新月のかぐや

水戸けい

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近貞は、私を想うようになったことで、何かが変わったのかしら。

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 胸に、ひらめくものがあった。かぐや姫のように、私も私を求める公達きんだちらに無理難題を突きつければいいんだわ。そうすれば、わずらわしい恋文も止まるだろうし、近貞の兄君だって従わざるを得ない。――問題は、無理難題を何にするか。そしてそれは、近貞が解けるものでなければならない。

 腕を組み、闇に沈む東屋を見つめる。うっすらと遠くの空が茜を滲ませ、宵闇を持ち上げていく。

 暖色のかさねをまとった太陽が、昇りはじめている。池に光が射して、東屋と橋の姿が浮かび始める。

 近貞と出会う前は、それを見ても特に感動をするようなことなんて無かったのに、今は美しいと思えるのだから不思議。

 あの夜の観月の宴も、今から思えばひねくれた気持ちで参加をしていたのよね。武藤家のことも、ぽっと出の新興貴族だとか思っていたし、自分の事も家名は素晴らしけれど落ちぶれた貴族だと思っていたし。

 言いよる公達たちが、名家であるけれど後ろ盾は望めないってう態度が見え見えな方ばかりだったから、ひねくれてしまったなんて言い訳をしてみるけれど、もともとが花をで歌をあいし風雅を好む姉様と違って、庭先でスズメの子を捕まえたりするほうが好きだったし、琴よりも弓の弦に触れるほうが好きだから、夢を見て殿方を待つ姫よりも、姫を品定めする殿方のように考えて、出世の足しになるかどうかと穿うがった見方をしてしまう。

 この性格は生まれつき。

 それが、池にきらめく朝粒の光を美しいと思えるようになるんだから、恋が人を変えるという、否定はしていなかったけれど信用もしていなかった話は、本当だったと認めざるを得ない。

 近貞は、私を想うようになったことで、何かが変わったのかしら。

 文を送ってくる公達らに出す無理難題の案は少しも思いつかず、そんなことをつらつらと考えるともなしに思っていると、衣擦れの音が聞こえて雨戸を開けに萩がやってきた。

「まぁ、姫様。――眠れなかったのですか」

「少し前に、目が覚めたのよ」

 笑いかけ、安心をさせて庭に目を戻す。だいぶんと夜のとばりをまくり上げ、太陽が顔を出している。

「きれいですわね」

 池に光が踊り、橋と東屋の姿が浮かび上がっていた。萩がため息を漏らしながら

「日のかけらがちりばめられ、螺鈿細工のようですわ」

 呟いた言葉に、はっとした。

 日のかけら――!

 そうよ、それなら近貞だけに通じる無理難題になる。近貞だけが解けるものになる。

「萩!」
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