枝垂れ桜Ⅱ

あくび

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今回、空也のやった事に加担した者達や、薬、盗み、強姦、賭博...と罪のあるもの達は皆、地下に連れて行かれ牢に入れられた。
火炎は元の気候に戻ったが、一旦砂漠化してしまった土地は 死ぬ気で頑張らないと元の状態に戻すのはなかなか難しい。

牢に入れられた者達は過酷な労働に駆り出された。
木を植え、野を焼き払い、アルカリ性に傾いた土地を耕し、1から火炎を立て直そうと住民と力を合わせて頑張った。

志帆は禁断症状の酷い中、産土に連れて行かれた。
志帆の変わり果てた姿を見て鷹亮は嘆いた。
そして、自分があの時、発情期に敢えて招集した事を心から悔やんだ。

あれから3ヵ月。季節も冬に変わり 産土では雪が降り始めた。

志帆は、気だるげに窓から外を眺めていた...。
正直、記憶が途切れ途切れで覚えていない所が多く、どうして自分は産土に居るのか解らなかった。
空也の元に帰りたいが、とてもじゃないがそんな事を言える雰囲気では無く、志帆は毎日が虚しく過ぎて行く。


鬼の世界にも年越しや新年の行事があり、今は年越しに向けて何処の領地も慌ただしくなっていた。
慎之介は借りていた久我邸を孔宇に返し、今は本宅に住居を移している。
雫谷川の家が懐かしいが、今はそこに鈴音が住む事になった。
鈴音は慌しく縁組を決めるとそこを住まいとして決め、早く世継ぎを作る様に精を出している。

慎之介は新たな城主として 規則を決め、それに基づき新たな火炎作りを頑張っていた。
年が明ければ慎之介が新城主として例の血判署名に名を入れる予定になっている。


空也の行方は解らなかった。
慎之介は出来れば生きていて欲しいと思っている。
空也を追い詰めたのは自分達だ。
空也もまた今回の被害者だと 慎之介は思っていた。

********************************

年が明け、血判書にも火炎の署名が加えられ、新たな時代に向けて全てが動き始めていた。

風来では美咲が6歳になった。
お喋りが大好きで「ちょっと黙っていなさい!」と言われる事の多い美咲は、今日は朝からルンルンと機嫌が良い。

そう。今日は美咲の6歳の誕生日である。
今日は色んな人が集まって食事会がある。火炎の慎之介も来る。
そうーーーーー。
おしゃまな美咲は慎之介が大のお気に入りなのだ。

3歳の時から 事ある事に顔を合わせていたが、慎之介は美咲を大層可愛がってくれた。だから大のお気に入りである。何を言っても 何をしても許してくれる心の広い慎之介に、今日は『お嫁さんにして』っておねだりするつもりだ。

「美咲、今日は機嫌がいいなぁ~」
「お父様、今日は皆が集まる日でしょ?美咲はとっても楽しみなのです」
「そうか?美咲、あんまりはしゃいで皆を困らせちゃいけないぞ」
「大丈夫です。美咲はしののお手伝いをして来ます」

仁は美咲の大人びた口調を聞いて吹き出しそうになっていた。
美咲がトトトトと走り去って行く後ろ姿を見て、由花にも見せたかったと改めて思った。

夜になるにつれて続々と人が集まって来た。
美咲の祖父母、鷹亮、水越夫婦と子供、九頭竜夫婦と子供、慎之介、吾郎、風来の家老の壮太郎夫婦。
九頭竜の所は産まれたばかりの赤ちゃん龍も一緒に来てくれた。

美咲も夕方から祖母が可愛らしい着物を着せてくれておめかししていた。
皆から「可愛いね」と誉められて美咲はらしくもなくモジモジと照れていた。
仁はその姿を見て また吹き出しそうになったが耐えた。
折角の誕生日なのに台無しにしたくは無かったから...。

誕生日には、定番の『お寿司けえき』を皆で食べる。

由花がコチラの世界にいた頃に、誕生日が来た仁に 押し寿司で色とりどりにして『けえき』を作ってくれた時から 欠かさず誰かの誕生日の際は作る事になってしまった。
けえきの上に刺した小さい蝋燭に火をつけ「ふぅ~」っと消すと、皆が拍手をして「おめでとう~」と言ってくれた。

美咲は小さい箱の上に立たされ、皆から質問タイムをされていた。
1人ずつ質問するのに答えなければならないのだ。

「好きな色は何ですか?」「好きな花は何ですか?」「好きな食べ物は何ですか?」
そんな質問に1つ1つ元気に答える。
順番が壮太郎夫婦に回った時だった。

「大きくなったらどんな事がやりたいですか?」

の質問に、周りはブーイングだった。「まだ6歳やし解らんやろ~」とヤジが飛んで来たのだ。壮太郎は質問を変えようと思った時に美咲が小さい声で

「お嫁さんになりたいです...」

と美咲が言った。顔が真っ赤でモジモジしている。
仁は目が点である...。

「誰のお嫁さんになりたいですか?」

次の人が面白がって質問をした。
皆一同「お父様」と言うと思っての配慮だったのだが...

「慎之介様のお嫁さんになりたいです」

仁は口に入れているお酒を盛大に吹き出した...。
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