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両者の睨み合いは2年程続いた。
火炎では、他の領内からも荒くれ者が集まり、街は違った意味での賑わいを見せていた。
火炎領内のありとあらゆる所が攻め落とされ、火炎領内の11個あった拠点は全て空也達が制覇して行った。
そんな事をしなくても、空也は立派な火炎の長だと言うのに...。
火炎の首都。空也達の居る街は一大の大賭博場になっており、連日の大繁盛。そこは鉄太が取り仕切っていた。貧困層が増え、賑わいのある裏側は悲惨な状態になっていたが、空也はそんな所には目を配らなかった。
『弱肉強食』
弱い者が悪い...と言って切り捨てて行ったのだ。
今までは、父の代から仕えていた長老であったり、家臣であったりが口煩く空也を捲し立て、何かと言えば父と比べられていた空也はうんざりしていたが、今は自分のする事に文句を言う奴も、逆らう者もいない。
だが、実際は自分を縛っていた者は自分であった事に気付けない空也。
今はいない父に怯えていたのは空也自信であったというのに...残念ながら気が付かない。
1方、志帆は城の蝶になっていた。
地味で目立たなかった人間界での自分は、鬼の世界で花が開いた。多分、この世界が自分の本当にいる世界なんだと強く思っていた。
実際、志帆は垢抜けて綺麗になった。
皆からチヤホヤされて、自分の言う事が何でも通る事が快感だったし、我が儘放題に振る舞っても、誰も自分の言う事にNOと言わない環境が気に入っていた。
歯車はどんどん狂って来る。
慎之介達がどんなに目が覚める事を願っても、もう駄目なのかもしれない...。
産土の鷹亮は「もうそろそろ...」と考えていた。
龍神の龍を使って皆に伝令を送ると、皆が一斉に龍に乗り久我邸に集合した。
「空也は無駄な事ばかりして、コチラには見向きもしませんね」仁
「見向きもしないんじゃ無くて、見れないんじゃ無いの?」水越
「違いますよ...。空也は自分の楽園を作りたいんでしょう...」九頭竜
「楽園?」「なんだそれ」仁、水越
言葉が重なった。
「空也は子供なんですよ。かまって貰いたくて、我が儘放題したくて、五月蝿く言う奴がうざったいんです」鷹亮
「火炎の民よりも自分の事が大事なんですね」鷹亮
「何?それって致命的じゃん」水越
「だから、そろそろもういいでしょう」鷹亮
「いよいよ...追い詰めますか...」九頭竜
鷹亮が慎之介の方を向いた。
「よろしいですね?」
「解りました」
「各領地の方々は火炎住民の受け入れ準備はどうでしょうか?」
「万全」「整ってます」「大丈夫です...」
「慎之介様もお覚悟をお願いしますよ」
慎之介は皆に頭を下げた。
龍神が火炎に降るはずの雨を止めた。
水府が火炎の各地に湧き出る水を止めた。
産土が作物がならない様に火炎の大地を乾かした。
風来が火炎に吹くはずの風を止めた。
火炎はこの後、半年後には地獄と化す....。
火炎は今、毎日が日照り続きで猛暑である。
風がピュ~っとも吹かず、大地はどんどん砂漠化して行っている。
水は乾き、作物は全く育たない。
各地で食料の奪い合いが始まり、本当の意味での『弱肉強食』になってしまっていた。
住民は火炎の土地を捨て、慎之介の下に救援を求めた。
慎之介は全ての住民を受け入れ各地に送る。
送られた住民は手厚く保護を受けて丁重に扱われた。
火炎では蓄えていた食料もどんどん減り、沢山の鬼達が助けを求めていた。
「兄貴!どうする?いよいよ危ないぞ」
「あぁ?」
「どう考えても食料がもうねーよ」
「...鉄、志帆が苦しんでんだ。薬持ってこい」
「兄貴!何言ってんだよ!どうすんだって!」
「鉄、聞こえねーか?」
「.....」
「早くしろっ!!」
鉄太はその場を離れると、自分の部下を連れて慎之介の元に行った。
空也は待ってもなかなか帰って来ない鉄太に痺れを切らして立ち上がった。
部屋から外に出ると、静まり返った本宅は誰もいない様な気配だった。
『皆...逃げたのか...?』
空也はガランっとした本宅を見て呆然と立ち尽くした。
ほんの少し前まで、皆が自分に平伏していたのは幻だったんだろうか...?
