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日差しが眩しくて目が覚めた。キョロキョロと周りを見回すとまず目に入ったのが時計。時間はもうお昼を指していた。
「え?」
寝起きで頭が回らない。しばらく『何だったけ?』と考えて、昨日引っ越して来たことを思い出した。その後にラジルドを探したがいない。香澄はそこでようやくベットから降りてリビングに続くドアを開けた。
「おはよう」
窓は全開で開いていて気持ちの良い風が吹き込んでくる。ココが魔界だなんて信じられないくらいの気持ちの良い天気だ。
トコトコ歩いてソファに座ると香りの良いコーヒーが出て来た。ラジルド曰く「豆は人間界の物なんだ」そうだ。
「良く寝てたね」
ラジルドからそう言われて恥ずかしくなって下を向いた。朝からラジルドと顔を合わせるのは初めてで、今まで夜にしか会ってなかったので不思議な気分だった。
そして昨日の衝撃的な行為...。ラジルドのあの時の切ない声を思い出すとキュンキュンしてお腹か背中か解らない所がゾワゾワする。
「さて、お姫様、今日は何をしますか?」
そう言われてうーん...と首を捻る。
人間界にいた頃は平日は学校だったが今は毎日が日曜日だ。特に急ぐ用事も何もない。
香澄はとりあえず、生活に困らない為の社会勉強をしたいと伝えた。
「それじゃぁ、また買い物にでも出掛ける?」
ラジルドの提案に 香澄はちょっと考える素振りを見せたが、一人で「うん」と頷き「早く魔界に慣れないと」ってニコッと笑う。
ラジルドは思わず香澄を抱きしめて
「閉じ込めたいなぁ~」
ってそんな恐ろしい事を口走った。
「ラジルドさん、私閉じ込められたくないよ~」
「香澄がかわいい事を言うからだよ。本当は苦労なんてさせたく無いけどね、でも香澄がそれじゃ嫌でしょ?」
ラジルドがそう言うと腕の中で香澄がコックリ頷く。
「だから、いっぱい魔界の良い所を覚えて好きになってもらわないと」
「うん」
本当に擦れてなくて素直な香澄。
2人は「今日の夜のご飯の買い物ね」なんて話をしながら出掛けた。
それから月日はグンと進んで引越しをしてから5年の月日が流れた。
香澄は今日も庭の花壇の手入れで忙しい。今日だろうか、明日だろうか蕾がパンパンに膨らんだラジュエルの花が咲きそうで、咲いたら近所のエイランの所に持っていく約束になっている。
エイランは魔女で昼間はお婆さんなんだが夜になると絶世の美女に変身する。パーシックの奥さんもそうだ。初めて会った時も夜でボンキュッボンの女の人だったので昼間に会った時はびっくりして声も出なかった。
ラジュエルの花は栽培が難しく咲かせられる人は滅多に居ない。球根を頂いて初めて咲かせた時はラジルドもビックリしていた。主に滋養強壮の薬になるのだとか...まぁ、言い換えれば媚薬とも言うが...。
パーシックの奥さんのアミアンセにも少し御裾分けすると予想外に大変喜ばれたので、今年は花壇を大きくして張り切って作っていた。
5年も経てばスッカリ魔界にも慣れて、ちょっとやそっとでは驚かなくなった。でも未だに夜の一人歩きだけはしない。
1度、買い忘れたものがあり、外は暗くなっていたが大丈夫だろうと安易な考えで街に出て危うく攫われそうになった。いつも買い物に行くお店の主人が心配になってラジルドに連絡を入れてくれたので事なきを得たが、家に帰ってこっ酷く叱られたのでもう二度と1人では出かけないと誓った。満月じゃなかったのが幸いだった。攫ったのはキツネの様な顔をしたゴムラ。狼男の手先と言われている本当に危ないヤツだったのだ。
そういう事がありながらも相変わらずラブラブな2人は家で毎日飽きもせずイチャイチャイチャイチャしている。
この間は家に事務官の同僚達が遊びに来てくれたにも関わらず、ラジルドが片時も側から離れずみんな呆れて早々に帰ってしまった。しかもその時ラジルドは香澄が申し訳ないって言ったのに
「気にすることはないよ。僕達の愛の巣に遊びに来るアイツらが悪い」
と笑顔で暴言を吐き捨てたのだ。
