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総力戦
滲む決意
しおりを挟む一方、警桜笛を聞いた梅乃と銀壱は全速力で音が聞こえた方角へ駆ける。
梅乃の目にはまだ涙が溜まって乾いていなかった。
二人が辿り着いたのは梅の家系の小さな屋敷。
周りは不自然なほど静かで、本当にここで警桜笛が吹かれたのか疑うくらいだった。
「警桜笛が聞こえたのはこちらでしたよね…」
「はい。この屋敷のはずですが…静かすぎますね」
「いたずらという事もありますが、
念の為、訪ねてみましょうか」
捜査官以外の人々は警桜笛がどんな物かをよく知らず、興味本位で吹いてしまういたずらがたまにある。
警桜笛は軽く吹いただけで、凄まじい音量が出る構造になっていて、大抵の人は吹いてみて驚愕するのだ。
しかし梅乃は酷く嫌な予感がしていた。
平穏な日々が続くはずがない、華罪組織は絶対に何かを仕掛けてくる、そう思っていた。
――コンコンコン
「御免ください、華罪捜査官の早河です」
「同じく佐佐木です。どなたかいらっしゃいますか」
中からは人の声や物音がしない。
窓からは光が漏れ、部屋の明かりは点いているようだった。
梅乃はすかさず戸を開け、中へ踏み込んだ。
何かが襲いかかってきても対処できるよう、竹刀を咄嗟に構えた。
「はっ……!!」
「だ、大丈夫ですか…!」
そこで見たものは、血だらけで倒れている男性と女性。
顔が見えない状態でうつ伏せになっている。
意識がないのか呼び掛けには応えない男女。
だが梅乃にはその二人が誰だか、すぐに分かった。
男性の左腕、女性の右腕を見て確信したのだ。
「し、柊次さん……早百合ちゃん…」
「それって……!
僕が、すぐ本部へ連絡します」
梅乃はその場で泣き崩れた。
大きな声をあげて、たくさん泣いた。
もうそこには犯人の痕跡はなく、ただただ哀しい時間が流れる。
銀壱は前田が残していった無線機を使い、本部へ連絡する。その無線機を持つ手も震えていた。
「あ……こちら派遣捜査係、前田班の佐佐木です。
前田さんに、繋いでいただけますか…」
「――おつかれ。前田だ」
「前田さん……あの…
僕、何も出来なくて…」
「何かあったんだな?すぐ行くから警備を続けろ。
応援要請もしておく」
「…了解しました」
泣きそうになるのを必死に抑え、声を震わせながら話す銀壱。
守るべきものを守れなかったという実感が徐々に湧いてくる。
初めての新人だけでの警備。緊張感。
年上として、男として、しっかりしなければいけないという重圧もあっただろう。
しかし落胆している時間はない。
悔しさを拳に握り締め、銀壱は立ち上がった。
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