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標的の花
銀壱、誓った思い
しおりを挟む銀壱は走っていた。
本来、本部の廊下は出動する時以外走ってはいけない規則になっているが、そんな事はお構いなしだ。
前田を捜して本部の中を行ったり来たりしていたが、特捜班の会議室から前田の声が聞こえ、足を止める。
どうやら鹿戸で確保した華狩たちについて、捜査が進められているようだ。
「…前田さん、前田さんっ!」
「おお、銀壱か」
「梅乃さんが目を覚ましましたよ」
銀壱が強く、前田の肩を叩く。
前田も梅乃の回復の知らせに、頬を緩めた。
銀壱は、梅乃から聞いた話の内容を要約して伝えた。
「なるほどなぁ。俺も、お前たちと同感だ。
次は、梅が狙われる可能性が高いと思う」
「そうですよね。でも、梅の華墨の人々を守るには
どうしたらいいのでしょうか…」
「その為の俺たち華捜だろう?
本部には膨大な量の情報がある。ついてこい」
前田はニヤリと口角を上げると、銀壱を以前とは別の資料室へ案内した。
そしてたどり着いたのは、日本の地域別華墨調査資料が収められている資料室だった。
銀壱がこの部屋に来たのは初めてだ。
確かに前田の言った通り、膨大な量の冊子が綺麗に並べられていた。
「ここには、日本のどこにどの華墨の人々が多いか、
その登録情報が全て揃っている」
「所謂、華墨の分布情報ということですか」
「そういうことだ。しかも資料は毎日更新される。
俺たちの情報も既に入っているんだよ」
「凄い…!ここから、次の事件現場を予測して
防ぐことができるのですね!」
銀壱は感動していた。
こんな情報量の多い資料を本部が管理しているとは、今日まで知らなかったのだ。
ただ一つ、この資料にも弱点がある。
資料に載っている情報は、全国の役所から毎日送られてくる報告書を元に作成され、更新される。
報告書が送られてくるのは毎日午前中の時間帯。
そして資料が更新されるのはその日の夕方頃。
しかしその報告書の内容は、各役所が前日までに把握している情報である為、1日ずつズレが生じてしまうのだ。
前日までこの資料室で確認していた情報が翌日には変わっている、なんてことは日常茶飯事。
だが華墨は通常、遺伝するもの。
突然変異や特殊遺伝でない限りは、唐突に変化するものではない。
それを踏まえたうえで分布情報を把握し、警備の配置を考えればよいということだ。
「確かに、桜木の資料を見ると、
僕の名前や源華、現在の華墨まで載っている…」
「そうだろう。載っているのは、
名前、家業、性別、源華、現在の華墨…くらいか。
それ以上は書かれていない」
「それはやはり、管理が難しいからですか?」
「管理の問題もあるが、
情報漏洩の危険が否めないからだ」
「内部から、外に持ち出した事例があるのですか」
「詳しくは知らないが、昔にな」
この警備の厳しい本部の中にも、そのような事件を起こそうとする輩が居るということに、銀壱は驚きを隠せなかった。
だが、こんな便利な資料が揃っているのだから、活用しないわけにはいかない。
無論、前田もそのつもりだった。
「前田さん。僕たちは自由警備課ですよね。
事件を未然に防ぐ警備配置については、
意見を言える立場と捉えていいのでしょうか」
「勿論だ。その為に俺たちが配属されている。
一応課長には相談すべきだな。俺から言っておく」
本部長補佐を務めた経験のある前田は、流石に頼りになる。
銀壱は今までで一番仕事に燃えていた。
まだ採用されて数ヶ月だが、悲しい事件を数々目の当たりにしてきた。
採用された当初の目的は母親を殺した犯人を逮捕することだが、捜査官となって奮闘している今は、華罪事件を減らし、平和な世の中を築くことが使命だ。
同じ悲しみを増やしたくない、その思いが銀壱を熱くさせていた。
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