【完結】廃教会に住む私は悪魔に愛され過ぎていた。

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後編


教会の方から音が聞こえなくなっていました。
視線を向ければ、あの廃教会は跡形もなく壊されて瓦礫だけが山積みになっています。どうやら取り壊し作業は終わったみたいですね。

『……今のお前の寿命はあと何年だ』
「寿命?そうですね、100まで生きるとしたら、残り80年くらいでしょうか」
『1500年からしたら、80年など一瞬だな』

まぁ悪魔さんからしたらそうでしょうけど。

『お前がその命を全うした時、その魂はきっちり回収してやる』
「……それって、それまでは生かしてくれるという事ですか?」

悪魔のくせにお優しいんですね。
メフィは私を腕に抱きながら教会を見つめます。思い出の教会が壊れて多少なりとも寂しいのでしょうか。

『その代わり死んでからは覚悟しろ、今までのように転生することも許してやらない。お前の魂は永遠に、片時も離れず、俺の手の中に残しといてやる』
「わぁ、悪魔さんからの愛って重いんですね」

というより病んでます。
でもまぁ死んだ後のことなんで興味はありません。これからの80年、どう生きようが私の勝手が出来る。なんて素敵なことなんでしょう!

「あ、そう言えば。あの異世界からの女性……えっとレイナさん?あの人は本物の聖女様なんですか?」

私は聖女様の魂を引き継いでいますが、本物の聖女ではありません。ただの光魔法が使える女です。
レイナさんの名前を出せば、メフィの美しい顔がぐにゃっと歪みます。

『あんなのが聖女なわけあるか』
「え、でも異世界からやって来たと……」
『神の気まぐれで異世界から連れてきただけの人間だ。そんな特別なもんではない、お前と同じただの光魔法が使える女だ』

あ、そうなんですね。自信満々に言い切られたので信じてしまいました。
だとしたらこの先、少し大変でしょうね。
廃教会の祈りがなかなってしまった今、単純に彼女の魔力だけで国全体を守っていかなくてはいけないんですから。

「エドワーズ様が仰るからてっきり」
『おい』

一瞬でメフィの表情が鬼のようになります。

『他の男の名を呼ぶな。次呼べば今すぐ魂を狩る』
「え、何ですか急に」
『こっちは1500年間好きな女が自分以外の無能な猿と抱き合うところを見せられてるんだ』

嫉妬丸出しなメフィは禍々しい黒い霧を発動させます。うーん、今にもエドワーズ様を殺してしまいそうですね。
でもメフィの立場からすればそれはそれで辛かったのかも知れません。触れることも出来ず、聖女様があの廃教会で他の男に抱かれるのをただ見ている事しか出来なかったのですから。

『まずはあの異世界から来た女を壊す、そして次にあの男だ。国王とかいう強欲な男の血を継いだ奴らは根絶やしにしてやらねば』

ククッと楽しそうに笑うメフィ。ですが私にはどうすることも出来ません。
いくら力が戻ってきたとは言え、教会に篭りきりだった私にこの大悪魔をなんとかする方法はないのです。

「未練、はないですが思い出のある地です。なるべく手加減して下さいね」
『ほぉ、お前が俺に頼み事か。悪くない』

ニッと意地悪そうな顔で笑われました。

『安心しろ、お前の努力次第では無抵抗な人間たちは生かしてやってもいい』
「ほんとですか?」
『ああ。その代わり今晩は覚悟しろ』

今晩、とは何が待っているのでしょう。メフィはとても楽しそうに笑っていますが、私には何のことだかさっぱりです。

でもまぁしょうがないです。
私は残りの80年も、それからの生涯も彼に全て捧げなきゃならないようなので。

『で、これからどうするつもりだ』
「そうですね。とりあえずこの国を出て、色んな所を旅するつもりです」

人生はまだまだありますから。

「貴方を封印していた魔力が戻ってきたようですし、色んな国を訪れて貧しい人や病にかかってしまった人を光魔法で救っていきます」
『まだ面倒なことを』
「良いんです。私は自由になりましたから」

ニコッと笑えばメフィは苦笑します。

『生まれ変わってもお人好しは変わらんな』
「?そうなんですか」
『ああ。腹が立つくらい』

そんな言葉とは裏腹にとっても穏やかな顔をしていますよ?そう言おうとしたらまたグッと腕を引っ張られてしまいました。

『スフィア』
「はい」
『逃げるなんて考えるなよ。その瞬間、この世の人間をみんな消したって良い』
「逃げませんよ」

悪魔相手にそんな命知らずなこと出来ません。
私は掴まれた腕をするりと抜きます。ほら、逃がさないと言ってる割には痛めないように優しく腕を掴んでくれてるんですからメフィはとても優しい悪魔さんです。

私は自分よりも大きな手に自分のを重ねます。俗に言う恋人繋ぎってやつですね!

「今度からはコレでお願いします」
『……お前は本当に』
「?」
『まぁいい』

メフィは困ったように笑いました。


居場所はなくなってしまいましたが、私たちが離れることはこの先あり得ません。他の人から見たら馬鹿な関係かもしれません、ですがこれが私の選択なのです。

崩れ去った教会を見つめ、私たちは小さく笑い合いました。

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