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第二章 決行
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中型の船が、ゆったりと川を下ってくる。
烏有はまぶしそうに目を細め、蕪雑は顔中に希望をみなぎらせ、剛袁はむっつりと、袁燕は期待に目を輝かせて、その船が着岸するのを待っていた。
「あれに、玄晶が乗っているんだよな」
袁燕が指を差す。
「ああ。帆に梅と鳥が描かれているだろう。あれが、そうだという意味だ」
烏有の答えに、袁燕は笑みを深めて剛袁の袖を引いた。
「もっと川のそばに行こうよ、兄さん。どうせ、あの船に乗るんだろ」
「相手の姿が見えてからにしたほうが、いいと思いますよ」
「剛袁は、ワクワクしねぇのか? いいじゃねぇか。船の傍に行ったってよぉ」
彼等は国を興すと決めた場所で、玄晶の乗った船が来るのを、昨日の昼から待っていた。
「だって、5日も待ってたんだぜ」
袁燕が唇を尖らせる。
「1日だろう」
剛袁が静かに正すと、蕪雑がニヤニヤと剛袁の肩を叩いた。
「袁燕が言ってんのは、烏有が話を持って帰ってからの日数だろう。なあ、袁燕」
「うん!」
「烏有。その玄晶って奴と、国造りのこまかい話を、詰めていくんだよな」
蕪雑が剛袁の肩に肘を乗せ、烏有に首を向ける。機嫌の悪そうな剛袁と、目を輝かせている蕪雑を見比べ、烏有は首を縦に動かした。
「土地を見なければ、計画も立てられないからね」
「俺っちらと、山を通ってきたほうが、早かったのにな」
袁燕が頭の後ろで腕を組んだ。
「玄晶が山に入れば、目立つだろう。岐から来た官僚が、蕪雑たちと会っていると、甲柄の豪族や領主が知れば、どんな疑いをかけられるかわからないよ。放置されているとはいえ、牢から逃げ出した罪人だからね。自分たちに不利益な調査をされているのかもしれないと、予測で兵士を差し向けられるかもしれない。そうなると、困るよね」
烏有の説明に、袁燕は半眼になり頬をふくらませた。
「それに、船でこれば、調査に必要なものも運びやすくなりますしね」
剛袁が低い声で補足する。蕪雑はじつに楽しそうに、剛袁の眉間に刻まれたシワに指を突きたて、ほぐすように動かした。
「烏有の説明を聞いてから、ずっと機嫌が悪ぃのは、なんでだよ」
「蕪雑兄ぃが烏有を信じきっておられるので、俺が疑う役を担っているんですよ」
「なんでぇ、そりゃあ」
「烏有は自分が何者であるのかを、ごまかしているでしょう」
「ごまかすって。ちゃんと楽士だって、言っているじゃねぇか」
「ただの楽士が、どうして中枢の官僚に、ここまでさせられるのですか? そのあたりを、烏有はすこしも説明をしていませんよ」
剛袁の鋭い視線を、烏有はまっすぐに受け止める。
「そんな人間を、俺は信用できません」
「けど、国を造るって説明をした時にゃあ、皆の説得を手伝ってくれたじゃねぇか」
「あれは、また別の話です。俺は国を造ることに賛成をしたのではなく、山の中で、これからどうするかの道筋もなく、コソコソと甲柄に残っている者との連絡をとりながら過ごす、という生活に問題を感じていましたから。その打開策となる、山を挟んだ土地に村を作り、皆で移り住むという案に賛同をしたまでですよ」
「ふうん? まあ、そうだなぁ。山賊をやめて、まっとうな暮らしができるってんなら、そのほうがいいしな。家族やなんやらを甲柄に残している連中は、一緒に暮らしてぇだろうし」
蕪雑が山を見上げる。
「まずは、皆がこっちに来られるようにする道を、つくらなきゃあ、ならねぇな」
