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王の野望編
第29話
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その建物の入り口には守護者と思しき石像があった。
石像は顔面部分が破壊されており、体部分も傷だらけだった。
「これも悪魔の仕業なのか?」
ガイツが首を捻った。
今までこの類のものに効果があるのか不思議だったが、
やはり悪魔には何か気に食わないものがあるのだろうか?
「あんたら、そこに何の用だ?
近寄らん方がええぞ。」
後ろの方から声がした。
振り返ると、年を召した男性がいた。
「どうしてですか?」
私は半分その言葉の意味に気付きながらも、
知らぬ顔で聞いてみた。
話を聞くと、この建物は本来水の女神である、
聖母ウェナ様を祀った神殿だったらしい。
そして、この石像は、聖母ウェナ様の守護者、男神アルテア様の像だったようだ。
しかし、1年ほど前に像がいたずらされて、破壊されてしまった。
すると、神殿の裏辺りから血が流れるように湖が赤く染まり始め、
流行り病が蔓延するようになった。
街の人達はアルテア様が怒っていると思い。
像を修復しようとしたが、
呪いのせいか、作業員は悉く謎の病にかかって亡くなってしまうため、
そのままになってしまっているらしい。
現在はアルテア様の怒りを鎮めるために、
巫女が神殿の中で昼夜問わずお祈りしてるようだ。
しかし、それでも益々悪くなるばかりで、
彼の娘も孫も災いを収めるため生贄になったが、
それでも収まる気配はないらしい。
私は、悪魔のことを話そうかと思ったが、思いとどまった。
まだ本当にこの中に悪魔がいると確信したわけではないし、
言ったところで、いたずらに混乱を招くだけだ。
私達は老人にいろいろ教えてもらった礼を言って別れた。
「巫女、怪しいな。そいつがロスタートか。」
ガイツが顎を撫でながら言った。
「可能性は高いけど、まだ決めつけることはできない。」
私達は、注意深く神殿の中に踏み込んだ。
神殿の中には、巫女と思われる女性と、
背の高い、全身黒い服装の男性がいた。
私は目を凝らしてみたが、悪魔では無さそうだった。
なぜ?
やっぱりあれは気のせい?
そう思いながらも気を引き締めて二人に近づいて行った。
「噂をすれば、だ。」
黒い服装の男がこちらに気付いて、誰に言うでもなく言った。
「あなたは一体?」
私は男に話しかけた。
「忘れちまったかい?
いやいや、そうかこの姿じゃあわからんよな。」
男は何が面白いのか高笑いをし始めた。
「リスバート。」
私は思い当たる名前を上げた。
男は急に私を指さした。
攻撃されるかと思った私は身構えたが、攻撃は来なかった。
「正解。賢いね。
おやおや、身構えなくていいよ。
前に言っただろう?私は戦いに向いてないんだ。」
男はまたも高笑いする。
「これが、リスバート?」
ガイツは今までの十邪星を想像していたのか、
拍子抜けした様だった。
「察していると思うが、こっちがロスタートだ。」
男が隣の女を親指で指さす。
すると、女はうるさそうに男の手を払う。
「あんたは体動かさない分、口が動き過ぎるんだ。
敵に媚び売ってるんじゃないよ。」
巫女の格好をしながら、きつい口調で女は言う。
やはり二人とも悪魔だった。
それも十邪星。二人同時に襲ってきたら勝てるだろうか?
それにしても、なぜ弱点が今回も見えないのだろう・・・。
ヴェリの時は魔力を封じるタリスマンがあった。
しかし、今回はそれもない。
それにしても、リスバートの呑気な話し方のせいで、
先手必勝の考えが狂わされてしまった。
いつ動くべきなのだろう。
私は和やかな雰囲気で話す悪魔達とは対照的に、
頭の中をフル回転させていた。
「やれやれ、体を動かさないとはよく言うよ。
隣の村まで飛んで、この街に急いで戻ってきたのに。
そんな言いかたされるなら、教えるんじゃなかったよ。」
リスバートは肩をすくめた。
私はおしゃべりなリスバートなら、
私の質問にも何か答えてくれるのではないかと、
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「少し聞いてもいい?
なぜあなた達は人間をひどい目に合わせるの?」
小さな頃から、悪魔とはそういうものだ、
と聞かされて育ってきたが、私はずっと納得がいっていなかった。
「おっと、それを聞いちゃうか。」
リスバートは一転、気まずそうな顔になり、
憂鬱そうに頭に手をやった。
「最初に私達をひどい目に合わせたのはあんたたち人間じゃないか!
