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基本、人間界はテストの場である。
テストを終えればその生きてきた道程を決定の森で採点される。
魔界に降りて来たらさながらお化け屋敷の様な怖い思いをしながら村に行き着く者もいれば、いくつもの困難に立ち向かわなければいけない者も居る。その者の犯した罪の重さによって試練の重さも変わるが、何と言っても魔界なのでその苦しみは尋常じゃ無い物の方が多い。
魔の世界で長い事試練を受けていると1通の手紙が手元に届く。そして、いくつものカルマを付けられまた人間界にテストを受けに行き無事合格出来れば晴れて天界に行けるのだ...が、人間は弱い生き物なので天界に行くには何回も魔界で修行をしなければならないのが現実だったりする。
ただし、こちらの世界で魔界人と婚姻を結んだ人間は魔界人となるので人間界へ生まれ変わる事は出来なくなる。
ただ今、ラジルドは大いに悩み中だ。
香澄に魔界人になってもらうにはどう説得したら良いのだろうと...。
その前の段階を踏まないといけないんじゃないのかい?...と言う素朴な疑問は彼の頭の中にはどうやらない。
香澄が魔界に来て1ヶ月。
彼は毎日毎日夕食を香澄と一緒に食べる努力をしている。
ラジルドの仕事がメチャクチャ忙しいのは先だって述べた通りだが、香澄と毎日夕食を取る為にその忙しい時間を切り詰めて走り回っている事なんて香澄は全く知らない.....。
「香澄、魔界にはもう慣れたかな?」
「.......」
「随分と食事も出来るようになったね」
「.......」
「今日はね、人間界から沢山の人が送られてきてね、1番面白かったのはー」
「ごっごちそう様でした」
「あーデザートのプリンがー」
「後でいただきます」
香澄は正直ちょっとウンザリしていた。こちらの世界に来て3年。初めは慣れずに毎日泣いていたが、自分でなんとかする事を覚えて毎日毎日体を動かしていたのに、いきなり魔界に連れてこられて部屋に閉じ込められて...。出掛けても構わないのだろうが(逆に出かけると言えば ラジルドは喜んで着いて来るのだろうが...)なんせ魔界。あっちを見ても怖い。こっちを見ても怖い。
その上、毎日食事の時間にグロテスクな話を聞かされれば食事も喉を通らなくなる。その前に部屋の中に閉じ篭っていればお腹も空かない。
テーブルの上の豪華な食事は見ただけでお腹がいっぱいになってしまう。
しかし、ラジルドが嬉々として食事をしているもんだから言い出せずに今日まで来た。
香澄こそ、なんとか開放してもらおうと頭を悩ませていたのだ。
交じり合わない2人。
ラジルドご愁傷さま......。
香澄は今日こそは話すぞ!!と意気込んでいた。
「あの...ラジルドさん....」
意気込んでいながらも相手の様子を伺いながら話してしまうのは性格なのか、日本人の気質なのか...。
「どうしたの?香澄」
「あの...私...何処か...魔人さんがいないと言うか...少ない所で暮らしたいんです」
香澄の脳内はこうだ。
『私、門番さんと暮らしてたように1人で魔人がいない所で暮らしたい』
一方ラジルドの脳内はこうだ。
『私、誰にも邪魔されない所で静かに2人で暮らしたい』
どうすればそんな脳内変換になるのかラジルドの頭の中を1回覗いてみたいものだ...。
ラジルドはニヤけそうになる頬を必死で我慢しながら真剣に考える振りをする。香澄は必死な顔だ。だからラジルドも必死になって困った顔を作る。
「香澄は魔界の人達にまだ慣れないよね。まだ1ヶ月だもんね」
香澄は必死でコクコク頷く。
「そうか...それはしょうがないな~。何処かに家を用意しようか」
香澄の顔がパァ~っと笑顔になる。
「私!小さい家が良いんです。大きい家は掃除が大変だから。ほらっほらっ私って魔法使えないしっ。そっそしてっあのっ自分でお料理したりっ洗濯したりしたいんですっっ」
香澄は必死で言葉を重ねる。
『私、ラジルドさんの為にお料理したり洗濯したりしたいんです!』
勿論ラジルドにはそう聞こえている。香澄はそんな事一言も言ってないけど...。
「そうか。それも楽しいよね。解った!いいよ。魔人が全くいない所はないけれど、関わらなければ近くには来ないし、この辺りは害をなす魔人は少ないからね。早急に家を探そうか」
「ホントですか?ありがとうございます」
香澄は深々と頭を下げた。
「ちょっと時間がかかるかもしれないけど...」
「私待てますっ」
ラジルドは満面の笑みを浮かべる。
『さて、忙しくなるなぁ。パーシックに頼むか~小さな家かぁ~どこら辺に買おうかなぁ~』
脳内は凄い勢いで動いている。
『婚約の首輪を買わないといけないなぁ~』
.....だから、その前の段階がまだですって!!