それを聞いて怒ってしまった香澄をなだめるのに1週間かかった。ラジルドは香澄の機嫌を取るためにあれやこれやとプレゼントを送ったが全く機嫌が治らず、仕方なく同僚達に頭を下げて家に招待し直したらやっと香澄の機嫌が良くなってホッとしたラジルドだった。
今年も封書が届いてラジルドが神妙な面持ちで封書を開けたが『却下』の文字が書いてあった。ため息をつきながら香澄の元に行き、夕食の用意をしている香澄にギュッと抱きついた。
「またダメだった?」
と言う香澄の言葉にラジルドがコクンと頷く。そしてため息をつき
「早く香澄を抱きたい...」
と切ない声で呟く。
魔界では、幽体と魔人の子作りは禁忌である。理由は大きく分けて2つある。
1.子供が出来てしまったら子供はゾンビとなってしまうからだった。生きながら死人のゾンビは生まれてすぐに始末されてしまう。ゾンビは知能が無く本能だけが残る。人の本能は食欲、性欲、物欲とあるが物欲はゾンビには無く、ひたすら食欲と性欲を追いかける怪物だ。ゾンビから出来てくる子供はゾンビでしかなく、食欲 性欲共に言葉では言い表せない程旺盛で しかも繁殖力が高いのですぐにゾンビで街が飲み込まれてしまうのだ。
2.人間はあくまでも魔界に人間界での悪行を悔い改めに来ている...と言う理由から。ずる賢い人間だったら真面目な魔人を捕まえて、厳しい修行から逃れるという手を使う恐れがあるからだ。それも過去に例があった話だ。
そして、魔人の思いが強すぎると人間界に戻った時にいい影響を与えないと言う理由もその中に含まれている。双方の思いが本当に強くないと結婚は出来ない。でないと、魔界人は半永久的に生きるので魔界人が増えてしまって天界、魔界、人間界のバランスが崩れてしまう。
そう言った理由で2人は一緒に住んで5年経っても結ばれていない。いつも素股で処理か性欲のお供のスライムで処理だった。
ラジルドの性欲は見掛けによらず旺盛で、1度吐き出したくらいでは収まりがつかない。だからと言って真面目な男なので浮気はありえないし、規則も頑なに守ってしまう。早く香澄を転生させたい...と言う思いがあることも否めないが...。
スライムとは両極性の生き物でプヨプヨっとしていて触ると気持ちが良い。人の体液が餌で、お腹が空かなければ何の害もない可愛い生き物だ。自分で分裂して数を増やして行く。寿命が短い種族なので本来なら増えすぎることは無いが、何故かしら一時期は増えすぎてお店が開けるんじゃないかと思う位の数になってしまった。
今日もスライムはご飯を求めて頑張っている。
「ラジルド...気持ちいい?」
「はぁ...香澄...あぁ...」
クチュクチュと舌と舌が絡まる音がする。キスをしながら香澄はラジルドの分身をスライムを使って上下させている。
ラジルドの手は香澄の胸を触っていてラジルドの欲情した顔がなんとも色っぽくて香澄はその顔を見るのが好きだった。
「あぁ...いきたい。香澄...入れたい...」
ラジルドは何時も...と言うかほぼ毎日「入れたい、抱きたい」と口にする。
ラジルドはそこで1度吐精すると 今度は香澄の股の間に顔を入れる。そして香澄の1番気持ちが良い部分を舐め始めた。
香澄はラジルドからそこを攻められるのが好きだった。ラジルドの温かい舌で小刻みにクリトリスを刺激されると腰が勝手に浮いてピクンピクンと跳ね出す。
ラジルドはそれを無理やり押さえ込んで執拗に愛撫を続ける。
逃げ場が無くなった腰は震えだし、一気に登りつめていく。
「あぁ....んっ んっ...んあぁぁー」
ラジルドの分身は香澄の痴態を見て また臨戦態勢に入っている。スライムもうねって動いていてラジルドの息も漏れる。
「はぁ...あぁ...」
「あぁ...ラジ....あぁぁ....来ちゃう....あぁ...イッちゃう....あぁぁ...」
「香澄...たまんない....あぁ」
「あーーーー!あぁ...あぁ...」
香澄が絶頂がする。
「香澄...はぁ...あぁ.....入れたい...香澄...の...中でっ....あぁぁ」
そしてまたラジルドも吐精した。
荒い息が寝室に響く...。
こんな関係になって5年。もう限界なんじゃないかと思う位切ない声で香澄を求めるラジルド。そして毎晩毎晩5匹のスライム達に餌を与えるラジルドだった。
