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総力戦
榛名の記憶
しおりを挟む「それでは、私たちも出発するわ」
「よろしく。無理するなよ。
必要な時は応援を要請してくれ」
「はい。行ってまいります」
榛名班も、片桐班に続いて出発する。
華のある女性三人組だ。
お淑やかに、可憐に歩く姿は誰が見ても目を引く。
だがこの三人は華だけでなく、高い攻撃力と反射神経を兼ね備えている。
男性をも負かすほどの力を持っているのだ。
「着いたわね。村長に挨拶しましょう」
目的地の村に着き、榛名班は村長の元へ。
この村は山に囲まれ、犯罪率も低い。
しかし梅の華墨をもつ者の中で女性や子どもが多く、自分で身を守ることが難しいと判断した。
「わざわざこんな田舎まで…ありがとうございます。
村長の松と申します」
「華罪捜査官の榛名です。
この村は私たちが責任を持って守ります」
「普段は平和で穏やかな村です。
何も起きないことを願います…」
班長が今回の捜査と警備の趣旨を説明し、村長にも警桜笛を渡した。
村長は梅の華墨の持ち主ではないが、村の代表として特に警戒して欲しいと班長は話した。
この日も村の様子は穏やかだった。
三人はまとまって巡回し、片桐班と同じように梅の家系をまわって警桜笛を配っていた。
「確かに梅の家系は多かったけれど、
特に村に異常はなさそうね…」
「そうですね。怪しい人物も見当たりません」
「くれぐれも気を抜かぬように。
注意していきましょう」
この村には住民が少ない。
村に捜査官も溶け込めるよう、三人は村で購入した桜柄の着物を身につける。
濃紺の桜は隠すようにして手首に巻き付けていた。
警備して数時間――
やがて夜になると山に囲まれた土地柄、村は真っ暗に。
こんな真っ暗な村で犯罪率が低いのは、本当に素晴らしいことだ。
捜査官たちも感心していたが、巡回していると、どこからか男女の言い争う声が聞こえてきた。
「お前!!誰に向かって口きいてるんだ!」
「うるさい!私は家を出たいのよ!」
親子だろうか。父親らしき男性が、若い娘に向かって激怒していた。
話の流れからすると、娘がこの村を出て都会に行きたがっているところを父親が反対している、という事らしい。
「こんばんは。どうされたのですか?」
「き、君は誰だ!見ない顔だな」
「失礼、私たちは華罪捜査官でございます。
本日から警備をさせていただいています」
榛名が名乗った途端、怒鳴っていた父親は静かになった。
捜査官たちの堂々たる振る舞いに、圧倒されていた。
娘は腕を組み、黙ってこちらを睨んでいた。
「そうか…みっともない姿を見られてしまったな」
「すみません。
盗み聞きするつもりは無かったのですが、
娘さんのご意向に、何故反対されるのでしょうか」
「それは…君たちには関係ないだろう」
「ええ、そうですね。
しかし、争いごとを見逃す訳にはいきません」
榛名は毅然とした態度で答える。
その眼差しは凛々しく、強いものであった。
この静かで穏やかな村では、些細な口論も目立ってしまう。
既に隣人たちが屋敷から出て、状況を確認しに来ていた。
すると、娘が口を開いた。
「父が何故反対するかって?
ただ私を思うままに支配したいからよ」
「なんだその言い草は!!」
「お父様、落ち着いてください。
お嬢さん、それはどういうことですか?」
「家業を継ぐようにってうるさいのよ。
私は都会で洋品店に勤めたいのに…」
娘は、家業である伝統的な織物職人ではなく、都会の西洋の文化を取り入れた洋品店で働きたいのだという。
娘の都会に憧れる気持ちを、親が理解できないのも無理はない。家業を継がせたいのは普通のことだろう。
「お嬢さんはどうして都会に?」
「以前、この村に身なりの綺麗な女性が来て、
ここの織物を全て買い取る代わりに、
都会の洋品店で働いてほしいと――」
「私たちは昔、特別な織物職人として
その女性の家系に仕えていたのです」
深く話を聞くと、その女性は「鹿戸」からやって来たのだという。
お金に余裕のない家の心配をした娘は、買い取ってくれるなら、と都会に行くことを決心したそうだ。
榛名は、その話に聞き覚えがあった。
鹿戸から来た女性、特別な織物職人……話を聞くうちに段々と記憶が明瞭になっていった。
その時だった。
――ピーーーッ!
警桜笛の音が突然、静かな村に響き渡った。
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