枝垂れ桜Ⅱ

あくび

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血判状を前に皆がゴクリと唾を飲む。
迷い人が現れたら産土に報告する...と言うだけなのに、血判と言うだけで戸惑われる。

「それから、子を産めば人間界に戻る...。と言う判断は、当初 産土での生活が人間に受け入れられない...と思ったからでした。しかし、風来の仁様の様に戻ってくる事を望まれている方も他に数多くいる事も確かです。どうしましょうか?今残っている人間に関しては、子を生んでも帰るかどうかは本人の意思にすると言う事に変えたいと思いますがどう致しますか?」

一同は異論無く頷く。

「ただ、戻ってきて欲しいと思っている人間と、帰りたいと思っている人間の数がどれだけ居るのかは把握しておりません。
仁様だけに特別と言う形では もしかしたら揉め事の発端になっても困ります」

鷹亮はそこで言葉を切った。

「戻って来て欲しいと言う方に関しては人間界に渡れる...という事にしてみてはどうでしょうか?」
「探しに行けるという事ですか?」
仁が直ぐに質問した。
「そうです。それならば皆平等です。ただ、それも5長の印がいる事にします」
「何時から...」
仁はそう言って言葉を止めた。
急かしてもこの鷹亮と言う男は考えを変えないし、そこまで決まれば後は待つしかないと思ったのだ。

「具体的には、発情期前ですので...それが終わって、術の消滅と書き換えをせねばなりません。それが終れば皆に書簡でお知らせしようと思っています。そうですね...今の所、この産土での行き来を考えていますが、コチラとアチラが何処で結び付くのかによりますので、報告をお待ち下さい」

水越が質問した。
「結び付けると言う事は、自由に行き来が出来る...と言う事になりませんか?」

「そうですね。先程のお話だと、人間の身体を作り変えるのに時間がかかると仰っていましたから、そうならない様に善処したいと思っています」

先程まではやいのやいの食ってかかっていた空也も、血判書が出てから静かになった。

「では、夜の事もありますし、皆様署名をお願いします。署名が終わりましたら1席設けてありますので、夜はゆっくりと産土の姫をご堪能下さい」

そう言って鷹亮は巻子をもう1度出し、自らスラスラと署名し親指をちょっと切ると名前の下にそれを押し付けた。
続いて仁が立ち上がった。
これを押さなければ由花を探しに行けない...。そう思い同じ様にサインする。
水府、龍神と続き署名した者は別の部屋に行った。

空也が巻子をジーッと見つめていた。
今の火炎には不利になる様な気がする血判書。
確かに火炎は荒れているのだろう。だが昔から火炎と言う所は自由な所だったのだ。

父の時代は火炎の言う事に他の領地も全てが従っていた。
だが、今はどうだ...。
迷い人の問題では産土が牛耳り、水府は火炎に食いついて来る。

『全てが上手く行かない...』
今の自分が火炎の民を纏めあげるなんて事は出来ないのかもしれない...と思う空也。

『腹立たしい...』
そんな気持ちが腹の中を渦巻く。

『そうしたければ俺の言う事を聞け...』
産土も風来も龍神も水府もこれが無ければ困るのだろう?それならば俺の言う事を聞くのが筋じゃないのか?…と間違った解釈を始める空也。

『書かなければ良い...』
最後にそう思うと空也は立ち上がり皆の待ってる部屋に行った。

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