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19.誓いをください、王子様
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「私は、弘毅さんと結婚したいですっ!」
(言っちゃったぁ)
心の中でヒヤヒヤしながら、それをぬぐうために必死になってオロオロと言葉を続ける。
「だって、そうしないと弘毅さんといっしょにいられないじゃないですか。私、とりあえずの療養で居候をさせてもらっている身だし。いつか帰らなきゃいけないっていうか、いつまでもお世話になれないですよね。そうしたら働かなくちゃいけないけど、施設の仕事じゃ食べていけなさそうだし、ほかにバイトって考えたって近所にお店はないし。弘毅さんみたいにインターネットを使って仕事をするなんて無理だし。……そうなったら、弘毅さんと結婚しないと、ずっといっしょにいられないじゃないですか」
なかばヤケクソになりながら告白した頼子は、ぷうっと頬をふくらませた。
「うん。そうだね」
あっさりと受け止められて、頼子は拍子抜けした。いたずらっぽい顔で、弘毅がメモ帳に手を伸ばす。
裏向きのまま渡されて、頼子は弘毅の笑みを見ながらメモ帳を受け取った。
「読んでみて」
ドキドキしながら裏返し、書かれている文字に息を呑む。
『結婚しよう』
「こ、弘毅さん……これ」
「急ぎ過ぎかなとも思ったんだけど」
はにかみながら、弘毅が首に手を当てた。
「俺も、似たようなことを考えていたんだ。頼子ちゃんは療養のためにここに来ていて、それが終わったら帰るつもりでいるんじゃないかって。告白を疑ったわけじゃないんだ。それは、頼子ちゃんもおなじだと思う」
そうですと頼子は首肯した。弘毅の告白を信じていないわけじゃない。それなのに不安になった。
「もっとシンプルに考えればいいんだ。自分がどうしたいのか。それが中心で、そのためにどうすればいいかが続いて」
「でも、相手の気持ちも大切です」
「そうだね。だけど、それを考えすぎるとなんにもできなくなるんだよ。頼子ちゃんはそれをしすぎて苦しくなって、会社を辞めたんじゃなかったっけ」
「そんなにいいものじゃないです。ただ、いい子でいたかっただけっていうか、仕事自体は嫌いじゃなくって、だから人間関係もがんばろうって。だけどそれが空回りしちゃって、なにをやっても裏目に出るっていうか、うまく言えないんですけど」
「相手が悪いとは、思わなかった?」
「それは……だって、向こうは職場の先輩で。気に入られたいわけじゃないですけど、ほかの人はうまくやっているのに、なんで私はそうなれないんだろうっていうか、後から入っていったのは私だから、なんとかなじまなくっちゃって思ったんです」
「原因は、なんだったの? がんばる気力が切れた理由は」
「嫉妬だからって言われたんです。なんだかよくわからなかったんですけど、その人は私に嫉妬をしていたらしくて。べつにそんなの、する必要なんてどこにもなかったと思うんです。だって私、美人だとかそういうんじゃないし、特別扱いされていたわけでもないし。新人だから仕事について、いろいろと教わっていただけで。でも、それってほかの人もそうだったはずですよね。そう思ったらなんだか、どれだけがんばっても、どうしようもないんだなぁって思ったっていうか、もう疲れちゃったっていうか」
そっと頭を引き寄せられて、辛かったねとなぐさめられる。頼子は弘毅に抱きついて、目を閉じた。弘毅の匂いとぬくもりに、思い出した苦しさが緩和される。
「自分がどうしたいのかを置き去りにして、まわりのことばかりを考えて。だから頼子ちゃんは苦しくなってしまったんだね」
だけど、と髪にキスをされた。
「あんまりそればっかりになると、自分を見失うよ。俺に迫ってきたときみたいに、頼子ちゃんの気持ち優先で、行動をしてもいいんだよ」
「あれは……その、ごめんなさい」
「なんで、あやまるの」
「だって、弘毅さんの気持ちなんてぜんぜん考えずに、私、突撃しちゃって」
いま考えると、とても恥ずかしい。
