隻腕の聖女

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王の野望編

第39話

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洞窟を抜けると、私は城を目指して南下した。

途中、ガイツや街の様子が気になった私は、
フルトの街へ立ち寄ることにした。

フルトの街は、ロスタートを倒したことにより、
疫病が収まり、町は活気を取り戻しつつあった。

湖は正常な色へと変わり、生物が少しづつ戻ってきていた。

そして、神殿の入り口の石像は再建が開始されていた。

以前の石像はアルテア様ではなく、オルテガであることを皆知らないので、
再建される像もきっとオルテガだろう。

第一それを彼らに知らせたとて、
私も正解のアルテア様を知らないのだ。
何ともしようがない。

彼らがアルテア様と思い、造った像なら、
アルテア様ということでいいような気もしてきていたので、
私はそっと、その場を離れた。


私が病院を訪れると、
以前ガイツが寝ていたベッドの上にガイツはいなかった。

私は、ガイツを看てくれていた医者に話を聞くと、
彼は今、湖の傍にいるらしいことを聞いた。

私は彼が動けるようになったことを喜びながら、
医者に聞いた場所へと向かった。

そして、その場所に着いて私は衝撃を受けた。

その場所は墓地だった・・・。

私は、悪い冗談だ、と思いながら、
墓守の老人にガイツの事を聞いてみた。

墓守はゆっくりと歩きだし、一つの墓の前で止まって語りだした。
「彼は聖女様とこの街を救ってくれた英雄なんだそうだ。
 聖女様を命がけで悪魔から守ってくれたお陰で、この街は救われた。
 アルテア様の像の横にガイツ様の像を建てようと、
 皆で募金を集めているそうだよ。」

私は頭の中が真っ白になり、
もはや何に対して泣いているのか分からなかったが、
涙が止まらなかった。

なぜ?私達は笑顔で言葉を交わして別れたのに、
一緒に城へ帰ろうと約束したのに・・・。

私は立っていることができず、
その場にうずくまって泣き疲れるまで泣き続けた。


私が泣き疲れて、顔を上げると、
傍で私を見つめている女性がいることに気付いた。

彼女は私と目が合うと、手紙を差し出してきた。
「ガイツ様から、イヴ様に渡してほしいと言付かっておりました。」

死期を悟ったガイツが、看護師であるこの女性に、
口で語ったことを手紙として残してもらっていたようだ。

「イヴ、突然のことに驚いていると思う。
 あれから俺は、ロスタートの毒が体に回ってしまい、
 今では両目も見えなくなってしまった。

 俺自身まさかロスタートの毒が残っているなんて思いもよらなかった。
 イヴと話してた時は本当になんともなかったんだけどな。

 思い返してみれば、あんまり悪魔を倒す手伝いもできなくてすまなかった。
 ウェナ様を守るアルテア様のようにはいかなかったな。
 
 今だから本当のこと打ち明けると、
 最初会った時、俺は聖女様の力を信じていなかった。
 皆の言う不思議な力なんて、何かしらの仕掛けがあるのだと思っていたし、
 神託なんて言い出して、頭おかしいのかな、とか。

 だけど、聖女様と一緒に旅をする中で、初めて悪魔に遭遇して、
 俺では歯が立たなかったそいつを、聖女様は一撃で倒した。
 
 そのとき、兵長が言っていた、
 聖女様なら王を正気に戻せるかもしれないって言葉を理解した。

 自分の命を懸けるに値する人なのだと。

 イヴ、もし自分を責めているとしたら、それは間違いだ。
 なぜなら、むしろ俺はイヴの盾になれて誇らしいと思っているからだ。
 
 この国にとって、いや、人々にとって、君がどれほどの希望の灯であるか。
 その灯を命を懸けて守ることができた。
 これは一人の騎士として、男として誇らしいことなんだ。

 だから、君は気に病むことはない。
 

 あと、これは伝えようか迷ったんだが。
 どうせ最期なのだし、
 好きだと言われて嫌な奴はいないだろう?
 
 つまり、何が言いたいかって、
 好きだったよイヴ。
 あなたに出会えて本当に良かった。」

もう、泣き疲れて涙は枯れたと思っていたが、
また、私の目から涙が零れ落ちた。

こちらこそ、ありがとう。
ガイツに会えてよかった。
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