8 / 8
最終話
しおりを挟む彼女が去っていってから、もうすぐ三ヶ月が経とうとしている。
僕はまだ、独りの生活に慣れていない。
このベッドは、独りで寝るには広すぎる。
目を覚まして起き上がると、いつも通り、リビングのソファに腰掛けて朝のニュースを見る。
ローテーブルの上には、あの日彼女が忘れていったネックレスがいつも通り輝いている。
昔、僕が彼女にプレゼントしたネックレスだ。
五年前、初めて一緒に過ごしたクリスマスに、彼女にネックレスをプレゼントした。
彼女はすごく喜んでくれて、その日からずっとつけてくれていた。
その日の晩、僕は彼女の全てを知った。
彼女が痛がって、なにもできなかったけれど、ただ抱き合って眠るだけで幸せだった。
彼女はもう忘れて、新しい恋人と楽しく過ごしているかも知れない。
すべてを壊していった相手の男や、自分のもとから去っていった彼女が憎くないと言ったら嘘になる。
けれど、一目だけでいいから、彼女にもう一度会いたい。
あの日からずっと、彼女が忘れ物を取りにくるのを待っている。
本当は、もう二度とネックレスを取りに帰ることなどないのだとわかっている。
わかっていても、心のどこかで期待している自分がいる。
今日も、彼女を待ち続ける。
「完」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる