華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

文字の大きさ
6 / 63
訳華、のちに

明日へ続く道

しおりを挟む

「柊次さん、早百合ちゃん。町の皆さん。
 私を育ててくれてありがとうございました。
 桜木の、海藤先生のところに行ってきます」

「結構遠いぞ…一人で大丈夫か?」

「もう!兄さん、梅乃ちゃんは大丈夫よ!
 梅乃ちゃん、気をつけてね。応援してる」

「早百合ちゃんありがとう!行ってきます!」



柊次が心配そうに見つめる中、梅乃は笑顔で町を発つ。

梅乃が目指す桜木さくらぎという場所は、この町から遠く離れた大きな川沿いの土地だ。




梅乃は華隠織を首に軽く巻き、出発前に町民たちから贈られた美しい着物に袴を履いてひたすら歩いていた。

桜木までは、徒歩では到着がいつになるのか予想できない距離である。



「あの…梅乃さん、ですか?」



突然、若い男が梅乃に声をかけた。
身長は高く、落ち着いた色合いの袴の上には華隠織で造られた丈の長い羽織。
背中には何故か弓矢を背負っている。

怪しい装いに、梅乃は少し身構えて顔を見上げた。



「すみません。僕は佐佐木 銀壱ささき ぎんいちと申します。
 海藤先生から頼まれて、梅乃さんを捜していたんです」

「海藤先生からですか?」

「はい。桜木までは道のりが長いですので、梅乃さんを護衛しろと…」



海藤から信頼の厚い銀壱。
弓道で彼の右に出る者はいない。
その腕前と頭の良さから、護衛を任せたのだろう。

銀壱はまだあどけない梅乃の真っ直ぐな視線に、少し動揺しているようだ。



「案内していただけるのですね。
 ありがとうございます。私は早河 梅乃と申します」



梅乃は深々と頭を下げ、見た目より遥かに大人びた口調で話した。

二人は早速桜木に向かって歩き始めた。


歩きながら、梅乃は海藤に出逢った経緯や両親失踪事件のことを話した。



「銀壱さんは、なぜ海藤先生のところに?」

「僕は…6年前、母親が殺されました」



銀壱は目を伏せ、そしてまた続けた。



「当時、母の華墨は梅でした。
 父親とは僕の幼い頃に別れていて、僕が母を守らなければならなかったのに……
 僕が弓道の練習から帰ってきた時、母は既に倒れていたのです」



衝撃的な過去に、梅乃も驚きを隠せない。

銀壱の母親が殺されたのは、やはり梅乃の両親が失踪した同じ年だった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

処理中です...