それから3ヶ月が立つ頃。パーシックに頼んだお陰で条件の良い家が見つかった。魔界には貧困層以外で小さい家を求める人は少ない(変身して身体が大きくなったりする為)物置にする為であったり、子供の遊び場や趣味の為に小さい家を広い庭の片隅に建てるのが一般的だ。
魔界人は何事も大きいのが成功の証であったり、良い家庭の象徴であったりする。男性の下半身に至っては大きければ大きい程=良い男となる。顔ではない。モテる男は下半身がご立派なのだ。
今回の家は売りに出されている家の庭の一角にある小さな家を土地ごと書いとった物件だった。だから必然的に庭が広くなった。ちょっと時間が掛かったのは境界線の壁を作ったり、家の中のリフォームをしないといけなかったからだ。近くに家も少なく、香澄が怖がるような事態には成りにくいだろうとラジルドがそこに決めた。
ラジルドは城にも通いやすくて景色も良くて...部屋は全部で3つしかないが、仕事部屋と寝室と着替えを置く部屋とリビングがあれば良いだろうとパーシックから話があった時に即断でこの家を買った。香澄はそれでももっと小さな家を...と望んだがこれ以上は2人で住むには狭すぎると考えて却下した。
「ここなんか間取りとかどうかな?」
「部屋が3つも?リビングダイニングと寝る部屋があれば充分なんですけど...」
「えーそれじゃ狭すぎるよ~」
「そうですか?」
「そうだよ~1つは(2人の)寝室。1つは(僕の)仕事部屋。1つは(2人の)物置件衣装部屋」
ラジルドが指を折りながら香澄に説明する
「寝室と衣装部屋って一緒じゃダメなんですか?」
「ダメダメ!すぐに物が溢れちゃう。やっぱ部屋が最低3つはないと」
「そんなもんですかね~」
「そうだよ香澄。でも楽しみだね~」
「はい!庭で色々作るんです。花壇とか」
「いいね~僕も手伝うよ」
「えーーーー!ラジルドさんは仕事がありますから手を借りる訳には行きません」
「いつもは出来ないかもしれないけど...でも休みの日とか手伝えると思うんだけど...」
「忙しいんですから休みの日はゆ~っくり休んで下さい。それにお休みの日はデートに使わなきゃ」
「デートかぁ~そうだね~じゃあ、花壇は香澄が頑張って作ったのを鑑賞する事にしようかな」
「はい!癒される様な花壇作らなきゃですね~頑張ります。魔界の花ってどんなのがあるか調べなきゃ」
ラジルドはこれ以上にない満面の笑み。香澄も嬉しくて小躍りしたくなるほどだった。2人で見つめ合って、はたから見たら本当に新婚さんだ。
.....ただ、話が噛み合ってるようで噛み合ってないとは本人達は全く思ってない。
引越しの日、香澄は思いを巡らせながら新居に。
新しい家は思ってたよりは小さかった。中に入ってみるとすぐにキッチンがありダイニングになっていた。
「わぁ~」
今日からココで生活するのだ。自分で料理を作って、自分で掃除をして...
ただ、1つ心配なのはお金の問題だった。
何処かで働かないとお金が無い。でも自分に働ける所があるのか...
ラジルドは生活費の事は心配しなくて良いと言っていたがいつまでもラジルドに甘える訳もいかない。しかもお金をどう使えば良いのかも解らない。
「今度ラジルドさんに聞かないとなぁ~」
そう思いながら荷物を部屋に置きに行った。
「!!!」
寝室を覗くとビックリした。
部屋いっぱいいっぱいにベットが狭そうに置かれている。
「はぁ~?このベット何?」
隣の衣装部屋も覗くと収納がありすぎて香澄の持ってきている荷物じゃスカスカだ...
