きみが忘れていった物

Lilly/カナコ

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最終話

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彼女が去っていってから、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。

僕はまだ、独りの生活に慣れていない。

このベッドは、独りで寝るには広すぎる。

目を覚まして起き上がると、いつも通り、リビングのソファに腰掛けて朝のニュースを見る。

ローテーブルの上には、あの日彼女が忘れていったネックレスがいつも通り輝いている。

昔、僕が彼女にプレゼントしたネックレスだ。

五年前、初めて一緒に過ごしたクリスマスに、彼女にネックレスをプレゼントした。

彼女はすごく喜んでくれて、その日からずっとつけてくれていた。

その日の晩、僕は彼女の全てを知った。

彼女が痛がって、なにもできなかったけれど、ただ抱き合って眠るだけで幸せだった。

彼女はもう忘れて、新しい恋人と楽しく過ごしているかも知れない。

すべてを壊していった相手の男や、自分のもとから去っていった彼女が憎くないと言ったら嘘になる。

けれど、一目だけでいいから、彼女にもう一度会いたい。

あの日からずっと、彼女が忘れ物を取りにくるのを待っている。

本当は、もう二度とネックレスを取りに帰ることなどないのだとわかっている。

わかっていても、心のどこかで期待している自分がいる。



今日も、彼女を待ち続ける。



「完」


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