遡ること一年前、ラジルドは魔界での結婚の仕組みを香澄に教えた。
香澄は神妙な面持ちで聞いていたが無言だった。
2~3日経った朝、香澄はラジルドが出勤する前に「ラジルド、私真剣に考えるから答えは待っていて」と言った。ラジルドは頷いたものの答えが帰ってくるまでは生きた心地がしなかった。
それからちょっとした騒動があった。
近所ではないのだが、1つ先の区画に住んでいる魔獣と人間の夫婦に子供が産まれたのだ。香澄は買い物をしている時にその奥さんである妙と出会って仲良くなった。お互い人間でしかも日本人だという事もあってあっという間に仲良くなった2人は、良くお互いの家を行き来していて旦那さんであるドゥジュアムも顔見知りになっていた。
ドゥジュアムは魔界の精鋭部隊に所属しており、同じ城での勤務という事もあって ラジルドもドゥジュアムもお互いの存在は良く知っていた様だった。
妙は65歳という年齢でこちらの魔界に修行に落ちてきた。過酷な試練を受けている中、ドゥジュアムと出会って一目で恋に落ちたのだそうだ。
一度 人間界に戻ってこちらに来たので 今は香澄とあまり変わらない年齢になっているが、精神年齢が高くて色々教えてもらう事も多く、香澄にしてみたらお姉さんと言うよりお母さんみたいな存在の人だ。恋愛時代のエピソードも沢山聞かせてもらった。
魔獣は一生に1人の女性しか愛せない。いわゆる『番』と言うやつなのだが、番を見つけたら一目で解る様に本能に組み込まれている。逆に番を見つけられなかった魔獣は悲惨で、精神的にも肉体的にもボロボロになって狂ってしまう。そして狂った魔獣は消滅させられてしまうのだった。
ドゥジュアムさんもなかなか番が見つからず焦っていた時だったそうで、運良く2人は出会ってすぐ転生の通知が来て今に至る様だった。
普通、人間は10ヵ月の時を経て子供を産むが、魔獣の子供はちょっと長くて20ヵ月お腹の中にいる。その代わり産まれたらすぐに立ち上がるらしい。香澄は子供が産まれて来るのがとても待ち遠しかった。
産まれたと連絡が入り香澄はすぐに御見舞の品を持って出掛けた。
しかし、子供が産まれたばかりの魔獣はとてもデリケートで危険だった。家族を守る為に獣化を解かないのだ。これは妙も香澄も予想外だった。
近づいて来た者は全て敵と見なす魔獣の威力は半端ない。
今にも香澄を射殺そうとばかりに威嚇して香澄は足が震えてその場から動けなくなってしまう。
妙が何度もドゥジュアムに
「あなた、香澄ちゃんなのよ」
と話し掛けても全く聞かない。嫌、聞こえてるのだが本能の部分でどうしようもないのかもしれない。子供が泣くと余計に神経が逆立つ様でテリトリーからなかなか出て行こうとしない侵入者に苛立っていた。
外の門灯も壊れて、壁も破壊されて、香澄は泣いて体を縮込めるしか出来なかった時にスーパーマンが現れた。黒い羽で素早く移動して香澄を抱き上げると香澄をとりあえず危険な場所から遠ざけた。そして今度は獣化したドゥジュアムに向かって飛んでいく。
人の言葉を忘れてしまうくらい我を失ったドゥジュアムにヒラリヒラリと舞いながら何処かに誘導している様子だ。ゴオーゴオーと火を吹きながらドゥジュアムがラジルドに躍起になっているその隙に影から同僚のダジが現れ尻尾を切った。
ドォォォンという音と共に横倒しに倒れたドゥジュアムの傍に子供を抱いた妙が泣きながら近づいた。
一気に冷静になったドゥジュアムはそこで獣化が解けると泣いている妙を見て抱きしめて「ごめん...」と謝った。そしてラジルドの方を見てその先に座り込んでいた香澄を見た。バツが悪そうな顔をしながら立ち上がったドゥジュアムにラジルドが話し掛ける。
「尻尾は2~3日で生え変わるんだろ?」
「ああ、大丈夫だ心配はいらない」
「それまで誰か見張りをよこそうか?」
「大丈夫だ...済まなかったな」
そう言うと起き上がり妙を連れて家に入って行ってしまった。
パタンとドアが閉まったのを見てラジルドが香澄の方に歩いて来た。もう羽はしまわれていた。ラジルドは香澄を見ると「怪我はない?」と聞いた。
目にいっぱいの涙を溜めたまま首を横に振る。