真っ赤になった頼子を、弘毅の手がやさしくあやす。
「おかしかったんです、きっと私」
あこがれの王子様と再会して、気持ちが爆発して、ふだんならできない大胆な行動をしてしまった。仕事をやめて精神的に落ち着いてきたつもりでいたけど、ちっともそうじゃなかったんだと振り返る。
「弱っているところだったから、自分の望みが最優先になったんだな」
たのしげに弘毅が言って、頼子はますます恥ずかしくなる。
「ごめんなさい」
「どうして、あやまるの? そのおかげで、俺はこうして大好きな人と気持ちを通じあわせることができたんだから。なんだか、結果的に弱っているところにつけ込んだ感じになっちゃったな」
「そんなことないです。だって私から迫ったんですし」
「それじゃあ、お互い様ってことにしておこう」
「ぜんぜん、そんな感じじゃないですけど」
「いいんだよ。俺がそうしておきたいんだから」
「あっ」
耳裏に口づけられて、頼子はちいさな声を上げた。そのまま耳朶を唇で噛まれ、耳の中を舌でなぞられる。
「んんっ……弘毅さん」
「俺がどれだけ頼子ちゃんを求めているのか、体感してもらうよ」
「えっ」
「いやなら、やめるけど」
クスクスと息で耳をくすぐられて、頼子の息が苦しくなった。
「いやじゃ、ないです」
「よかった」
弘毅の手が服の中に入ってきた。乳房を掴まれ、やわやわと揉みしだかれながら椅子に座らされる。首筋にキスをされ、服をめくりあげられて腕と頭を抜かれた。むき出しになった上半身に弘毅の手が滑り、乳頭に唇が落ちる。
「あっ、あ……んっ、ふぅう」
プルプルと胸を揺らされ、先端を舌先でくすぐられると、気持ちよすぎてくすぐったくて、頼子の肌はすぐに火照った。
「あっ、あ、あぁ、弘毅さん」
「そんなに甘い声を出されたら、すぐにでも欲しくなるな」
「んぅうっ」
弘毅の舌が肌を滑ってヘソとたわむれる。尻を引かれて、頼子はイスの背もたれに体重をかけた。寝間着のズボンをショーツごと脱がされて、ひじ掛けに足を乗せられた。大きく開脚した格好に、頼子は赤面する。
「こっ、弘毅さん」
あわてて脚を閉じようとすれば、弘毅の体が脚の間に入ってきた。まだ濡れていない場所を指でつつかれて、頼子の鼻が興奮にふくらむ。かっこわるいと顔を両手でおおった頼子は、陰口を指先でくすぐられてヒクヒクと喉を動かした。
「ふっ、う……んっ、んぅうっ」
すぐに奥からうるおっていく。トロトロと蜜液が流れて、弘毅の指を濡らした。ぐるりと陰口をなぞられて、広げられる。
「ふっ、は、ぁあ……あっ、んぅうっ」
濡れた指が前方に移動して、花芽をつつかれたかと思うと、ネコの喉をくすぐるように指を動かされる。
「はふっ、うっ、あ、はぁ……ああっ、あ、あぅうんっ……は、ぁあっ、あっ、あ」
こまかな快感がちいさな箇所から全身に広がって、胎内からよろこびの蜜がとめどなくあふれ出る。ヒダがわななき隘路がせつなく空虚をうったえて、弘毅が欲しいとざわめいた。
「あ、はぁ……っ、弘毅さん」
「ゆっくり愛せなくて、ごめん。でも、うれしくて」
たっぷりと濡れた頼子から指を抜き、弘毅が自分の欲を取り出す。隆々とそびえたソレのたくましさに、頼子は目を見張った。
「うれしいって……」
「俺だけの勇み足じゃないって、わかったから」
結婚のことだとわかって、頼子の胸は雷鳴みたいなときめきにとどろいた。
「弘毅さん」
「いいかな」
「もちろんですっ!」
元気よく答えた頼子に弘毅が吹き出す。ちっとも色気のない返事だったと気がついて、頼子はバツが悪くなった。
「あ、えっと……その、ご、ごめんなさい」
「どうしてあやまるの」
「だって、ぜんぜんロマンチックでも色っぽくもないから」
子どもっぽかったと反省する頼子の頬を、弘毅の唇が撫でる。
「頼子ちゃんらしくて、いいんじゃないかな」
「でも」
「変に狙った態度より、とても素直でうれしいよ。心にまっすぐ届いた」
「……弘毅さん」
「入るね」
「はい」
はにかみながら返事をすれば、弘毅のたくましいもので頼子の花が開かれた。
「は、ぁ、あ、あ……あっ、あ、ああ、は、ぁう、んっ、う」
