華ノ道標-華罪捜査官-

山茶花

文字の大きさ
46 / 63
標的の花

花柄の着物

しおりを挟む

睡眠薬を投与された梅乃はすぐに眠ってしまった。

京はその隙に屋敷の裏口から車に乗り、逃げて行った。
そしてしばらく出てこない梅乃を心配した銀壱が口を開いた。



「前田さん!そろそろ、
 梅乃さんの様子を見に行ったほうが…」

「そうだな…だいぶ時間が経ったから見に行くか」



前田と銀壱は一番奥の部屋まで駆けつけた。

するとそこには梅乃がうつ伏せで倒れている。
京の花の香りが微かに残っていた。



「梅乃さん!!大丈夫ですか!」

「おい、返事をしろ!早河!」



当然、深い眠りについている梅乃は返事をしない。

しかし、前田が梅乃は眠らされたのだと気がついた。

呼吸していることを確認し、銀壱と二人で梅乃を外へ運び出した。



「京は逃してしまったが、早河は無事だな。
 取り敢えず目を覚ましたらまた話を聞こう」

「そうですね…僕が医務室に付き添います」

「頼んだぞ」



銀壱は本部の医務室まで運ばれる梅乃について行った。

その車中、京の計画について考えていた。
やはり次の狙いは梅の華墨か否か。

京が梅乃に対して何らかの攻撃を仕掛けようとしていることは今回の件で明らかになった。


梅の華墨が狙われることになるなら、また母親が殺された時のような惨事にならないように自分たちがしっかり守らなければ…そんなことも頭に浮かんだ。



「う…」

「梅乃さん?目が覚めましたか?」

「はい…まだ、体がだるいです」



医務室で数時間眠っていた梅乃がようやく目を覚ました。
まだ体に薬が残っているのか、起きるのはかなり辛そうだ。

梅乃は銀壱に介抱されながら、京から言われたことを話し始めた。



「京は、華狩を解放してくれたらもう罪を犯さない、と
 交換条件を出してきました」

「無理なことを…!」

「私は怒って、あなたの言葉を信じる訳がない、
 私たちがあなたを逮捕する、そう言いました」

「そうしたら、睡眠薬を?」

「はい。命があるだけまだ助かりました…」



梅乃は力ない声で必死に伝えようとしていた。

そして京の表情、口調、自分しか目にしていないものを共有しようとした。

銀壱もその思いを汲み取っていた。
次、京を見つけたら絶対に逮捕すると心に決めた。



「他に、感じたことはありましたか?」

「これは推測ですが、次の華狩の狙いは
 恐らく10年前と同じ、梅の華墨だと思いました」

「それは何故…」

「京と初めて会った時、それから村長の事件、
 そして今回。些細ですが共通点があります」

「共通点?」

「京は私と顔を合わせる時、
 いつも梅の柄の着物を着ていたのです」



とても些細なことかもしれないが、銀壱には心当たりがあった。


以前、紫について調べた時のこと。

紫は自らが華狩の実行犯として数々の事件を起こしていた頃、標的となった華墨の花を基調とした着物や羽織を職人に造らせていた。

その実物の資料は残っていないが、花柄の着物は男性より女性のほうが使いやすい。

京はその着物を着ていてもおかしくないのだ。


紫が親分になってから、梅の華墨を狙った事件は梅乃の両親、銀壱の母親が犠牲になった時だけ。

その当時の物だとしたら、再び梅の華墨を狙うことを意味するのかもしれない。



「そうですか、分かりました。
 僕が前田さんにも報告しておきます。
 梅乃さんは薬が抜けるまで安静にしてください!」

「あっ銀壱さん!?」



銀壱は使命感からか、梅乃の話を前田に伝えるべく、凄い勢いで医務室から出て行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)

便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC” 謎多き噂の飛び交う外資系一流企業 日本内外のイケメンエリートが 集まる男のみの会社 そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在 唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話 中山加恋(20歳) 二十歳でトオルの妻になる 何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛 中山トオル(32歳) 17歳の加恋に一目ぼれ 加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する 加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる 会社では群を抜くほどの超エリートが、 愛してやまない加恋ちゃんに 振り回されたり落ち込まされたり… そんなイケメンエリートの ちょっと切なくて笑えるお話

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫
キャラ文芸
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞受賞しました(^_^)/  香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。  シリアス成分が少し多めとなっています。

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

ある日、私は事故で死んだ───はずなのに、目が覚めたら事故の日の朝なんですけど!?

ねーさん
恋愛
   アイリスは十六歳の誕生日の前の日に、姉ヴィクトリアと幼なじみジェイドと共に馬車で王宮に向かう途中、事故に遭い命を落とした───はずだったが、目覚めると何故か事故の日の朝に巻き戻っていた。  何度もその日を繰り返して、その度事故に遭って死んでしまうアイリス。  何度目の「今日」かもわからなくなった頃、目が覚めると、そこにはヴィクトリアの婚約者で第三王子ウォルターがいた。  「明日」が来たんだわ。私、十六歳になれたんだ…

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...