「怪我が無いなら良かった」
そう言って抱きしめられて香澄は必死でラジルドに抱きついた。
「僕の大事な奥さんだからね」
そう言って香澄を抱きかかえると「帰ろっか?」と言いながら歩き出すラジルド。
香澄は涙が止まらなかった。
家に帰るとすぐにお風呂に入らされた香澄は今日あった事を色々考えていた。
お風呂から上がるとラジルドが待ってましたとばかりに抱き上げて寝室に連れていく。
寝室で香澄がラジルドに尋ねる。
「ねぇ、ラジルドも家族が出来たらドゥジュアムさんみたいに家族を守る?」
「命に変えても守るよ」
「私ね、今日怖かったけど...一生懸命家族を守ろうとしているドゥジュアムさんにちょっと感動した」
「僕は寿命が縮まったけどね~」
そう言ってラジルドは香澄のほっぺにチュッとキスをした。
「魔獣の尻尾は弱点でもあるけど、あの尻尾には毒があってあれに当たったら大概の者は消滅してしまうからね...ちょっと焦ったかな」
ハハハと笑いながらラジルドが話す。
「近所の人が通報してくれてすぐに飛び出した。間に合って良かったよ。ダジが来るまで時間稼ぎしなきゃいけなかったけど無事で良かった」
香澄はラジルドの手をギュッっと握って、自分の頬に持って行く。
「私が人間界に戻ったらラジルドを思い出す様に全力でサポートしてね」
ラジルドが一瞬息を飲んだ。
「香澄がすぐに僕を思い出せるようにあれこれ考えなきゃなぁ~」
「こんなにラジルドは私の事を守ってくれているのに、考える時間をくれなんて言ってごめんね」
「香澄が自分で覚悟を決めないとダメだからね。これで良かったんだよ」
ラジルドが香澄の頭を撫でる。
「今日は疲れたでしょ?僕は仕事に戻らないといけないけど...1人で大丈夫?」
「うん。ラジルド、助けに来てくれてありがとう」
「どういたしまして、僕の奥さん」
そう言って「寝てなね」って優しい言葉を掛けたラジルドは、また仕事に戻って行った。
人間界に転生したら何もかもを忘れてしまう...
私に思い出す事が出来るのだろうか...
逆に不安になってくる香澄だった。
「え?」
寝起きで頭が回らない。しばらく『何だったけ?』と考えて、昨日引っ越して来たことを思い出した。その後にラジルドを探したがいない。香澄はそこでようやくベットから降りてリビングに続くドアを開けた。
「おはよう」
窓は全開で開いていて気持ちの良い風が吹き込んでくる。ココが魔界だなんて信じられないくらいの気持ちの良い天気だ。
トコトコ歩いてソファに座ると香りの良いコーヒーが出て来た。ラジルド曰く「豆は人間界の物なんだ」そうだ。
「良く寝てたね」
ラジルドからそう言われて恥ずかしくなって下を向いた。朝からラジルドと顔を合わせるのは初めてで、今まで夜にしか会ってなかったので不思議な気分だった。
そして昨日の衝撃的な行為...。ラジルドのあの時の切ない声を思い出すとキュンキュンしてお腹か背中か解らない所がゾワゾワする。
「さて、お姫様、今日は何をしますか?」
そう言われてうーん...と首を捻る。
人間界にいた頃は平日は学校だったが今は毎日が日曜日だ。特に急ぐ用事も何もない。
香澄はとりあえず、生活に困らない為の社会勉強をしたいと伝えた。
「それじゃぁ、また買い物にでも出掛ける?」
ラジルドの提案に 香澄はちょっと考える素振りを見せたが、一人で「うん」と頷き「早く魔界に慣れないと」ってニコッと笑う。
ラジルドは思わず香澄を抱きしめて
「閉じ込めたいなぁ~」
ってそんな恐ろしい事を口走った。
「ラジルドさん、私閉じ込められたくないよ~」
「香澄がかわいい事を言うからだよ。本当は苦労なんてさせたく無いけどね、でも香澄がそれじゃ嫌でしょ?」
ラジルドがそう言うと腕の中で香澄がコックリ頷く。
「だから、いっぱい魔界の良い所を覚えて好きになってもらわないと」
「うん」
本当に擦れてなくて素直な香澄。
2人は「今日の夜のご飯の買い物ね」なんて話をしながら出掛けた。
それから月日はグンと進んで引越しをしてから5年の月日が流れた。
