平凡な会社員、今日から悪役令嬢の教育係

れおん

文字の大きさ
12 / 28

第12話:勝利の先に待つもの

しおりを挟む
「勝者、リリス=フォン=クラウゼル!」

対戦相手だった筋骨隆々の青年は、信じられないという顔で膝をついた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「……嘘だろ、この俺が………負けたのか?」

リリスは涼しい顔で剣を収め、ゆっくりと振り返る。そして観客席を見上げると、エリオット王子が面白そうに笑っていた。

「ふむ……なるほど、これは面白いな」

その視線に気づいたアキラは、背中に冷たい汗が伝うのを感じた。

(……嫌な予感がする。)

アキラは思わず背筋を伸ばした。この感覚には覚えがある。異世界に来る前、彼はブラック企業で働いていた。理不尽なクレーム、無茶な納期、突如として降ってくる追加業務——嫌な予感がするときは、だいたいロクなことが起こらなかった。

(そう、こういう時は大体何かが起こるんだ……俺のブラック企業仕込みの危機察知能力がそう言っている……!)

すると、エリオット王子が席を立ち、悠然と戦場に降りてきた。

「リリス嬢、素晴らしい試合だった」

リリスは眉をひそめる。

「……お褒めに預かり光栄です」

「いや、本当に。まさかここまでの実力をお持ちとはね」

エリオット王子はニコリと微笑んだが、その目には鋭い光が宿っていた。

「せっかくだ。次は僕と手合わせしないか?」

一瞬、観客席が静まり返る。

「……は?」

リリスが怪訝な表情を浮かべる。

アキラは、思わず身を乗り出し、前のめりになった。

(え、ちょっと待て、急に王子と試合!? いやいや、これはちょっとマズいパターンでは!?)

「リリス様、ここは丁重にお断りを……!」

そう心の中で叫んでいると、リリスがふっと微笑んだ。

「……よろしい。では、お手柔らかに」

アキラは頭を抱えた。

(いや、乗るのかーーーい!!)

そして、リリスはエリオット王子に背を向け、アキラの方へ向き直る。

「私の教育係が、あなたの相手をします」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

処理中です...