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総力戦
九重の涙
しおりを挟む本部で待機する九重班。
その間、資料室で今回三つの班が警備についた町や村を詳しく調べていた。
「あれ、榛名班が行った村…
情報が今年に入って更新されているようです」
「そうですね。えーっと…
この父娘のところですね」
「はい。この一族は、梅の華墨ではないですね。
ですがここに書いてあるように、
何代も続く織物職人です」
「特別な織物職人として、
白崎家に仕えていた…と書いてあります」
九重班長は「白崎」という姓が妙に気になっていた。
紫や京を調べる際によく目にする姓だからだ。
この記載だけでは「白崎」が華狩や龍華会と関係しているかは分からない。
特別な織物職人、というのも引っかかるようだ。
特定の家に仕える職人は、この近辺にほんの少ししか居ない。
紫たちの家にも専属の織物職人が居たことは捜査で判明している。
たくさんの情報を記憶する九重班長は、どこかでこの一族と紫たちが繋がっているのではないかと考え始めた。
「班長!榛名班から応援要請です!」
「了解、準備してすぐ出るぞ!」
そこで榛名班から応援要請を受けた九重班は、慌ただしく準備し、急いで本部を出た。
本部へ連絡してきた榛名班長は、平然としていた。
いつも通り落ち着いた口調で、淡々と話した。
その様子を聞いた九重班長は、女性だけの班を少し手助けするくらいの心構えでいた。
ところが、現場へ到着した九重班が見たのは、壮絶なものだった。
「榛名!大丈夫か!」
「すみません…あいつら、意外と強くて…」
「今は安静にしろ、出血が酷い」
腕や脚から出血している榛名班長。
九重班の班員が止血するも、すぐに血が滲み出てくる。
九重班に応援要請を入れた後、闘いが激化して怪我をしたらしい。
怪我の処置は班員に任せ、九重班長は華狩や他の榛名班員を捜して走り出した。
「もうやめなさい!
じきに応援も来るわ。諦めて武器を捨てて!」
「うるせえな…お前もあの女みたいに
切りつけてやる!」
「おい!やめろ!!」
刃物を持って暴れる華狩と榛名班の班員2名を見つけた九重班長。
華狩が班員たちを切りつけようと走ってきたところを、なんとか止めようとした。
既に女性の班員たちの着物は汚れ、怪我もしているようだった。
「お前を逮捕する!それ以上動くな!」
「ふっ…俺一人だと思ったか?」
華狩の男が合図をすると、建物の中から複数人の仲間が姿を見せた。
どうやら建物に潜んで攻撃の機会を見計らっていたらしい。
華狩たちは女性捜査官2人を人質に、九重班長と闘おうとしていた。
頭脳明晰で機敏な九重班長も、複数人相手、ましてや人質が居る状態ではなかなかいつものようにはいかない。
班長が苦戦していたところに、他の班員も加わった。
しかし、相手は幹部級と思われる強者揃いで攻撃も跳ね返されてしまう。
隙を見て人質として捕らわれていた女性捜査官たちが逃げた。
その間に男性陣が畳み掛けるように攻撃を重ね、何とか華狩を仕留めることができた。
皆、無理をしながら必死で闘ったが故に、傷が浅かった九重班長以外は次々と意識を失ってしまった。
「ああ、何て事だ…皆、すまない…」
本部へ緊急搬送の依頼を出した後、九重班長は自分の無力さを実感し、目からは一筋の涙がこぼれていた。
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