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後編
しおりを挟むそして時は流れて………
「失礼致します、アイリィナ様」
「あら、レイラ」
「本日のプレゼントをお届けに参りました」
私、レイラ=ダジェスは国母となったアイリィナ様の専属侍女となりました。
高く積み上がったプレゼントの箱をそうっとテーブルに置き、添えられていた手紙を全てまとめた後アイリィナ様に渡しました。
「まぁまぁこんなに沢山、お礼の手紙を出さなくてはいけないわね」
「便箋とインクはこちらです」
「ふふっ、さすがレイラ。気が利くわ」
褒められ得意気に鼻を鳴らす私に、アイリィナ様はまた小さく笑って下さいました。
あの騒動の後、立場が悪くなった私にアイリィナ様は真っ先に救いの手を差し伸べて下さいました。
これだけの騒ぎを起こしたのですから当然家を追い出され、途方に暮れていたところアイリィナ様は自身の侍女にと推薦状を書いて下さり、それから今日までずっとお側におります。
そのおかげで当時は知らなかった事実が山のように見えてきました。
まず、アイリィナ様は贅沢好きではありませんでした。
ドレスや宝石は他国から信愛の印として贈られてくるプレゼントばかり。中には希少な食材やスパイスなんかもあるので、自然と出されるお料理が超高級になってしまうそうです。
『厄介ごとについつい首を突っ込んじゃうタイプなのよ、私』
そんなお節介(?)なアイリィナ様は、流石に金品を受け取れないと断り続けた結果……このようなシステムに落ち着いたようです。
「流石に王妃となったからプレゼントは受け取れないと言ったのだけれど……頑固な方が多くて、ね?」
「宜しいと思いますわ。どうせ国王陛下はなーんにもして下さらないんですもの」
「こらこら」
本音が漏れてしまい、ハッと口許を押さえます。
アイリィナ様は無事マルクス様とご結婚しました。
いや、私が言えたことではないのですけど……結婚までの道のりは想像以上に過酷のようでした。
マルクス様は私に脈がなくなったと分かるとすぐさま別の女性に猛アタック。相手は下級の、それもお金に困って苦労している女性ばかりを選んできました。
ご結婚された今も、暇さえあれば女性のお尻を追っかけています。
引き続き仕事はしっかりできるし、国民たちからも「優しい国王様」と支持されているので迂闊なことは言えませんが。
仕事が出来ても妻を悲しませる男なんか最悪です!
「……今思うと、マル……陛下は苦労している女性がタイプなだけだったんでしょうね」
なんて呟くと、ますます自分が惨めに思えてきます。
心のどこかで自分もお姫様になれたような、そんな気分だったのに……
「んー苦労というか、あの人は自分に尽くしてくれる人が好きなのよ」
「尽くす……ですか?」
「お立場上、あの人の全ては国と国民のために使われるでしょう?自分の時間を削り、感情を押し殺し、言葉すらも制限される。ある意味、この国のために一生尽くさなければならないお人なの。だから、自分に尽くしてくれる女性を本能で探してるのかも知れないわ」
アイリィナ様の言葉に息が止まってしまいます。
「そんなの……でもアイリィナ様がいるのに、」
「でもあの方がもし私を好きになったら、それこそ彼らのように尽くし過ぎてしまうわ」
山盛りになったプレゼントを見てアイリィナ様は苦笑いします。
「それに私、誰かに一生尽くせるような人間じゃないもの。マルクス様のタイプの女性にはどう頑張ってもなれないわ」
「……で、でも」
「ありがとうレイラ」
そう言ってにっこり笑うアイリィナ様はとても美しいです。
マルクス様は国のため、国民のために尽くします。アイリィナ様はそんなマルクス様の唯一の拠り所になろうと……
そこに恋愛感情があるのかは分かりません。
でも、お二人にはきっと私なんかじゃ理解できない不思議な絆とやらがあるのでしょう。
「難し過ぎますよ、そんなの」
「そう?まぁ幼い頃からあの方と結婚する約束だったから、色々諦めちゃってるのかも。でも……そうね」
ふぅと息をつき、ぼんやりお窓の外を眺めるアイリィナ様のお顔は……どこかスッキリとしたように見えます。
「最後の最後に私の元へ帰ってきてくれたら、その時は……ちょっとだけなら尽くしてあげようかしら」
「……そうですね、それが宜しいと思います」
こう言われてしまえば私がとやかく口を挟むことじゃありません。
それにマルクス様なんてこの際どうでも良いのかも知れません。
だって私がアイリィナ様に尽くして尽くして尽くせば良いのですから。
でもまぁ……マルクス様、早く戻ってきて下さい。
「お茶に致しましょうか、アイリィナ様。今日は貴女様がお好きなケーキもございますよ」
「本当?すっごく嬉しい!」
こんなに愛情深いお人に尽くされる、そんな素敵な未来が貴方をお待ちしておりますからね。
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