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1話 集団転移
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早朝、お気に入りのアニメのオープニングテーマのアラームと共に目覚める。
寝癖を直さずそのまま家族三人でテーブルを囲み、朝食を摂る。
顔を洗い、歯を磨き、制服に着替える。
いつもと何一つ変わらない通学路を歩き学校に到着。
下駄箱に靴を入れ上靴と交換する。
教室に向かい、階段を登る。
教室のドアを開けるといつもと変わらない喧騒と光景。
特に友達と呼べる人も居ないので、朝のホームルームが始まるまで自席で小説を読む。
俺が小説を読んでいる姿を見てクラスの奴らは俺を話の種にして笑っている。
だが俺はそんな事どうでもいい。
誰が俺を笑い者にしようと俺自身の価値は下がらない。
逆にそうやって他人を貶めて笑い者にしている奴らは自身の価値を下げているという事に気付いていない。
可哀想な奴らだと今日も心の中で笑ってやる。
そうやって俺の変わらない何気ない日常がこれからも続くと思っていた。
先生が配布物を配ろうとした時だ。
一瞬で視界が黒で染まった。
明らかに停電ではない。
停電なら朝なのでここまで暗くなる事は有り得ない。
じゃあ何が起こっているのか、どういう状況なのか思考を巡らせる。
こんな状況なのに誰一人として悲鳴を挙げないし、騒ぎにもなっていない。
どういうことだ。
すると急に視界が晴れた。
俺の目の前に広がっている光景はいつもの教室ではなかった。
「ここはどこだ?」
クラスの中心人物の一人の男子生徒が疑問を漏らす。
どうやらクラスメイト全員がこの真っ白な密室に閉じ込められたようだ。
一人の言動により騒ぎ出す他の生徒。
その騒ぎを消すようにモニターらしきモノが空中に現れる。
そこには真っ黒の顔をした人物が映っていた。
正確には”ヒトらしきモノ”だ。
鼻も目も口も耳も何もかもが真っ黒であるのかも分からない。
ただ人型をしているので人だと思うしかない。
全員の視線がそのモニターに向く。
暫しの静寂のあとそのヒトらしきモノが声を発した。
とても低い、地獄に底から響くような卑しげな声で
「君たちには異世界転移をしてもらう」と言ってきた。
勿論全員訳が分からず呆然としている。
その様子を無視しそいつは話を続ける。
「君たちはこれから俗に言う異世界という場所に行ってもらう。そこで魔王を倒して欲しい。異世界特典といった特別措置は用意していない。何か他に質問することはあるか?」
異世界行きの概要をスラスラと説明していく。
その説明に臆することなく、一人意義を唱える奴がいた。成績優秀なガリ勉の斎藤拓だ。
「一つ聞いておく。何で俺たちなんだ?」
それは俺も聞いておきたかった。
特に賢い高校でも、身体能力が高い奴が集まっている訳でもない、何でもない高校の奴らが何故このようなことになったのか。疑問しか無いだろう。
その質問に対し
「……ただの興味だ」
どこか含みのある言い方だった。
そんなやり取りに他のクラスメイトはワクワクしている者、不安がっている者、と様々だ。
「今から、異世界転移を行う。異世界に転移する際、躰に強い負荷がかかる。そのためお前たちの中の誰かは死ぬことになる可能性がある」
その言葉を聞いてみんな、さっきまでの空気と一変して騒ぎ出す。
「じゃあ俺達は死ぬかもしれないのか! おい誰か助けてくれよ!」
「神様、どうか私を助けて下さい……」
反発する者、ひたすら祈る者、ただ泣く者、と色々なやつが、この死ぬかもしれない状況をなんとか脱しようとしていた。
そんな混沌とした状況を何も感じず静観していた俺は異常なのかもしれない。するとなんの前振りもなく再び視界が黒に染まる。