濡れた隘路が広げられ、圧迫感に息が詰まる。それがとてもうれしくて、頼子は弘毅の首に腕を絡めた。
「は、ぁ、弘毅さん……っ、あ、あ」
「頼子ちゃん」
苦しげな弘毅の声に、キュンと締まった胎内が欲熱の存在を意識に知らせる。そのまま弘毅は腰を動かし、頼子の胎内に己を擦りつけた。
「はっ、はんっ、は、ぁ、あ、ああっ、あ、んぁ、あっ、あ、あ」
弘毅の指に引き出された快感の波が、彼の熱によって渦となり全身を駆け巡る。頼子は唇を開いて荒い呼吸を吐き出しながら、細く切ないよろこびの悲鳴を上げた。それにあおられた弘毅の動きが大きくなって、頼子の奥が激しく淫らにえぐられる。
「んはっ、ぁ、ああ、ああ……は、ぁあうっ、弘毅さん、あっ、あ、あ」
「んっ、頼子ちゃん」
クッと喉に詰まった息に耳を打たれたと同時に、熱い奔流が頼子の奥を叩いた。
「っは、ぁああああっ!」
ほとばしった弘毅の昂りを受け止めた頼子は、その瞬間に身をこわばらせて絶頂に到達し、淫靡な開放を味わって弛緩した。
「は、ぁ」
「ふぅ」
余韻を交えた吐息を重ねるふたりを、快楽の香りが包む。互いの頬を両手で包み、軽いキスを繰り返して体を離した。頼子の下の唇から、情愛の証がこぼれ落ちる。それを弘毅がティッシュで丁寧にぬぐい、頼子はくすぐったさに身をよじった。
身支度を整え終えても、余韻はまだ肌の奥にわずかに残っていた。艶めいた瞳のまま、名残を惜しみつつ深呼吸する。
(明日も施設の仕事があるし)
ちゃんと眠っておかないと。
そう自分をなだめた頼子の左手を弘毅が掴む。ひざまずいた弘毅は手の甲にキスをして、頼子を見上げた。
「頼子ちゃんが俺を王子様だって思ってくれているのなら、恰好はこんなだけど王子様っぽく言わせてもらうよ」
なにを、と言いかけて声を呑み込む。きっと想像通りのことを、弘毅はしてくれる。期待の目で、頼子は弘毅を見つめた。
「結婚してください。このとおり、なにもない田舎町は都会育ちの頼子ちゃんには退屈かもしれないけれど。それでもいいなら、俺とここで暮らしてほしい」
正式なプロポーズに、頼子の心が熱くなった。
「なにもなくなんて、ないです。とても贅沢な時間が過ごせます。ここは、大切なものがいっぱいあって、大事なことに気づかせてくれる余裕があって、それに、それにとてもあたたかくて」
イスから下りて目線をあわせた頼子はニッコリした。
「なによりも、ここには弘毅さんがいます。だから、私からも言わせてください。頼りなくて、なんのとりえもない私ですけど、よかったら結婚してください」
強く手を握り、クスクスと笑いあう。
「いますぐに、かあさんに報告に行こうか。俺たちは結婚をするつもりでいるって」
「いきなりで、おどろかれますよ」
「いきなりじゃなくて、いつ告げるんだ? すこしずつ時間をかけて、つき合っている気配を察してもらう必要もないと思うけど」
「弘毅さんって、行動派なんですね」
「意外だった?」
「はい」
「俺も。頼子ちゃんがあんなに大胆だなんて思わなかったよ」
「それは……だって」
「それだけ、俺のことが好きで、振り向いてもらおうと必死だったってことだよね」
コクンと首を動かすと、よしよしと頭を撫でられた。
「でも、いまからは、ちょっと。まだ、心の準備ができていないです。せめて明日……仕事が終わって、家に帰ってから」
気持ちの整理がつかないからと伝えれば、それもそうかと弘毅が受け入れる。
「明日も雨になりそうだし。俺も施設に行くことになるはずだから。いっしょに帰って、それで正式に、かあさんに結婚をするつもりだって伝えよう。それで、いいかな」
ちいさく首を動かした頼子の額に、弘毅がキスをする。
「それじゃあ、今夜はこのへんで。明日また……おやすみ、頼子ちゃん」
「おやすみなさい、弘毅さん」
指を離して、頼子は自分の部屋へ戻った。布団に入って目を閉じても、ドキドキと鼓動がうるさくて眠れない。
(明日、おばさんに報告する)
突然すぎて、おどろかれて、反対されたらどうしようと不安になった。
(ううん、大丈夫。きっと大丈夫。私が、弘毅さんも、そうしたいって思っているんだから。私の気持ち、優先でいよう)