外に出て見た。
地面が焼ける様に熱くなっていて、今にも火が着きそうな感じだ。
誰もいない大通りを見つめる。空也は熱さを忘れていた。
ヨロヨロと部屋に戻ると志帆が苦しそうに震えていた。
「空也...持っ...て...来た...?」
空也は志帆を抱きしめると
「あぁ?.....もうねーよ」
その言葉を聞いた志帆の顔が般若になる。
「ないって...無いって...ど...どう言う...事よ!」
「無いに意味はねー」
「なっ、なんでよ!!」
「なぁ、志帆...このまま2人で一緒に逝くか?」
空也は今まで言った事も無い、聞いた事も無い優しい声色で志帆に問いかけた。
「なんでっ!!なんで、あんたなんかと一緒に...!!」
空也は志帆をそのままゴトンっと落とすと立ち上がった。
そして黙ってその場を去った。
志帆はただでさえも体中が痛いのに、落とされて叫びまくっていた。
空也にこれ以上無い罵詈雑言を震えながらも捲し立てた。
襖の向こうでそれを聞いていた空也の顔に表情は無かった。
そして、慎之介の居る久我邸とは反対の方向に走って行ってしまった。
空也の姿はあっという間に見えなくなり、志帆はその後慎之介達に助け出された。
火炎では、他の領内からも荒くれ者が集まり、街は違った意味での賑わいを見せていた。
火炎領内のありとあらゆる所が攻め落とされ、火炎領内の11個あった拠点は全て空也達が制覇して行った。
そんな事をしなくても、空也は立派な火炎の長だと言うのに...。
火炎の首都。空也達の居る街は一大の大賭博場になっており、連日の大繁盛。そこは鉄太が取り仕切っていた。貧困層が増え、賑わいのある裏側は悲惨な状態になっていたが、空也はそんな所には目を配らなかった。
『弱肉強食』
弱い者が悪い...と言って切り捨てて行ったのだ。
今までは、父の代から仕えていた長老であったり、家臣であったりが口煩く空也を捲し立て、何かと言えば父と比べられていた空也はうんざりしていたが、今は自分のする事に文句を言う奴も、逆らう者もいない。
だが、実際は自分を縛っていた者は自分であった事に気付けない空也。
今はいない父に怯えていたのは空也自信であったというのに...残念ながら気が付かない。
1方、志帆は城の蝶になっていた。
地味で目立たなかった人間界での自分は、鬼の世界で花が開いた。多分、この世界が自分の本当にいる世界なんだと強く思っていた。
実際、志帆は垢抜けて綺麗になった。
皆からチヤホヤされて、自分の言う事が何でも通る事が快感だったし、我が儘放題に振る舞っても、誰も自分の言う事にNOと言わない環境が気に入っていた。
歯車はどんどん狂って来る。
慎之介達がどんなに目が覚める事を願っても、もう駄目なのかもしれない...。
産土の鷹亮は「もうそろそろ...」と考えていた。
龍神の龍を使って皆に伝令を送ると、皆が一斉に龍に乗り久我邸に集合した。
「空也は無駄な事ばかりして、コチラには見向きもしませんね」仁
「見向きもしないんじゃ無くて、見れないんじゃ無いの?」水越
「違いますよ...。空也は自分の楽園を作りたいんでしょう...」九頭竜
「楽園?」「なんだそれ」仁、水越
言葉が重なった。
「空也は子供なんですよ。かまって貰いたくて、我が儘放題したくて、五月蝿く言う奴がうざったいんです」鷹亮
「火炎の民よりも自分の事が大事なんですね」鷹亮
「何?それって致命的じゃん」水越
「だから、そろそろもういいでしょう」鷹亮
「いよいよ...追い詰めますか...」九頭竜
鷹亮が慎之介の方を向いた。
「よろしいですね?」
「解りました」
「各領地の方々は火炎住民の受け入れ準備はどうでしょうか?」
「万全」「整ってます」「大丈夫です...」
「慎之介様もお覚悟をお願いしますよ」
慎之介は皆に頭を下げた。
龍神が火炎に降るはずの雨を止めた。
水府が火炎の各地に湧き出る水を止めた。
産土が作物がならない様に火炎の大地を乾かした。
風来が火炎に吹くはずの風を止めた。
火炎はこの後、半年後には地獄と化す....。
火炎は今、毎日が日照り続きで猛暑である。
風がピュ~っとも吹かず、大地はどんどん砂漠化して行っている。
水は乾き、作物は全く育たない。
各地で食料の奪い合いが始まり、本当の意味での『弱肉強食』になってしまっていた。
住民は火炎の土地を捨て、慎之介の下に救援を求めた。
慎之介は全ての住民を受け入れ各地に送る。
送られた住民は手厚く保護を受けて丁重に扱われた。
火炎では蓄えていた食料もどんどん減り、沢山の鬼達が助けを求めていた。
「兄貴!どうする?いよいよ危ないぞ」
「あぁ?」
「どう考えても食料がもうねーよ」
「...鉄、志帆が苦しんでんだ。薬持ってこい」
「兄貴!何言ってんだよ!どうすんだって!」
「鉄、聞こえねーか?」
「.....」
「早くしろっ!!」
鉄太はその場を離れると、自分の部下を連れて慎之介の元に行った。
空也は待ってもなかなか帰って来ない鉄太に痺れを切らして立ち上がった。
部屋から外に出ると、静まり返った本宅は誰もいない様な気配だった。
『皆...逃げたのか...?』
空也はガランっとした本宅を見て呆然と立ち尽くした。
ほんの少し前まで、皆が自分に平伏していたのは幻だったんだろうか...?
外に出て見た。
地面が焼ける様に熱くなっていて、今にも火が着きそうな感じだ。
誰もいない大通りを見つめる。空也は熱さを忘れていた。
ヨロヨロと部屋に戻ると志帆が苦しそうに震えていた。
「空也...持っ...て...来た...?」
空也は志帆を抱きしめると
「あぁ?.....もうねーよ」
その言葉を聞いた志帆の顔が般若になる。
「ないって...無いって...ど...どう言う...事よ!」
「無いに意味はねー」
「なっ、なんでよ!!」
「なぁ、志帆...このまま2人で一緒に逝くか?」
空也は今まで言った事も無い、聞いた事も無い優しい声色で志帆に問いかけた。
「なんでっ!!なんで、あんたなんかと一緒に...!!」
空也は志帆をそのままゴトンっと落とすと立ち上がった。
そして黙ってその場を去った。
志帆はただでさえも体中が痛いのに、落とされて叫びまくっていた。
空也にこれ以上無い罵詈雑言を震えながらも捲し立てた。
襖の向こうでそれを聞いていた空也の顔に表情は無かった。
そして、慎之介の居る久我邸とは反対の方向に走って行ってしまった。
空也の姿はあっという間に見えなくなり、志帆はその後慎之介達に助け出された。
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