次に目を開けるとそこにはクラスの奴らのバラバラになった死体と臓物、血が床に散らばっていた。
初めて見た死体に嗚咽が止まらない。
そして床に胃の内容物を撒き散らしてしまった。一通り吐き終わると妙に冷静になった。
状況を確認する。
西洋風の部屋。
レンガでできた暖炉。
見たことも無いような言葉で書かれた本たち。
鹿と熊を融合しさせたような謎の動物の剥製。
どうやら本当に異世界に来たらしい。
だが、どうしてだろうかクラスメイトが死んだのにも関わらず、涙が一滴も出ない。そんなことを考えていると脳内にある言葉が響いてきた。
『どうやら異世界転移は成功したようだな』
声音からして異世界転移させたあいつだろう。
俺は落ち着いた声で、
「何の用だよ。俺以外の奴らはみんな死んじまったぞ」
『ヒドい言われようだなぁ。私がわざわざ異世界転移させてやったのに』
「誰も頼んでない」
さっきまでと違いとてもフレンドリーに絡んでくる。
「異世界転移させた目的は何だ?」
『だから言っただろう? ただの興味……』
「嘘だな。なんの目的も無くこんな事はしないだろう。例え俺が神になったとしても興味だけでこんな事はしない。というかお前って結局何なんだ? 神とかいうやつなのか?」
そいつはクスリと笑い、こう言い放った。
『目的は二つ。一つは無能力者がこの世界でどれだけ活躍できるのか。もう一つは異世界人が転移の負荷に耐えられるのかの実験だよ。それと私は神じゃない。どちらかというと神と相反する存在かな』
「それの実験をしたいっていうのが興味っていうんだろうが」
というか相反するって普通に悪魔じゃねえか。
「どちらにせよ、俺はこれからこの世界で生きていくしかないんだな?」
『いやそうとも限らない。魔王を倒した暁には君の願いを何でも聞くよ。元の世界に戻りたい、だとかそれこそチート能力が欲しいとかでもね。でも結局魔王が倒せるかどうかの話だから、頑張ってね』
そう言うとプツリと電話が切ったようにあいつは話さなくなった。
寝癖を直さずそのまま家族三人でテーブルを囲み、朝食を摂る。
顔を洗い、歯を磨き、制服に着替える。
いつもと何一つ変わらない通学路を歩き学校に到着。
下駄箱に靴を入れ上靴と交換する。
教室に向かい、階段を登る。
教室のドアを開けるといつもと変わらない喧騒と光景。
特に友達と呼べる人も居ないので、朝のホームルームが始まるまで自席で小説を読む。
俺が小説を読んでいる姿を見てクラスの奴らは俺を話の種にして笑っている。
だが俺はそんな事どうでもいい。
誰が俺を笑い者にしようと俺自身の価値は下がらない。
逆にそうやって他人を貶めて笑い者にしている奴らは自身の価値を下げているという事に気付いていない。
可哀想な奴らだと今日も心の中で笑ってやる。
そうやって俺の変わらない何気ない日常がこれからも続くと思っていた。
先生が配布物を配ろうとした時だ。
一瞬で視界が黒で染まった。
明らかに停電ではない。
停電なら朝なのでここまで暗くなる事は有り得ない。
じゃあ何が起こっているのか、どういう状況なのか思考を巡らせる。
こんな状況なのに誰一人として悲鳴を挙げないし、騒ぎにもなっていない。
どういうことだ。
すると急に視界が晴れた。
俺の目の前に広がっている光景はいつもの教室ではなかった。
「ここはどこだ?」
クラスの中心人物の一人の男子生徒が疑問を漏らす。
どうやらクラスメイト全員がこの真っ白な密室に閉じ込められたようだ。
一人の言動により騒ぎ出す他の生徒。
その騒ぎを消すようにモニターらしきモノが空中に現れる。
そこには真っ黒の顔をした人物が映っていた。
正確には”ヒトらしきモノ”だ。
鼻も目も口も耳も何もかもが真っ黒であるのかも分からない。
ただ人型をしているので人だと思うしかない。
