『ネコのミルクで栄えた国の話』

伊東

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「ネコのミルクで栄えた国」

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 むかしむかし、あるところに猫を知らない国がありました。
 いや、知らないというのは正確ではないかもしれません。国の人々はネコという生き物がいることは知っていたのですが、その生き物が実際にどんな生き物なのか、ということはぼんやりとしか知らないのでした。

 そのぼんやりとした情報を集めるとおおよそこんなところです。
 4本の脚で歩くらしい、不思議な鳴き方をするらしい、雑食で何でも食べるらしい、様々な模様のものがいるらしい、小柄で可愛らしい……。
 おおよそそんなところでした。
 もっというのであれば、目は2つで鼻は1つで耳はふたつで.....、などという情報もありましたが大抵の生き物に当てはまる特徴なので、わざわざ書く必要もないでしょう。
 ともかく、国の人々はネコという生きものに興味津々でした。誰もが一目おめにかかりたいと、常々そう思っていました。

 そんな折の頃でしょうか、ある行商人がネコを連れてきたぞ!という噂が流れました。噂は瞬く間に広がり、国中の人々がその行商人の元に集まってきました。

 見てみると、なるほど、噂通りのネコなのです。

 4本の脚でのっそりと歩き、むぉーという聴いたことのない鳴き方で鳴き、雑食なのか道端の草をむしゃむしゃ食べ、白地に黒玉模様のものもいれば、黒一色のもの、茶色のもの、灰色のものもいます。なにより膝丈位の大きさでとても可愛らしいのです。もちろん目は2つあり鼻は1つあり.....。
 国の人々は正しくネコだ、と思いました。同時に、このネコは国の宝にして大事にしていこうと、そういうふうに思いました。

 そんなこんなで、その国に猫が来てからしばらく月日が流れました。小さかったネコ達はみるみるうちに大きくなりました。国の人達は少し変だぞ、と思ったものの深い愛情をネコ達に注ぎました。

 またしばらくして、1匹のメスネコが子ネコを産みました。国の人々はとても喜びました。
 その一方、国の人々はとても困った状況になっていました。
 というのも、その頃、国の財政は大変な困窮を極めており、ネコ達の食糧を賄っていくのも手一杯の状況だったのです。

 ある人はこう言いました。
「もうネコなんか養っている場合じゃないぞ!俺達が生きていくだけでも手一杯なんだ!ネコなんか殺してしまえ!」
 またある人はこう言いました。
「小さい頃から面倒を見てきたネコを殺せるか!可哀想だとは思わないのか!財政が回復するまでの辛抱じゃないか!」
 国の人々が口々に言い争っていると、ある科学者が出てきてこんなことを言いました。
「ネコの乳にはとてつもない栄養価が詰まっていることがわかったぞ。どうだ?いっそネコの乳を特産物として売ってみるのは?」
 国の人々は賛成しました。
 それから国の人々は今までよりもいっそうネコを可愛がり、そしてネコの乳をどうやったら美味しく食べられるかを研究しました。
 次第にネコの数もどんどん増えていきました。
 料理の研究の方も順調に進みました。

 隣国の人々は見たことのない食べ物に驚き自分たちの国にしきりに輸入しました。
 国の財政は潤いはじめました。

 しかし、これをよく思わない人たちもいました。隣の隣の国の人々です。
 彼らはこっそりとネコの国に忍び込みどうやってこんな不思議なものを作っているのか探ろうとしました。

 そしてついにあるひとつの情報を得たのです。

 どうやら隣の国は猫の乳を使ってこの製品を作ってるらしい、と。
 隣国の人々はこれでネコの国に遅れをとらないで済むと思い、早速国中のメス猫を集め乳を出させようとしました。しかし、絞っても絞ってもうんともすんともいわないのです。もちろん、そんな無理をされた方のメス猫はたまったものではありません。一匹残らず死に絶えてしまいました。

 隣の隣の国の人々は泣きました。けれど、泣いてもどうしようもありません。財政面で大きな遅れをとった隣国の人々はネコの国の属国になってしまいました。




 そうしてその国では草を食べ、むぉーと鳴き、巨体を揺らしてのそのそと歩くネコのおかげでいまも大変に栄えているそうです。近隣の国ではネコのミルクで栄えた国、なんて言われてるとか。

 そんな光景を尻目に猫は、にゃおんとないたそうです
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