【完結】貴方が幼馴染と依存し合っているのでそろそろ婚約破棄をしましょう。

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「夜会?」

昼休み。
いつもはアルバートと昼食を取っている中庭のベンチ、私の隣にはヴィンセントが座っていた。

「うん。公爵家主催ともなればうちの両親もアルバートも出席せざるを得ないからね」
「開くのは良いけれど……」

ランチを取りながらの作戦会議。
「他の生徒たちがいる所で会う分には誰も疑わないだろ?」と言うヴィンセントの言葉通り、何人かの生徒たちが遠巻きにこっちを見ているだけで誰も気にした様子はなかった。

「家にちょっと仕掛けたい物があるんだ」
「それはこの間言ってた、ある物ってやつ?」
「うん。だから家から人を追い出したいんだよね」

あ、これちょうだい?
ヴィンセントは私のお弁当からサンドウィッチを手に取りパクッと食べた。

「美味しいねこれ」
「ほんと?実はマヨネーズも自分で作ったの」
「シャロンの手作り?凄く美味しいよ」
「嬉しい……ってそうじゃなくて!」

(危ない、ついほっこりタイムになっちゃった!)

「大丈夫なの?」
「うん、屋敷の使用人たちは俺の味方だし」

ぱくぱくと食べながらヴィンセントは言う。

(まぁヴィンセントが言うなら間違いないだろうけど……夜会じゃないとダメなのかしら、お茶会でも3人は参加してくれると思うんだけど)

言いたげに彼を見れば、私が何を言いたいのか察したらしく小さく微笑み返された。

「夜会ならあいつが参加しやすい」
「それって……」
「エマだよ、あいつ日中は外に出ないから」

つまらなそうに言う。

私はラングレー嬢をよく知らない。
アルバートから聞く限りの情報では、身体が弱くて友達がいない人。そして日中は外に出れないなんて……

「不思議な人……」
「シャロン!」

突然名前を呼ばれ、振り向くとそこには息を切らしたアルバートが立っていた。ここまで走って来たのか若干額に汗も滲んでいる。

「アルバート」
「何故ここに兄さんがいるのですか」

私たちの前に立ったアルバートは酷く焦った様子。
そんな彼をじっと見つめた後、ヴィンセントはふふっと軽く笑う。

「学校に所用があったんだ。で、偶然シャロンを見かけたから一緒にランチをしていただけ」
「っ!……シャロンはいつも僕とランチをしているんです。勝手をされては困ります」

いつもとは違う様子に首を傾げる。

(アルバートが私のことでこんなに焦るなんて一度もなかったのに)

「なら何故今までここに来なかったんだ?」
「……それは、今学校に到着したので」
「へぇ、午前の講義をサボれるほどお前はそんなに成績が優秀なのか?」

ニヤッと笑いながらアルバートを責め立てる。

(ど、ドSなヴィンセント……!)

チラッと周りを見れば流石にこの雰囲気に気付いた生徒たちがコソコソと話をしていた。

「ヴィンセント、そろそろ」
「またエマに呼び出されたのか?」
「!」

ラングレー嬢に?
アルバートを見れば図星なのか唇を噛んでいた。

「図星だろ?お前がラングレー家から直接登校して来ている事はお見通しだ」
「……」
「そのきつい金木犀きんもくせいの香りが逃げられない証拠だな」

金木犀、確かに言われてみればその香りがする。
今は金木犀が香る季節ではないというのに。

(そういえば前にアルバートが言ってたわ。「エマの部屋では常に金木犀の匂いによく似た香を焚いている」と)

まさに確定。
アルバートは彼女の部屋からここに来たのか。

「仕方ないですよ、エマを昨日家に送った後に帰らないでくれと強請られたんですから」
「……それを私の前で言うのね」

思わず口に出してしまう。

「シャロン、誤解しないでくれ。僕とエマはそんな関係じゃないよ」
「……」
「どうしたんだい、いつもの聞き分けの良い君に戻ってくれよ」

アルバートは困ったように笑いながら私の髪に触れようとしてくるが、咄嗟にその手を避けてしまう。

(っ!まずい、気付かれちゃう)

私が彼を避けていると知れればきっとあのアルバートでも異変に気付く。チラッと顔を伺えば特に気付いた様子はなく、むしろまだご機嫌取りをしようとニコニコと不自然な笑みを浮かべている。

「もしかしてエマばかりに構っているから嫉妬してくれてるのかい?嬉しいけど、あらぬ誤解をされては困ってしまうよ」

ペラペラと饒舌なアルバートにますます疑惑を持つ。

(今までは気にした事なかったけど、疑われてると勝手に思い込んで私を諭すような態度……本当にエマとそういう関係なのかしら)

「……まぁいい。シャロン、それじゃ俺は帰るよ」

やり取りを見ていたヴィンセントは徐ろにベンチから立ち上がる。
すれ違いざまにそっと耳元に顔を寄せられた。

「さっきの件、頼むね」
「っ、ええ」

囁かれた甘い声にビクッと肩が震える。
ヴィンセントはこちらを振り返ることなく帰っていった。

「シャロンっ!兄さんに何か余計なこと吹き込まれてないよね?」

彼の姿が見えなくなった途端、アルバートはガシッと私の肩を掴み詰め寄って来た。

「ええ、本当にたまたま会っただけ」
「本当かい?!」
「この間の食事会での話をしたり……どうしたの?何だか焦ってるみたいね」

そう言えばアルバートはパッと手を離し、しばらくしてからふぅと大きく深呼吸した。

「ハハッ!ごめんね、ちょっとだけ心配になったんだよ。ほら、シャロンは美しいから兄さんに取られちゃうんじゃないかと思って」

アルバートは笑いながら私の隣に座る。

「あのね、今度ロットバレン家主催の夜会を開こうと思うんだけど貴方の都合はどうかしら?」
「夜会?ああいいね!もちろん参加させて貰うよ!」

平常心を保ちながらアルバートに話しかける。彼は私たちの思惑に気付かないまま二つ返事で答えた。

「お義父様もお義母様も、それにラングレー嬢も来てくれるならとても嬉しいわ」
「エマも?」
「ええ。体調が良ければだけど、きっと息抜きくらいにはなると思うの」
「わぁ!それはいい考えだ、きっとエマも喜んでくれるよ!シャロン、君はなんて素晴らしい人なんだ!」

ガバッと抱きつかれた瞬間、背中にぞくぞくと寒気が走った。

(我慢……我慢しなきゃ!)

「日程が決まり次第、また招待状を送るわ」
「ああ。では早速僕はエマに知らせてくるよ!」
「え、また行くの?午後の講義は?」
「勉強なんかどうでもいいさ!」

そう言ってアルバートは別れの挨拶もそこそこに何処かへ行ってしまう。

「……あんなに愚かな人だったとは」
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