5 / 8
残り八か月
しおりを挟む
テレレレレレーレテレレレレー
「!しゃーせー」
ドアが開く音が聞こえてきてきて、レジ下でスマホをいじってたおれは急いで立ち上がった。くそ。ちょうど今ボーナスタイムなのに接客なんかしてる暇ねえって。この寂れたコンビニで現金稼ぐよりも、イベクエ周回してポイント稼ぐ方がよっぽど重要だって。
とか思ってたけど、見覚えのあるバーコード頭が目に入った瞬間、おれは音を置き去りにする勢いでスマホをポケットにしまった。あぶねー、間一髪。おれはなーんもなかったかのように「おつかれさまでいす」って声をかけた。
「お疲れ様、体調どう?」
「全然平気っすよ」
「あんまり無理しないようにね」
バーコードの隙間まで汗だく状態のてんちょーは、ハンカチでこめかみを押さえながら人のよさそうな笑顔を浮かべてる。おれもてんちょーに合わせて笑っとく。
「申し訳ないね。大変な状況なのに働かせてしまって」
「いやいや!前にも言ったっすけど、おれ全然元気なんすよ!むしろありがたいっていうか、それに、金稼がねーと病気より前に餓死しちゃうしーって感じで」
てんちょーは口をひくつかせて笑ってるんだか痙攣してるんだかよくわからん。おれの渾身のブラックジョークはだだ滑りしたっぽい。
おれはまあまあ長いことコンビニのバイトをしてる。
家が近いからって理由でここにしたんだけど、どうやら最近のイケてる大学生はコンビニよりも服屋とかオシャンなカフェとかで働くらしい。てことで、このコンビニには絶望的にバイトがいない。ほんとは余命宣告されたときにバイト辞めよーって思ってたけど、マジでここバイトいないし、おれもココ辞めたところでやることないしってことで、なんだかんだ今も働いてる。
で、てんちょーに病気の話したら、どっかのバーのマスターと全くおんなじ反応して、そっから頻繫に店に顔出すようになった。心配してくれんのはありがたいんけど、正直ちょっとダルいんよなー。話長いしつまんないしイベクエ周回できないし。いや、心配してくれてんのは分かってんだけどね?
おれ、なーんか昔っから年上のおっさんに世話焼かれるんだよな。バーのマスターとか病院のせんせーとかもそうだけど。おれそんな危なっかしい感じの雰囲気出てるんかな?酒がタダになるのは嬉しいけど、無駄に世間話付き合わされたりとか、やけに電話かかってきたりとかそういうのはマジで勘弁だ。
逆におれ、年下のコには全然好かれないんだよね。多分この髪の色が原因なんだろーけど。まあ、一回おれから話しかけたら仲良くなれるし別に良いんだけどさ。よくシフト被ってる大学一年生のミキちゃんとか、前までぜんっぜん目ぇ合わなかったしな。最近おれの努力の成果もあって喋ってくれるようになったけど。
てか、そういえば、
「ミキちゃん最近見てないすけど」
「……」
「辞めたすか」
てんちょーは背中を丸めて弱々しく頷いた。またかよー。なんとなく読めてた展開だったけど、なんて声をかけたらいいか分からんくて頭をかいた。
いかにも苦労背負って生きてきました、って感じの悲壮感が漂ってるてんちょーは、ほんとに運に見放されてると思う。フランチャイズで出店したこのコンビニはバイトも来ないし客も来ない。
まともに出勤してるバイトは、よりによって大型爆弾抱えたおれと、病欠でよく休むフリーターの佐々木さんと、日本語がマジで怪しいキムさんだけ。ミキちゃんみたいにたまーに入ってくる子もいるけど、なぜか続かない。しかも、てんちょーこないだ熟年離婚したらしい。キングボンビーでも飼ってんじゃないの?