仕事部屋を覗くと立派で大きい机がドッカリと置かれている。
「ん?」
香澄はしばらく考えて慌てて家を飛び出す。
そして周りをキョロキョロ見回すとまた考える。
『家ってココだよね?』
『間違えてないよね?』
頭はパニック寸前。『えーーーーーどうしよぉ~』
そう思いながらオロオロしていると通行人の魔界人が話しかけてくれた
「どうしたの?」
振り向くとそこには背が高くて包帯が沢山巻かれた背広を来た人が立っていた。顔に巻かれた包帯の隙間から目の玉が見えている。
「キャーーーーーーっっ!!」
今度は慌てて家の中に入る羽目となった。
足がガクガク震えてドアノブを持った手が離れない。扉の前で『怖い怖い』とブルブル震えて泣くしかなかった。
ラジルドは今日は引越しの為に仕事を早く切り上げて早退した。明日から長期休暇に入るので最後に仕事の確認をしていたのだ。香澄に魔界を色々と教えないといけないし、しばらくまともに休みを貰っていなかった為 申請は結構すんなり通った。
同じ事務官のダズに何かあったらすぐに連絡する様に最後に言って城を出た。
香澄がどんな顔をしているだろうか...と胸を弾ませて足取りは軽やかに自宅に向かっていた。
向こうからパーシックが歩いてくる。
「パーシック!」
手を上げて彼を呼ぶと向こうも気が付いて手を上げた。
「今から家に行くのかい?」
「あぁ、今日は早く切り上げて早退して来た。色々厄介ごとを頼んで悪かったね。またお礼には改めて伺うよ」
「さっきの新居に行ってきたよ」
「そうか!香澄には会ったかい?」
「多分、あの子が香澄ちゃんだと思うんだけど....俺の顔を見て叫んで家の中に入って行ったよ」
カラカラカラ...と言いながら笑うパーシック。そう、さっき話しかけてくれた人はお世話になったパーシックだった。
「あーーー........」
『そうだった...。アチャ~...』とラジルドは額の上に手のひらを当てた。
「俺みたいなミイラ男は初めてだったのか?」
「いや...。まだ魔界人に慣れてなくてすべての魔界人を見て怖がるんだ」
「そりゃ可哀想だったなぁ~」
カラカラ...と骨が当たる様な音がしてパーシックが笑う。そして
「俺からしたら人間の方がよっぽど怖いけどな~」
そう言ってまたカラカラと笑った。
「パーシックすまん、また連絡するから」
目の前で両手を合わせてごめんねポーズを作った後、香澄が心配で走り出したラジルドはどうすれば良いかなぁ~...と思案していた。
家に着いたら玄関に鍵がかかっていた。
ドンドンドンっと扉を叩いて「香澄っ香澄っ」
と呼ぶが何の返事もない。合鍵を使って家に入ると香澄は扉の前で座り込んでいた。
「香澄...大丈夫かい?」
そう優しく言いながらラジルドも床に座る。そ~っと香澄の頭を抱き込んだ。
「こわっ...こっ...ごわがっ......だぁー」
ラジルドは目を細めて笑いながら頭を撫でる。
「香澄も魔界で生活するなら慣れていかないとな~。ココらは香澄が思ってるような怖くて害をなす悪い魔人なんていないよ。大丈夫大丈夫」
そういいながら頭をよしよし撫でる。
「らじっ..らじっ...らっ...」
香澄はヒックヒック言っていて言葉にならない様だ
「ちょっと待ってて、お水を持ってくるね」
そう優しく言って側を離れる。水をコップに注ぐとお酒を2、3滴垂らす。
「ほら、落ち着くから一気に飲んで」
そう言ってグラスを香澄に渡すけど手が震えて持てない
ラジルドはおもむろに自分でグイっと水を含んで香澄に口づけをする。
香澄はビックリしながらも口内に入って来た水をコクコク飲んだ。ラジルドにギュッっと抱きしめられて
「大好きだよ」
と耳元で言われると、今度は顔がカァーーーーーっと熱くなって心臓がドキドキ鳴り止まなくなってしまった。ラジルドは始終優しい笑顔で
「香澄可愛い」
そう言って抱き上げてソファに連れていった。
今度は違った意味で心臓がドキドキして苦しい。感情が上がったり下がったり顔は青くなったり赤くなったり。手の震えも収まらないし、意識がなくなりそうだ。
「大丈夫?」
そう聞かれて首を横に振る、とてもじゃないが感情がついて行かない。
ラジルドはまた香澄を抱き上げると寝室に連れて行き香澄を寝かせた。
「ちょっと休んで落ち着いた方が良いかもね」
そう言っておでこにチュッってキスをした。
香澄の顔はゆでダコだった...。
テストを終えればその生きてきた道程を決定の森で採点される。