香澄は今日も庭の花壇の手入れで忙しい。今日だろうか、明日だろうか蕾がパンパンに膨らんだラジュエルの花が咲きそうで、咲いたら近所のエイランの所に持っていく約束になっている。
エイランは魔女で昼間はお婆さんなんだが夜になると絶世の美女に変身する。パーシックの奥さんもそうだ。初めて会った時も夜でボンキュッボンの女の人だったので昼間に会った時はびっくりして声も出なかった。
ラジュエルの花は栽培が難しく咲かせられる人は滅多に居ない。球根を頂いて初めて咲かせた時はラジルドもビックリしていた。主に滋養強壮の薬になるのだとか...まぁ、言い換えれば媚薬とも言うが...。
パーシックの奥さんのアミアンセにも少し御裾分けすると予想外に大変喜ばれたので、今年は花壇を大きくして張り切って作っていた。
5年も経てばスッカリ魔界にも慣れて、ちょっとやそっとでは驚かなくなった。でも未だに夜の一人歩きだけはしない。
1度、買い忘れたものがあり、外は暗くなっていたが大丈夫だろうと安易な考えで街に出て危うく攫われそうになった。いつも買い物に行くお店の主人が心配になってラジルドに連絡を入れてくれたので事なきを得たが、家に帰ってこっ酷く叱られたのでもう二度と1人では出かけないと誓った。満月じゃなかったのが幸いだった。攫ったのはキツネの様な顔をしたゴムラ。狼男の手先と言われている本当に危ないヤツだったのだ。
そういう事がありながらも相変わらずラブラブな2人は家で毎日飽きもせずイチャイチャイチャイチャしている。
この間は家に事務官の同僚達が遊びに来てくれたにも関わらず、ラジルドが片時も側から離れずみんな呆れて早々に帰ってしまった。しかもその時ラジルドは香澄が申し訳ないって言ったのに
「気にすることはないよ。僕達の愛の巣に遊びに来るアイツらが悪い」
と笑顔で暴言を吐き捨てたのだ。
それを聞いて怒ってしまった香澄をなだめるのに1週間かかった。ラジルドは香澄の機嫌を取るためにあれやこれやとプレゼントを送ったが全く機嫌が治らず、仕方なく同僚達に頭を下げて家に招待し直したらやっと香澄の機嫌が良くなってホッとしたラジルドだった。
今年も封書が届いてラジルドが神妙な面持ちで封書を開けたが『却下』の文字が書いてあった。ため息をつきながら香澄の元に行き、夕食の用意をしている香澄にギュッと抱きついた。
「またダメだった?」
と言う香澄の言葉にラジルドがコクンと頷く。そしてため息をつき
「早く香澄を抱きたい...」
と切ない声で呟く。
魔界では、幽体と魔人の子作りは禁忌である。理由は大きく分けて2つある。
1.子供が出来てしまったら子供はゾンビとなってしまうからだった。生きながら死人のゾンビは生まれてすぐに始末されてしまう。ゾンビは知能が無く本能だけが残る。人の本能は食欲、性欲、物欲とあるが物欲はゾンビには無く、ひたすら食欲と性欲を追いかける怪物だ。ゾンビから出来てくる子供はゾンビでしかなく、食欲 性欲共に言葉では言い表せない程旺盛で しかも繁殖力が高いのですぐにゾンビで街が飲み込まれてしまうのだ。
2.人間はあくまでも魔界に人間界での悪行を悔い改めに来ている...と言う理由から。ずる賢い人間だったら真面目な魔人を捕まえて、厳しい修行から逃れるという手を使う恐れがあるからだ。それも過去に例があった話だ。
そして、魔人の思いが強すぎると人間界に戻った時にいい影響を与えないと言う理由もその中に含まれている。双方の思いが本当に強くないと結婚は出来ない。でないと、魔界人は半永久的に生きるので魔界人が増えてしまって天界、魔界、人間界のバランスが崩れてしまう。
そう言った理由で2人は一緒に住んで5年経っても結ばれていない。いつも素股で処理か性欲のお供のスライムで処理だった。
ラジルドの性欲は見掛けによらず旺盛で、1度吐き出したくらいでは収まりがつかない。だからと言って真面目な男なので浮気はありえないし、規則も頑なに守ってしまう。早く香澄を転生させたい...と言う思いがあることも否めないが...。
スライムとは両極性の生き物でプヨプヨっとしていて触ると気持ちが良い。人の体液が餌で、お腹が空かなければ何の害もない可愛い生き物だ。自分で分裂して数を増やして行く。寿命が短い種族なので本来なら増えすぎることは無いが、何故かしら一時期は増えすぎてお店が開けるんじゃないかと思う位の数になってしまった。
