【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る

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あぁ……なんて気分がいいんだ。


「バレイン殿下!おめでとうございますっ!」
「我らの獅子王さまっ!どうぞお幸せに!」
「レイチェル妃殿下ばんざーい!」

王宮のパーティー会場には多くの貴族たちが集まり、玉座に座る私に向かって大きく手を振っていた。
日頃であれば無礼にあたるそんな行為も、今日だけは大目に見てやっている。

何故なら明日、国の王である私バレイン=ゾーネシアは愛する恋人と晴れて夫婦になるのだ。

「いやいや前祝いだと言うのにこの盛り上がりよう、日頃の陛下への忠誠心が顕著に現れておりますなぁ」
「ふっ、当然だ。国民はみな私の家族、その家族の幸せを心から祝えることこそ奴らの幸せなのだろう」
「そうでごさいますなぁ」

ぐびっとワインを飲み干す。

そんなこと当たり前だ。
高潔と名高い獅子の血を色濃く受け継ぐ私は、この国の誰よりも上の立場。
生まれ持った強靭な肉体と輝かしい金色の髪に男たちは羨望の眼差しで見つめ、女たちはうっとりした視線を送る。

そんな私が、ついに伴侶を娶るのだ。
喜ばぬ民などいるはずもない。

「ところでレイチェルはどうした?」

側に控えていた臣下に声をかける。

「はっ!ただいま4度目のお色直しに……そろそろこちらに戻ってこられる頃かと」
「そうか」

先程の真っ赤なドレスも似合っていたが、今度はどんな姿を見せてくれるのだろうな。
思わず鼻の下が伸びてしまう。

猫の血を引く彼女は魅惑的なプロポーションを持ち、その妖艶な容姿はこのゾーネシア王国一の美人といえる。

そんなレイチェルこそ、私の妻に……ゾーネシア王国の国母にふさわしいのだ。

「なぁランセル、お前も娘の晴れ姿を私の側で見られるなんて幸せであろう?」

側に控える男に声をかける。

「仰る通りでございます、陛下」

深々と頭を下げた私の側近でもありレイチェルの父であるランセル=スコットは、いつものように落ち着いた声で返事をする。

こいつは父上の代から王に仕えていた、とても信頼のおける家臣の一人だ。

「ほっほっほ、羨ましい限りですなぁスコット卿。明日より王家の仲間入りではないですかぁ」
「いえ……私はただ、陛下にお仕え出来ればそれ以上のことは望みません。むしろ愚かな娘に目をかけて下さった、陛下の寛大なお心に感謝するのみでございます」

古株である上級貴族どもの嫌味もさらっと受け流す。
こいつめ……相当肝の座ったことをする。

「あまりランセルをいじめてやるな。こいつは明日より私の義父になるのだからな」
「はははっ!そうでございますなぁ!」

全く……いつの世も嫉妬とは恐ろしい。

次期王妃の座は誰もが狙っていた。
出世狙いの上級貴族たちは、王家の後ろ盾目当てに娘どもを寄越してきた。なんなら一度のお手付きでさえ良いと言う者もいたな。

だが、私は誰一人抱こうとはしなかった。
恋人のレイチェル以外は。

彼女と出会ってもう8年か……。
獣人は多くの子孫を残す習性により、たった一人を愛し続けることが難しい生き物だ。
それなのに私は今日までの8年間ずっとレイチェルだけを愛し抜いてきた。

まさに純愛。
これこそ国を揺るがす運命的な愛なのだ。

「バレイン様」

鈴の音のような声が聞こえる。
振り返れば、そこには淡いグリーンのドレスに身を包んだレイチェルが立っていた。

「あぁ……美しい、レイチェル。まるで森の精霊がやって来たかと思ったぞ」
「まぁ!陛下ったらお上手ですこと」

控えめに微笑む彼女に周りの男どもがごくりと生唾を飲み込む。

そうだろう、彼女はとても美しい。
生娘を想像させるそのドレスも、魅惑の身体を持つ彼女が着ればアンバランスで逆に艶かしく見える。

私は彼女に歩み寄り細い腰を抱き寄せた。
緩く髪が纏め上げ、曝け出された白いうなじが何ともたまらない。

「これはこれは、またお美しいですなレイチェル嬢」
「ああ。ゾーネシアの真珠と呼ばれる貴女には深緑もとてもお似合いだ」
「まぁ!スコット様すっごく素敵!」

皆が口々に賛辞を送る。
私は見せつけるようにそっと形のいい唇にキスを落とした。

「へ、陛下っ!皆の前でそんな……」
「照れているのか?毎晩可愛がってやっているのに、お前はいつまでも恥ずかしがっているな」

そのうぶな反応もまた愛らしい。

「……とてもカッコいい、陛下だからでございます」

レイチェルは周りに聞こえないくらいの声で呟く。それを聞いてまた私の中の雄が震え立った。

「あぁレイチェル。私は幸せ者だ、お前とようやく夫婦になれるんだ。これ以上の喜びはない」

やっと……愛する者と結ばれる時が来たのだ。

「さぁ!もう一度皆で乾杯をしよう!栄えあるこのゾーネシア王国に!そして私に!美しい未来の王妃誕生に!」

レイチェルを抱き寄せ声高々に叫べば、その場にいる全ての者たちが盛大な拍手を送るのだった。
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