【完結】番犬と呼ばれた私は、このたび硬派な公爵様に愛されることになりました。

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「神父様は殺されたんです……っ!シスターに!」

泣きじゃくるメロを何とか建物の影まで移動させ、周りに気付かれないように彼女から話を聞く。
最初は戸惑っていたメロだが、ぽつぽつと真実を話し出してくれた。

「殺された……?」
「あの女がここに来たのは1年くらい前です。大雨で村を失ったからしばらくここで暮らしたいと言ってきました。神父様はとても優しい人だから、仕事をちゃんとするならいつまでも居ればいいと仰って……それからあの女は私たちとここで暮らしていたんです。でもそれが間違いでした……!あの女は、ここらを荒らす野盗と繋がっていたんです」

(あのシスターが、野盗の仲間?)

「夜中、あの女が森に行き野盗のボスと話をしてたのを偶然見てしまいました…っ!あの女は私たちの中に潜り込み、神父様から鉄線のひみつを聞き出そうとしてたんです…っ!」
「鉄線って、教会の周りにある?」
「あの鉄線には電気が流れ込む仕組みになっているんです。そのスイッチがどこにあるかは神父様しか知らないから、やつらはそれを聞こうと……でも、神父様はある日突然亡くなりました。きっと、きっと場所を聞き出したあの女が殺したに違いありませんっ!」

うわぁぁんと泣くメロは顔を伏せる。

(鉄線……そうか、それで野盗を追い返していたんだ)

張り巡らされていた鉄線を思い出す。
工具ではちぎれないほど太かったのは電気を通す役目もあったから。馬を乗り荒らす彼らをらしてみれば侵入は厄介だっただろう。

でもここは公爵家が保有する教会。
高額な援助金さえ手に入れば、当分つまらない荒らしをせずとも生活はできる。
見逃すには惜しい好条件に、彼らは何とかして打開策を練ったわけか。

「このことを知ってるのはメロだけ?」
「はいっ……他の子たちは知りません。だから神父様の跡を継いだあの女をみんな慕っています」

この教会に来たとき、特に疑う空気がなかったのはシスターが信頼を得ていたからか……。

「それと……もういっこ、あって」
「何?」
「シスターが野盗の男に怒鳴られていたのをたまたま聞いたんです。“早くしないと今月分が間に合わない”って」

今月分、の単語に引っ掛かりを覚える。

(野盗たちは盗んだ金で生活する。金はそのまま自分達が使うから間に合わないなんて言わないはずだけど……)

そこまで考えて、ある一つの可能性に気付いた。

もしかしてやつらは、盗品をどこかに横流ししているのかもしれない。
教会には貴重な絵画や骨董品が貯蔵されているが、その全てにシリアルナンバーが刻印してあるから盗まれる率が比較的低い。
でも、それはあくまで国内での話でありひとたび国を出てしまえば追跡は不可能に近いだろう。

(もし国外への流通ルートを確保してるとしたら……)

「実行犯の他にも教会荒らしに関与している人物がいる」
「へ?」
「……ううん、何でもない。教えてくれてありがとう」

メロの頭をポンポンと撫でれば、少しだけ安心したのか優しく微笑んでくれた。

教会のお金を盗られることよりも、子供たちが危険な目にさらされ続けることの方が深刻だ。
根本から根絶やしにするには、一体どうしたら……

(ルド様の到着を待つ?でもそれだと野盗たちが動くかどうか……そうだ!)

「ねぇ、メロ。お願いがあるんだけどいいかな?」
「何でしょうか?」
「この後、シスターはメロに何を話したのか聞きに来ると思うんだ。その時に、これから言うセリフをこっそり伝えてくれないかな?なるべく不自然のないように」

メロはいまいち分かってないまま、小さく頷いてくれる。

彼らは近々この教会を襲いに来る。でもそれが私たちの慰問中に来てくれないと意味がない。
ならば、今日明日で来るように仕向ければいい。

野盗たちが恐れていること、それはと鉢合わせしてしまうことだろう。だったらそれを利用するまでだ。

「シスターにこう言って。“公爵夫人がこの土地を気に入り、近々別邸を建てようとしている。公爵が到着したらすぐに報告するらしい”ってね」
「別荘……?でもそれって何の意味が?」
「別荘の話がルド様に伝われば、すぐにこの辺りに視察団が土地の地盤やらを調べ始める。工事が始めれば大工たちが日夜仕事をして、建て終わっても管理する使用人や門番が常駐する。監視の目が多ければやつらはますます盗みに来れないでしょ?」

ルド様が到着する2日後の朝から、この場所には常に人の出入りがある。

「チャンスは明日の夜だけ」
「っ?!それじゃ、危ないです!リゼリア様に何かあったら、それこそ神父様に顔向けできません!」
「……心配してくれてるの?」
「当たり前ですっ!」

(嬉しい。嬉しくて泣いちゃいそう……!)

あまりに感動してメロの身体をぎゅうぎゅうと抱き締めた。
危ないだなんて言われたの、何年ぶりだろうか。新鮮すぎる反応でびっくりしてしまう。

「貴女たちを守るために護衛は1人付けるし、神父様が残してくれたこの教会も傷一つもつけさせないから」
「……何でそんな断言できちゃうんですか」

不安そうなメロに微笑む。


「あのね、私、この世で勝てないのはたった1人だけって知ってるんだ」

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