まあめっちゃいい人なんだけどね。おれのこと心配してちょくちょく様子見に来るのはちょっとウザ……過保護だけど、面倒見のいい人だ。
こないだとかキムさんに日本語教えてたし。おれも一緒になって「とりあえず困ったことがあったらヤバいって言えばいいよ」って教えてあげたんだけど、苦笑いしたてんちょーにやんわり怒られた。けど、次のシフト一緒になったキムさんに「カラアゲくんの在庫ヤバイデスヨ」って言われたときはマジで延々と爆笑してた。キムさんがヤバいって言うとおれが爆笑するから、そっからキムさんの口癖はヤバいになった。
「そいえば、てんちょーってどっか行きたいとこあるっすか」
「んー」
へらりと笑って問いかけると、てんちょーは顎に手をあてて唸り始めた。
おれ、あと八か月しか生きれないのにマジでなにもしてないんだよな。週五でバイト入れて、それ以外は家にこもってスマホ漬けって感じの毎日で。たまにはどっか行くかーとか思っても、肝心の行くとこがなくて。
―――やりたいことは全部やりなさいよ
そんなこと言われてもな、無いもんは無いんだよ。マスター。
てことで、てんちょーの意見を聞こうかなと。ま、実行するかどうかは別として。
「行きたいところ……温泉かな」
「温泉っすか」
「そうそう。ゆっくり温泉に浸かって、何もかも忘れてのんびりしたいよ」
妙に納得した。いかにも温泉好きそうな見た目してるもんな、てんちょー。
温泉とか前にダチと行ったことあるけど、酒飲んで盛り上がっただけで、他に何したかなんてほとんど覚えてない。多分だけど、一人で行ってもつまらんだろうなってのは簡単に想像できる。
「温泉いいっすね」
テキトーなおれの返事に目を輝かせた店長は、客が来るまでの間延々と温泉の魅力を語ってた。おれは話題を降ったことを心から後悔しつつ、永遠と「ソッスネー」って呟くbotになってた。
「!しゃーせー」
ドアが開く音が聞こえてきてきて、レジ下でスマホをいじってたおれは急いで立ち上がった。くそ。ちょうど今ボーナスタイムなのに接客なんかしてる暇ねえって。この寂れたコンビニで現金稼ぐよりも、イベクエ周回してポイント稼ぐ方がよっぽど重要だって。
とか思ってたけど、見覚えのあるバーコード頭が目に入った瞬間、おれは音を置き去りにする勢いでスマホをポケットにしまった。あぶねー、間一髪。おれはなーんもなかったかのように「おつかれさまでいす」って声をかけた。
「お疲れ様、体調どう?」
「全然平気っすよ」
「あんまり無理しないようにね」
バーコードの隙間まで汗だく状態のてんちょーは、ハンカチでこめかみを押さえながら人のよさそうな笑顔を浮かべてる。おれもてんちょーに合わせて笑っとく。
「申し訳ないね。大変な状況なのに働かせてしまって」
「いやいや!前にも言ったっすけど、おれ全然元気なんすよ!むしろありがたいっていうか、それに、金稼がねーと病気より前に餓死しちゃうしーって感じで」
てんちょーは口をひくつかせて笑ってるんだか痙攣してるんだかよくわからん。おれの渾身のブラックジョークはだだ滑りしたっぽい。
おれはまあまあ長いことコンビニのバイトをしてる。
家が近いからって理由でここにしたんだけど、どうやら最近のイケてる大学生はコンビニよりも服屋とかオシャンなカフェとかで働くらしい。てことで、このコンビニには絶望的にバイトがいない。ほんとは余命宣告されたときにバイト辞めよーって思ってたけど、マジでここバイトいないし、おれもココ辞めたところでやることないしってことで、なんだかんだ今も働いてる。
で、てんちょーに病気の話したら、どっかのバーのマスターと全くおんなじ反応して、そっから頻繫に店に顔出すようになった。心配してくれんのはありがたいんけど、正直ちょっとダルいんよなー。話長いしつまんないしイベクエ周回できないし。いや、心配してくれてんのは分かってんだけどね?
