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標的の花
花柄の着物
しおりを挟む睡眠薬を投与された梅乃はすぐに眠ってしまった。
京はその隙に屋敷の裏口から車に乗り、逃げて行った。
そしてしばらく出てこない梅乃を心配した銀壱が口を開いた。
「前田さん!そろそろ、
梅乃さんの様子を見に行ったほうが…」
「そうだな…だいぶ時間が経ったから見に行くか」
前田と銀壱は一番奥の部屋まで駆けつけた。
するとそこには梅乃がうつ伏せで倒れている。
京の花の香りが微かに残っていた。
「梅乃さん!!大丈夫ですか!」
「おい、返事をしろ!早河!」
当然、深い眠りについている梅乃は返事をしない。
しかし、前田が梅乃は眠らされたのだと気がついた。
呼吸していることを確認し、銀壱と二人で梅乃を外へ運び出した。
「京は逃してしまったが、早河は無事だな。
取り敢えず目を覚ましたらまた話を聞こう」
「そうですね…僕が医務室に付き添います」
「頼んだぞ」
銀壱は本部の医務室まで運ばれる梅乃について行った。
その車中、京の計画について考えていた。
やはり次の狙いは梅の華墨か否か。
京が梅乃に対して何らかの攻撃を仕掛けようとしていることは今回の件で明らかになった。
梅の華墨が狙われることになるなら、また母親が殺された時のような惨事にならないように自分たちがしっかり守らなければ…そんなことも頭に浮かんだ。
「う…」
「梅乃さん?目が覚めましたか?」
「はい…まだ、体がだるいです」
医務室で数時間眠っていた梅乃がようやく目を覚ました。
まだ体に薬が残っているのか、起きるのはかなり辛そうだ。
梅乃は銀壱に介抱されながら、京から言われたことを話し始めた。
「京は、華狩を解放してくれたらもう罪を犯さない、と
交換条件を出してきました」
「無理なことを…!」
「私は怒って、あなたの言葉を信じる訳がない、
私たちがあなたを逮捕する、そう言いました」
「そうしたら、睡眠薬を?」
「はい。命があるだけまだ助かりました…」
梅乃は力ない声で必死に伝えようとしていた。
そして京の表情、口調、自分しか目にしていないものを共有しようとした。
銀壱もその思いを汲み取っていた。
次、京を見つけたら絶対に逮捕すると心に決めた。
「他に、感じたことはありましたか?」
「これは推測ですが、次の華狩の狙いは
恐らく10年前と同じ、梅の華墨だと思いました」
「それは何故…」
「京と初めて会った時、それから村長の事件、
そして今回。些細ですが共通点があります」
「共通点?」
「京は私と顔を合わせる時、
いつも梅の柄の着物を着ていたのです」
とても些細なことかもしれないが、銀壱には心当たりがあった。
以前、紫について調べた時のこと。
紫は自らが華狩の実行犯として数々の事件を起こしていた頃、標的となった華墨の花を基調とした着物や羽織を職人に造らせていた。
その実物の資料は残っていないが、花柄の着物は男性より女性のほうが使いやすい。
京はその着物を着ていてもおかしくないのだ。
紫が親分になってから、梅の華墨を狙った事件は梅乃の両親、銀壱の母親が犠牲になった時だけ。
その当時の物だとしたら、再び梅の華墨を狙うことを意味するのかもしれない。
「そうですか、分かりました。
僕が前田さんにも報告しておきます。
梅乃さんは薬が抜けるまで安静にしてください!」
「あっ銀壱さん!?」
銀壱は使命感からか、梅乃の話を前田に伝えるべく、凄い勢いで医務室から出て行った。
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