それを忘れたとは言わせないよ!」
ロスタートが声を荒げる。
私はその言葉に心臓をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
石像は顔面部分が破壊されており、体部分も傷だらけだった。
「これも悪魔の仕業なのか?」
ガイツが首を捻った。
今までこの類のものに効果があるのか不思議だったが、
やはり悪魔には何か気に食わないものがあるのだろうか?
「あんたら、そこに何の用だ?
近寄らん方がええぞ。」
後ろの方から声がした。
振り返ると、年を召した男性がいた。
「どうしてですか?」
私は半分その言葉の意味に気付きながらも、
知らぬ顔で聞いてみた。
話を聞くと、この建物は本来水の女神である、
聖母ウェナ様を祀った神殿だったらしい。
そして、この石像は、聖母ウェナ様の守護者、男神アルテア様の像だったようだ。
しかし、1年ほど前に像がいたずらされて、破壊されてしまった。
すると、神殿の裏辺りから血が流れるように湖が赤く染まり始め、
流行り病が蔓延するようになった。
街の人達はアルテア様が怒っていると思い。
像を修復しようとしたが、
呪いのせいか、作業員は悉く謎の病にかかって亡くなってしまうため、
そのままになってしまっているらしい。
現在はアルテア様の怒りを鎮めるために、
巫女が神殿の中で昼夜問わずお祈りしてるようだ。
しかし、それでも益々悪くなるばかりで、
彼の娘も孫も災いを収めるため生贄になったが、
それでも収まる気配はないらしい。
私は、悪魔のことを話そうかと思ったが、思いとどまった。
まだ本当にこの中に悪魔がいると確信したわけではないし、
言ったところで、いたずらに混乱を招くだけだ。
私達は老人にいろいろ教えてもらった礼を言って別れた。
「巫女、怪しいな。そいつがロスタートか。」
ガイツが顎を撫でながら言った。
「可能性は高いけど、まだ決めつけることはできない。」
私達は、注意深く神殿の中に踏み込んだ。
神殿の中には、巫女と思われる女性と、
背の高い、全身黒い服装の男性がいた。
私は目を凝らしてみたが、悪魔では無さそうだった。
なぜ?
やっぱりあれは気のせい?
そう思いながらも気を引き締めて二人に近づいて行った。
「噂をすれば、だ。」
黒い服装の男がこちらに気付いて、誰に言うでもなく言った。
「あなたは一体?」
私は男に話しかけた。
「忘れちまったかい?
いやいや、そうかこの姿じゃあわからんよな。」
男は何が面白いのか高笑いをし始めた。
「リスバート。」
私は思い当たる名前を上げた。
男は急に私を指さした。
攻撃されるかと思った私は身構えたが、攻撃は来なかった。
「正解。賢いね。
おやおや、身構えなくていいよ。
前に言っただろう?私は戦いに向いてないんだ。」
男はまたも高笑いする。
「これが、リスバート?」
ガイツは今までの十邪星を想像していたのか、
拍子抜けした様だった。
「察していると思うが、こっちがロスタートだ。」
男が隣の女を親指で指さす。
すると、女はうるさそうに男の手を払う。
「あんたは体動かさない分、口が動き過ぎるんだ。
敵に媚び売ってるんじゃないよ。」
巫女の格好をしながら、きつい口調で女は言う。
やはり二人とも悪魔だった。
それも十邪星。二人同時に襲ってきたら勝てるだろうか?
それにしても、なぜ弱点が今回も見えないのだろう・・・。
ヴェリの時は魔力を封じるタリスマンがあった。
しかし、今回はそれもない。
それにしても、リスバートの呑気な話し方のせいで、
先手必勝の考えが狂わされてしまった。
いつ動くべきなのだろう。
私は和やかな雰囲気で話す悪魔達とは対照的に、
頭の中をフル回転させていた。
「やれやれ、体を動かさないとはよく言うよ。
隣の村まで飛んで、この街に急いで戻ってきたのに。
そんな言いかたされるなら、教えるんじゃなかったよ。」
リスバートは肩をすくめた。
私はおしゃべりなリスバートなら、
私の質問にも何か答えてくれるのではないかと、
ずっと気になっていたことを聞いてみた。
「少し聞いてもいい?
なぜあなた達は人間をひどい目に合わせるの?」
小さな頃から、悪魔とはそういうものだ、
と聞かされて育ってきたが、私はずっと納得がいっていなかった。
「おっと、それを聞いちゃうか。」
リスバートは一転、気まずそうな顔になり、
憂鬱そうに頭に手をやった。
「最初に私達をひどい目に合わせたのはあんたたち人間じゃないか!
それを忘れたとは言わせないよ!」
ロスタートが声を荒げる。
私はその言葉に心臓をガツンと殴られたような衝撃を受けた。
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