自分の想いを大切に、振りまわされないようにしなくちゃと、頼子は不安を追い出した。
(言っちゃったぁ)
心の中でヒヤヒヤしながら、それをぬぐうために必死になってオロオロと言葉を続ける。
「だって、そうしないと弘毅さんといっしょにいられないじゃないですか。私、とりあえずの療養で居候をさせてもらっている身だし。いつか帰らなきゃいけないっていうか、いつまでもお世話になれないですよね。そうしたら働かなくちゃいけないけど、施設の仕事じゃ食べていけなさそうだし、ほかにバイトって考えたって近所にお店はないし。弘毅さんみたいにインターネットを使って仕事をするなんて無理だし。……そうなったら、弘毅さんと結婚しないと、ずっといっしょにいられないじゃないですか」
なかばヤケクソになりながら告白した頼子は、ぷうっと頬をふくらませた。
「うん。そうだね」
あっさりと受け止められて、頼子は拍子抜けした。いたずらっぽい顔で、弘毅がメモ帳に手を伸ばす。
裏向きのまま渡されて、頼子は弘毅の笑みを見ながらメモ帳を受け取った。
「読んでみて」
ドキドキしながら裏返し、書かれている文字に息を呑む。
『結婚しよう』
「こ、弘毅さん……これ」
「急ぎ過ぎかなとも思ったんだけど」
はにかみながら、弘毅が首に手を当てた。
「俺も、似たようなことを考えていたんだ。頼子ちゃんは療養のためにここに来ていて、それが終わったら帰るつもりでいるんじゃないかって。告白を疑ったわけじゃないんだ。それは、頼子ちゃんもおなじだと思う」
そうですと頼子は首肯した。弘毅の告白を信じていないわけじゃない。それなのに不安になった。
「もっとシンプルに考えればいいんだ。自分がどうしたいのか。それが中心で、そのためにどうすればいいかが続いて」
「でも、相手の気持ちも大切です」
「そうだね。だけど、それを考えすぎるとなんにもできなくなるんだよ。頼子ちゃんはそれをしすぎて苦しくなって、会社を辞めたんじゃなかったっけ」
「そんなにいいものじゃないです。ただ、いい子でいたかっただけっていうか、仕事自体は嫌いじゃなくって、だから人間関係もがんばろうって。だけどそれが空回りしちゃって、なにをやっても裏目に出るっていうか、うまく言えないんですけど」
「相手が悪いとは、思わなかった?」
「それは……だって、向こうは職場の先輩で。気に入られたいわけじゃないですけど、ほかの人はうまくやっているのに、なんで私はそうなれないんだろうっていうか、後から入っていったのは私だから、なんとかなじまなくっちゃって思ったんです」
「原因は、なんだったの? がんばる気力が切れた理由は」
「嫉妬だからって言われたんです。なんだかよくわからなかったんですけど、その人は私に嫉妬をしていたらしくて。べつにそんなの、する必要なんてどこにもなかったと思うんです。だって私、美人だとかそういうんじゃないし、特別扱いされていたわけでもないし。新人だから仕事について、いろいろと教わっていただけで。でも、それってほかの人もそうだったはずですよね。そう思ったらなんだか、どれだけがんばっても、どうしようもないんだなぁって思ったっていうか、もう疲れちゃったっていうか」
そっと頭を引き寄せられて、辛かったねとなぐさめられる。頼子は弘毅に抱きついて、目を閉じた。弘毅の匂いとぬくもりに、思い出した苦しさが緩和される。
「自分がどうしたいのかを置き去りにして、まわりのことばかりを考えて。だから頼子ちゃんは苦しくなってしまったんだね」
だけど、と髪にキスをされた。
「あんまりそればっかりになると、自分を見失うよ。俺に迫ってきたときみたいに、頼子ちゃんの気持ち優先で、行動をしてもいいんだよ」
「あれは……その、ごめんなさい」
「なんで、あやまるの」
「だって、弘毅さんの気持ちなんてぜんぜん考えずに、私、突撃しちゃって」
いま考えると、とても恥ずかしい。
真っ赤になった頼子を、弘毅の手がやさしくあやす。
「おかしかったんです、きっと私」
あこがれの王子様と再会して、気持ちが爆発して、ふだんならできない大胆な行動をしてしまった。仕事をやめて精神的に落ち着いてきたつもりでいたけど、ちっともそうじゃなかったんだと振り返る。