魔界に降りて来たらさながらお化け屋敷の様な怖い思いをしながら村に行き着く者もいれば、いくつもの困難に立ち向かわなければいけない者も居る。その者の犯した罪の重さによって試練の重さも変わるが、何と言っても魔界なのでその苦しみは尋常じゃ無い物の方が多い。
魔の世界で長い事試練を受けていると1通の手紙が手元に届く。そして、いくつものカルマを付けられまた人間界にテストを受けに行き無事合格出来れば晴れて天界に行けるのだ...が、人間は弱い生き物なので天界に行くには何回も魔界で修行をしなければならないのが現実だったりする。
ただし、こちらの世界で魔界人と婚姻を結んだ人間は魔界人となるので人間界へ生まれ変わる事は出来なくなる。
ただ今、ラジルドは大いに悩み中だ。
香澄に魔界人になってもらうにはどう説得したら良いのだろうと...。
その前の段階を踏まないといけないんじゃないのかい?...と言う素朴な疑問は彼の頭の中にはどうやらない。
香澄が魔界に来て1ヶ月。
彼は毎日毎日夕食を香澄と一緒に食べる努力をしている。
ラジルドの仕事がメチャクチャ忙しいのは先だって述べた通りだが、香澄と毎日夕食を取る為にその忙しい時間を切り詰めて走り回っている事なんて香澄は全く知らない.....。
「香澄、魔界にはもう慣れたかな?」
「.......」
「随分と食事も出来るようになったね」
「.......」
「今日はね、人間界から沢山の人が送られてきてね、1番面白かったのはー」
「ごっごちそう様でした」
「あーデザートのプリンがー」
「後でいただきます」
香澄は正直ちょっとウンザリしていた。こちらの世界に来て3年。初めは慣れずに毎日泣いていたが、自分でなんとかする事を覚えて毎日毎日体を動かしていたのに、いきなり魔界に連れてこられて部屋に閉じ込められて...。出掛けても構わないのだろうが(逆に出かけると言えば ラジルドは喜んで着いて来るのだろうが...)なんせ魔界。あっちを見ても怖い。こっちを見ても怖い。
その上、毎日食事の時間にグロテスクな話を聞かされれば食事も喉を通らなくなる。その前に部屋の中に閉じ篭っていればお腹も空かない。
テーブルの上の豪華な食事は見ただけでお腹がいっぱいになってしまう。
しかし、ラジルドが嬉々として食事をしているもんだから言い出せずに今日まで来た。
香澄こそ、なんとか開放してもらおうと頭を悩ませていたのだ。
交じり合わない2人。
ラジルドご愁傷さま......。
香澄は今日こそは話すぞ!!と意気込んでいた。
「あの...ラジルドさん....」
意気込んでいながらも相手の様子を伺いながら話してしまうのは性格なのか、日本人の気質なのか...。
「どうしたの?香澄」
「あの...私...何処か...魔人さんがいないと言うか...少ない所で暮らしたいんです」
香澄の脳内はこうだ。
『私、門番さんと暮らしてたように1人で魔人がいない所で暮らしたい』
一方ラジルドの脳内はこうだ。
『私、誰にも邪魔されない所で静かに2人で暮らしたい』
どうすればそんな脳内変換になるのかラジルドの頭の中を1回覗いてみたいものだ...。
ラジルドはニヤけそうになる頬を必死で我慢しながら真剣に考える振りをする。香澄は必死な顔だ。だからラジルドも必死になって困った顔を作る。
「香澄は魔界の人達にまだ慣れないよね。まだ1ヶ月だもんね」
香澄は必死でコクコク頷く。
「そうか...それはしょうがないな~。何処かに家を用意しようか」
香澄の顔がパァ~っと笑顔になる。
「私!小さい家が良いんです。大きい家は掃除が大変だから。ほらっほらっ私って魔法使えないしっ。そっそしてっあのっ自分でお料理したりっ洗濯したりしたいんですっっ」
香澄は必死で言葉を重ねる。
『私、ラジルドさんの為にお料理したり洗濯したりしたいんです!』
勿論ラジルドにはそう聞こえている。香澄はそんな事一言も言ってないけど...。
「そうか。それも楽しいよね。解った!いいよ。魔人が全くいない所はないけれど、関わらなければ近くには来ないし、この辺りは害をなす魔人は少ないからね。早急に家を探そうか」
「ホントですか?ありがとうございます」
香澄は深々と頭を下げた。
「ちょっと時間がかかるかもしれないけど...」
「私待てますっ」
ラジルドは満面の笑みを浮かべる。
『さて、忙しくなるなぁ。パーシックに頼むか~小さな家かぁ~どこら辺に買おうかなぁ~』
脳内は凄い勢いで動いている。
『婚約の首輪を買わないといけないなぁ~』
.....だから、その前の段階がまだですって!!