蕪雑らが、山賊と名乗って出る街道は、こちら側には通っておらず、斜めに折れて北東の府に続いている。こちらに来るには、道なき道を通ってくるか、人の足が通れる道を整備するところから、はじめなければならなかった。
「国造りの進め方は、玄晶が来てから話し合おう。まず道を作るのか、縄張りをして家や畑を整備するのか。順番を間違えると、めんどうなことになってしまうからね」
烏有の言葉に、蕪雑と袁燕が首をかしげた。
「先に道を作って、山の連中をこっちに通して家を建てちまやぁ、家族やなんやらを、呼び寄せやすいじゃねぇか。そうすりゃあ、人手も増えるし、畑を作るのにも助かるだろう」
「道具とか、運んでこなきゃいけないものだって、たんとあるだろ? そういうものを買って運ぶのだって、道があるほうが楽じゃないか」
「人や物が多く移動をすれば、人目についてしまうだろう。そうなると、困ることになるよ」
彼等と烏有のやりとりに、剛袁が口を挟む。
「警兵官の目に止まれば、問題になりますからね。なにせ俺たちは、脱走をした罪人ですから。それが村を造ろうとしていると知れたら、甲柄に属するようにと圧力をかけられるでしょう」
「多くの人が移住のためにいなくなれば、ちょっとした騒ぎになるだろうしね。玄晶の船を使って資材を運び、ある程度、村の体裁ができてから、道を作ったほうがいいんじゃないかな」
烏有が考えを述べれば、剛袁が渋い顔で「俺もそう思います」と同意した。
「そう言われりゃあ、そうかもしんねぇな」
蕪雑が納得をすると、袁燕はつまらなさそうに3人を見上げた。
「それじゃあ、いつんなったら村ができるのさ。これっぽっちの人数じゃあ、うんと時間がかかっちまうだろう」
「そのための、玄晶の船だと言ったろう」
烏有が袁燕に笑いかけ、川に顔を向ける。つられたように、3人も船を見た。船は川の中腹で、碇を下ろしているところだった。
「なんで、あんなところで停まってんのさ。あそこからこっちまで、泳いでくるつもりなのかな」
袁燕の素朴な疑問に、烏有が答える。
「あの船の大きさでは、川原のそばまで来られないんだ。だから、あそこで船を止めて、小さな舟でこちらへ渡るんだよ」
「まずは船着場ですね。それが整備されさえすれば、資材も人も調達しやすくなります。しかし、そのためには、相当な資金が必要となりますよ」
「金銭的な問題は、信用をしてもらってかまわない。僕は岐に、資産を置いているからね。それをすべて、今回の計画に投じるつもりだ。剛袁は、そのあたりの算術ができるのかい?」
「できなければ、豪族の使用人にはなれないんですよ。たとえ下働きだったとしても、算術と文字の理解は、必要とされていますから」
「なるほど。そうでなければ、使いもできないというわけだね」
「そういうことです。どこにどのような資材が、どれほど必要なのか。運搬日も含めて、考えなければなりません。専門の工夫が必要となりますから、賃金と滞在の間の生活の面倒も経費となりますよね。そのあたりを、烏有は把握なさっているのですか」
「もちろんだ、と言いたいところだけれど、経験のないことだからね。実際には、いくらかかるのか見当もつかないよ。まあ、でも心配はしなくていいよ。玄晶に船着場の話をしたら、僕の資産で十分に建設できるだろうと、答えられたからね」
「すべて烏有の懐から、資金が出ると認識しておいて、問題ありませんか」
「もちろんだ。これは僕が君たちに持ちかけたものだからね。そのくらいはして、当然だろう。どうせ僕には無用のものだし、国ができれば財産よりもすばらしいものを手に入れられるんだから、惜しくはないよ」
烏有と剛袁のやりとりに、蕪雑がニヤニヤする。
「なんですか」
「どうしたんだい」
そろった声に、袁燕が吹き出した。
「仲が悪そうにしているくせに、ずいぶんと気が合うみてぇじゃねぇか」
蕪雑がふたりの肩に腕を回す。
「気が合っているわけでは、ありません。必要な情報の確認をしているだけです」
「そのとおりだよ、蕪雑。僕はべつに剛袁を嫌ってはいないし、苦手とも思っていないけれど、彼がどうしても僕を信用しきれないらしいからね。こういう最低限、必要な会話はしてくれるけれど、それ以上にはならないんだ。まったく、警戒心が強くて困るよ」
「信用をしてもらいたいと考えているのなら、貴方の素性や国造りを提案した理由などを、きちんと説明していただきたいものです。それだけの資金がほんとうにあるのかも、わかりませんしね」
ふたりのやりとりに、蕪雑がカラカラと笑い声を上げた。
「そういうことは、おいおい、わかってくんだろ。烏有がどういう意図であれ、剛袁は移住に賛成なんだよな。だったら、ごちゃごちゃ言ってねぇで、その点だけでも信用すりゃあ、いいじゃねぇか。ほらほら、船の上が、なんかさわがしくなってんぜ。烏有の言っていた、小舟が下りてくるんじゃねぇか。突っ立ってねぇで、そろそろあっちに行こうじゃねぇか」
蕪雑の腕に押される形で、烏有と剛袁の足が動く。袁燕が楽しげに走りだし、それを見た蕪雑も川に向かって駆けた。
「早くしねぇと、迎えを待たせちまうぞ」
急かす蕪雑に、烏有の目じりがやわらぐ。
「あんなに急がなくとも、投錨をしてから小舟を用意し下ろすまで、まだまだ時間がかかるんだけどね」
「ここから川原までは、まだすこし距離がありますからね。これからのんびり歩いて行くと、ちょうどいいのではありませんか」
はしゃぐ弟と蕪雑の姿に、わずかに口元をほころばせた剛袁に、烏有は羨望に似たものを向けた。
「なんですか」
「いいえ、なにも」
目を伏せた烏有が歩きだし、剛袁も足を動かす。彼等よりもずっと先に、蕪雑と袁燕の姿があった。
烏有はまぶしそうに目を細め、蕪雑は顔中に希望をみなぎらせ、剛袁はむっつりと、袁燕は期待に目を輝かせて、その船が着岸するのを待っていた。
「あれに、玄晶が乗っているんだよな」
袁燕が指を差す。
「ああ。帆に梅と鳥が描かれているだろう。あれが、そうだという意味だ」
烏有の答えに、袁燕は笑みを深めて剛袁の袖を引いた。
「もっと川のそばに行こうよ、兄さん。どうせ、あの船に乗るんだろ」
「相手の姿が見えてからにしたほうが、いいと思いますよ」
「剛袁は、ワクワクしねぇのか? いいじゃねぇか。船の傍に行ったってよぉ」
彼等は国を興すと決めた場所で、玄晶の乗った船が来るのを、昨日の昼から待っていた。
「だって、5日も待ってたんだぜ」
袁燕が唇を尖らせる。
「1日だろう」
剛袁が静かに正すと、蕪雑がニヤニヤと剛袁の肩を叩いた。
「袁燕が言ってんのは、烏有が話を持って帰ってからの日数だろう。なあ、袁燕」
「うん!」
「烏有。その玄晶って奴と、国造りのこまかい話を、詰めていくんだよな」
蕪雑が剛袁の肩に肘を乗せ、烏有に首を向ける。機嫌の悪そうな剛袁と、目を輝かせている蕪雑を見比べ、烏有は首を縦に動かした。
「土地を見なければ、計画も立てられないからね」
「俺っちらと、山を通ってきたほうが、早かったのにな」
袁燕が頭の後ろで腕を組んだ。
「玄晶が山に入れば、目立つだろう。岐から来た官僚が、蕪雑たちと会っていると、甲柄の豪族や領主が知れば、どんな疑いをかけられるかわからないよ。放置されているとはいえ、牢から逃げ出した罪人だからね。自分たちに不利益な調査をされているのかもしれないと、予測で兵士を差し向けられるかもしれない。そうなると、困るよね」
烏有の説明に、袁燕は半眼になり頬をふくらませた。
「それに、船でこれば、調査に必要なものも運びやすくなりますしね」
剛袁が低い声で補足する。蕪雑はじつに楽しそうに、剛袁の眉間に刻まれたシワに指を突きたて、ほぐすように動かした。
「烏有の説明を聞いてから、ずっと機嫌が悪ぃのは、なんでだよ」
「蕪雑兄ぃが烏有を信じきっておられるので、俺が疑う役を担っているんですよ」
「なんでぇ、そりゃあ」
「烏有は自分が何者であるのかを、ごまかしているでしょう」
「ごまかすって。ちゃんと楽士だって、言っているじゃねぇか」
「ただの楽士が、どうして中枢の官僚に、ここまでさせられるのですか? そのあたりを、烏有はすこしも説明をしていませんよ」
剛袁の鋭い視線を、烏有はまっすぐに受け止める。
「そんな人間を、俺は信用できません」
「けど、国を造るって説明をした時にゃあ、皆の説得を手伝ってくれたじゃねぇか」
「あれは、また別の話です。俺は国を造ることに賛成をしたのではなく、山の中で、これからどうするかの道筋もなく、コソコソと甲柄に残っている者との連絡をとりながら過ごす、という生活に問題を感じていましたから。その打開策となる、山を挟んだ土地に村を作り、皆で移り住むという案に賛同をしたまでですよ」
「ふうん? まあ、そうだなぁ。山賊をやめて、まっとうな暮らしができるってんなら、そのほうがいいしな。家族やなんやらを甲柄に残している連中は、一緒に暮らしてぇだろうし」
蕪雑が山を見上げる。
「まずは、皆がこっちに来られるようにする道を、つくらなきゃあ、ならねぇな」
蕪雑らが、山賊と名乗って出る街道は、こちら側には通っておらず、斜めに折れて北東の府に続いている。こちらに来るには、道なき道を通ってくるか、人の足が通れる道を整備するところから、はじめなければならなかった。
「国造りの進め方は、玄晶が来てから話し合おう。まず道を作るのか、縄張りをして家や畑を整備するのか。順番を間違えると、めんどうなことになってしまうからね」
烏有の言葉に、蕪雑と袁燕が首をかしげた。
「先に道を作って、山の連中をこっちに通して家を建てちまやぁ、家族やなんやらを、呼び寄せやすいじゃねぇか。そうすりゃあ、人手も増えるし、畑を作るのにも助かるだろう」
「道具とか、運んでこなきゃいけないものだって、たんとあるだろ? そういうものを買って運ぶのだって、道があるほうが楽じゃないか」
「人や物が多く移動をすれば、人目についてしまうだろう。そうなると、困ることになるよ」
彼等と烏有のやりとりに、剛袁が口を挟む。
「警兵官の目に止まれば、問題になりますからね。なにせ俺たちは、脱走をした罪人ですから。それが村を造ろうとしていると知れたら、甲柄に属するようにと圧力をかけられるでしょう」
「多くの人が移住のためにいなくなれば、ちょっとした騒ぎになるだろうしね。玄晶の船を使って資材を運び、ある程度、村の体裁ができてから、道を作ったほうがいいんじゃないかな」
烏有が考えを述べれば、剛袁が渋い顔で「俺もそう思います」と同意した。
「そう言われりゃあ、そうかもしんねぇな」
蕪雑が納得をすると、袁燕はつまらなさそうに3人を見上げた。
「それじゃあ、いつんなったら村ができるのさ。これっぽっちの人数じゃあ、うんと時間がかかっちまうだろう」
「そのための、玄晶の船だと言ったろう」
烏有が袁燕に笑いかけ、川に顔を向ける。つられたように、3人も船を見た。船は川の中腹で、碇を下ろしているところだった。
「なんで、あんなところで停まってんのさ。あそこからこっちまで、泳いでくるつもりなのかな」