今日もスライムはご飯を求めて頑張っている。
「ラジルド...気持ちいい?」
「はぁ...香澄...あぁ...」
クチュクチュと舌と舌が絡まる音がする。キスをしながら香澄はラジルドの分身をスライムを使って上下させている。
ラジルドの手は香澄の胸を触っていてラジルドの欲情した顔がなんとも色っぽくて香澄はその顔を見るのが好きだった。
「あぁ...いきたい。香澄...入れたい...」
ラジルドは何時も...と言うかほぼ毎日「入れたい、抱きたい」と口にする。
ラジルドはそこで1度吐精すると 今度は香澄の股の間に顔を入れる。そして香澄の1番気持ちが良い部分を舐め始めた。
香澄はラジルドからそこを攻められるのが好きだった。ラジルドの温かい舌で小刻みにクリトリスを刺激されると腰が勝手に浮いてピクンピクンと跳ね出す。
ラジルドはそれを無理やり押さえ込んで執拗に愛撫を続ける。
逃げ場が無くなった腰は震えだし、一気に登りつめていく。
「あぁ....んっ んっ...んあぁぁー」
ラジルドの分身は香澄の痴態を見て また臨戦態勢に入っている。スライムもうねって動いていてラジルドの息も漏れる。
「はぁ...あぁ...」
「あぁ...ラジ....あぁぁ....来ちゃう....あぁ...イッちゃう....あぁぁ...」
「香澄...たまんない....あぁ」
「あーーーー!あぁ...あぁ...」
香澄が絶頂がする。
「香澄...はぁ...あぁ.....入れたい...香澄...の...中でっ....あぁぁ」
そしてまたラジルドも吐精した。
荒い息が寝室に響く...。
こんな関係になって5年。もう限界なんじゃないかと思う位切ない声で香澄を求めるラジルド。そして毎晩毎晩5匹のスライム達に餌を与えるラジルドだった。
遡ること一年前、ラジルドは魔界での結婚の仕組みを香澄に教えた。
香澄は神妙な面持ちで聞いていたが無言だった。
2~3日経った朝、香澄はラジルドが出勤する前に「ラジルド、私真剣に考えるから答えは待っていて」と言った。ラジルドは頷いたものの答えが帰ってくるまでは生きた心地がしなかった。
それからちょっとした騒動があった。
近所ではないのだが、1つ先の区画に住んでいる魔獣と人間の夫婦に子供が産まれたのだ。香澄は買い物をしている時にその奥さんである妙と出会って仲良くなった。お互い人間でしかも日本人だという事もあってあっという間に仲良くなった2人は、良くお互いの家を行き来していて旦那さんであるドゥジュアムも顔見知りになっていた。
ドゥジュアムは魔界の精鋭部隊に所属しており、同じ城での勤務という事もあって ラジルドもドゥジュアムもお互いの存在は良く知っていた様だった。
妙は65歳という年齢でこちらの魔界に修行に落ちてきた。過酷な試練を受けている中、ドゥジュアムと出会って一目で恋に落ちたのだそうだ。
一度 人間界に戻ってこちらに来たので 今は香澄とあまり変わらない年齢になっているが、精神年齢が高くて色々教えてもらう事も多く、香澄にしてみたらお姉さんと言うよりお母さんみたいな存在の人だ。恋愛時代のエピソードも沢山聞かせてもらった。
魔獣は一生に1人の女性しか愛せない。いわゆる『番』と言うやつなのだが、番を見つけたら一目で解る様に本能に組み込まれている。逆に番を見つけられなかった魔獣は悲惨で、精神的にも肉体的にもボロボロになって狂ってしまう。そして狂った魔獣は消滅させられてしまうのだった。
ドゥジュアムさんもなかなか番が見つからず焦っていた時だったそうで、運良く2人は出会ってすぐ転生の通知が来て今に至る様だった。
普通、人間は10ヵ月の時を経て子供を産むが、魔獣の子供はちょっと長くて20ヵ月お腹の中にいる。その代わり産まれたらすぐに立ち上がるらしい。香澄は子供が産まれて来るのがとても待ち遠しかった。
産まれたと連絡が入り香澄はすぐに御見舞の品を持って出掛けた。
しかし、子供が産まれたばかりの魔獣はとてもデリケートで危険だった。家族を守る為に獣化を解かないのだ。これは妙も香澄も予想外だった。
近づいて来た者は全て敵と見なす魔獣の威力は半端ない。
今にも香澄を射殺そうとばかりに威嚇して香澄は足が震えてその場から動けなくなってしまう。
妙が何度もドゥジュアムに
「あなた、香澄ちゃんなのよ」
と話し掛けても全く聞かない。嫌、聞こえてるのだが本能の部分でどうしようもないのかもしれない。子供が泣くと余計に神経が逆立つ様でテリトリーからなかなか出て行こうとしない侵入者に苛立っていた。
外の門灯も壊れて、壁も破壊されて、香澄は泣いて体を縮込めるしか出来なかった時にスーパーマンが現れた。黒い羽で素早く移動して香澄を抱き上げると香澄をとりあえず危険な場所から遠ざけた。そして今度は獣化したドゥジュアムに向かって飛んでいく。
人の言葉を忘れてしまうくらい我を失ったドゥジュアムにヒラリヒラリと舞いながら何処かに誘導している様子だ。ゴオーゴオーと火を吹きながらドゥジュアムがラジルドに躍起になっているその隙に影から同僚のダジが現れ尻尾を切った。
ドォォォンという音と共に横倒しに倒れたドゥジュアムの傍に子供を抱いた妙が泣きながら近づいた。
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「尻尾は2~3日で生え変わるんだろ?」
「ああ、大丈夫だ心配はいらない」
「それまで誰か見張りをよこそうか?」
「大丈夫だ...済まなかったな」
そう言うと起き上がり妙を連れて家に入って行ってしまった。
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目にいっぱいの涙を溜めたまま首を横に振る。
「怪我が無いなら良かった」
そう言って抱きしめられて香澄は必死でラジルドに抱きついた。
「僕の大事な奥さんだからね」
そう言って香澄を抱きかかえると「帰ろっか?」と言いながら歩き出すラジルド。
香澄は涙が止まらなかった。
家に帰るとすぐにお風呂に入らされた香澄は今日あった事を色々考えていた。
お風呂から上がるとラジルドが待ってましたとばかりに抱き上げて寝室に連れていく。
寝室で香澄がラジルドに尋ねる。
「ねぇ、ラジルドも家族が出来たらドゥジュアムさんみたいに家族を守る?」
「命に変えても守るよ」
「私ね、今日怖かったけど...一生懸命家族を守ろうとしているドゥジュアムさんにちょっと感動した」
「僕は寿命が縮まったけどね~」
そう言ってラジルドは香澄のほっぺにチュッとキスをした。
「魔獣の尻尾は弱点でもあるけど、あの尻尾には毒があってあれに当たったら大概の者は消滅してしまうからね...ちょっと焦ったかな」
ハハハと笑いながらラジルドが話す。
「近所の人が通報してくれてすぐに飛び出した。間に合って良かったよ。ダジが来るまで時間稼ぎしなきゃいけなかったけど無事で良かった」
香澄はラジルドの手をギュッっと握って、自分の頬に持って行く。
「私が人間界に戻ったらラジルドを思い出す様に全力でサポートしてね」
ラジルドが一瞬息を飲んだ。
「香澄がすぐに僕を思い出せるようにあれこれ考えなきゃなぁ~」
「こんなにラジルドは私の事を守ってくれているのに、考える時間をくれなんて言ってごめんね」
「香澄が自分で覚悟を決めないとダメだからね。これで良かったんだよ」
ラジルドが香澄の頭を撫でる。
「今日は疲れたでしょ?僕は仕事に戻らないといけないけど...1人で大丈夫?」
「うん。ラジルド、助けに来てくれてありがとう」
「どういたしまして、僕の奥さん」
そう言って「寝てなね」って優しい言葉を掛けたラジルドは、また仕事に戻って行った。
人間界に転生したら何もかもを忘れてしまう...
私に思い出す事が出来るのだろうか...
逆に不安になってくる香澄だった。
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──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
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