば少し離れているけれどもギリアという街がある」
ミランダが白髪の老人に顔を向け答えた。
「ほうほう、ヨラン王国か。ええ加減、ずいぶんと南に来ちまったようだの。まったく暑くてかなわん」
白髪の老人が戯けて笑う。
「キャハハ。お前、あんなに火をボーボー吹いておきながら、暑いとか面白ぇーな」
緑髪の女性がケラケラ笑った。
「それはそれ。これはこれじゃ。そこらへんの木を切って逆召喚の魔道具でも作って、帰るとしようかのぉ」
「なんだ? もうけえんのか?」
「そりゃのぉ。鶏の丸焼きを作っとったんじゃ。とびきり豪勢なやつを。はよ帰らんと冷めちまう」
「鶏? 丸焼き?」
「あぁそうじゃ! 鶏の丸焼き。それから美味い酒。最後の日だから、豪勢に楽しもうと思っとったんじゃ」
「ほうほうへー」
緑髪の女が目をキラキラさせながら老人へと近づいていく。
その様子に気を良くした老人は、身振りを大きく料理の素晴らしさをかたる。
料理は得意だと、1000年を超える探求の末にたどり着いた味であると。それは究極の味だと。
「んで、それがお前がさっきまで居た場所。つまりカジャカ……だっけ? そこにあると?」
「そういうことじゃ」
老人が自慢げに答えた時だった。
緑髪の女性を中心に巨大な竜巻が起こった。
ケラケラと笑う女性を中心とした竜巻は、その場所を埋め尽くしていた死体を吹き飛ばし、周囲の景色を変えたかと思うと縮小した。そして唖然とするミランダの前で、竜巻は白髪の老人を飲み込みブゥンと音を立てる。その後、竜巻は黒い檻の1部を吹き飛ばし、青い空へと消えていった。
「とんでもねぇ。才能だな」
檻の壊れた部分を見上げ、ゲオルニクスが笑う。
「そうね」
ミランダはうなずき今起こった現象を分析する。
あれは魔法ではなかったと彼女は考えた。
ただただ純粋で強大な魔力を動かしただけ。圧縮した魔力の塊を、凄まじいスピードで動かすことで風を巻き起こし、自分と白髪の老人を投げ飛ばした。
ミランダは考察を続ける。
呪い子が如何に強大な力を持っていても、魔力操作は別の話だ。ただ単純に魔力を移動させただけでは、あれほどの現象は起きえない。
少しだけミランダは自分の手のひらに魔力を集中し動かしてみる。
どんなに頑張って動かしても、そよ風も起きない。
「きっとあれは誰に習ったものでも無い。教えようもない。自分で考え身に付けたものだ」
ミランダはつぶやく。
その発想と実現させる実力。それはとんでもないものだ。
ゲオルニクスはそれに気づき才能だと感嘆したのだろう。
コントロールされた竜巻であれば、2人は心配いらない。もともと心配する間柄でもない。知り合って半日も経っていない。
それにしても世界は広い。自分の想像もつかない形で魔力を行使する存在がいる。
「もっとも知ったことじゃないか」
ミランダは投げやりに呟いて考察を止めた。
「で、ゲオルニクス、お前はこれからどうするの?」
それから彼女は気持ちを切り替えて、残った一人へと問いかける。
「オラはまた旅を続けるだよ。ラザローを壊して世界を綺麗にしたいだなァ」
「ラザロー?」
「世界中にあるだよ。人の顔が掘られた柱の形をした魔道具だよ。モルススのクズ共が作ったくだらない魔道具だァ」
「あぁ、あれか」
各地の遺跡にある物だと、ミランダはすぐに納得する。世界中にある不気味な存在。
南方では見つけ次第、土に埋めてしまう。
放置しておけば獣人が病に倒れることが知られているためだ。
「んで、おめぇはどうするんだ? 行くところがあるなら送ってやってもいいだよ」
ゲオルニクスは足元に目をやりトントンとかかとで地面を叩いた。
それから言葉を続ける。
「ノームにお願いして、スカポディーロを呼ぶ出でだでよ」
彼の言葉に反応したように、地面が小さく音を立る。そしてノームが顔を出した。
「それには及ばないわ。私は私のようにやりたいようにやるから」
「まぁ、それもいいだな。せっかく全てが終わっただ。好きにするといいだァ」
それから時をおかず巨大なモグラの形をしたゴーレム……スカポディーロがやってきて、ゲオルニクスは乗り込んだ。
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