それから3ヶ月が立つ頃。パーシックに頼んだお陰で条件の良い家が見つかった。魔界には貧困層以外で小さい家を求める人は少ない(変身して身体が大きくなったりする為)物置にする為であったり、子供の遊び場や趣味の為に小さい家を広い庭の片隅に建てるのが一般的だ。
魔界人は何事も大きいのが成功の証であったり、良い家庭の象徴であったりする。男性の下半身に至っては大きければ大きい程=良い男となる。顔ではない。モテる男は下半身がご立派なのだ。
今回の家は売りに出されている家の庭の一角にある小さな家を土地ごと書いとった物件だった。だから必然的に庭が広くなった。ちょっと時間が掛かったのは境界線の壁を作ったり、家の中のリフォームをしないといけなかったからだ。近くに家も少なく、香澄が怖がるような事態には成りにくいだろうとラジルドがそこに決めた。
ラジルドは城にも通いやすくて景色も良くて...部屋は全部で3つしかないが、仕事部屋と寝室と着替えを置く部屋とリビングがあれば良いだろうとパーシックから話があった時に即断でこの家を買った。香澄はそれでももっと小さな家を...と望んだがこれ以上は2人で住むには狭すぎると考えて却下した。
「ここなんか間取りとかどうかな?」
「部屋が3つも?リビングダイニングと寝る部屋があれば充分なんですけど...」
「えーそれじゃ狭すぎるよ~」
「そうですか?」
「そうだよ~1つは(2人の)寝室。1つは(僕の)仕事部屋。1つは(2人の)物置件衣装部屋」
ラジルドが指を折りながら香澄に説明する
「寝室と衣装部屋って一緒じゃダメなんですか?」
「ダメダメ!すぐに物が溢れちゃう。やっぱ部屋が最低3つはないと」
「そんなもんですかね~」
「そうだよ香澄。でも楽しみだね~」
「はい!庭で色々作るんです。花壇とか」
「いいね~僕も手伝うよ」
「えーーーー!ラジルドさんは仕事がありますから手を借りる訳には行きません」
「いつもは出来ないかもしれないけど...でも休みの日とか手伝えると思うんだけど...」
「忙しいんですから休みの日はゆ~っくり休んで下さい。それにお休みの日はデートに使わなきゃ」
「デートかぁ~そうだね~じゃあ、花壇は香澄が頑張って作ったのを鑑賞する事にしようかな」
「はい!癒される様な花壇作らなきゃですね~頑張ります。魔界の花ってどんなのがあるか調べなきゃ」
ラジルドはこれ以上にない満面の笑み。香澄も嬉しくて小躍りしたくなるほどだった。2人で見つめ合って、はたから見たら本当に新婚さんだ。
.....ただ、話が噛み合ってるようで噛み合ってないとは本人達は全く思ってない。
引越しの日、香澄は思いを巡らせながら新居に。
新しい家は思ってたよりは小さかった。中に入ってみるとすぐにキッチンがありダイニングになっていた。
「わぁ~」
今日からココで生活するのだ。自分で料理を作って、自分で掃除をして...
ただ、1つ心配なのはお金の問題だった。
何処かで働かないとお金が無い。でも自分に働ける所があるのか...
ラジルドは生活費の事は心配しなくて良いと言っていたがいつまでもラジルドに甘える訳もいかない。しかもお金をどう使えば良いのかも解らない。
「今度ラジルドさんに聞かないとなぁ~」
そう思いながら荷物を部屋に置きに行った。
「!!!」
寝室を覗くとビックリした。
部屋いっぱいいっぱいにベットが狭そうに置かれている。
「はぁ~?このベット何?」
隣の衣装部屋も覗くと収納がありすぎて香澄の持ってきている荷物じゃスカスカだ...
