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総力戦
みたらし団子
しおりを挟む――翌日
「では、行ってくる。頼んだぞ!」
「はい!お気をつけて!」
「行ってらっしゃい!」
前田は午前中、本部へ向かって町を出ていった。
いよいよ二人で初めての警備。
少しの緊張感と大きな責任感が二人にはあった。
前田を送り出した後、その足で二人は一緒に巡回警備をしていた。
「おはようございます。変わりないですか?」
「あら梅乃ちゃん!おはよう。
すごく平和よ~お天気も良いし、最高ね」
梅乃は小さい頃からよく通っていた団子屋の夫人に話しかけた。
夫人は穏やかな笑顔で梅乃と話しながら、開店準備をしていた。
銀壱もその様子を見て、心が温かくなった。
「出来たてのみたらし団子、
良かったらお二人でどう?」
「今は警備中ですので…」
「いいんですか!嬉しい」
夫人の提案に、食い気味で飛びついたのは梅乃だった。
普段は落ち着いている梅乃も、みたらし団子には目がないようだ。
断ろうとした銀壱を押しのけて身を乗り出す梅乃。
銀壱はとても驚いていた。
「梅乃さん…そんなに好きだったんですね」
「ここのお団子は絶品で、つい。
すみませんでした」
「まぁ…朝ご飯食べていないですし、
頂いていきましょうか」
夫人から団子を受け取った二人は、椅子に腰掛ける。
久しぶりのみたらし団子を、梅乃は幸せそうに頬張った。
懐かしい味を噛み締めながら、梅乃の頭には両親が失踪した日のことが鮮明に蘇ってきた。
隣にいる銀壱があの時の柊次とかぶってしまう。
「う、梅乃さん?大丈夫ですか?」
「あっ…すみません」
自分でも気付かぬうちに、梅乃は泣いていた。
あの頃、とても悲しくて辛かったことを思い出してしまったのだ。
団子屋の夫人も心配していた。
当時、両親が居なくなったと聞かされたところを目の前で目撃していたから尚更だ。
「ご両親のこと、ですよね」
「ええ。でも、今になって泣くなんて…」
「気持ち、分かります。
無意識に流れた涙は、本音なのですよ」
銀壱の言葉で、梅乃はハッとした。
今まで自分はずっと強がっていたのかもしれない、と。
ピンと張った糸が切れたかのように、梅乃の目から涙が零れて止まらなかった。
――ピーーーッ!!
その時だった。
警桜笛のとてつもなく大きな音が鳴り響いた。
咄嗟に梅乃と銀壱は立ち上がり、走り出した。
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