全員の視線がそのモニターに向く。
暫しの静寂のあとそのヒトらしきモノが声を発した。
とても低い、地獄に底から響くような卑しげな声で
「君たちには異世界転移をしてもらう」と言ってきた。
勿論全員訳が分からず呆然としている。
その様子を無視しそいつは話を続ける。
「君たちはこれから俗に言う異世界という場所に行ってもらう。そこで魔王を倒して欲しい。異世界特典といった特別措置は用意していない。何か他に質問することはあるか?」
異世界行きの概要をスラスラと説明していく。
その説明に臆することなく、一人意義を唱える奴がいた。成績優秀なガリ勉の斎藤拓だ。
「一つ聞いておく。何で俺たちなんだ?」
それは俺も聞いておきたかった。
特に賢い高校でも、身体能力が高い奴が集まっている訳でもない、何でもない高校の奴らが何故このようなことになったのか。疑問しか無いだろう。
その質問に対し
「……ただの興味だ」
どこか含みのある言い方だった。
そんなやり取りに他のクラスメイトはワクワクしている者、不安がっている者、と様々だ。
「今から、異世界転移を行う。異世界に転移する際、躰に強い負荷がかかる。そのためお前たちの中の誰かは死ぬことになる可能性がある」
その言葉を聞いてみんな、さっきまでの空気と一変して騒ぎ出す。
「じゃあ俺達は死ぬかもしれないのか! おい誰か助けてくれよ!」
「神様、どうか私を助けて下さい……」
反発する者、ひたすら祈る者、ただ泣く者、と色々なやつが、この死ぬかもしれない状況をなんとか脱しようとしていた。
そんな混沌とした状況を何も感じず静観していた俺は異常なのかもしれない。するとなんの前振りもなく再び視界が黒に染まる。
次に目を開けるとそこにはクラスの奴らのバラバラになった死体と臓物、血が床に散らばっていた。
初めて見た死体に嗚咽が止まらない。
そして床に胃の内容物を撒き散らしてしまった。一通り吐き終わると妙に冷静になった。
状況を確認する。
西洋風の部屋。
レンガでできた暖炉。
見たことも無いような言葉で書かれた本たち。
鹿と熊を融合しさせたような謎の動物の剥製。
どうやら本当に異世界に来たらしい。
だが、どうしてだろうかクラスメイトが死んだのにも関わらず、涙が一滴も出ない。そんなことを考えていると脳内にある言葉が響いてきた。
『どうやら異世界転移は成功したようだな』
声音からして異世界転移させたあいつだろう。
俺は落ち着いた声で、
「何の用だよ。俺以外の奴らはみんな死んじまったぞ」
『ヒドい言われようだなぁ。私がわざわざ異世界転移させてやったのに』
「誰も頼んでない」
さっきまでと違いとてもフレンドリーに絡んでくる。
「異世界転移させた目的は何だ?」
『だから言っただろう? ただの興味……』
「嘘だな。なんの目的も無くこんな事はしないだろう。例え俺が神になったとしても興味だけでこんな事はしない。というかお前って結局何なんだ? 神とかいうやつなのか?」
そいつはクスリと笑い、こう言い放った。
『目的は二つ。一つは無能力者がこの世界でどれだけ活躍できるのか。もう一つは異世界人が転移の負荷に耐えられるのかの実験だよ。それと私は神じゃない。どちらかというと神と相反する存在かな』
「それの実験をしたいっていうのが興味っていうんだろうが」
というか相反するって普通に悪魔じゃねえか。
「どちらにせよ、俺はこれからこの世界で生きていくしかないんだな?」
『いやそうとも限らない。魔王を倒した暁には君の願いを何でも聞くよ。元の世界に戻りたい、だとかそれこそチート能力が欲しいとかでもね。でも結局魔王が倒せるかどうかの話だから、頑張ってね』
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