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しおりを挟む「あと例の頼まれていた件ですけど」
「ヘレン嬢のこと?」
「はい。彼女、最近数ヶ月の間にキサラギ館での人気がかなり落ちてるみたいですね」
カイは淡々と興味なさそうに離し始めた。
「一番の得意先であるプレジット伯爵が全く来なくなったのもありますが、どうやらムバール子爵の息子が彼女の評判を落としてるみたいですよ」
簡単に説明するとこうだ。
侯爵家のパーティーで大恥をかいたヘレン嬢は帰る間ずっとムバール卿を責め続けた。
「何であんな女にアタシが怒られなきゃならないの!」
「何で助けてくれなかったの!」
「貴族のくせにカッコ悪い!」
この最後の一言が効いたらしく、彼は街でヘレン嬢のある事ない事悪口を言い触らした。当然彼女は否定し続けたが厄介な女というレッテルを貼られた彼女を指名する貴族は誰一人としていなくなったそうだ。
お互い様、と言ってしまえばそれまでだけど。
ヘレン嬢の仕事は人気があってこそ、今の彼女はただの金がかかる我儘娘だ。
「じゃあ旦那様もその噂で彼女に愛想が尽きたのかしら」
「どうですかね、旦那様が彼女のどこを好きになったのかは知りませんがその程度の愛だったって事ですよ」
身請けの話も出していたくらいだ、遊び半分でそんな事を持ち出していたのかしら。
「今は他の娼婦と同じで客引きに忙しいみたいです」
「あらそう」
正直私はヘレン嬢に興味を失っていた。
彼女と出会う前はジュライア様があんなに夢中になる女性なんだからと興味津々だったが、あのパーティーでの一件以来彼女が可愛いだけの常識知らずだと知ってしまった。
男を手玉に取る悪女、だなんて過大評価だったわね。
「でもまぁこれから気を付けて下さいね」
「?何が」
「彼女、パトロンを失って必死らしいから近々この屋敷にも押しかけてくるんじゃないですか」
「ええっ……あ、あり得るわね」
ぶっ飛んだ彼女なら可能性はある。
慰謝料なのか正妻の座なのか知らないけど、とにかく欲張りなお嬢さんならどっちもかしら。
ジュライア様もここ最近はようやくまともになったかと思ったが、愛するヘレン嬢を目の前にしたらまた変わってしまうかもしれない。そうなった時、私は伯爵夫人としてちゃんと止められるかしら……。
こっそりふぅとため息をついてしまう。
「奥様は相変わらず疲れてますね」
「まぁ……この家に嫁いできてからはずっとね」
「早く全部捨てちゃえばいいのに」
他人事のように言うカイにイラッとしてしまう。
カイの言う通りよ、こんな面倒な事全部放り出して一人旅にでも出てしまえばいい。そんな事は私が一番よく分かってるわよ……でも。
「女のちっぽけなプライドでも、ズタズタにされたからにはただ泣き寝入りするのは性に合わないのよ」
私だけじゃなく私の家族を馬鹿にしたジュライア様。
妻である私を軽んじた浮気相手だって同罪。
ニッと小さく笑いかければカイは苦笑する。
「……貴女は本当にいい女すぎますね」
「ふふっ、ありがと」
「全部終わったら祝杯をあげましょう。イブライカの名産でも食べながら、どうか俺にエスコートさせて下さい」
「まぁ、それは楽しみだわ」
不敵な笑みを浮かべカイの真っ直ぐな言葉に小さく頷く。
彼にとっては社交辞令かもしれないけど……私がこっそり浮かれていたのはここだけの話。
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