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私も、出来れば――。
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「私は――」
ふっと逸れた目に、おやと疑問が浮かんだ。
「萩、なんでも言って。ここまでのことが出来たのは、萩のおかげよ。萩だからこそ、私は打ち明けることが出来たし、相談も出来たの。だから、萩も遠慮なく言ってちょうだい」
それでも少し迷うように目を泳がせた萩が、少し下がって床に手を突き頭を下げた。
「もうしわけございません」
「何を、謝るの」
そろりと頭を上げながら、実は――と歯切れ悪く
「久しぶりの再会で、その……なんというか、懐かしさからか語り合って……、計画を練るために、合間を見ては顔を合わせておりましたら、その、あの陰陽師に扮した従弟が――直臣というのですけれど、別邸についてくると言い始めて…………」
ほんのりと頬を染め、緩みそうになる顔を必死に抑えようとしている萩の姿に、ぴんときた。
「良い仲になった、ということね」
「そんな――! まだ、ですけれど。でも、そうですね。その、なんと言いますか。姫様を差し置いて、というか、姫様のことを利用したような形になってしまったと、もうしわけなく…………その」
「何を遠慮することがあるの。手伝ってくれた二人が結ばれたのなら、わがままのために多くの人を騙してしまった気も、少しは慰められるわ」
「――姫様」
「遠慮なく、二人で過ごしていらっしゃいな。私が何かわからないことが出来て、困ったときには助言をしてもらわなくっちゃいけないから、萩が先に結婚をしてくれるのなら、心強いわ」
私は片恋で、このまま近貞と会うことも無く終わってしまうかもしれないけれど。そうだったとしても、萩がこのことによって素敵な縁を結んで、幸せになってくれるのなら、良かったと思える。
「ありがとうございます」
「いつか、きちんと紹介をしてね」
「はい」
萩の笑みは、今まで見たことが無いくらい輝いていて、ちょっぴりうらやましくなった。
私も、出来れば――。
遠くから、萩を呼ぶ大きな声が聞こえる。それに応えながら立ち上がった萩が、あちらが落ち着けば菓子などをご用意いたしますねと言い置いて、去って行った。私に報告をして心配事が一つ減ったからか、うきうきと弾んでいるように見える背中を見送り、掻取を脱いで小袖に袴の姿になり、立ち上がる。庭の前まで進み出て、幻の矢で射た花を見つめた。
ふっと逸れた目に、おやと疑問が浮かんだ。
「萩、なんでも言って。ここまでのことが出来たのは、萩のおかげよ。萩だからこそ、私は打ち明けることが出来たし、相談も出来たの。だから、萩も遠慮なく言ってちょうだい」
それでも少し迷うように目を泳がせた萩が、少し下がって床に手を突き頭を下げた。
「もうしわけございません」
「何を、謝るの」
そろりと頭を上げながら、実は――と歯切れ悪く
「久しぶりの再会で、その……なんというか、懐かしさからか語り合って……、計画を練るために、合間を見ては顔を合わせておりましたら、その、あの陰陽師に扮した従弟が――直臣というのですけれど、別邸についてくると言い始めて…………」
ほんのりと頬を染め、緩みそうになる顔を必死に抑えようとしている萩の姿に、ぴんときた。
「良い仲になった、ということね」
「そんな――! まだ、ですけれど。でも、そうですね。その、なんと言いますか。姫様を差し置いて、というか、姫様のことを利用したような形になってしまったと、もうしわけなく…………その」
「何を遠慮することがあるの。手伝ってくれた二人が結ばれたのなら、わがままのために多くの人を騙してしまった気も、少しは慰められるわ」
「――姫様」
「遠慮なく、二人で過ごしていらっしゃいな。私が何かわからないことが出来て、困ったときには助言をしてもらわなくっちゃいけないから、萩が先に結婚をしてくれるのなら、心強いわ」
私は片恋で、このまま近貞と会うことも無く終わってしまうかもしれないけれど。そうだったとしても、萩がこのことによって素敵な縁を結んで、幸せになってくれるのなら、良かったと思える。
「ありがとうございます」
「いつか、きちんと紹介をしてね」
「はい」
萩の笑みは、今まで見たことが無いくらい輝いていて、ちょっぴりうらやましくなった。
私も、出来れば――。
遠くから、萩を呼ぶ大きな声が聞こえる。それに応えながら立ち上がった萩が、あちらが落ち着けば菓子などをご用意いたしますねと言い置いて、去って行った。私に報告をして心配事が一つ減ったからか、うきうきと弾んでいるように見える背中を見送り、掻取を脱いで小袖に袴の姿になり、立ち上がる。庭の前まで進み出て、幻の矢で射た花を見つめた。
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