おれ、なーんか昔っから年上のおっさんに世話焼かれるんだよな。バーのマスターとか病院のせんせーとかもそうだけど。おれそんな危なっかしい感じの雰囲気出てるんかな?酒がタダになるのは嬉しいけど、無駄に世間話付き合わされたりとか、やけに電話かかってきたりとかそういうのはマジで勘弁だ。
逆におれ、年下のコには全然好かれないんだよね。多分この髪の色が原因なんだろーけど。まあ、一回おれから話しかけたら仲良くなれるし別に良いんだけどさ。よくシフト被ってる大学一年生のミキちゃんとか、前までぜんっぜん目ぇ合わなかったしな。最近おれの努力の成果もあって喋ってくれるようになったけど。
てか、そういえば、
「ミキちゃん最近見てないすけど」
「……」
「辞めたすか」
てんちょーは背中を丸めて弱々しく頷いた。またかよー。なんとなく読めてた展開だったけど、なんて声をかけたらいいか分からんくて頭をかいた。
いかにも苦労背負って生きてきました、って感じの悲壮感が漂ってるてんちょーは、ほんとに運に見放されてると思う。フランチャイズで出店したこのコンビニはバイトも来ないし客も来ない。
まともに出勤してるバイトは、よりによって大型爆弾抱えたおれと、病欠でよく休むフリーターの佐々木さんと、日本語がマジで怪しいキムさんだけ。ミキちゃんみたいにたまーに入ってくる子もいるけど、なぜか続かない。しかも、てんちょーこないだ熟年離婚したらしい。キングボンビーでも飼ってんじゃないの?
まあめっちゃいい人なんだけどね。おれのこと心配してちょくちょく様子見に来るのはちょっとウザ……過保護だけど、面倒見のいい人だ。
こないだとかキムさんに日本語教えてたし。おれも一緒になって「とりあえず困ったことがあったらヤバいって言えばいいよ」って教えてあげたんだけど、苦笑いしたてんちょーにやんわり怒られた。けど、次のシフト一緒になったキムさんに「カラアゲくんの在庫ヤバイデスヨ」って言われたときはマジで延々と爆笑してた。キムさんがヤバいって言うとおれが爆笑するから、そっからキムさんの口癖はヤバいになった。
「そいえば、てんちょーってどっか行きたいとこあるっすか」
「んー」
へらりと笑って問いかけると、てんちょーは顎に手をあてて唸り始めた。
おれ、あと八か月しか生きれないのにマジでなにもしてないんだよな。週五でバイト入れて、それ以外は家にこもってスマホ漬けって感じの毎日で。たまにはどっか行くかーとか思っても、肝心の行くとこがなくて。
―――やりたいことは全部やりなさいよ
そんなこと言われてもな、無いもんは無いんだよ。マスター。
てことで、てんちょーの意見を聞こうかなと。ま、実行するかどうかは別として。
「行きたいところ……温泉かな」
「温泉っすか」
「そうそう。ゆっくり温泉に浸かって、何もかも忘れてのんびりしたいよ」
妙に納得した。いかにも温泉好きそうな見た目してるもんな、てんちょー。
温泉とか前にダチと行ったことあるけど、酒飲んで盛り上がっただけで、他に何したかなんてほとんど覚えてない。多分だけど、一人で行ってもつまらんだろうなってのは簡単に想像できる。
「温泉いいっすね」
テキトーなおれの返事に目を輝かせた店長は、客が来るまでの間延々と温泉の魅力を語ってた。おれは話題を降ったことを心から後悔しつつ、永遠と「ソッスネー」って呟くbotになってた。
0
あなたにおすすめの小説
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
五十嵐三兄弟の爛れた夏休みの過ごし方
ユーリ
BL
夏休み、それは学生にとって長い長い休日。爛れた関係にある五十嵐三兄弟は広い1Rでひたすらお互いを求め合う。山もなければオチもない、ただひたすら双子×義兄が過ごす爛れた夏休み。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる