Soul

あくび

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ラジルドは最初に自分の屋敷に夏澄を連れて帰った。夏澄とまた一緒に生活をする為に...。
「今日からココで暮らすんだ」
しかしラジルドからそう言われた夏澄の顔が曇った。
「パパやママやお兄ちゃん達は居ないの?」
ラジルドはそう言われて今度はラジルドの顔が曇った。しかし、すぐに考え直してパーシックのドナ家に夏澄を連れて行く事にした。
ドナ夫妻も夏澄を本当の娘の様に可愛がっていたし、このまま夏澄を閉じ込めてもまた一緒の事の繰り返しだ。今度は...今度こそは夏澄の気持ちを置き去りにしないとラジルドは誓っていたし、一緒に時を歩んで行こうと心に決めていた。
「夏澄、ココはね、魔界って言うんだ」
ドナ家に行きながらラジルドが伝えた。
「魔界?夏澄が今までいた所は?」
「人間界だよ」
「そうなの?良く解らないけど初めて来た気がしないな。そこの角を曲がったらパン屋さんがある気がする」
夏澄は笑っているがラジルドはびっくり仰天だ。
「夏澄、正解!」
「え?嘘!ほんとに?んじゃ近くに花屋さんがあって、そこの花屋さんには飴を持って行くと噛み付かれないとかは?」
「またまた正解!」
「えー凄い!私、超能力が使える様になった!」
夏澄は嬉しかった。何度もこの辺に来た気がして 言ってみたら本当に当たるとは思わなかった。ラジルドを見るとびっくりしていた。
「まさか、この辺りに住んでた事があったりして~」
冗談のつもりで言ったのに、ラジルドからは思わぬ答えが帰ってきた。
「ここら辺じゃないけど、ちょっと離れた所に住んでいた事はあるよ」
「嘘!え?いつ?」
今度は夏澄がびっくりする番だった。
「夏澄が生まれる前かな」
「ほんとに?夏澄が生まれる前もラジ君と知り合いだった?」
「うん。一緒に住んでいた」
「え?あの大きいお家で?」
「ううん。小さい家に2人で住んでたよ。パーシックの家には2人で何回も遊びに行ったし、パーシックもアミアンセも皆 前の夏澄を知ってるよ」
「そうなの?前の私...。私とラジ君ってどんな関係だったのかな?親子...とか?」
「夏澄とは恋人同士だった」
夏澄の目がいっぱいに広がってびっくりしている。そして顔がどんどん赤くなって来た。
「恥ずかしい?」
ラジルドが聞くとコクンと首を縦に振った。
「一緒に住んでた家に行ってみる?」
「行きたい!」
「反対方向になるけど行ってみようか」
そう言って2人は以前住んでいた小さい小さい城に向かって歩き出した。
ラジルドは途中で夏澄に前を歩くように言って好きな様に歩かせてみた。夏澄は間違える事なく見た事がある景色を辿って家に着いた。
「ここ?」
「うん。ココ。売られて違う人が住んでるけど...」
「え?売っちゃったの?」
夏澄は何故か解らないが涙が出てきた。その時『私とラジルドの思い出の家』って思った事はその時は言わなかった。
「夏澄...ごめんね」
ラジルドに謝られて余計に悲しくなって抱きついてまたオイオイ泣いてしまった。
「夏澄がいなくなった時に、辛すぎて売ってしまったんだ...」
そう言うラジルドを責める様な言葉は出て来なかった。
ラジルドはまた泣き止むまでずっと頭を撫でていてくれた。
「落ち着いた?」
「うん。泣いちゃってごめんね。ラジ君、パパとママの所にて連れて行って...」
「行こうか」
「また色々思い出話を聞かせてね」
そう言って2人はまた歩き出した。

夢の中の我が家に着くとパーシックもアミアンセも三つ子もウェルカムで迎えた。夏澄はたった半日ぶりの再開なのにとても久しぶりな感覚だった。
夏澄は今日から夢の中のだけじゃなくずっとココにいられる事が嬉しかった。
パーシックがラジルドに「捕獲失敗?」って聞くと「うっせー」とラジルドが返す。
アミアンセは「お祝いだ」って言ってご馳走を作ってくれた。
夏澄はまた『デジャブだ...』って思っていた。
『こんな光景を見た事がある気がする』...でも何度も小さい頃から一緒に食卓を囲んでいた家族なのだ。こんな光景は何度もあったと思い直した。

夏澄には産まれたばかりの頃の記憶は勿論ないけれど、産まれたばかりの頃は眠っている事が多いのでほとんどコチラの世界に来ていた。
みんなで代わる代わる抱っこして本当に愛情たっぷりで育った夏澄。
夏澄が笑うと皆が喜んだし 夏澄が泣くと皆で悲しんだ。
1番世話をしたのは勿論ラジルドだった。
オムツの交換は当然彼の仕事で、特にパーシックと言えども男性はお触り禁止令を発令し、職場にも夏澄を連れて行って仕事をしていた位だった。
それを見て1番お腹を抱えて笑っていたのがシャルラ。
1度 泣き止まない夏澄をおんぶしたまま仕事をしていたのだ。それ以来、用もないのに何回も魔境越しの連絡を寄越すのでラジルドがキレて大変だった事もあった。

そんな事を話しながら食卓を囲んでいた。
「私、前にこっちにいた時はなんて名前だったの?」
「ん?名前?香澄だよ。漢字は違うけどね。夏澄が生まれ変わる時に同じ名前がいいって決めたんだ」
「え?生まれ変わる時ってそんな事も決めれるの?」
「まぁ、説明が長くなるんだけどね...決めれる人と決めれない人といるよ」
「夏澄は決めれる人だったんだね」
「そうだね。そういえば、夏澄が前にこっちの世界に来た時も10歳だったな」
「へぇ~凄い偶然。あ、もしかしてそれも決めれるの?」
「それは本当に偶然かな」
「そっか。記憶っていつ戻るのかな~?」
「それも 戻る人もいれば戻らない人もいるよ。焦らなくて良いし、記憶が戻らなくても夏澄はココに居るんだからまた新しく思い出を作って行けば良いよ」
「うん.....」
夏澄はなんて答えて良いのか解らなくなった。


今の夏澄は記憶が戻る事よりも早く大人になりたかった。
周りの人が皆大人だからかもしれないが 何故か急いで大人になりたくてムズムズするのだ。だからといってどうして良いのかは解らないが...
1度アミアンセに
「ママ、大人になる薬って作れないの?」
「あら、夏澄は大人になりたいの?」
「うん。早く大人になりたくて時々ムズムズするの」
「夏澄はその前に女の人になる準備が整わないとね。大人になるって素敵な事も多いけど 今を大切にしないとなきっと後で後悔するし、大人になるって身体だけが大人になったってダメなのよ。心が大人にならないと...」
「そうなの?」
「そうよ。心が大人にならないと ちょっとした事で悩んだり挫けたり...今は色んな経験をして 考える力をつけましょうね~」
『心が大人...難しい』夏澄は考えていた。


アミアンセは魔界に身をずっと置いておく夏澄を案じていた。
出来れば早く前世の記憶が戻れば良いのだが...
夏澄に幸せになって欲しい。ただただそれだけを願っているアミアンセだった。
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