「弱っているところだったから、自分の望みが最優先になったんだな」
たのしげに弘毅が言って、頼子はますます恥ずかしくなる。
「ごめんなさい」
「どうして、あやまるの? そのおかげで、俺はこうして大好きな人と気持ちを通じあわせることができたんだから。なんだか、結果的に弱っているところにつけ込んだ感じになっちゃったな」
「そんなことないです。だって私から迫ったんですし」
「それじゃあ、お互い様ってことにしておこう」
「ぜんぜん、そんな感じじゃないですけど」
「いいんだよ。俺がそうしておきたいんだから」
「あっ」
耳裏に口づけられて、頼子はちいさな声を上げた。そのまま耳朶を唇で噛まれ、耳の中を舌でなぞられる。
「んんっ……弘毅さん」
「俺がどれだけ頼子ちゃんを求めているのか、体感してもらうよ」
「えっ」
「いやなら、やめるけど」
クスクスと息で耳をくすぐられて、頼子の息が苦しくなった。
「いやじゃ、ないです」
「よかった」
弘毅の手が服の中に入ってきた。乳房を掴まれ、やわやわと揉みしだかれながら椅子に座らされる。首筋にキスをされ、服をめくりあげられて腕と頭を抜かれた。むき出しになった上半身に弘毅の手が滑り、乳頭に唇が落ちる。
「あっ、あ……んっ、ふぅう」
プルプルと胸を揺らされ、先端を舌先でくすぐられると、気持ちよすぎてくすぐったくて、頼子の肌はすぐに火照った。
「あっ、あ、あぁ、弘毅さん」
「そんなに甘い声を出されたら、すぐにでも欲しくなるな」
「んぅうっ」
弘毅の舌が肌を滑ってヘソとたわむれる。尻を引かれて、頼子はイスの背もたれに体重をかけた。寝間着のズボンをショーツごと脱がされて、ひじ掛けに足を乗せられた。大きく開脚した格好に、頼子は赤面する。
「こっ、弘毅さん」
あわてて脚を閉じようとすれば、弘毅の体が脚の間に入ってきた。まだ濡れていない場所を指でつつかれて、頼子の鼻が興奮にふくらむ。かっこわるいと顔を両手でおおった頼子は、陰口を指先でくすぐられてヒクヒクと喉を動かした。
「ふっ、う……んっ、んぅうっ」
すぐに奥からうるおっていく。トロトロと蜜液が流れて、弘毅の指を濡らした。ぐるりと陰口をなぞられて、広げられる。
「ふっ、は、ぁあ……あっ、んぅうっ」
濡れた指が前方に移動して、花芽をつつかれたかと思うと、ネコの喉をくすぐるように指を動かされる。
「はふっ、うっ、あ、はぁ……ああっ、あ、あぅうんっ……は、ぁあっ、あっ、あ」
こまかな快感がちいさな箇所から全身に広がって、胎内からよろこびの蜜がとめどなくあふれ出る。ヒダがわななき隘路がせつなく空虚をうったえて、弘毅が欲しいとざわめいた。
「あ、はぁ……っ、弘毅さん」
「ゆっくり愛せなくて、ごめん。でも、うれしくて」
たっぷりと濡れた頼子から指を抜き、弘毅が自分の欲を取り出す。隆々とそびえたソレのたくましさに、頼子は目を見張った。
「うれしいって……」
「俺だけの勇み足じゃないって、わかったから」
結婚のことだとわかって、頼子の胸は雷鳴みたいなときめきにとどろいた。
「弘毅さん」
「いいかな」
「もちろんですっ!」
元気よく答えた頼子に弘毅が吹き出す。ちっとも色気のない返事だったと気がついて、頼子はバツが悪くなった。
「あ、えっと……その、ご、ごめんなさい」
「どうしてあやまるの」
「だって、ぜんぜんロマンチックでも色っぽくもないから」
子どもっぽかったと反省する頼子の頬を、弘毅の唇が撫でる。
「頼子ちゃんらしくて、いいんじゃないかな」
「でも」
「変に狙った態度より、とても素直でうれしいよ。心にまっすぐ届いた」
「……弘毅さん」
「入るね」
「はい」
はにかみながら返事をすれば、弘毅のたくましいもので頼子の花が開かれた。
「は、ぁ、あ、あ……あっ、あ、ああ、は、ぁう、んっ、う」
濡れた隘路が広げられ、圧迫感に息が詰まる。それがとてもうれしくて、頼子は弘毅の首に腕を絡めた。
「は、ぁ、弘毅さん……っ、あ、あ」
「頼子ちゃん」
苦しげな弘毅の声に、キュンと締まった胎内が欲熱の存在を意識に知らせる。そのまま弘毅は腰を動かし、頼子の胎内に己を擦りつけた。