袁燕の素朴な疑問に、烏有が答える。
「あの船の大きさでは、川原のそばまで来られないんだ。だから、あそこで船を止めて、小さな舟でこちらへ渡るんだよ」
「まずは船着場ですね。それが整備されさえすれば、資材も人も調達しやすくなります。しかし、そのためには、相当な資金が必要となりますよ」
「金銭的な問題は、信用をしてもらってかまわない。僕は岐に、資産を置いているからね。それをすべて、今回の計画に投じるつもりだ。剛袁は、そのあたりの算術ができるのかい?」
「できなければ、豪族の使用人にはなれないんですよ。たとえ下働きだったとしても、算術と文字の理解は、必要とされていますから」
「なるほど。そうでなければ、使いもできないというわけだね」
「そういうことです。どこにどのような資材が、どれほど必要なのか。運搬日も含めて、考えなければなりません。専門の工夫が必要となりますから、賃金と滞在の間の生活の面倒も経費となりますよね。そのあたりを、烏有は把握なさっているのですか」
「もちろんだ、と言いたいところだけれど、経験のないことだからね。実際には、いくらかかるのか見当もつかないよ。まあ、でも心配はしなくていいよ。玄晶に船着場の話をしたら、僕の資産で十分に建設できるだろうと、答えられたからね」
「すべて烏有の懐から、資金が出ると認識しておいて、問題ありませんか」
「もちろんだ。これは僕が君たちに持ちかけたものだからね。そのくらいはして、当然だろう。どうせ僕には無用のものだし、国ができれば財産よりもすばらしいものを手に入れられるんだから、惜しくはないよ」
烏有と剛袁のやりとりに、蕪雑がニヤニヤする。
「なんですか」
「どうしたんだい」
そろった声に、袁燕が吹き出した。
「仲が悪そうにしているくせに、ずいぶんと気が合うみてぇじゃねぇか」
蕪雑がふたりの肩に腕を回す。
「気が合っているわけでは、ありません。必要な情報の確認をしているだけです」
「そのとおりだよ、蕪雑。僕はべつに剛袁を嫌ってはいないし、苦手とも思っていないけれど、彼がどうしても僕を信用しきれないらしいからね。こういう最低限、必要な会話はしてくれるけれど、それ以上にはならないんだ。まったく、警戒心が強くて困るよ」
「信用をしてもらいたいと考えているのなら、貴方の素性や国造りを提案した理由などを、きちんと説明していただきたいものです。それだけの資金がほんとうにあるのかも、わかりませんしね」
ふたりのやりとりに、蕪雑がカラカラと笑い声を上げた。
「そういうことは、おいおい、わかってくんだろ。烏有がどういう意図であれ、剛袁は移住に賛成なんだよな。だったら、ごちゃごちゃ言ってねぇで、その点だけでも信用すりゃあ、いいじゃねぇか。ほらほら、船の上が、なんかさわがしくなってんぜ。烏有の言っていた、小舟が下りてくるんじゃねぇか。突っ立ってねぇで、そろそろあっちに行こうじゃねぇか」
蕪雑の腕に押される形で、烏有と剛袁の足が動く。袁燕が楽しげに走りだし、それを見た蕪雑も川に向かって駆けた。
「早くしねぇと、迎えを待たせちまうぞ」
急かす蕪雑に、烏有の目じりがやわらぐ。
「あんなに急がなくとも、投錨をしてから小舟を用意し下ろすまで、まだまだ時間がかかるんだけどね」
「ここから川原までは、まだすこし距離がありますからね。これからのんびり歩いて行くと、ちょうどいいのではありませんか」
はしゃぐ弟と蕪雑の姿に、わずかに口元をほころばせた剛袁に、烏有は羨望に似たものを向けた。
「なんですか」
「いいえ、なにも」
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