仕事部屋を覗くと立派で大きい机がドッカリと置かれている。
「ん?」
香澄はしばらく考えて慌てて家を飛び出す。
そして周りをキョロキョロ見回すとまた考える。
『家ってココだよね?』
『間違えてないよね?』
頭はパニック寸前。『えーーーーーどうしよぉ~』
そう思いながらオロオロしていると通行人の魔界人が話しかけてくれた
「どうしたの?」
振り向くとそこには背が高くて包帯が沢山巻かれた背広を来た人が立っていた。顔に巻かれた包帯の隙間から目の玉が見えている。
「キャーーーーーーっっ!!」
今度は慌てて家の中に入る羽目となった。
足がガクガク震えてドアノブを持った手が離れない。扉の前で『怖い怖い』とブルブル震えて泣くしかなかった。
ラジルドは今日は引越しの為に仕事を早く切り上げて早退した。明日から長期休暇に入るので最後に仕事の確認をしていたのだ。香澄に魔界を色々と教えないといけないし、しばらくまともに休みを貰っていなかった為 申請は結構すんなり通った。
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香澄がどんな顔をしているだろうか...と胸を弾ませて足取りは軽やかに自宅に向かっていた。
向こうからパーシックが歩いてくる。
「パーシック!」
手を上げて彼を呼ぶと向こうも気が付いて手を上げた。
「今から家に行くのかい?」
「あぁ、今日は早く切り上げて早退して来た。色々厄介ごとを頼んで悪かったね。またお礼には改めて伺うよ」
「さっきの新居に行ってきたよ」
「そうか!香澄には会ったかい?」
「多分、あの子が香澄ちゃんだと思うんだけど....俺の顔を見て叫んで家の中に入って行ったよ」
カラカラカラ...と言いながら笑うパーシック。そう、さっき話しかけてくれた人はお世話になったパーシックだった。
「あーーー........」
『そうだった...。アチャ~...』とラジルドは額の上に手のひらを当てた。
「俺みたいなミイラ男は初めてだったのか?」
「いや...。まだ魔界人に慣れてなくてすべての魔界人を見て怖がるんだ」
「そりゃ可哀想だったなぁ~」
カラカラ...と骨が当たる様な音がしてパーシックが笑う。そして
「俺からしたら人間の方がよっぽど怖いけどな~」
そう言ってまたカラカラと笑った。
「パーシックすまん、また連絡するから」
目の前で両手を合わせてごめんねポーズを作った後、香澄が心配で走り出したラジルドはどうすれば良いかなぁ~...と思案していた。
家に着いたら玄関に鍵がかかっていた。
ドンドンドンっと扉を叩いて「香澄っ香澄っ」
と呼ぶが何の返事もない。合鍵を使って家に入ると香澄は扉の前で座り込んでいた。
「香澄...大丈夫かい?」
そう優しく言いながらラジルドも床に座る。そ~っと香澄の頭を抱き込んだ。
「こわっ...こっ...ごわがっ......だぁー」
ラジルドは目を細めて笑いながら頭を撫でる。
「香澄も魔界で生活するなら慣れていかないとな~。ココらは香澄が思ってるような怖くて害をなす悪い魔人なんていないよ。大丈夫大丈夫」
そういいながら頭をよしよし撫でる。
「らじっ..らじっ...らっ...」
香澄はヒックヒック言っていて言葉にならない様だ
「ちょっと待ってて、お水を持ってくるね」
そう優しく言って側を離れる。水をコップに注ぐとお酒を2、3滴垂らす。
「ほら、落ち着くから一気に飲んで」
そう言ってグラスを香澄に渡すけど手が震えて持てない
ラジルドはおもむろに自分でグイっと水を含んで香澄に口づけをする。
香澄はビックリしながらも口内に入って来た水をコクコク飲んだ。ラジルドにギュッっと抱きしめられて
「大好きだよ」
と耳元で言われると、今度は顔がカァーーーーーっと熱くなって心臓がドキドキ鳴り止まなくなってしまった。ラジルドは始終優しい笑顔で
「香澄可愛い」
そう言って抱き上げてソファに連れていった。
今度は違った意味で心臓がドキドキして苦しい。感情が上がったり下がったり顔は青くなったり赤くなったり。手の震えも収まらないし、意識がなくなりそうだ。
「大丈夫?」
そう聞かれて首を横に振る、とてもじゃないが感情がついて行かない。
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「ちょっと休んで落ち着いた方が良いかもね」
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香澄の顔はゆでダコだった...。
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