「はっ、はんっ、は、ぁ、あ、ああっ、あ、んぁ、あっ、あ、あ」
弘毅の指に引き出された快感の波が、彼の熱によって渦となり全身を駆け巡る。頼子は唇を開いて荒い呼吸を吐き出しながら、細く切ないよろこびの悲鳴を上げた。それにあおられた弘毅の動きが大きくなって、頼子の奥が激しく淫らにえぐられる。
「んはっ、ぁ、ああ、ああ……は、ぁあうっ、弘毅さん、あっ、あ、あ」
「んっ、頼子ちゃん」
クッと喉に詰まった息に耳を打たれたと同時に、熱い奔流が頼子の奥を叩いた。
「っは、ぁああああっ!」
ほとばしった弘毅の昂りを受け止めた頼子は、その瞬間に身をこわばらせて絶頂に到達し、淫靡な開放を味わって弛緩した。
「は、ぁ」
「ふぅ」
余韻を交えた吐息を重ねるふたりを、快楽の香りが包む。互いの頬を両手で包み、軽いキスを繰り返して体を離した。頼子の下の唇から、情愛の証がこぼれ落ちる。それを弘毅がティッシュで丁寧にぬぐい、頼子はくすぐったさに身をよじった。
身支度を整え終えても、余韻はまだ肌の奥にわずかに残っていた。艶めいた瞳のまま、名残を惜しみつつ深呼吸する。
(明日も施設の仕事があるし)
ちゃんと眠っておかないと。
そう自分をなだめた頼子の左手を弘毅が掴む。ひざまずいた弘毅は手の甲にキスをして、頼子を見上げた。
「頼子ちゃんが俺を王子様だって思ってくれているのなら、恰好はこんなだけど王子様っぽく言わせてもらうよ」
なにを、と言いかけて声を呑み込む。きっと想像通りのことを、弘毅はしてくれる。期待の目で、頼子は弘毅を見つめた。
「結婚してください。このとおり、なにもない田舎町は都会育ちの頼子ちゃんには退屈かもしれないけれど。それでもいいなら、俺とここで暮らしてほしい」
正式なプロポーズに、頼子の心が熱くなった。
「なにもなくなんて、ないです。とても贅沢な時間が過ごせます。ここは、大切なものがいっぱいあって、大事なことに気づかせてくれる余裕があって、それに、それにとてもあたたかくて」
イスから下りて目線をあわせた頼子はニッコリした。
「なによりも、ここには弘毅さんがいます。だから、私からも言わせてください。頼りなくて、なんのとりえもない私ですけど、よかったら結婚してください」
強く手を握り、クスクスと笑いあう。
「いますぐに、かあさんに報告に行こうか。俺たちは結婚をするつもりでいるって」
「いきなりで、おどろかれますよ」
「いきなりじゃなくて、いつ告げるんだ? すこしずつ時間をかけて、つき合っている気配を察してもらう必要もないと思うけど」
「弘毅さんって、行動派なんですね」
「意外だった?」
「はい」
「俺も。頼子ちゃんがあんなに大胆だなんて思わなかったよ」
「それは……だって」
「それだけ、俺のことが好きで、振り向いてもらおうと必死だったってことだよね」
コクンと首を動かすと、よしよしと頭を撫でられた。
「でも、いまからは、ちょっと。まだ、心の準備ができていないです。せめて明日……仕事が終わって、家に帰ってから」
気持ちの整理がつかないからと伝えれば、それもそうかと弘毅が受け入れる。
「明日も雨になりそうだし。俺も施設に行くことになるはずだから。いっしょに帰って、それで正式に、かあさんに結婚をするつもりだって伝えよう。それで、いいかな」
ちいさく首を動かした頼子の額に、弘毅がキスをする。
「それじゃあ、今夜はこのへんで。明日また……おやすみ、頼子ちゃん」
「おやすみなさい、弘毅さん」
指を離して、頼子は自分の部屋へ戻った。布団に入って目を閉じても、ドキドキと鼓動がうるさくて眠れない。
(明日、おばさんに報告する)
突然すぎて、おどろかれて、反対されたらどうしようと不安になった。
(ううん、大丈夫。きっと大丈夫。私が、弘毅さんも、そうしたいって思っているんだから。私の気持ち、優先でいよう)
自分の想いを大切に、振りまわされないようにしなくちゃと、頼子は不安を追い出した。
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